ワルフラーン ~廃れし神話
英雄は気付かない
我が最愛の主は、もう一つの事実に気付く事なく、フルノワ大帝国を後にした。後に残ったのは犠牲となった民の死体と、僅かばかりの命だけ。その命さえも、果たしてアルドに感謝をしているのかと言えば、そういう事でも無い。むしろアルドの事を恨む者は多く、城内を歩いていてもその様子はひしひしと感じる。
「アイツがもっと早く来てくれれば……俺の妻は、死ななかったんだ……」
「やはりあんな男を魔王にしたのは間違いだったか…………」
「民を守るのが王の務めだろうに…………」
あまりにも身勝手な発言に、思わず手が出てしまうのをグッと堪える。アルドが今、どんな状態で挑んでいるのかも知らない癖に、よくもまあここまで好き勝手な事が言える。いや、知らないからこそ、か。民は完璧な魔王を求めているからこそ、およそ完璧とは言い難いアルドに文句をつけている。今までもずっと、これからもずっと。目の前で言う勇気も度胸も無い癖に、当人が居なくなった途端にこれだ。自分達は少々環境が違ったとはいえ、彼らのようなモノと同族である事実は、恥以外の何物でもない。
アルドは自分に命を与えてくれた。只の亡骸だった自分に、魂を吹き込んでくれた。
アルドは魔人に希望を与えてくれた。もしかしたら大陸を奪還する事が出来るかもしれないという希望を。そして彼を見放した以上、最早人間に勝ち目はなく、今度こそは永久に頂点に立てるかもしれないという夢を与えてくれた。
それなのに、こんな仕打ちはあんまりだ。彼は『まあ……事実だな。私がもう少し早く目を向けていれば、もしかすれば未然に防げたかもしれない。そんな事を言われてしまっても、仕方ないだろう。特に大切な者を失った奴にはな』等と言ってあまり気にしない風を装って誤魔化すだろうが……報われなさ過ぎる。彼が何をしたというのだ。
「クソ骸骨!」
階段を上り、謁見の間へと足を踏み入れる。内部では待ちかねた様子の『蛇』が、蜷局を巻きながら『鹿』の魔人に槍を突き付けていた。
霊槍『縹華』は、魂を燃料とする槍で、殺した存在の魂を抜き取る事が出来る。更に槍としての形状も彼女が好んでいるからそうなっているだけで、実際はあらゆる形に変幻させる事が出来ると、これまた便利な武器だ。ただし変形の精度と大きさは抜き取った魂の数に比例する。
「遅いわよ、何やってたのッ」
「大変不本意ながら貴様の命令を聞いて、確認しに行った訳だんが、文句は?」
姿は見えていない筈だが、『蛇』はしっかりとこちらの両目を見据えて話しかけている。いつその槍の向く先が変わってもおかしくは無いが、流石にそこの『鹿』の魔人の罪を忘れてまで自分と戦う彼女ではない。彼女の隣―――『鹿』の魔人の眼前まで移動すると、自分もまた、彼に斧槍を突き付ける。
「で、結果は?」
「うんむ、やはりというべきか案の定と言うべきんか……町の水路は、確かに魔術の陣を組んでいた……意思扇動の魔術、『煽能』がな」
不可視の刃に、魂をも穿つ最強の槍が、『鹿』の魔人を追い詰めているこの状況、逃げようと思っても逃げられる訳が無い。自分の言葉を聞いた『蛇』が、額に青筋を浮かべながら、『鹿』の喉元を軽く切り裂いた。血が滴る。
「言い訳した所で私は絶対に許さないけど、ま、理由は聞いてあげるわ。アンタなんでしょ、陣を組んだの」
「……ああ、しかし、何故気付いた。吾は誰にも気づかれぬよう、細心の注意を払ったというのに」
あっさりと罪を認めて降伏する『鹿』。確かにそれは自分も気になった。カテドラル・ナイツ最強たる自分でさえも気付かなかった事に、どうして『蛇』が気付いたのか。メグナは得意げな顔を浮かべてこちらに自慢をするでもなく、額に青筋を浮かべながら、淡白に答える。その槍の切っ先がブレる事は無い。
「……私ね、ちょっと特殊な場所に触れたせいで、悪意が見えるようになっちゃったの。だから城下町を見た時はびっくりしたわ。まさか首都全体が悪意で覆われてるなんて。まあその犯人はついさっき、アルド様が見つけちゃったみたいだけど、悪意はまだ消え去ってなかった。そしてその悪意は水路に沿って、漂っていた」
成程、そういう事だったか。見えていない筈の自分をしっかりと捕捉できるのも、音とそれによるモノと見て間違いは無いだろう。体温感知の線は、そもそも『骸』に体温が存在しない事から排除出来る。
「全体的な形は分からなかったけど、魔法陣が使われている事は直ぐに分かった。だから私とクソ骸骨は、使われているだろう魔法陣を書庫で探った。その結果が、さっきの言葉の通り、扇動だったって訳」
怒りを吐き出すかのように語る『蛇』の口調は、一音ずつが強烈で、その言葉すらも刃にしているかのように、目の前の『鹿』にぶつけている。ファーカもそうだが、ナイツの女性陣は気性の荒い荒くないが実に明確。
しかしその内に秘めている愛は誰もが一緒で、一度外に向けられれば、その愛の深さは人すら殺しうる殺意となる。
「もう言う必要は無いわよね。扇動の魔術を組んだって事は、アンタは大陸を奪還した後に反旗を翻す気だった……アルド様を裏切る気だった!」
今回の事件は、二重に発生していたのだ。まずはアルドが解決した、この国全体を覆う呪い。そして次に、国民の不満を引き出し、その不満を増長させる魔法陣。それは止めなければやがてアルドへと向けられる刃となる代物であり、普通に戦えば勝つ事は容易だろうが……アルドは魔人に必要とされたから魔王になった。必要とされなくなった事を知れば、彼は大人しく死を受け入れる可能性が非常に高い。『鹿』の魔人は、そこまで分かった上で魔法陣を組んだ。
絶対にバレない様に、もう一つの事件を盾にして。
「大量の死体のせいでアルド様はその事に気付かなかったのだろうん。それにアルド様が探していた場所にそういう本は無かった。だから気付かなかったのも無理が無い―――が、そもそもこれは私の部下である貴様が犯した罪。私とメグナが気付かなければならなかったん事だ」
「……ふっむ。ナイツを調査していれば、こんな事にはならなかったと」
「それも無理よ。ナイツの全てを知っているのはアルド様のみ。外部の者が情報を探ったとしても、チロチンの流してる情報を掴まされちゃうでしょうし」
「どちらにしても貴様は反逆を企てた時点で失敗していたという事だ。貴様にどんな事情があってそんな愚かな事を考えたかは知らぬが、何であろうるともアルド様を裏切る事は許さん。覚悟する事だ」
自分達はアルド程優しくはない。理由を尋ねてその事情を理解するような余裕はない。この男はアルドを裏切った。只その事実だけが二人の脳内を埋め尽くして、今に至っている。
ここで終わりだ。反逆の芽も、この事件も。
『骸』が斧槍を振りかぶった時、『鹿』がポツリと呟いた。
「―――お前達には分からぬだろうな。息子を失った悲しみというモノは」
「……遺言か?」
「たった一人の人間に殺された、なんて。屈辱以外の何物でもない。お前達のような若造には分かるまいが、これでも我の息子は強かったのだぞ。なのに、たった一人の人間に殺されて、やがて戦争はその若者の存在一つで全て覆り、我々は敗北した。空しかったさ。悔しかったさ。阿呆らしかったさ。お前達も魔人の端くれであれば、吾の気持ちは理解できるのではないか? お前達も、思い返してみればきっと―――」
「無いな」
「無いわね」
数秒の延命。聞く必要も無い言葉だった。しかし、その言葉だけは、否定しなければならなかった。
「アルド様は私を助けてくれたわ。私の声に唯一応じてくれた。人間も家族も信じられなかった私を、ずっと信じてくれた。私が裏切ってしまった時も、そのせいで私が死にかけても、それでもアルド様は私を信じてくれた。好きだって言ってくれた。確かにアルド様は人間側の英雄だったかもしれない。でも、大事なのは昔じゃなくて、今。アルド様は確かに私の傍に居て、声を聞かせてくれて、微笑みかけてくれて、愛してくれる。それだけで私は全てを……赦せる」
戦争に参加していないから言える言葉。そう言われても仕方ないのかもしれない。だが戦争に参加していなかったからこそ、『蛇』は彼の優しさに触れる事が出来た。彼の美しさを知る事が出来た。
それは容姿や身分、権威だけでは獲得できない何か。容姿だけで言えば、上は幾らでも居る。身分で言っても、権威で言っても、それは同じ。
それでも『蛇』はアルドを選んだ。その魂に心を奪われて。
「子供が居ない以上、我々が貴様の気持ちを理解する事は出来ないだろう。戦争にも参加していないからな。だがこれだけは言える。種族の差別程愚かなモノは無いとなん。戦いだって同じだ、剣を交えれば分かる事だってある。たった一人の人間に殺された事が、屈辱以外の何物でもない? あれ程の力と意志を持つモノと剣を交えて、貴様の息子は本当にそう思っていたのんか? 貴様の息子が真っ当な戦士だったのであれば、むしろ誇らしいとすら思っていたのではないのんか? 仮にそう思っていた場合、貴様は都合の良い理由を作っただけに過ぎなくなる」
「仮に……吾の思った通り、息子が屈辱を感じていたのであれば?」
『骸』が大きく斧槍を振りかぶると、『鹿』は静かに目を閉じた。遺言はもう無い。そうこちらに語りかけるように。
「死人は何も喋らないん。喋っているのは生者であるお前だけだ。どっちにしてもお前は、たった一人の魔人に殺された息子の存在そのものを屈辱と感じて、アルド様に復讐しようとしただけに過ぎない。一つだけ良い事を教えてやるから聞くといい。どんな事情があれ、何かを殺した責任は決して死人に押し付けて良いモノじゃない。貴様の息子がどう思っていても、お前はきっと同じ事をした。そんな男の気持ちなんて―――分かりたくも無いし、知りたくも無い」
生死の境を断ち切って、その魂、地獄へ落とさん。
愚かな反逆者へ手向けるように、斧槍が振り下ろされた。
ここは何処でも無い森の中。ただし、アルドにとってはここにしかない大切な場所。ここには大陸の法を変えてまで自分を愛してくれた少女、エニーア・フランシアが眠っている。墓標に粗末な品は使えないという事で、アルドは宝物庫からかつて自分が使っていた剣を使用した。下手な高級品よりも、彼女はきっと喜んでくれると思うのだが、どうだろうか。
「……エニーア」
ツェート達には船の方に先に戻ってもらっている。邪魔という訳ではないが、彼女の事を考えると、他の人が居るよりは二人きりの方が良いだろうと思ったから。
アルドは墓を傍らに、その場に座り込む。今日は風が吹いていないからか、妙に気分も後ろ向きになる。
「……すまない。お前の国で、死人を出してしまった。もうめちゃくちゃだ。犯人は死んだ、呪いは消えた。でも、死んだ人達は戻ってこない。私はどうすればよかったんだ。どうすれば一人の犠牲も出さずに救えたんだ。私はどうすれば完璧になれたんだ」
頭を抱え込んで、意識を塞ぐ。何も言われなくても分かっている。生きている民達の非難するような視線、責めるような視線。必要としていない雰囲気。誰も何も言わない。でもその視線は全てアルドに注がれていた。
「完璧でない魔王なんて要らない。私は守らなくてはいけないのに、大陸を奪還しなければならないのに、一体全体どうしてこんな……私はどうしてこんなに弱いんだ。どうしてこんなに失敗してしまうんだ」
不要。弱い。失敗。そんな言葉を言われない為に、アルドは今までを過ごしてきた筈。その筈なのに―――これでは何も変わっていないじゃないか。確かに犯人には勝った。だが民はアルドを許さないだろう。こんなに人々を犠牲にして。
そもそも犯人である彼だって、自分がキリーヤを追放しなければこんな事はしなかった。では追放しなければ良かったのかと言われれば、きっと違う。だけど正解は確実にあった筈だ。見えていなかっただけで。
「出来ない事をやり遂げるのが英雄の筈。民を守るのが王の筈。今回も同じだ。ナイツを助けた時と何も変わっていない。まだ努力が足りなかったのか? 私は全力で……いや、頑張っていれば、他の者があのような視線をぶつけるのか……?」
分からない。分かりたくない。この複雑に絡み合う思考の先にある答えを知っているから。でもその答えを導き出してしまうという事は、自分の今までの全てを否定する事と同じ事。でもこの思考を処理しなければ、この想いを抱え続ける事になる。
目を塞ぎ、意識を閉ざし、思考を消去する。もう考えなくていい。思考の処理何てしない。自分は思考を放棄する。大丈夫だ、抱える事には慣れている。耐えればいいだけ。大陸を奪還する日まで―――
「ダメでしょ、アルド! 貴方がそんな風じゃ、誰も付いてこなくなるわよ!」
そんな声に叩き起こされて、反射的に頭を上げる。目の前に居たのは確かに、死んだ筈のエニーアだった。
「え…………エニー……ア?」
どういう事だ? 彼女は死んだ筈。死者を蘇生させるような道具は所持した事も無いし、ではこれは……夢? それにしては妙な現実感があるような。
「どうしてここに……?」
「私の命はアルドのモノよ? アルドの事はいっつも見てるんだからッ!」
口調にしろ、言動にしろ、まるっきり彼女だ。その服装は殺した時のままである事も考えると、誰かの変装であるとは考えづらい。とはいえ、未だ信じる事が出来ないのが、正直な所。
「いや、流石に嘘だろ。だってお前はもう―――」
「細かい事は気にしないで。今日はアルドが珍しく落ち込んでるから、励ましてあげようかなって思っただけ」
「励まし……いや、私は落ち込んでなど」
「落ち込んでるでしょ? アルドの顔、凄く酷いもの。泣いてないのが不思議なくらい。ここには私しか居ないんだし、泣いても、罰は当たらないんじゃないの?」
「……放っておけ。私は落ち込んでいない」
「むー、まあアルドがそこまで言うんだったら、そういう事にしておくけど、じゃあ落ち込んでるって前提で話すわね」
アルドと肩を並べるように、エニーアもまた座り込む。墓標を挟んで隣り合う二人は、少女の手に応じて、手を繋いだ。
「ねえアルド、貴方は完璧を求めてるみたいだけど、そんな王様居ないわよ。どうしてそこまで気にするの?」
「居なかったとしても、完璧を追及するのは当たり前だ。希望とはそうでなくてはな。欠陥があったら不安が生まれる。不安が生まれれば絶望が生まれる。それは困るだろう」
「……確かに困るけど、じゃあこの世界に一度でも希望が生まれた事はあった? 不安の無い時なんてあった?」
「無い……が」
それでも、自分が完璧でなかったからあんな視線がある訳で。やはり自分は完璧を求めなくては。
「ねえアルド。魔人も人も、とっても欲深いのよ。無いものばっかりねだって、無かったら何で無いんだと喚く。有るものには決して感謝しない。知ってるかしら?」
無言で頷くと、エニーアは少し言葉を考えてから続ける。
「それってね、本当に際限が無いの。何もかもを獲得しても、それでも粗を探して求めてしまう。そんな人々がいっぱい居るのがこの世界。ね、そんな人達を完璧に満足させる事って、出来ると思う?」
「出来ないな」
「そうね。きっと無理だわ。で、何が言いたいかっていうと、アルドはそれを自分にやっちゃってるの。自分で粗を探して、自分で改善して、それでもまだ粗を探して。ねえアルド、いつの間にかアルドも、有るものに目を向けてないんじゃない? だって、そうじゃなかったら悩むはずが無いもの」
「有るもの……私に一体何があると言うんだ。何も救えないこの強さか? 崩れかけているこの体か? 誰かの為にしか生きられない私に、有るモノなんて―――」
後ろ向きになりかけた思考を引っ張る様に、エニーアはこちらに近寄って、瞳の奥をじっと見つめてくる。二人きりの、この状況。余程嬉しいのか、彼女は常に柔らかい表情を浮かべている。
「あるでしょッ! 貴方が命を懸けてまで獲得した、最愛の何か。一人……ううん、複数人。私と同じくらい貴方を愛して、貴方がそれと同じくらい愛している者―――その人達に感謝した事、ある?」
彼女が言っているのは、きっと彼らの事だろう。どうして見抜けているのかは分からないが、命を懸けてと来れば間違いない。アルドは彼等の信頼を得る為に、何万回も殺された。
「感謝は……している。私のような人間を好きでいてくれるなんて、本当にありがた―――」
「違うわ。貴方はその人達に、『自分が必要かどうか』聞いた事あるの、って事。王様ってさ、確かに皆の言葉を聞かなくちゃいけない。でも、それは近くの人の言葉を無視する道理にはならない。アルドは、関わりの薄い大勢ばかり気にしちゃって、自分の事も深く知ってくれている人達を無意識に蔑ろにしちゃってる。だからアルドは、今悩んでる」
「…………蔑ろにしているつもりは無いんだが」
「してるわよ。貴方は完璧を求めすぎて、『完璧じゃなくても貴方が必要』って言葉を聞いてないもの。アルドは完璧を追及するのは当たり前って言ったけど、自分が持っているモノを聞いたら答えられなかった。それどころか自分の事、嘲った」
彼女の声が、少しだけ厳しくなった。まるで感情が不安定な子供を、叱りつけるように。
「……貴方がどんな状態でこの国に来たのかは分からない。けど、帰ったら聞いてみて? 完璧を求める大衆の声じゃなくて、貴方の事を見ている人達の声を。王様ってきっとそこから始まるんじゃないかしら。最初は小さな集団のリーダー。そこからどんどん進化していく。国だって最初から国じゃない。最初は集落の集まりか何かだった。そうでしょ?」
反論出来なかった。彼女の言葉には悪意がちっともない。まるで自分の心の底を覗いているかのように的確な発言ばかりで……何というか、驚いている。
少女の小さな手が、服に付けられたブローチを触る。
「私のブローチ。付けてくれたのね……嬉しいわ。ありがとう」
「あ、ああ…………―――ッ!」
エニーアはアルドの頬に優しくキスをして、照れくさそうに微笑んだ。思わず頬に手を伸ばしたが、やはり感触に、現実味がある。
「唇は、大切な人に取っておいてね! 私とアルドが結ばれる『いつか』は絶対に来る。私はそう信じてるから、今は頬にしておく……」
―――じゃあね、アルド! 私はずっと、貴方の事愛してるから!
反射的に頭が上がる。いつの間にか眠っていたようだ。目の前にエニーアは居ないし、傍らにはやはり墓標しかない。どれくらい眠っていたのだろうか。その時間によってはツェート達が探しに来てしまう恐れがある。彼女の部屋にあった髪飾りを手向けてから、アルドは素早く立ち上がり、森の外へと歩き出す。
あれは夢だったのか、それとも…………
風が、吹いている。
「アイツがもっと早く来てくれれば……俺の妻は、死ななかったんだ……」
「やはりあんな男を魔王にしたのは間違いだったか…………」
「民を守るのが王の務めだろうに…………」
あまりにも身勝手な発言に、思わず手が出てしまうのをグッと堪える。アルドが今、どんな状態で挑んでいるのかも知らない癖に、よくもまあここまで好き勝手な事が言える。いや、知らないからこそ、か。民は完璧な魔王を求めているからこそ、およそ完璧とは言い難いアルドに文句をつけている。今までもずっと、これからもずっと。目の前で言う勇気も度胸も無い癖に、当人が居なくなった途端にこれだ。自分達は少々環境が違ったとはいえ、彼らのようなモノと同族である事実は、恥以外の何物でもない。
アルドは自分に命を与えてくれた。只の亡骸だった自分に、魂を吹き込んでくれた。
アルドは魔人に希望を与えてくれた。もしかしたら大陸を奪還する事が出来るかもしれないという希望を。そして彼を見放した以上、最早人間に勝ち目はなく、今度こそは永久に頂点に立てるかもしれないという夢を与えてくれた。
それなのに、こんな仕打ちはあんまりだ。彼は『まあ……事実だな。私がもう少し早く目を向けていれば、もしかすれば未然に防げたかもしれない。そんな事を言われてしまっても、仕方ないだろう。特に大切な者を失った奴にはな』等と言ってあまり気にしない風を装って誤魔化すだろうが……報われなさ過ぎる。彼が何をしたというのだ。
「クソ骸骨!」
階段を上り、謁見の間へと足を踏み入れる。内部では待ちかねた様子の『蛇』が、蜷局を巻きながら『鹿』の魔人に槍を突き付けていた。
霊槍『縹華』は、魂を燃料とする槍で、殺した存在の魂を抜き取る事が出来る。更に槍としての形状も彼女が好んでいるからそうなっているだけで、実際はあらゆる形に変幻させる事が出来ると、これまた便利な武器だ。ただし変形の精度と大きさは抜き取った魂の数に比例する。
「遅いわよ、何やってたのッ」
「大変不本意ながら貴様の命令を聞いて、確認しに行った訳だんが、文句は?」
姿は見えていない筈だが、『蛇』はしっかりとこちらの両目を見据えて話しかけている。いつその槍の向く先が変わってもおかしくは無いが、流石にそこの『鹿』の魔人の罪を忘れてまで自分と戦う彼女ではない。彼女の隣―――『鹿』の魔人の眼前まで移動すると、自分もまた、彼に斧槍を突き付ける。
「で、結果は?」
「うんむ、やはりというべきか案の定と言うべきんか……町の水路は、確かに魔術の陣を組んでいた……意思扇動の魔術、『煽能』がな」
不可視の刃に、魂をも穿つ最強の槍が、『鹿』の魔人を追い詰めているこの状況、逃げようと思っても逃げられる訳が無い。自分の言葉を聞いた『蛇』が、額に青筋を浮かべながら、『鹿』の喉元を軽く切り裂いた。血が滴る。
「言い訳した所で私は絶対に許さないけど、ま、理由は聞いてあげるわ。アンタなんでしょ、陣を組んだの」
「……ああ、しかし、何故気付いた。吾は誰にも気づかれぬよう、細心の注意を払ったというのに」
あっさりと罪を認めて降伏する『鹿』。確かにそれは自分も気になった。カテドラル・ナイツ最強たる自分でさえも気付かなかった事に、どうして『蛇』が気付いたのか。メグナは得意げな顔を浮かべてこちらに自慢をするでもなく、額に青筋を浮かべながら、淡白に答える。その槍の切っ先がブレる事は無い。
「……私ね、ちょっと特殊な場所に触れたせいで、悪意が見えるようになっちゃったの。だから城下町を見た時はびっくりしたわ。まさか首都全体が悪意で覆われてるなんて。まあその犯人はついさっき、アルド様が見つけちゃったみたいだけど、悪意はまだ消え去ってなかった。そしてその悪意は水路に沿って、漂っていた」
成程、そういう事だったか。見えていない筈の自分をしっかりと捕捉できるのも、音とそれによるモノと見て間違いは無いだろう。体温感知の線は、そもそも『骸』に体温が存在しない事から排除出来る。
「全体的な形は分からなかったけど、魔法陣が使われている事は直ぐに分かった。だから私とクソ骸骨は、使われているだろう魔法陣を書庫で探った。その結果が、さっきの言葉の通り、扇動だったって訳」
怒りを吐き出すかのように語る『蛇』の口調は、一音ずつが強烈で、その言葉すらも刃にしているかのように、目の前の『鹿』にぶつけている。ファーカもそうだが、ナイツの女性陣は気性の荒い荒くないが実に明確。
しかしその内に秘めている愛は誰もが一緒で、一度外に向けられれば、その愛の深さは人すら殺しうる殺意となる。
「もう言う必要は無いわよね。扇動の魔術を組んだって事は、アンタは大陸を奪還した後に反旗を翻す気だった……アルド様を裏切る気だった!」
今回の事件は、二重に発生していたのだ。まずはアルドが解決した、この国全体を覆う呪い。そして次に、国民の不満を引き出し、その不満を増長させる魔法陣。それは止めなければやがてアルドへと向けられる刃となる代物であり、普通に戦えば勝つ事は容易だろうが……アルドは魔人に必要とされたから魔王になった。必要とされなくなった事を知れば、彼は大人しく死を受け入れる可能性が非常に高い。『鹿』の魔人は、そこまで分かった上で魔法陣を組んだ。
絶対にバレない様に、もう一つの事件を盾にして。
「大量の死体のせいでアルド様はその事に気付かなかったのだろうん。それにアルド様が探していた場所にそういう本は無かった。だから気付かなかったのも無理が無い―――が、そもそもこれは私の部下である貴様が犯した罪。私とメグナが気付かなければならなかったん事だ」
「……ふっむ。ナイツを調査していれば、こんな事にはならなかったと」
「それも無理よ。ナイツの全てを知っているのはアルド様のみ。外部の者が情報を探ったとしても、チロチンの流してる情報を掴まされちゃうでしょうし」
「どちらにしても貴様は反逆を企てた時点で失敗していたという事だ。貴様にどんな事情があってそんな愚かな事を考えたかは知らぬが、何であろうるともアルド様を裏切る事は許さん。覚悟する事だ」
自分達はアルド程優しくはない。理由を尋ねてその事情を理解するような余裕はない。この男はアルドを裏切った。只その事実だけが二人の脳内を埋め尽くして、今に至っている。
ここで終わりだ。反逆の芽も、この事件も。
『骸』が斧槍を振りかぶった時、『鹿』がポツリと呟いた。
「―――お前達には分からぬだろうな。息子を失った悲しみというモノは」
「……遺言か?」
「たった一人の人間に殺された、なんて。屈辱以外の何物でもない。お前達のような若造には分かるまいが、これでも我の息子は強かったのだぞ。なのに、たった一人の人間に殺されて、やがて戦争はその若者の存在一つで全て覆り、我々は敗北した。空しかったさ。悔しかったさ。阿呆らしかったさ。お前達も魔人の端くれであれば、吾の気持ちは理解できるのではないか? お前達も、思い返してみればきっと―――」
「無いな」
「無いわね」
数秒の延命。聞く必要も無い言葉だった。しかし、その言葉だけは、否定しなければならなかった。
「アルド様は私を助けてくれたわ。私の声に唯一応じてくれた。人間も家族も信じられなかった私を、ずっと信じてくれた。私が裏切ってしまった時も、そのせいで私が死にかけても、それでもアルド様は私を信じてくれた。好きだって言ってくれた。確かにアルド様は人間側の英雄だったかもしれない。でも、大事なのは昔じゃなくて、今。アルド様は確かに私の傍に居て、声を聞かせてくれて、微笑みかけてくれて、愛してくれる。それだけで私は全てを……赦せる」
戦争に参加していないから言える言葉。そう言われても仕方ないのかもしれない。だが戦争に参加していなかったからこそ、『蛇』は彼の優しさに触れる事が出来た。彼の美しさを知る事が出来た。
それは容姿や身分、権威だけでは獲得できない何か。容姿だけで言えば、上は幾らでも居る。身分で言っても、権威で言っても、それは同じ。
それでも『蛇』はアルドを選んだ。その魂に心を奪われて。
「子供が居ない以上、我々が貴様の気持ちを理解する事は出来ないだろう。戦争にも参加していないからな。だがこれだけは言える。種族の差別程愚かなモノは無いとなん。戦いだって同じだ、剣を交えれば分かる事だってある。たった一人の人間に殺された事が、屈辱以外の何物でもない? あれ程の力と意志を持つモノと剣を交えて、貴様の息子は本当にそう思っていたのんか? 貴様の息子が真っ当な戦士だったのであれば、むしろ誇らしいとすら思っていたのではないのんか? 仮にそう思っていた場合、貴様は都合の良い理由を作っただけに過ぎなくなる」
「仮に……吾の思った通り、息子が屈辱を感じていたのであれば?」
『骸』が大きく斧槍を振りかぶると、『鹿』は静かに目を閉じた。遺言はもう無い。そうこちらに語りかけるように。
「死人は何も喋らないん。喋っているのは生者であるお前だけだ。どっちにしてもお前は、たった一人の魔人に殺された息子の存在そのものを屈辱と感じて、アルド様に復讐しようとしただけに過ぎない。一つだけ良い事を教えてやるから聞くといい。どんな事情があれ、何かを殺した責任は決して死人に押し付けて良いモノじゃない。貴様の息子がどう思っていても、お前はきっと同じ事をした。そんな男の気持ちなんて―――分かりたくも無いし、知りたくも無い」
生死の境を断ち切って、その魂、地獄へ落とさん。
愚かな反逆者へ手向けるように、斧槍が振り下ろされた。
ここは何処でも無い森の中。ただし、アルドにとってはここにしかない大切な場所。ここには大陸の法を変えてまで自分を愛してくれた少女、エニーア・フランシアが眠っている。墓標に粗末な品は使えないという事で、アルドは宝物庫からかつて自分が使っていた剣を使用した。下手な高級品よりも、彼女はきっと喜んでくれると思うのだが、どうだろうか。
「……エニーア」
ツェート達には船の方に先に戻ってもらっている。邪魔という訳ではないが、彼女の事を考えると、他の人が居るよりは二人きりの方が良いだろうと思ったから。
アルドは墓を傍らに、その場に座り込む。今日は風が吹いていないからか、妙に気分も後ろ向きになる。
「……すまない。お前の国で、死人を出してしまった。もうめちゃくちゃだ。犯人は死んだ、呪いは消えた。でも、死んだ人達は戻ってこない。私はどうすればよかったんだ。どうすれば一人の犠牲も出さずに救えたんだ。私はどうすれば完璧になれたんだ」
頭を抱え込んで、意識を塞ぐ。何も言われなくても分かっている。生きている民達の非難するような視線、責めるような視線。必要としていない雰囲気。誰も何も言わない。でもその視線は全てアルドに注がれていた。
「完璧でない魔王なんて要らない。私は守らなくてはいけないのに、大陸を奪還しなければならないのに、一体全体どうしてこんな……私はどうしてこんなに弱いんだ。どうしてこんなに失敗してしまうんだ」
不要。弱い。失敗。そんな言葉を言われない為に、アルドは今までを過ごしてきた筈。その筈なのに―――これでは何も変わっていないじゃないか。確かに犯人には勝った。だが民はアルドを許さないだろう。こんなに人々を犠牲にして。
そもそも犯人である彼だって、自分がキリーヤを追放しなければこんな事はしなかった。では追放しなければ良かったのかと言われれば、きっと違う。だけど正解は確実にあった筈だ。見えていなかっただけで。
「出来ない事をやり遂げるのが英雄の筈。民を守るのが王の筈。今回も同じだ。ナイツを助けた時と何も変わっていない。まだ努力が足りなかったのか? 私は全力で……いや、頑張っていれば、他の者があのような視線をぶつけるのか……?」
分からない。分かりたくない。この複雑に絡み合う思考の先にある答えを知っているから。でもその答えを導き出してしまうという事は、自分の今までの全てを否定する事と同じ事。でもこの思考を処理しなければ、この想いを抱え続ける事になる。
目を塞ぎ、意識を閉ざし、思考を消去する。もう考えなくていい。思考の処理何てしない。自分は思考を放棄する。大丈夫だ、抱える事には慣れている。耐えればいいだけ。大陸を奪還する日まで―――
「ダメでしょ、アルド! 貴方がそんな風じゃ、誰も付いてこなくなるわよ!」
そんな声に叩き起こされて、反射的に頭を上げる。目の前に居たのは確かに、死んだ筈のエニーアだった。
「え…………エニー……ア?」
どういう事だ? 彼女は死んだ筈。死者を蘇生させるような道具は所持した事も無いし、ではこれは……夢? それにしては妙な現実感があるような。
「どうしてここに……?」
「私の命はアルドのモノよ? アルドの事はいっつも見てるんだからッ!」
口調にしろ、言動にしろ、まるっきり彼女だ。その服装は殺した時のままである事も考えると、誰かの変装であるとは考えづらい。とはいえ、未だ信じる事が出来ないのが、正直な所。
「いや、流石に嘘だろ。だってお前はもう―――」
「細かい事は気にしないで。今日はアルドが珍しく落ち込んでるから、励ましてあげようかなって思っただけ」
「励まし……いや、私は落ち込んでなど」
「落ち込んでるでしょ? アルドの顔、凄く酷いもの。泣いてないのが不思議なくらい。ここには私しか居ないんだし、泣いても、罰は当たらないんじゃないの?」
「……放っておけ。私は落ち込んでいない」
「むー、まあアルドがそこまで言うんだったら、そういう事にしておくけど、じゃあ落ち込んでるって前提で話すわね」
アルドと肩を並べるように、エニーアもまた座り込む。墓標を挟んで隣り合う二人は、少女の手に応じて、手を繋いだ。
「ねえアルド、貴方は完璧を求めてるみたいだけど、そんな王様居ないわよ。どうしてそこまで気にするの?」
「居なかったとしても、完璧を追及するのは当たり前だ。希望とはそうでなくてはな。欠陥があったら不安が生まれる。不安が生まれれば絶望が生まれる。それは困るだろう」
「……確かに困るけど、じゃあこの世界に一度でも希望が生まれた事はあった? 不安の無い時なんてあった?」
「無い……が」
それでも、自分が完璧でなかったからあんな視線がある訳で。やはり自分は完璧を求めなくては。
「ねえアルド。魔人も人も、とっても欲深いのよ。無いものばっかりねだって、無かったら何で無いんだと喚く。有るものには決して感謝しない。知ってるかしら?」
無言で頷くと、エニーアは少し言葉を考えてから続ける。
「それってね、本当に際限が無いの。何もかもを獲得しても、それでも粗を探して求めてしまう。そんな人々がいっぱい居るのがこの世界。ね、そんな人達を完璧に満足させる事って、出来ると思う?」
「出来ないな」
「そうね。きっと無理だわ。で、何が言いたいかっていうと、アルドはそれを自分にやっちゃってるの。自分で粗を探して、自分で改善して、それでもまだ粗を探して。ねえアルド、いつの間にかアルドも、有るものに目を向けてないんじゃない? だって、そうじゃなかったら悩むはずが無いもの」
「有るもの……私に一体何があると言うんだ。何も救えないこの強さか? 崩れかけているこの体か? 誰かの為にしか生きられない私に、有るモノなんて―――」
後ろ向きになりかけた思考を引っ張る様に、エニーアはこちらに近寄って、瞳の奥をじっと見つめてくる。二人きりの、この状況。余程嬉しいのか、彼女は常に柔らかい表情を浮かべている。
「あるでしょッ! 貴方が命を懸けてまで獲得した、最愛の何か。一人……ううん、複数人。私と同じくらい貴方を愛して、貴方がそれと同じくらい愛している者―――その人達に感謝した事、ある?」
彼女が言っているのは、きっと彼らの事だろう。どうして見抜けているのかは分からないが、命を懸けてと来れば間違いない。アルドは彼等の信頼を得る為に、何万回も殺された。
「感謝は……している。私のような人間を好きでいてくれるなんて、本当にありがた―――」
「違うわ。貴方はその人達に、『自分が必要かどうか』聞いた事あるの、って事。王様ってさ、確かに皆の言葉を聞かなくちゃいけない。でも、それは近くの人の言葉を無視する道理にはならない。アルドは、関わりの薄い大勢ばかり気にしちゃって、自分の事も深く知ってくれている人達を無意識に蔑ろにしちゃってる。だからアルドは、今悩んでる」
「…………蔑ろにしているつもりは無いんだが」
「してるわよ。貴方は完璧を求めすぎて、『完璧じゃなくても貴方が必要』って言葉を聞いてないもの。アルドは完璧を追及するのは当たり前って言ったけど、自分が持っているモノを聞いたら答えられなかった。それどころか自分の事、嘲った」
彼女の声が、少しだけ厳しくなった。まるで感情が不安定な子供を、叱りつけるように。
「……貴方がどんな状態でこの国に来たのかは分からない。けど、帰ったら聞いてみて? 完璧を求める大衆の声じゃなくて、貴方の事を見ている人達の声を。王様ってきっとそこから始まるんじゃないかしら。最初は小さな集団のリーダー。そこからどんどん進化していく。国だって最初から国じゃない。最初は集落の集まりか何かだった。そうでしょ?」
反論出来なかった。彼女の言葉には悪意がちっともない。まるで自分の心の底を覗いているかのように的確な発言ばかりで……何というか、驚いている。
少女の小さな手が、服に付けられたブローチを触る。
「私のブローチ。付けてくれたのね……嬉しいわ。ありがとう」
「あ、ああ…………―――ッ!」
エニーアはアルドの頬に優しくキスをして、照れくさそうに微笑んだ。思わず頬に手を伸ばしたが、やはり感触に、現実味がある。
「唇は、大切な人に取っておいてね! 私とアルドが結ばれる『いつか』は絶対に来る。私はそう信じてるから、今は頬にしておく……」
―――じゃあね、アルド! 私はずっと、貴方の事愛してるから!
反射的に頭が上がる。いつの間にか眠っていたようだ。目の前にエニーアは居ないし、傍らにはやはり墓標しかない。どれくらい眠っていたのだろうか。その時間によってはツェート達が探しに来てしまう恐れがある。彼女の部屋にあった髪飾りを手向けてから、アルドは素早く立ち上がり、森の外へと歩き出す。
あれは夢だったのか、それとも…………
風が、吹いている。
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