ワルフラーン ~廃れし神話
子の居ぬ間に
カシルマの性格として、周りの性格に非常に流されやすいというモノがある。朱に交われば赤くなるという言葉が正にピッタリだ。所属する集団によって、本質は変わらないが、外面的性格は何度でも豹変する。それを利用すれば彼を悲しませる事なく事実を伝える事も、不可能ではないような気がしなくも……うん。無理だ。結局のところ、本質では傷ついてしまっているので、それでは彼に感情の隠れ蓑を与えるだけとなってしまう。結局の所、正直に言うより他に無かった。
「…………」
目覚めたカシルマは、アルドの話を瞬きの一回もする事なく聞いていた。その真面目さは自分と相対している時の彼であり、他の人物と喋っている時にはまず見られない表情だ。彼曰く、素直な自分を出せるのはアルドの前だけらしいので、これが彼の素であると信じたい。しかし、仮にそれが彼の素だったとしたら、彼は意外に落ち着きのある人間なのかもしれない。彼の船員が全員死亡した事実は、多少なりともアルドを動揺させる為には十分だったのに、彼はその事実の何処を聞いてもまるで動じなかった。その様子が見られなかった。途切れ途切れになる言葉に突っ込む事も無く、大体十五分間。遠回しなアルドの発言を、カシルマは全て真正面から受け止めた。師匠の情けなさを見ても、特に何か物言いたげな様子を見せる事も無かった。
「……以上が、お前の身に起きた出来事だ」
「…………そう、ですか」
何か言葉を掛けてやって、彼を慰める事が出来れば、自分は胸を張って彼の師匠と言えたのだろうが、生憎とどういう言葉を掛けたら良いのか、それの最良すら分からない自分にはどうしたらいいか分からなかった。フェリーテの方を見遣るが、彼女とカシルマは結局他人に過ぎない。慰める事が出来るとしたら、彼の師という位置に居るアルドだけだ。自分が出来ないからと言って彼女に擦り付けてはいけない。それは逃げているだけだ。
「……一つ聞きたい。お前はどうしてフルシュガイドと戦っていたんだ。お前が海賊をやっていたのは知っているし、海賊が滅びなければならない存在なのも知っているが……だからと言って、こっちから接触しない限りはフルシュガイドもお前らの事何か無視しただろうに」
「…………頼まれたんですよ、彼に」
「彼…………?」
「名前は言っちゃいけない約束でしょう。死人にくちなし、耳なし、名前なし。アイツがそれを望んだんだったら、幾ら僕でも約束は守りますよ」
彼が言わんとしている人物の事は分かっている。いや、むしろカシルマがそんな事をする理由なんて彼が絡むぐらいないとあり得ないだろうと薄々勘付いていた。カシルマは非常に影響されやすい性格だ。彼の様な者から頼みを聞けば、必然的に彼の様な存在となり性格となってしまう。
師弟の会話に口を挟む訳にはいかないと思ったのか、フェリーテの姿は無くなっていた。
「…………何を頼まれたんだよ、アイツに」
「レギ大陸での戦いが終わるまで、フルシュガイドの騎士達を足止めして欲しいって。どうせこの体質だから、僕一人でやろうと思ったんですけどね。アイツ等が勝手に付いてきて、それで……勝手に死んでしまって」
やはりそうだったか。カシルマも大概自己犠牲感覚の強い人間だ(と言っても彼の体質上、何をしても彼は傷つかないので、自己犠牲をした所で生き残るのは彼だが)、大量の部下達を引き連れて突撃なんて馬鹿げた事はしない。仮にもフルシュガイドは五大陸の抱える騎士団の中で最強の騎士団を抱えている。一般人でしかない部下を引き連れた所で、リューゼイやクリヌス辺りに殺されるのがオチだろうと。実際、船は壊され、船員達は見るも無残な姿で死んでいた訳だが。
「……本当に、困りますよ。勝手に付いてきて、死んで。挙句僕だけ生き残るなんて。船もクリヌスに壊されたし、そろそろ海賊から足を洗う時ですかね」
自虐的に笑うカシルマに痛ましい気持ちを覚えて、アルドは震えた声で尋ねた。
「じゃあお前は、これから何をする気なんだ? お前の体質で平穏な生活が送れるとは思わないぞ、言っては悪いがな」
「もとより平穏な生活をするつもりはありません。僕の平穏は彼が死んだ時点で終焉しました。先生と彼が居る場所こそが、僕の落ち着く場所だったんです。けれど、彼は居なくなってしまった。碌に別れも告げないで、自分勝手に死にやがった。だから―――僕が代わりに行うんですよ。彼が為そうとしていた事を」
「何?」
「僕達がまだ先生の庇護下にいた頃、彼は言っていました。いつか世界中に笑顔が広がる様になったら、そんな世界はどんなにか幸せなんだろうって。そりゃ、馬鹿げてるってのは知っています。魔人と人間の共存以上に、有り得ないってのも知っています。けれども、彼はそれを本気で願っていた。ありとあらゆる権能を持つ彼が唯一出来なかった事、それは世界平和だったから。神様はいつも人を振り回してばかりで、世界を平和にしようとは全く思っていなかったとは彼の弁ですが、だからこそ彼は平和を目指していた。神の力では無く、人の力で。だから先生の頼みも快く引き受けたんじゃないんですか? 共存を望む少女の御守なんて、普通はしませんから」
カシルマは少しだけ勘違いをしている。彼はキリーヤと出会うまで彼女がどんな事を目的にしているのか全く知らなか―――いや、そうか。権能を使えばそれで済む事か。勘違いをしていたのはどうやら自分だったらしい。一体自分は彼の何を見てきたんだ。
「でも彼は居なくなった。ならば僕が、世界中を笑顔にしましょう。本当は先生にも手伝ってもらいたいんですけど、今の先生には他にやるべき事があるので、誘いません。何百年かかっても、僕は絶対に成し遂げて見せます」
それは選択では無く、決断。アルドはカシルマの瞳に、彼の魔力を幻視した。既に彼は死に、その力を受け取った自分は執行者戦でそれを使い切った。もう彼の痕跡は何処にもない。彼は本当に死んだ筈だ。それなのに、不思議である。アルドは今、二人に見つめられている気がしてならないのだ。どうやらカシルマは気付いていないらしいが、この感覚は、もしかして二人の師である自分だからこそのモノだろうか。
「…………止めはしない。もう行くのか?」
「いえ、具体的な目標もハッキリとしないまま飛び出すのは阿呆ですからね。先生が許可を出してくれるのなら、考えがまとまるまで滞在していたいのですが、宜しいですか?」
「―――別に構わない。ただし、一つ頼まれて欲しい」
「何ですか?」
「お前とは面識が無いだろうが、この町の外にドロシアを待たせている……というより、今待たせた。本来は師である私のすべき事なんだろうが、アイツの墓を…………代わりに作ってやってくれ。頼む」
今のアルドが人間の死体など運ぼうモノなら、再び罵詈雑言の嵐だ。一方でカシルマがそれをしても、彼は元々人間だし、少なくとも一度はこちらに遊びに来ている以上、魔人もアルド以上に警戒心を抱くという事は無いだろう。気が付けば人間への敵対心よりアルドへの不満が上回っているのがなんとおかしな話だが、今はそんな笑い話に腹を抱えて転げまわっている場合ではない。彼の死体をどうしようか、迷っていたのだから。
返事よりも先に、カシルマは武器を放置して立ち上がった。ポケットに両手を突っ込んでいたのは、彼なりに強がっているのかもしれない。
「―――分かりました。出来上がり次第、先生に報告します。ああそれと……」
「何だ?」
「クリヌスに船を壊される寸前に聞いたんです。どうしてこんな事をするのかって。そうしたら言ったんですよ。残り数年の間に魔人達を滅ぼさないと、先生の妹が守れないって。これから大陸の警備は……もっと厳重にするべきだと思いますよ。フルシュガイド自体はまだ余力を残しているようですが、他でもない『勝利』の後継者が本気になっているので」
全く休もうという気になれないのは、この底の無い疲労のせいだろうか。いいや、疲労に文句を言うなんて今更過ぎる。その気になれないのは、次々と自分にしか解決出来なさそうな事態が転がり込んでくるからだ。
例えば執行者。彼が命と引き換えにアルドを目覚めさせたのは、アルドにしか倒せないと思っての事。
例えばクリヌス。弟子が引き起こす問題は師匠にしか解決出来ない。何より彼はドロシアやカシルマ、彼等の特殊体質と違って、純粋に才能の塊だ。以前ナイツを奪還しに行った際はナイツも第三や第二は切っていないとはいえ、五人も気絶させて捕えていた。その経験からも分かる通り、既に彼の実力は自分に追いついている。あの時よりはアルドもまだ強くなったと思うので、追いつかれていないとは信じたいが……どうだろう。魔術を使えるか否かで差がつくような気もする。
例えばナイツ。彼/彼女達を集められたのも、自分だから集められたと言っていい筈だ。理由など語る必要もない。アルドが来なかったからナイツ達の巻き込まれていた事態はあそこまで深刻化していたのだ、それを助ける為に自分がどれだけの死を費やしたか。数えるのも馬鹿らしくなってきた。
出来るのは自分だけ。やれるのは自分だけ。自分がいなければ全てが終わる。あまりにもそういう状況が多いから、アルドは全く休もうとは思えないのだ。別に嘆いている訳では無い。この身は再び英雄として蘇ったのだ。ならば使い潰せばいい。この身体の朽ちる時まで、酷使し続ければ良い。英雄とはそういう存在。その生きざまが誰かの心を打ち、再び英雄の詩を紡ぐというのなら、この生き方に悔いはない。
アルドは全く気付いていないが、彼の救う対象には、自分など見当たらなかった。全くおかしな事に、彼は彼の愛する者に『自分を大切にしろ』と言った癖に、彼自身はそれが出来ていないのだ。傍から聞けば笑い話にもなり得るだろうが、その考え方は大いに間違っていた。彼がその間違いに機が付く事になるのは果たしていつなのか。その時になって彼は生きているのか死んでいるのか。
誰も居なくなった部屋で、アルドは一人呟いた。
「ナイツ達との約束…………守りたい、のだがな」
どんな英雄にも死期を悟る時が来る。彼もまた、己の死を予感しているのだった。
「…………」
目覚めたカシルマは、アルドの話を瞬きの一回もする事なく聞いていた。その真面目さは自分と相対している時の彼であり、他の人物と喋っている時にはまず見られない表情だ。彼曰く、素直な自分を出せるのはアルドの前だけらしいので、これが彼の素であると信じたい。しかし、仮にそれが彼の素だったとしたら、彼は意外に落ち着きのある人間なのかもしれない。彼の船員が全員死亡した事実は、多少なりともアルドを動揺させる為には十分だったのに、彼はその事実の何処を聞いてもまるで動じなかった。その様子が見られなかった。途切れ途切れになる言葉に突っ込む事も無く、大体十五分間。遠回しなアルドの発言を、カシルマは全て真正面から受け止めた。師匠の情けなさを見ても、特に何か物言いたげな様子を見せる事も無かった。
「……以上が、お前の身に起きた出来事だ」
「…………そう、ですか」
何か言葉を掛けてやって、彼を慰める事が出来れば、自分は胸を張って彼の師匠と言えたのだろうが、生憎とどういう言葉を掛けたら良いのか、それの最良すら分からない自分にはどうしたらいいか分からなかった。フェリーテの方を見遣るが、彼女とカシルマは結局他人に過ぎない。慰める事が出来るとしたら、彼の師という位置に居るアルドだけだ。自分が出来ないからと言って彼女に擦り付けてはいけない。それは逃げているだけだ。
「……一つ聞きたい。お前はどうしてフルシュガイドと戦っていたんだ。お前が海賊をやっていたのは知っているし、海賊が滅びなければならない存在なのも知っているが……だからと言って、こっちから接触しない限りはフルシュガイドもお前らの事何か無視しただろうに」
「…………頼まれたんですよ、彼に」
「彼…………?」
「名前は言っちゃいけない約束でしょう。死人にくちなし、耳なし、名前なし。アイツがそれを望んだんだったら、幾ら僕でも約束は守りますよ」
彼が言わんとしている人物の事は分かっている。いや、むしろカシルマがそんな事をする理由なんて彼が絡むぐらいないとあり得ないだろうと薄々勘付いていた。カシルマは非常に影響されやすい性格だ。彼の様な者から頼みを聞けば、必然的に彼の様な存在となり性格となってしまう。
師弟の会話に口を挟む訳にはいかないと思ったのか、フェリーテの姿は無くなっていた。
「…………何を頼まれたんだよ、アイツに」
「レギ大陸での戦いが終わるまで、フルシュガイドの騎士達を足止めして欲しいって。どうせこの体質だから、僕一人でやろうと思ったんですけどね。アイツ等が勝手に付いてきて、それで……勝手に死んでしまって」
やはりそうだったか。カシルマも大概自己犠牲感覚の強い人間だ(と言っても彼の体質上、何をしても彼は傷つかないので、自己犠牲をした所で生き残るのは彼だが)、大量の部下達を引き連れて突撃なんて馬鹿げた事はしない。仮にもフルシュガイドは五大陸の抱える騎士団の中で最強の騎士団を抱えている。一般人でしかない部下を引き連れた所で、リューゼイやクリヌス辺りに殺されるのがオチだろうと。実際、船は壊され、船員達は見るも無残な姿で死んでいた訳だが。
「……本当に、困りますよ。勝手に付いてきて、死んで。挙句僕だけ生き残るなんて。船もクリヌスに壊されたし、そろそろ海賊から足を洗う時ですかね」
自虐的に笑うカシルマに痛ましい気持ちを覚えて、アルドは震えた声で尋ねた。
「じゃあお前は、これから何をする気なんだ? お前の体質で平穏な生活が送れるとは思わないぞ、言っては悪いがな」
「もとより平穏な生活をするつもりはありません。僕の平穏は彼が死んだ時点で終焉しました。先生と彼が居る場所こそが、僕の落ち着く場所だったんです。けれど、彼は居なくなってしまった。碌に別れも告げないで、自分勝手に死にやがった。だから―――僕が代わりに行うんですよ。彼が為そうとしていた事を」
「何?」
「僕達がまだ先生の庇護下にいた頃、彼は言っていました。いつか世界中に笑顔が広がる様になったら、そんな世界はどんなにか幸せなんだろうって。そりゃ、馬鹿げてるってのは知っています。魔人と人間の共存以上に、有り得ないってのも知っています。けれども、彼はそれを本気で願っていた。ありとあらゆる権能を持つ彼が唯一出来なかった事、それは世界平和だったから。神様はいつも人を振り回してばかりで、世界を平和にしようとは全く思っていなかったとは彼の弁ですが、だからこそ彼は平和を目指していた。神の力では無く、人の力で。だから先生の頼みも快く引き受けたんじゃないんですか? 共存を望む少女の御守なんて、普通はしませんから」
カシルマは少しだけ勘違いをしている。彼はキリーヤと出会うまで彼女がどんな事を目的にしているのか全く知らなか―――いや、そうか。権能を使えばそれで済む事か。勘違いをしていたのはどうやら自分だったらしい。一体自分は彼の何を見てきたんだ。
「でも彼は居なくなった。ならば僕が、世界中を笑顔にしましょう。本当は先生にも手伝ってもらいたいんですけど、今の先生には他にやるべき事があるので、誘いません。何百年かかっても、僕は絶対に成し遂げて見せます」
それは選択では無く、決断。アルドはカシルマの瞳に、彼の魔力を幻視した。既に彼は死に、その力を受け取った自分は執行者戦でそれを使い切った。もう彼の痕跡は何処にもない。彼は本当に死んだ筈だ。それなのに、不思議である。アルドは今、二人に見つめられている気がしてならないのだ。どうやらカシルマは気付いていないらしいが、この感覚は、もしかして二人の師である自分だからこそのモノだろうか。
「…………止めはしない。もう行くのか?」
「いえ、具体的な目標もハッキリとしないまま飛び出すのは阿呆ですからね。先生が許可を出してくれるのなら、考えがまとまるまで滞在していたいのですが、宜しいですか?」
「―――別に構わない。ただし、一つ頼まれて欲しい」
「何ですか?」
「お前とは面識が無いだろうが、この町の外にドロシアを待たせている……というより、今待たせた。本来は師である私のすべき事なんだろうが、アイツの墓を…………代わりに作ってやってくれ。頼む」
今のアルドが人間の死体など運ぼうモノなら、再び罵詈雑言の嵐だ。一方でカシルマがそれをしても、彼は元々人間だし、少なくとも一度はこちらに遊びに来ている以上、魔人もアルド以上に警戒心を抱くという事は無いだろう。気が付けば人間への敵対心よりアルドへの不満が上回っているのがなんとおかしな話だが、今はそんな笑い話に腹を抱えて転げまわっている場合ではない。彼の死体をどうしようか、迷っていたのだから。
返事よりも先に、カシルマは武器を放置して立ち上がった。ポケットに両手を突っ込んでいたのは、彼なりに強がっているのかもしれない。
「―――分かりました。出来上がり次第、先生に報告します。ああそれと……」
「何だ?」
「クリヌスに船を壊される寸前に聞いたんです。どうしてこんな事をするのかって。そうしたら言ったんですよ。残り数年の間に魔人達を滅ぼさないと、先生の妹が守れないって。これから大陸の警備は……もっと厳重にするべきだと思いますよ。フルシュガイド自体はまだ余力を残しているようですが、他でもない『勝利』の後継者が本気になっているので」
全く休もうという気になれないのは、この底の無い疲労のせいだろうか。いいや、疲労に文句を言うなんて今更過ぎる。その気になれないのは、次々と自分にしか解決出来なさそうな事態が転がり込んでくるからだ。
例えば執行者。彼が命と引き換えにアルドを目覚めさせたのは、アルドにしか倒せないと思っての事。
例えばクリヌス。弟子が引き起こす問題は師匠にしか解決出来ない。何より彼はドロシアやカシルマ、彼等の特殊体質と違って、純粋に才能の塊だ。以前ナイツを奪還しに行った際はナイツも第三や第二は切っていないとはいえ、五人も気絶させて捕えていた。その経験からも分かる通り、既に彼の実力は自分に追いついている。あの時よりはアルドもまだ強くなったと思うので、追いつかれていないとは信じたいが……どうだろう。魔術を使えるか否かで差がつくような気もする。
例えばナイツ。彼/彼女達を集められたのも、自分だから集められたと言っていい筈だ。理由など語る必要もない。アルドが来なかったからナイツ達の巻き込まれていた事態はあそこまで深刻化していたのだ、それを助ける為に自分がどれだけの死を費やしたか。数えるのも馬鹿らしくなってきた。
出来るのは自分だけ。やれるのは自分だけ。自分がいなければ全てが終わる。あまりにもそういう状況が多いから、アルドは全く休もうとは思えないのだ。別に嘆いている訳では無い。この身は再び英雄として蘇ったのだ。ならば使い潰せばいい。この身体の朽ちる時まで、酷使し続ければ良い。英雄とはそういう存在。その生きざまが誰かの心を打ち、再び英雄の詩を紡ぐというのなら、この生き方に悔いはない。
アルドは全く気付いていないが、彼の救う対象には、自分など見当たらなかった。全くおかしな事に、彼は彼の愛する者に『自分を大切にしろ』と言った癖に、彼自身はそれが出来ていないのだ。傍から聞けば笑い話にもなり得るだろうが、その考え方は大いに間違っていた。彼がその間違いに機が付く事になるのは果たしていつなのか。その時になって彼は生きているのか死んでいるのか。
誰も居なくなった部屋で、アルドは一人呟いた。
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