ワルフラーン ~廃れし神話

氷雨ユータ

次元終焉 剣の刻

 卑怯と言われても構わない。これがかつて騎士として生きた男の、地上最強と呼び称えられた男のする事かと言われても構わない。どんな手段を使ってもこの男には勝たなくてはならない。これはアルド・クウィンツが起こした問題だ。この世界に死の執行者を招き入れてしまった事自体が、何よりの罪だ。そして罪は償うもの。執行者などというふざけた存在に裁かせる程、その罪は軽くない。
 それをすれば余計な被害を被る事になると考えていたとはいえリスド大陸の危機に急行せず、剣の執行者がこちらへ彼を弾き出してくれるのを待っていたのだ。その思惑は魔人達からしたら裏切り行為にも等しく、帰った所で待ち受けているのは罵声の数々。そして『涙』の戻ってしまった自分がそれを受けて、果たしてまともな精神を保てるかどうか。それが戻ってきたお蔭で、自分はかつてない憎悪と憤怒の下、執行者に立ち向かおうという勇気を持つ事が出来たのは事実だが、それとこれとは話が別。人間性を希薄にする為に『涙』を捨てたのに、これではまるで人間みたいじゃないか。魔人の何よりも嫌う、存在みたいじゃないか。
 そんな自分を魔人達は許してくれないだろう。ここまで罪を犯しているといっそ許してくれなくても良いような気もするが、少なくとも許してもらう為には、目の前の存在を打倒する事が必要不可欠である。
 振り下ろされた一撃は死の執行者を確実に捉え、その威力を見せつける。執行者は危なげなくその一撃を受け止め柔軟に弾き返すが、その隙へ付け入ろうとした執行者を妨害したのは、ドロシアだった。彼我の間隙に出現した魔法陣が、執行者の攻撃を難なく受け止めている。その異様性に気づいた執行者は権限を行使して魔術を強制解除。剣に残留した勢いを最大に増幅させて斬撃を継続させたが、その頃にはアルドも改めて振り下ろしており、その剣速から再び防御に回らざるを得ない。縦に振り下ろされた一撃が囮である事を見破り、敢えて薙ぐ。消極的な一撃はアルドの隠していた本命の一撃を受け止め、吹き飛ばした。
「アルド様ッ!」
 カテドラル・ナイツは全面的にアルドのサポートへ回るようだ。空中へ吹き飛ばされた彼の背中を押したのは『烏』の魔人ことチロチン。いつの間にかアルドの背後へ回っていた彼に押された事で強制的に体勢を回復させられたアルドは、それで勢いづいた体を利用して執行者を袈裟斬りにせんと斬りかかる。時間の収縮に乗せられた一撃は不可視の速度に達していたが、何の介入も無ければ容易く防御できる一撃。介入してきたのは、一本の斧槍だった。
 通常、その姿を目視する事は叶わないが、世界の秩序に則らぬ執行者には、その姿がハッキリと見えた。長身痩躯……骨ばかりの存在に痩躯も何もないとは思うが、そんな存在が介入してきた事で、意識がほんの僅かに逸れる。アルドの斬撃が執行者に通るには、それだけで十分だった。確かな手応えを感じたアルドは刃を振り抜いたが、刃に血液が付着しない事を奇妙に思った。
 しかしそれについて思案する時間は無い。素早く体を反転させて再び斬りかかると、執行者が『骸』に放っていた斬撃を丁度受け止める事に。体格は同じくらいであるにも拘らず、その力の差はあまりにもかけ離れている。真理剣と言えど耐えられるかは怪しい所で、一瞬だけ死剣に切り替える事も考えたが、それでは執行者に通用しない。執行者に唯一通用する法則は真理のみ。この剣から切り替えたら、それこそ勝機は無くなるだろう。何度も言うが、死の執行者は誰が何と言おうと自分がこの手で斬り殺す。それすら出来ない男に、生きる価値は無いから。
「……ッ!」
 あらゆる法則を無視する存在に威力減殺という言葉は存在しない。またも弾き返されたアルドは同じようにチロチンからサポートを受けたが、今度は執行者も見計らっていた様だ。アルドの身体が前方向へ勢いづくと同時に、横から割り込んできた『  』の攻撃も無視して刺突を放った。黒と白の入り混じる刀身がアルドの心臓を貫き、背後に居たチロチンの掌をも貫く。『  』が下から放った剣閃を諸に喰らったが、執行者は苦痛に動きを鈍らせる事は無い。むしろ丁度良い刺激とばかりに動きを加速させて、数的有利をものともしない。直感的にこの状況を危険と判断したチロチンは掌を直ぐに引っ込めようとしたが、どうした事だろう。全く抜けない。それが死の執行者の権限によって行使された能力だと気付いた時、二人は仲良く上空へと投げ飛ばされる。
―――剣の執行者はどうして介入しない?
 アルドの疑問は、直ぐに解消された。真っ先に切り込んだから見えていなかったが、剣の執行者は死の執行者と戦っているのだ……そう、もう一人の。分身の常は本体よりも実力が劣っている事が大概だが、彼等の戦いぶりを見ると、どうやら事情は違う様だ。
 剣の執行者は最初から手加減をするような性格ではない事は良く分かっているつもりだったが、今は少しばかりその実力を過小評価していた気さえしてくる。アルドは剣に全てを捧げて生きてきたが、そのアルドを以てしても剣の執行者の剣速は一瞬を視認する事もままならない速度である。その剣戟を受けている死の執行者が、何度も上体を崩されかけながらも防御している所を見る限りでは、彼にしても同じ気分らしい。この時点で経過時間は五分も経っていないが、既にあちらの戦いでは死の執行者が片腕を切り落とされている。そう遅くない内に勝負は決するだろう。それまでに自分達も決着出来れば上出来だが、数的有利を取っても尚、ようやく平等か少し不利程度なので、まず挙げられぬ成果である。
「先生ッ!」
 遥か上空に身を打ち出されたにも拘らず横から聞こえる声。チロチンを抱き抱えながら視線を向けると、長杖に跨ったドロシアが、魔術で作り出した鎖をこちらに差し出していた。地上では『  』と死の執行者が接近戦を繰り広げており、こちらへの妨害を仕掛けられるような余裕はなさそうに見える―――
「これで終わりだ」
 背後から審判の刃が近づいてくるのを感じたが、振り返れば彼女の鎖に手が届かない。限界まで体を伸ばしてその鎖を掴み、それから振り返る。背後では高密度故に極光を作り出した魔力の槍が、小刻みに震えながら静止していた。その周りには見た事のない魔術式が漂い、その槍を繫ぎ止めている。
「セんせいは……コろさせない!」
 言葉の調子に妙な雑音が入り混じる。ただ繫ぎ止められていただけの魔力は、間もなく反転して死の執行者の中心を貫いた。
「起源執行」
 直後、『謠』の言葉が世界へ呟かれ、同時にその言葉が受領。高密度の魔力に貫かれて物言わぬ死体となり果てた死の執行者は、周囲の空気と共に凍結。凍り付いた空気を、さも階段でも上るかの様に近づいてきた『謠』が手を握りしめると、中心を発生源に空間が歪曲。周囲の空間が捻じ込まれると共に、永久凍結した執行者も放り込まれる。
「全員本体だから、気を付けて―――」
 そう『謠』が忠告すると同時に、再び死の執行者が出現。彼女の作る魔法陣を直前で通り抜けたから回避出来たが、今の一撃は殆ど偶然によって回避できたと言っても差し支えない。地上に戻ったアルド達を待ち受けていたのは、またも死の執行者である。どうやら、あちらに休ませる気は欠片も無いらしく、体勢の整わない内に仕留めてしまおうという魂胆らしい。両手持ちで真一文字に薙いで防御、その隙にドロシアが放った魔導砲により死の執行者は彼方へ吹き飛ばされたが、その程度で死んだとは思えない。今までの事から言っても明らかだ。
「はあああああああッ!」
 だから斬りかかる。一度でも真理剣で殺せば執行者と言えどもその存在を回帰させて死ぬ筈だ。分身だろうが本体だろうが何でもいい。『そこに在る』真理に回帰し、『そこに在る』ままに殺す。どれだけ法則を無視しているかは知らないが、それだけはどんな存在であろうとも避けられない。『そこに在る』とはそういうモノであり、それは体が半分だけ執行者と全く同じ性質を持っている自分にも言える事。ならば例外は無い。こちらへの配慮か、吹っ飛んでいる執行者を、その背後に出現した魔法陣が反発。先程の槍のようなモノを執行者の背中へとしこたま浴びせながら、アルドの進行方向へと吹き飛ばす。
 渾身の力を込めて振り下ろした一撃は、それでも執行者に届かない。彼は体を空間に固定して、その上で攻撃を受けていた。
「いい加減に…………しろッ!」
 アルド自身は気付いていなかったが、既に彼の肉体は人間が出せる速度というモノをとうの昔に超えていた。一撃が防がれる度、次の一撃は早くなる。重くなる。最初はその場で腕だけ動かして受けていた執行者も、そんな状態が六時間も続いた頃、遂に両足を地面につけて、本気で防御する様になっていた。その間に誰の介入も無かったのは、介入する事そのものがアルドの邪魔になると、誰もが判断したからである。
 斜めに十字を切るような二連撃を受け流す。どうにか反撃の隙はないかと窺うが、そんなものは皆無と言っても過言では無かった。連撃が受け流された瞬間、アルドはこちらに体当たり。こちらの刃が腕を傷つける事も構わず押し退けて、僅かに生まれた距離をまた剣戟で詰めてくる。最初の横薙ぎが、遂に執行者の肌に掠った。
―――信じられない。
 三千万人を打ち倒したという功績は紛い物では無かった。この男、長期戦において誰もが想像しうる疲労というモノが存在しない。試合が長引けば長引く程、その攻撃は鋭く、重く、的確になっていく。アルド・クウィンツという人間の潜在能力はそこまででは無かった筈だ。彼の潜在能力は人類の中でも最底辺。どんな貧民であろうとも潜在能力まで入れれば彼を下回る人間は存在しない。だのに、これは……何だ。何がこの男を強くしている。自分への敵愾心だけで到達できるような領域ではない筈だ。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
 最適な方法で攻撃を受け流した。そう思った次の瞬間には、その防御の死角から刃が滑り込んでくる。何回も。何回も。終いには三連撃で胴体をぶった切られ、怯んでしまった。










―――本当にそれで良いのか?


 
 世界の調和を乱す存在に、こんな無様な負け方をしてしまって本当に良いのか? 
 そんな声が脳裏に響く。この世界を壊すのは、もっと言えばアルドを殺すのは世界の意思。執行者となり果てた自分の、永久に続く仕事である。そう思っていたから、どんな事態があろうとも冷静に、淡々と処理してきた。
 だが。
 微かに残っていた記憶が蘇る。執行者としての長い歳月はかつての自分を全て風化させたが、それでもこうして斬り合っていると思い出す。自分がどうして執行者となり果てたのか、その切っ掛けを。
 ……ああ、その通りだ。
 最強を目指していた。何者にも負けない力を欲した。それ故に自分はあらゆる存在を打倒し、遂には生物最大の天敵である『死』をも壊した。しかしそのせいで世界は始まる事しか出来なくなり、やがて知性は滅びてしまった。始まり続ける存在に、追いつかなくなったのだろう。自分は苦悩した。もっと強い奴と戦いたい。もっと強い何かを壊したい。そう思ったから、自分は死の執行者になったのだ。『世界』の意思とやらに抗うのは簡単。でも抗わなかった。もっと戦っていたかった。もっと殺していたかった。それが悪であるのは明白であるのに、世界意思の名の下にそれが出来る事を、何より幸福に思ったから。
 結果としては、変わらず。自分より強い存在に出会える事は滅多に無かった。いつかいつかと思っていても、気づけば数えるのも馬鹿馬鹿しくなるくらいの年月が経っていて、やがて何もかも仕事と割り切る様になった。全ては世界意思の名の下に。調和を乱す悪を討ちて正義を為す。それだけだと思っていた。
 ……私が望んでいたのは、こういう戦いだ。










 怯んだ瞬間を見逃す様な余裕はお互いに無い。アルドの次なる攻撃が執行者の身体を切り裂く……刹那。何かがアルドを切り裂いた。何かと言っても、勿論剣だ。武器だ。しかし何かがおかしい。アルドを切り裂くにあたっては、目の前の真理剣をどうにかしなければならない。
 嫌な予感は、得てして現実となるモノだ。真理剣は、刀身の中間からすっぱりと切り裂かれていた。
「…………な」
 権限は最大限に行使した。今の一撃で、目の前の男がどれだけ死んだかを理解出来る存在は数少ないだろう。もう一人の自分と戦っている男を見ると―――まだ余所見をしながら戦える余裕はあるらしい―――目に見えて驚愕の表情を浮かべていた。
 遂に死の執行者は、真理を超えられたのだ。どんな存在であろうとも超えられないとされていた、『そこに在る』という真理を。どれ程の冒涜的存在であろうとも、超常的存在であろうとも、概念的存在であろうとも、『そこに在る』法則だけは乗り越えられなかった。しかし今、死の執行者はその真理を真っ向から打ち破った。
 久しく忘れていた笑みが零れ落ちる。こんなモノ、笑うなという方が難しい。目前のアルドは、ゆっくりと膝から崩れ落ちて……倒れた。
「アルド様ッ!」
 呆気なく主がやられてしまった事に血を上らせた『雀』が飛びかかる。他の者も最初こそ止めようとしたが、無駄と知ると加勢するかのように後を追う。
「馬鹿者ッ! 真理を打ち破った者にお前達が勝てる筈が……!」
 剣の執行者の方も、ようやく余裕が無くなってきたと見える。自分だけでなく、あらゆる世界から来訪せんとした侵入者を撃退し続けたあの男には、自分達と同じように分身するだけの気力がない。かと言ってこちらを気にすれば、分身に背中を斬られるから動けない。『創』は……少々事情が特殊な存在だ。執行者などと宣ってはいるが、あれは似て非なる存在。同じように分身は出来ない。
 そして『そこに在る』法則を打ち破った自分には、どれ程の強度を持つ武器があろうと意味を為さない。犯罪者に与した愚か者ごと砕いて見せよう。
 全力を叩き込まんと大鎌を振り下ろすファーカに、死の執行者は全霊を込めた一撃を解き放った。速度など意味を為さなくなる斬撃は、瞬く間にカテドラル・ナイツを―――いや。
 世界を両断した。
 レギ大陸には収まらない。文字通り世界が切り裂かれた。死の執行者の放った一撃は真理を上書きし、破滅のみを押し付けた。空間も時間も全てが破滅する。この斬撃を受けて生き残っていられるとしたら、それこそ同じ執行者くらいなものだろう。生物は全て、この斬撃により生命を破滅させられた。文字通りの終焉の一撃、一切の例外は無い。
 ……一人の少女が片目を変質させている様を見なければ、そう思っていた。
「ソれ、シってる。セかいの道理を上書きする技術でしょ?」
「……何故」
 真理以外のあらゆる法則から外れている少女、ドロシアがそこに立っていた。桜色の瞳が、鮮血色に塗り替わっている。
「ワたしの体質は知ってるでしょ? ワたしは真理以外の法則から束縛を受けない。ソれってね、たとえ真理を上回る力があったとしても、エいきょうを受けないって事なんだよ」
 ドロシアは短杖を天空に掲げて、唱えた。
「零式魔術。第二の法、破震慟乱ブレイガードグ
 聞いた事もない詠唱の後、世界中が光に包まれ―――終焉した筈の全てが、再生した。空間も時間も、はたまた全ての生命も。何も起こらなかったが如く、平定した。ファーカ達の攻撃も無かった事になったが、そんな些細な事は気にもならない。
「シんりに抗う事は私には出来ない。ケど、真理を反転させる事なら出来る」
 彼女の行った事は、至って単純である。『そこに在る』真理を、『そこに無い』という特性に反転させた。それだけだ。もっと言えば、死の執行者が上書きした真理を、更に上書きしただけの事。難しい事は何もしていない……が。彼女のせいで、全ての決着が遅れる事となった。
「…………ハハハハハハハハ! お前のような奴がアルドから生まれるとはな! お前となら少しは楽しめそうだが…………少し外野が邪魔だな」
 主が死んだ今、彼等も同じ場所に向かいたく思っているだろう。であらば次は彼等だ。


























 その一撃により、アルドは遂に死亡した。この体は動く事が無くなり、後は只、この世界が終わるのを見据えるばかりである。倒れ方の問題で視界は機能していないが、カテドラル・ナイツが重点的に狙われている事は直ぐに分かった。ドロシアや『  』、二人の執行者がどうにか狙いを逸らさんと動いているが、死の執行者はそれでもカテドラル・ナイツを狙い続ける。脆い所から崩した方が楽だという合理的な思想に基づいての行動だろう。やがて逃げ続ける事を困難と感じたナイツ達はルセルドラグを中心に戦い始めた様だが、執行者相手にまともな勝負を繰り広げられるとは思えない。実際その通りだったようで、彼等の喘ぎ声が耳に伝わってくる。
「グッ…………!」
 暫しの金属音。
「あ……うッ……!」
 自分に力があれば。後一分でも動く力があればナイツを助けられるのに。魔力さえ存在しない自分には、最早どうする事も出来ない。
 ファーカ、ユーヴァン、ルセルドラグ、ディナント、チロチン。誰一人失いたくない。全員が全員、アルドにとってはかけがえのない存在だ。失いたくない。失いたくない。カテドラル・ナイツの為にも……死にたくない!
 動かなくては。
 凍り付いた全身を、少しずつ溶かす。指の第一関節から、第二関節。やがて手首に至り、次に腕。徐々に、徐々に。
「英雄…………は……死な………………ず」
 手遅れになる前に、手を動かせ、足を動かせ。立って歩け。走って立ち向かえ。全てはそこから始まる。戦いも、人生も、勝利も、英雄も!








―――大丈夫だ先生。俺がついてる。




































 実力差を弁えずに挑んだ事を、今程後悔する事は無い。しかし、アルドが呆気なく負けた事をどうしても認めたくなかった。ファーカを止めようとした他の者達も、同じ思いを抱いていた。
「ふう…………ぐッ………うう!」
 目前に立つ男は息の切れた様子を全然見せない。これでも一時間は粘ったのだが、疲労がたまるのはこちらばかり。どうにか立っている状態は継続出来ているが、勝負の行方は明らかだった。
「俺様と言えど…………ちょっときついなあッ!」
「オレ……ハ、こ、んな……所………ケル、にはイカなイ!」
 気持ちでは勝っていると思いたい。二人の空元気を最初から見抜いている死の執行者は、名残惜しそうに刃を持ち上げた。次の攻撃は避けられない。避ければ後ろで負傷している者達に当たる。二人はお互いを見合わせて、微笑んだ。もう助からない事は、誰よりも二人が理解しているつもりだった。
 執行者の一撃が二人の胴体に届かんと放たれた瞬間、五人が何よりも見覚えのある人影が割り込んできた。
「俺は―――死なない!」
 全力の一撃を喰らって動けなくなった筈のアルドが、神を喰らいし権能の焔ピュロマーネを刃に纏わせて、その攻撃を真正面から受け止めていた。
 

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