ワルフラーン ~廃れし神話
女子のそれぞれ 1
『……という訳じゃ、集合場所は主様達と同じ場所にしようかの』
もうアルド達は男子会を始めているだろうとの事なので、問題は無いらしい。当のフェリーテの姿が港に見えないのは、彼女もそれなりにお洒落をしているなのだろうか。
最初に港を訪れたのはヴァジュラだった。さっきまで倒れ込んでいたと思えない程に素晴らしい到着ぶりで、集合時間は特に決まっていなかったが、それにしても早すぎる。それは何故かと言えば偏にお洒落というモノへの理解力が欠如しているからだろう。もっと言えば、ヴァジュラには自由に服を着替えるという発想が無かった。何故って、以前のヴァジュラにそんな自由は無かったから。
それはアルドに助けられてからも変わっておらず、今回もいつもの様に動きやすい庶民的……というより、あまりにも簡素過ぎて奴隷的にすら見える服装でここに居る。これから来る面子がどういう服装で来るかを考慮すると、あまりにも場違いな気すらしてくるが……彼女がそれを知るのは、もう一人が来てからの事である。
「お待たせしました。……あらヴァジュラ、早いですね」
「あ、ファーカ……ってそれ」
普段から現実離れしている彼女の容姿は、今回に限ってそんな事は無かった。今のファーカを言い表すならば、まるで超常の存在が現実に紛れているかのようで、離れてはいないが、明らかに輝きが違っている。そのドレスの色から彼女も一応抑えている事が分かるが、だからどうしたという話だ。今のファーカには色の関係か落ち着いているような雰囲気が見受けられて、また違った魅力が生まれている。
抑え込もうと、ある個所を押したら、別の個所が突出してしまったような―――そんな感じである。
「フフ、似合いますか? チロチンに選んでもらったのだけど」
「……うん、凄く、似合ってる」
お世辞ではない。心なしかいつもより口調が大人びている気もするし、その言葉を聞いた時の微笑みも、何処か気品がある。
「ヴァジュラは着替えてこなかったの? 何だかいつもと同じような服みたい……まあ、間違えようが無いのだけれど」
「あ、その……恥ずかしい話だけど、僕、そういうの分からなくて。それに、同じような服の替えしか持ってないし」
何となく気後れ。ファーカは手で口元を遮りながら、目を丸くして驚いていた。
「嘘……女の子って、普通は一着くらいは持ってるモノだと思っていましたが、ヴァジュラが例外何て少し意外ですね。『狼』って欲が旺盛なイメージがあるから、全く想像できませんでした」
「う、悪かったね」
「いえ、そういう在り方もまた一つの美しさだと私は思いますよ。自然体というモノは、男性も少なからず女性に求めると聞きますし」
決してファーカにそのつもりが無かったとしても、それでも若干の惨めさを感じずには居られない。だって他でもないファーカが一番お洒落をしているのだから。まだ誰も来ていないのにどうして一番お洒落をしているのかと決めつけるかって? 決まってる。他の者がしてくる訳が無いからだ。メグナはともかく、特にフェリーテは服装など変えようも無いというか、その辺り……変な拘りを持っていそうだし―――
「お…………お、お待たせ、じゃ」
まるで自分の口調で無いかのようにそう言うフェリーテは、ヴァジュラが知るような恰好では無かった。
いつもの着物や浴衣(和装というらしい)はどうしたのか、ノースリーブの服とスカートを見事に着こなしている。また、それに合わせるように髪型も変えたようで、いつものストレートとは違って、今回は髪を後ろで一本に束ねている。
最初に見た時の印象は、ずばり『誰か分からなかった』という他ない。あまりにもあの格好が脳裏に染みついているからか、フェリーテと合致しない。彼女の独特な口調が無ければ、恐らく新しいナイツか誰かと勘違いして名前を尋ねていたかもしれない。
「な、何じゃ……笑っても良いんじゃぞ?」
…………笑えない。想像以上に、似合っている。
フェリーテは顔を真っ赤にしながら身を震わせているが、一つ言わせて頂きたい。そんな服を持っているのに、一体全体どうして今まで着なかったのかと。
もうアルド達は男子会を始めているだろうとの事なので、問題は無いらしい。当のフェリーテの姿が港に見えないのは、彼女もそれなりにお洒落をしているなのだろうか。
最初に港を訪れたのはヴァジュラだった。さっきまで倒れ込んでいたと思えない程に素晴らしい到着ぶりで、集合時間は特に決まっていなかったが、それにしても早すぎる。それは何故かと言えば偏にお洒落というモノへの理解力が欠如しているからだろう。もっと言えば、ヴァジュラには自由に服を着替えるという発想が無かった。何故って、以前のヴァジュラにそんな自由は無かったから。
それはアルドに助けられてからも変わっておらず、今回もいつもの様に動きやすい庶民的……というより、あまりにも簡素過ぎて奴隷的にすら見える服装でここに居る。これから来る面子がどういう服装で来るかを考慮すると、あまりにも場違いな気すらしてくるが……彼女がそれを知るのは、もう一人が来てからの事である。
「お待たせしました。……あらヴァジュラ、早いですね」
「あ、ファーカ……ってそれ」
普段から現実離れしている彼女の容姿は、今回に限ってそんな事は無かった。今のファーカを言い表すならば、まるで超常の存在が現実に紛れているかのようで、離れてはいないが、明らかに輝きが違っている。そのドレスの色から彼女も一応抑えている事が分かるが、だからどうしたという話だ。今のファーカには色の関係か落ち着いているような雰囲気が見受けられて、また違った魅力が生まれている。
抑え込もうと、ある個所を押したら、別の個所が突出してしまったような―――そんな感じである。
「フフ、似合いますか? チロチンに選んでもらったのだけど」
「……うん、凄く、似合ってる」
お世辞ではない。心なしかいつもより口調が大人びている気もするし、その言葉を聞いた時の微笑みも、何処か気品がある。
「ヴァジュラは着替えてこなかったの? 何だかいつもと同じような服みたい……まあ、間違えようが無いのだけれど」
「あ、その……恥ずかしい話だけど、僕、そういうの分からなくて。それに、同じような服の替えしか持ってないし」
何となく気後れ。ファーカは手で口元を遮りながら、目を丸くして驚いていた。
「嘘……女の子って、普通は一着くらいは持ってるモノだと思っていましたが、ヴァジュラが例外何て少し意外ですね。『狼』って欲が旺盛なイメージがあるから、全く想像できませんでした」
「う、悪かったね」
「いえ、そういう在り方もまた一つの美しさだと私は思いますよ。自然体というモノは、男性も少なからず女性に求めると聞きますし」
決してファーカにそのつもりが無かったとしても、それでも若干の惨めさを感じずには居られない。だって他でもないファーカが一番お洒落をしているのだから。まだ誰も来ていないのにどうして一番お洒落をしているのかと決めつけるかって? 決まってる。他の者がしてくる訳が無いからだ。メグナはともかく、特にフェリーテは服装など変えようも無いというか、その辺り……変な拘りを持っていそうだし―――
「お…………お、お待たせ、じゃ」
まるで自分の口調で無いかのようにそう言うフェリーテは、ヴァジュラが知るような恰好では無かった。
いつもの着物や浴衣(和装というらしい)はどうしたのか、ノースリーブの服とスカートを見事に着こなしている。また、それに合わせるように髪型も変えたようで、いつものストレートとは違って、今回は髪を後ろで一本に束ねている。
最初に見た時の印象は、ずばり『誰か分からなかった』という他ない。あまりにもあの格好が脳裏に染みついているからか、フェリーテと合致しない。彼女の独特な口調が無ければ、恐らく新しいナイツか誰かと勘違いして名前を尋ねていたかもしれない。
「な、何じゃ……笑っても良いんじゃぞ?」
…………笑えない。想像以上に、似合っている。
フェリーテは顔を真っ赤にしながら身を震わせているが、一つ言わせて頂きたい。そんな服を持っているのに、一体全体どうして今まで着なかったのかと。
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