ワルフラーン ~廃れし神話
王の凱旋 後編
「……」
言いたい事は色々あるし、彼奴が何でここにいるのかも気になるが、どうやら今はそれどころではなさそうだ。
現状を見るに、現在は劣勢。ナイツ達は相当消耗しているし、一方で騎士達が消耗しているかといえばそうではなく。むしろリューゼイの一声で更に士気は上がりそうだ…
そのリューゼイが重傷を負って動けなくなっていなければ、まず間違いなく彼等の勝利は決定していただろう。それを止めたのは銃を持った男だが、アルドは彼の事をよく知っている。そう時間は経っていない筈なのに何故ここに居るのかは不明だが、そんな距離の問題などはフェリーテも無視している。探求したい事でもないし、彼が来ていなければきっと手遅れになっていた。
アルドは空中から飛び降りて、リューゼイの前に着地する。丁度エインとリューゼイ……仮に同時にかかってこられたとしても対応できるような位置だ。
「……さて、リューゼイ。元々不利だった形勢は私の到着、そしてこいつの加勢で逆転されたようだな。どうする? 今撤退すれば私は手出しをするつもりはないが」
「ふざ……けるな! ここまで追い詰めたのだ、今更退く等それこそ屈辱の極みよ! もう約束などどうでもいい。魔人達を亡ぼせ!」
動けない隊長の命令など一体誰が聞くのだろうか。そこに権威は無く、信用はない。今の腑抜けた騎士団ならば猶更だ。一方的に叩きのめされただろうリューゼイの命令を聞くモノは誰一人として居なかった……どうしてそんな事が分かるか? 相手が相手だ、見なくても分かる。
「な、何をしている。行け、行けええええ!」
「一番強い筈のお前が一方的にやられたんだ、誰も私達に突っ込んではくるまい。そんな命を賭した猛攻が、今の騎士団に出来るとは思えないからな」
「勿論、俺達なら出来るけどな」
エインが話すたびに、どうしてだかアルドは嫌悪感を抱いているような表情を窺わせたが、やがて諦めた様に目を瞑って、言葉を続ける。
「……団長がやられたから攻めには行きたくないけど、恥を晒すのは嫌だから撤退もしたくない。そう思ってるのか?」
一旦言葉を切ったアルドは周囲を睨め回し、納得がいったように一人頷いた。
「過程はいいから結果が欲しいって奴か? ―――仕方ない。お前達がこのまま案山子のように突っ立っているというのなら、無理やり退去させるまでだ」
「へえ! アルドにそんな手段があるなんてなあ!」
アルドは聴覚を切って雑音を消し、黄金の剣を掲げた。言いたい事はたくさんあるが、今は彼らを強制退去させるのが先だ。
……そういえば、この剣の能力を使うのは初めてだったか。
皇が何度か使ったのを見た程度の知識しかないので、使いこなせるとは思わない。だが手順を思い出しゆっくりとやれば、必ず成功する筈だ。大丈夫、先程も言ったように彼らは攻め込めない。
「……王権発動」
掲げた刃を、渾身の力を込めて地面に突き立てる。直後、王剣を起点に魔法陣が展開。何処の言語かも分からぬ言語が円陣を満たし、紡ぎ、回転する。
「超越せしは我が理。聞くべき、世界の法よ。黄金郷より生まれし我らが剣が、汝に命ずる」
言語は解け、解放され、交差し、並行し、混合する。際限なく広がる黄金の輪はやがて万華鏡のように鮮やかな陣となった。
「疾く退けよ。疾く消えよ。ここに汝の存在はなし。ここに汝の居場所はなし。抗うな。万象は汝を拒絶しき。万象は汝を否定しき。それだけかもしれざるが、それが価値。拒絶されし汝の価値なり。観念せよ。許容せよ。それは世界の意志によりて行はる」
この剣の別名は禁界剣。世界を縛る『法』の剣。それは王にのみ許された最悪にして最高の、権威の剣。
「須臾にして始まり、永遠にして終はる。さあ、王の号令は下りき―――失せよ!」
それはまさに一瞬の出来事だった。何万と居たフルシュガイド軍の全てが、一人の例外なく、姿を消したのだ。黄金の剣を突き立てているアルドの目の前には、誰も居ない。その痕跡すらなかった。
「……『首椿姫』より自由な分、面倒な詠唱はついて回るか。破棄できないのが欠点だな」
魔術が使えない自分が言うのはおかしいが、極位や終位まで極めると、魔術を行使するにあたっては最早詠唱破棄は当たり前、という領域になってくる。詠唱するだけ馬鹿らしい、という奴だ。しかしながらこの剣の力を解放するには『~汝に命ずる』までの前文は必須。そこから能力を使い分けていくにはさらに追加で詠唱をしなければならないので、『影人』によってその境地に至ったアルドから言わせてもらうと、至極不便だったりする。
魔術よりかは詠唱は短いので助かるが、簡略も破棄も出来ないのは存外に辛いのだ。
「……さて、邪魔者は消えたな」
聴覚を戻した後、アルドは身を翻してナイツ達に向き合った。きっとチロチンを通してここに居ないナイツも見ているだろう。他の魔人達もきっと見ている。自分がやるべき事等ただ一つだ。
アルドは姿勢を正して、深々と頭を下げた。
「お前達……本当に―――申し訳なかった!」
「アルド様……!」
驚いてしまったのは『骸』の魔人、ルセルドラグだった。部下に頭を下げる指導者など何処にいると、非難する様に。
「私はお前達を置いていって人助けに行っていた。ああ行った、言い訳の余地はない。釈明することも無い……私がこの場所を離れなければ、こんな事にならずには済んだ。本当に、本当に―――すまなかった!」
アルドの声は震えていた。涙に濡れていると言い換えてもいい。ナイツの誰も、その顔を見た事が無かった。アルドが涙を流して……頭を下げている光景など。
「ア……ルド様………」
「………………アルド様……」
これはそう簡単な問題ではない。ナイツ達が許しても、魔人達が許さなければアルドは頭を上げるつもりは無かった。アルドは魔人の王。魔人達が王にふさわしくないとみなせばそれだけで王は機能しなくなる。
そして『王』の機能停止とは、即ち『アルド』という存在の意味の消失である。かつてギリギリの所でアルドを救ったのは『皇』だが、彼女が居なければ『アルド』という何かはきっと意味を成さなかった。それが今再び、引き起こされようとしている。
蚊帳の外に居るレンリーや気を失っているツェートには目もくれていない。それくらいアルドは本気でナイツ達と向き合っていた。
「……なあアルドよ。お前は何の為に魔王になったんだ?」
そんな状況を突破したのはエイン。初代『勝利』だった。
「……さっきから聞いているだけで気分が悪くなる。エインの真似なんかするんじゃねえよ執行者。アイツはもう死んだんだ、もうこれ以上冒涜すんじゃねえ」
頭を上げようとする様子はないが、言葉から滲む感情は殺気、憎悪、嫌悪。執行者に勝てない事などアルドも分かり切っている。だがそれでも、これ以上エインが冒涜されようものなら、アルドは直ぐにでも飛び掛かっただろう。
エインはアルドにとっての数少ない対等な『友人』であり、『先輩』だった。自分の気持ちを本当の意味で理解してくれていた人間で、だからこそアルドは彼に敬意を払っていた。敬意を払っていたからこそ、アルドは本人以上に侮辱を赦さない。
「……まあ悪かったよ。だがエインの核を回収した以上は、一応我はエインだ。そう呼んでくれなくても良いし、呼んでくれても構わない。だが我が言いたいのはそこではない。この者達では貴様は救えない。そんな者達を護っていていいのか、という話だ」
「何の話だ」
剣の執行者は発言に一切配慮しない事を悟らせたうえで続きを言う。
「こいつ等はお前の理解者だ。よく分かっている。特にそこの『妖』はな。だがそれだけだ。お前を理解しているだけで、こいつらではお前を救えない。お前は救われない。人間と同じだ、こいつらは。お前が奉仕しても、こいつらは何も返さない。そんな奴に頭を下げて、謝っていいのか? また、同じことが起こるぞ」
言いたい事はナイツ達も良く分かっていた。それはアルドにとっては忌々しく、魔人にとっては輝かしい記憶。あの事件が起きたからこそナイツ達はアルドと出会い、救われたのだから。
「……執行者」
アルドは一向に頭を上げようとしない。そればかりか額を強く地面に擦り付けてすらいる。しかしその声音を最小限に留めて、聞こえる相手を絞ったのは……アルド自身も、思う所があるという事である。
「そんな事は、私も良く分かっているんだよ。私は英雄だった頃と何も変わらない。この戦いの結末も、きっと―――どうせ―――だが」
「……だが?」
「私は殺されようとも魔王を続ける。そう誓ったんだ。『皇』とな。だから私の救いなどもう気にしなくていい。もう私も諦めているからな。それと―――私の目の前でこれ以上ナイツを侮辱するようなら、真理剣の向く先はお前へと変わるだろう。幾ら執行者と言えど好き勝手はしない事だな」
使い捨てられるのは慣れている。ナイツは違えど魔人までがそうとは限らない。ごく少数ではあるが、未だ自分を王とは認めていない魔人もいるのだし、同じ結末を迎える可能性はない訳ではない。
一応言っておくが、問題があるのはこちらだ。魔人は何も悪くない。元々騎士として生きていた自分が王など大層なご身分になっても、そう簡単に認められる訳が無いのだ。
何せ騎士とは人を助ける生き物。このように―――国を放って、人助けに出てしまう事もあるのだから。
アルドは顔を上げて、全員の顔を改めて見据えた。
「……侵攻は一時停止だ。私はこれから一年間、今まで奪還してきた大陸も含めて、内部の安定化に努める。そしてこの時より、ナイツには全ての切り札の開帳を許可する。殺したいと思うなら殺しに来い。私は一切危害を加えない。そして一年間無事に私が生き延びて、そして治安を安定化できたのなら―――もう一度だけ私を信用してほしい。頼む」
この言葉はきっと、チロチンを通して全ての魔人に伝わる。アイツはきっとやってくれる。これがアルドの出来る唯一の償い。崩れた信用を取り戻すための行動。
「―――そして、取りあえずはこの騒動の元凶も締め上げようか……空中で人が真面目に話しているのを見て、楽しかったか? サヤカ」
言いたい事は色々あるし、彼奴が何でここにいるのかも気になるが、どうやら今はそれどころではなさそうだ。
現状を見るに、現在は劣勢。ナイツ達は相当消耗しているし、一方で騎士達が消耗しているかといえばそうではなく。むしろリューゼイの一声で更に士気は上がりそうだ…
そのリューゼイが重傷を負って動けなくなっていなければ、まず間違いなく彼等の勝利は決定していただろう。それを止めたのは銃を持った男だが、アルドは彼の事をよく知っている。そう時間は経っていない筈なのに何故ここに居るのかは不明だが、そんな距離の問題などはフェリーテも無視している。探求したい事でもないし、彼が来ていなければきっと手遅れになっていた。
アルドは空中から飛び降りて、リューゼイの前に着地する。丁度エインとリューゼイ……仮に同時にかかってこられたとしても対応できるような位置だ。
「……さて、リューゼイ。元々不利だった形勢は私の到着、そしてこいつの加勢で逆転されたようだな。どうする? 今撤退すれば私は手出しをするつもりはないが」
「ふざ……けるな! ここまで追い詰めたのだ、今更退く等それこそ屈辱の極みよ! もう約束などどうでもいい。魔人達を亡ぼせ!」
動けない隊長の命令など一体誰が聞くのだろうか。そこに権威は無く、信用はない。今の腑抜けた騎士団ならば猶更だ。一方的に叩きのめされただろうリューゼイの命令を聞くモノは誰一人として居なかった……どうしてそんな事が分かるか? 相手が相手だ、見なくても分かる。
「な、何をしている。行け、行けええええ!」
「一番強い筈のお前が一方的にやられたんだ、誰も私達に突っ込んではくるまい。そんな命を賭した猛攻が、今の騎士団に出来るとは思えないからな」
「勿論、俺達なら出来るけどな」
エインが話すたびに、どうしてだかアルドは嫌悪感を抱いているような表情を窺わせたが、やがて諦めた様に目を瞑って、言葉を続ける。
「……団長がやられたから攻めには行きたくないけど、恥を晒すのは嫌だから撤退もしたくない。そう思ってるのか?」
一旦言葉を切ったアルドは周囲を睨め回し、納得がいったように一人頷いた。
「過程はいいから結果が欲しいって奴か? ―――仕方ない。お前達がこのまま案山子のように突っ立っているというのなら、無理やり退去させるまでだ」
「へえ! アルドにそんな手段があるなんてなあ!」
アルドは聴覚を切って雑音を消し、黄金の剣を掲げた。言いたい事はたくさんあるが、今は彼らを強制退去させるのが先だ。
……そういえば、この剣の能力を使うのは初めてだったか。
皇が何度か使ったのを見た程度の知識しかないので、使いこなせるとは思わない。だが手順を思い出しゆっくりとやれば、必ず成功する筈だ。大丈夫、先程も言ったように彼らは攻め込めない。
「……王権発動」
掲げた刃を、渾身の力を込めて地面に突き立てる。直後、王剣を起点に魔法陣が展開。何処の言語かも分からぬ言語が円陣を満たし、紡ぎ、回転する。
「超越せしは我が理。聞くべき、世界の法よ。黄金郷より生まれし我らが剣が、汝に命ずる」
言語は解け、解放され、交差し、並行し、混合する。際限なく広がる黄金の輪はやがて万華鏡のように鮮やかな陣となった。
「疾く退けよ。疾く消えよ。ここに汝の存在はなし。ここに汝の居場所はなし。抗うな。万象は汝を拒絶しき。万象は汝を否定しき。それだけかもしれざるが、それが価値。拒絶されし汝の価値なり。観念せよ。許容せよ。それは世界の意志によりて行はる」
この剣の別名は禁界剣。世界を縛る『法』の剣。それは王にのみ許された最悪にして最高の、権威の剣。
「須臾にして始まり、永遠にして終はる。さあ、王の号令は下りき―――失せよ!」
それはまさに一瞬の出来事だった。何万と居たフルシュガイド軍の全てが、一人の例外なく、姿を消したのだ。黄金の剣を突き立てているアルドの目の前には、誰も居ない。その痕跡すらなかった。
「……『首椿姫』より自由な分、面倒な詠唱はついて回るか。破棄できないのが欠点だな」
魔術が使えない自分が言うのはおかしいが、極位や終位まで極めると、魔術を行使するにあたっては最早詠唱破棄は当たり前、という領域になってくる。詠唱するだけ馬鹿らしい、という奴だ。しかしながらこの剣の力を解放するには『~汝に命ずる』までの前文は必須。そこから能力を使い分けていくにはさらに追加で詠唱をしなければならないので、『影人』によってその境地に至ったアルドから言わせてもらうと、至極不便だったりする。
魔術よりかは詠唱は短いので助かるが、簡略も破棄も出来ないのは存外に辛いのだ。
「……さて、邪魔者は消えたな」
聴覚を戻した後、アルドは身を翻してナイツ達に向き合った。きっとチロチンを通してここに居ないナイツも見ているだろう。他の魔人達もきっと見ている。自分がやるべき事等ただ一つだ。
アルドは姿勢を正して、深々と頭を下げた。
「お前達……本当に―――申し訳なかった!」
「アルド様……!」
驚いてしまったのは『骸』の魔人、ルセルドラグだった。部下に頭を下げる指導者など何処にいると、非難する様に。
「私はお前達を置いていって人助けに行っていた。ああ行った、言い訳の余地はない。釈明することも無い……私がこの場所を離れなければ、こんな事にならずには済んだ。本当に、本当に―――すまなかった!」
アルドの声は震えていた。涙に濡れていると言い換えてもいい。ナイツの誰も、その顔を見た事が無かった。アルドが涙を流して……頭を下げている光景など。
「ア……ルド様………」
「………………アルド様……」
これはそう簡単な問題ではない。ナイツ達が許しても、魔人達が許さなければアルドは頭を上げるつもりは無かった。アルドは魔人の王。魔人達が王にふさわしくないとみなせばそれだけで王は機能しなくなる。
そして『王』の機能停止とは、即ち『アルド』という存在の意味の消失である。かつてギリギリの所でアルドを救ったのは『皇』だが、彼女が居なければ『アルド』という何かはきっと意味を成さなかった。それが今再び、引き起こされようとしている。
蚊帳の外に居るレンリーや気を失っているツェートには目もくれていない。それくらいアルドは本気でナイツ達と向き合っていた。
「……なあアルドよ。お前は何の為に魔王になったんだ?」
そんな状況を突破したのはエイン。初代『勝利』だった。
「……さっきから聞いているだけで気分が悪くなる。エインの真似なんかするんじゃねえよ執行者。アイツはもう死んだんだ、もうこれ以上冒涜すんじゃねえ」
頭を上げようとする様子はないが、言葉から滲む感情は殺気、憎悪、嫌悪。執行者に勝てない事などアルドも分かり切っている。だがそれでも、これ以上エインが冒涜されようものなら、アルドは直ぐにでも飛び掛かっただろう。
エインはアルドにとっての数少ない対等な『友人』であり、『先輩』だった。自分の気持ちを本当の意味で理解してくれていた人間で、だからこそアルドは彼に敬意を払っていた。敬意を払っていたからこそ、アルドは本人以上に侮辱を赦さない。
「……まあ悪かったよ。だがエインの核を回収した以上は、一応我はエインだ。そう呼んでくれなくても良いし、呼んでくれても構わない。だが我が言いたいのはそこではない。この者達では貴様は救えない。そんな者達を護っていていいのか、という話だ」
「何の話だ」
剣の執行者は発言に一切配慮しない事を悟らせたうえで続きを言う。
「こいつ等はお前の理解者だ。よく分かっている。特にそこの『妖』はな。だがそれだけだ。お前を理解しているだけで、こいつらではお前を救えない。お前は救われない。人間と同じだ、こいつらは。お前が奉仕しても、こいつらは何も返さない。そんな奴に頭を下げて、謝っていいのか? また、同じことが起こるぞ」
言いたい事はナイツ達も良く分かっていた。それはアルドにとっては忌々しく、魔人にとっては輝かしい記憶。あの事件が起きたからこそナイツ達はアルドと出会い、救われたのだから。
「……執行者」
アルドは一向に頭を上げようとしない。そればかりか額を強く地面に擦り付けてすらいる。しかしその声音を最小限に留めて、聞こえる相手を絞ったのは……アルド自身も、思う所があるという事である。
「そんな事は、私も良く分かっているんだよ。私は英雄だった頃と何も変わらない。この戦いの結末も、きっと―――どうせ―――だが」
「……だが?」
「私は殺されようとも魔王を続ける。そう誓ったんだ。『皇』とな。だから私の救いなどもう気にしなくていい。もう私も諦めているからな。それと―――私の目の前でこれ以上ナイツを侮辱するようなら、真理剣の向く先はお前へと変わるだろう。幾ら執行者と言えど好き勝手はしない事だな」
使い捨てられるのは慣れている。ナイツは違えど魔人までがそうとは限らない。ごく少数ではあるが、未だ自分を王とは認めていない魔人もいるのだし、同じ結末を迎える可能性はない訳ではない。
一応言っておくが、問題があるのはこちらだ。魔人は何も悪くない。元々騎士として生きていた自分が王など大層なご身分になっても、そう簡単に認められる訳が無いのだ。
何せ騎士とは人を助ける生き物。このように―――国を放って、人助けに出てしまう事もあるのだから。
アルドは顔を上げて、全員の顔を改めて見据えた。
「……侵攻は一時停止だ。私はこれから一年間、今まで奪還してきた大陸も含めて、内部の安定化に努める。そしてこの時より、ナイツには全ての切り札の開帳を許可する。殺したいと思うなら殺しに来い。私は一切危害を加えない。そして一年間無事に私が生き延びて、そして治安を安定化できたのなら―――もう一度だけ私を信用してほしい。頼む」
この言葉はきっと、チロチンを通して全ての魔人に伝わる。アイツはきっとやってくれる。これがアルドの出来る唯一の償い。崩れた信用を取り戻すための行動。
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