ワルフラーン ~廃れし神話
猛襲 後編
「オールワーク。アルド様の位置を教えてくれ!」
「……王剣の位置から察するに、アルド様は死剣の真名を回収しに行っているモノと思われます」
「―――ならば直ぐに戻ってくる事はない、か。アルド様に責任は無いが、最悪のタイミングとしか言いようがないな」
チロチンはこの状況に焦りを感じずには居られなかった。ワドフは不在、アルドも不在に加えて、切り札使用の許可は貰っていない。偶然が重なって生まれた致命的な隙。まるで攻め込めと言っているかのようだ。
そこに偶然にもフルシュガイド軍が攻め込んでこなければ、まだ不安の範囲で治まったのだが……現実は上手く行かないようだ。
「ちょっとオールワーク! アンタその指輪でアルド様に連絡できないのッ?」
「これは飽くまで王剣の位置を示すモノ。メグナの要望には応えかねますね」
アルドが認める強者の集団、カテドラル・ナイツ。そのナイツを以てしても、此度の事態ばかりは冷静さを失わざるを得ない。
三十万の兵士とディナント、ユーヴァン、ヴァジュラ、ルセルドラグの四人。兵力の差はあまりにも絶望的で、切り札の許可が下りていない以上は実力の差もそう開いているとは思えない。今は四人がどうにか食い止めているが、それも時間の問題だ。アルドが先に帰ってくるか、その前に四人が突破されるか。幸いにも食い止められる時点でクリヌスが居ない事が分かっているが、それでも……どうだろうか。返り討ちにするのは難しいだろう。
魔人達は育成が済んでいないので避難してもらっている。その為たとえ自分達が全滅しても立て直し自体は可能だが、それは望ましい事態ではない。
城内にはファーカ、フェリーテ、メグナ、オールワーク、トゥイーニー、そして自分。一応は指揮を執っているが、自分の経験が無い以上、指揮的にもあちら側に有利がある。戦況は厳しいと言わざるを得ない。
「……本当に、あまりにも出来過ぎたタイミングだな。まさに奇跡って所だが、こっちからすれば災厄も良い所だよ」
「チロチン……何か手立てはないの? ユーヴァンと連絡もつかなくなったし、このままだと……」
「分かってる! 分かってるが―――」
戦いは基本的に数がモノを言う。超越した強さが無ければ、闘いは基本多勢に無勢だ。加えてアルドも、ワドフも、ユーヴァンも居ないとなると、戦力差は猶更開いてくる。
ハッキリ言おう。現在の状態が続くという仮定で言わせてもらえば、この状況を打開する方法はない。存在しない。
何かしらの第三要素が……例えばアルドが帰ってくるとか、それくらいの事が無ければ、いずれにしてもこのままでは破滅の道を辿る事になるだろう。
もどかしい。第三切り札も第二切り札も使えないなんて。特に第三切り札―――『星の眸』が使えれば、この戦況は大きく変わっただろうに。
『星の眸』。それは、世界中のあらゆる情報を収束させる、自分達『烏』の魔人に代々伝わっていた由緒正しき聖なる秘術だ。あらゆる情報を知る事が出来るというアドバンテージは非常に得難く、情報収集の任を担っているチロチンとしては、最高この上ない切り札である。だがそれも使えない以上は宝の持ち腐れ……とは意味が違うが、使えないのでは同じようなものだ。
「一体どうすればいいのだ……!」
こんな時、我が主ならばどうしたのだろうか。自分の信頼する主ならば、この状況をどう切り開いたのか。
考えろ、考えろ、考え抜け―――
「……………………」
駄目だ。何も思い浮かばない。切り開ける訳がない。詰んでいる。
あまりにもあまりにもあまりにもあまりにもあまりにも絶望的だ。少なくともこれ以上こちら側から何かできるという事は無い。何か事態を切り開くような事態が起きなければ―――
「おい、チロチン! 聞こえてるかッ!」
「……ユーヴァンかッ?」
それはどこから聞こえているのか分からないが、確かに『竜の魔人』ユーヴァンの声だ。あれから何時間も連絡が取れないで心配していたのだが……
「心配かけて悪かったな。でも俺様はまだ生きてる。そっちはどうだッ」
「悪い処じゃないぞ! 戦場には居ないんだろう? さっさと戻ってこい!」
彼が無事ならば多少なりとも戦況は押し返せる。姑息な手段でしかないが、やらないより他はない。いずれアルドは帰ってくる。その時を信じて、自分達は待たなければ。
「―――ああ、必ず戻るぜ。強い味方を引き連れてな!」
「強い味方だと? おいそいつは―――っと、切れたか」
アルドに対してあんな言い方はしない筈なので、だとするとアルド以外の誰かという事になるが……
ユーヴァンが説得できるようなちょろい味方が、果たして居ただろうか……。
「……王剣の位置から察するに、アルド様は死剣の真名を回収しに行っているモノと思われます」
「―――ならば直ぐに戻ってくる事はない、か。アルド様に責任は無いが、最悪のタイミングとしか言いようがないな」
チロチンはこの状況に焦りを感じずには居られなかった。ワドフは不在、アルドも不在に加えて、切り札使用の許可は貰っていない。偶然が重なって生まれた致命的な隙。まるで攻め込めと言っているかのようだ。
そこに偶然にもフルシュガイド軍が攻め込んでこなければ、まだ不安の範囲で治まったのだが……現実は上手く行かないようだ。
「ちょっとオールワーク! アンタその指輪でアルド様に連絡できないのッ?」
「これは飽くまで王剣の位置を示すモノ。メグナの要望には応えかねますね」
アルドが認める強者の集団、カテドラル・ナイツ。そのナイツを以てしても、此度の事態ばかりは冷静さを失わざるを得ない。
三十万の兵士とディナント、ユーヴァン、ヴァジュラ、ルセルドラグの四人。兵力の差はあまりにも絶望的で、切り札の許可が下りていない以上は実力の差もそう開いているとは思えない。今は四人がどうにか食い止めているが、それも時間の問題だ。アルドが先に帰ってくるか、その前に四人が突破されるか。幸いにも食い止められる時点でクリヌスが居ない事が分かっているが、それでも……どうだろうか。返り討ちにするのは難しいだろう。
魔人達は育成が済んでいないので避難してもらっている。その為たとえ自分達が全滅しても立て直し自体は可能だが、それは望ましい事態ではない。
城内にはファーカ、フェリーテ、メグナ、オールワーク、トゥイーニー、そして自分。一応は指揮を執っているが、自分の経験が無い以上、指揮的にもあちら側に有利がある。戦況は厳しいと言わざるを得ない。
「……本当に、あまりにも出来過ぎたタイミングだな。まさに奇跡って所だが、こっちからすれば災厄も良い所だよ」
「チロチン……何か手立てはないの? ユーヴァンと連絡もつかなくなったし、このままだと……」
「分かってる! 分かってるが―――」
戦いは基本的に数がモノを言う。超越した強さが無ければ、闘いは基本多勢に無勢だ。加えてアルドも、ワドフも、ユーヴァンも居ないとなると、戦力差は猶更開いてくる。
ハッキリ言おう。現在の状態が続くという仮定で言わせてもらえば、この状況を打開する方法はない。存在しない。
何かしらの第三要素が……例えばアルドが帰ってくるとか、それくらいの事が無ければ、いずれにしてもこのままでは破滅の道を辿る事になるだろう。
もどかしい。第三切り札も第二切り札も使えないなんて。特に第三切り札―――『星の眸』が使えれば、この戦況は大きく変わっただろうに。
『星の眸』。それは、世界中のあらゆる情報を収束させる、自分達『烏』の魔人に代々伝わっていた由緒正しき聖なる秘術だ。あらゆる情報を知る事が出来るというアドバンテージは非常に得難く、情報収集の任を担っているチロチンとしては、最高この上ない切り札である。だがそれも使えない以上は宝の持ち腐れ……とは意味が違うが、使えないのでは同じようなものだ。
「一体どうすればいいのだ……!」
こんな時、我が主ならばどうしたのだろうか。自分の信頼する主ならば、この状況をどう切り開いたのか。
考えろ、考えろ、考え抜け―――
「……………………」
駄目だ。何も思い浮かばない。切り開ける訳がない。詰んでいる。
あまりにもあまりにもあまりにもあまりにもあまりにも絶望的だ。少なくともこれ以上こちら側から何かできるという事は無い。何か事態を切り開くような事態が起きなければ―――
「おい、チロチン! 聞こえてるかッ!」
「……ユーヴァンかッ?」
それはどこから聞こえているのか分からないが、確かに『竜の魔人』ユーヴァンの声だ。あれから何時間も連絡が取れないで心配していたのだが……
「心配かけて悪かったな。でも俺様はまだ生きてる。そっちはどうだッ」
「悪い処じゃないぞ! 戦場には居ないんだろう? さっさと戻ってこい!」
彼が無事ならば多少なりとも戦況は押し返せる。姑息な手段でしかないが、やらないより他はない。いずれアルドは帰ってくる。その時を信じて、自分達は待たなければ。
「―――ああ、必ず戻るぜ。強い味方を引き連れてな!」
「強い味方だと? おいそいつは―――っと、切れたか」
アルドに対してあんな言い方はしない筈なので、だとするとアルド以外の誰かという事になるが……
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