ワルフラーン ~廃れし神話
集合
チロチンの持つ襤褸切れマント。正式名称は『隠世の扉』。空間の外に出る物体であり、所謂、絶対不可侵領域に逃げ込む、というモノだ。エヌメラとの戦いでも分かる通り、エヌメラでさえこの外には干渉が出来ない。たとえアルドが全力で剣を振るったとしても傷一つ付かない。たとえ突如世界が七度は滅びそうな程の隕石群が降ってきたとしても、やはり傷一つ付かない。規格外の性能だが、これは古代よりあるモノではなく、チロチンが自ら作り上げた、作成防具。故に異名は無く、それ故に相手からの攻撃を免れる事が出来る。
効果範囲は本来一人だが、アルドの首椿姫によって無理やり効果範囲を広げた。こういう使い方は物体を破損させる可能性が高く、あまり使いたくない方法だが、あの状況を打開するためにはああする他は無かった。
妹に泣きつかれてしまっては、アルドと言えど動けない。だから仕方ないのだ。
直に目覚めるナイツを見遣ると、ある事に気づいた。
「ユーヴァンはどこだ?」
そう言えば後から来ると言っていたような……しかし、今の今までまるで姿が見えない。アジェンタの兵士相手にそこまで遅れをとるような人物でないのはアルドも良く分かっている。そしてどんなに急いでも全盛期近い力にまで迫ったフェリーテより早く着く訳が無い事も知っている。
だがもうこっちまで来てしまった。理想を言えば家に閉じこもった時に助けに来てほしかったが、そこまで都合は良くならない。
そもそも都合が良いように働くならば、奪還など一年で成し遂げられる。もう二年―――ナイツ結成期間を加えれば五年が経ったが、未だ奪還した大陸は一大陸。クリヌスには誰が流したのかナイツの存在まで知られているし、それを取り戻すために乗り込んだら団長にまで存在を気づかれる始末だ。
もう一度言おう。未だ奪還した大陸は一つ。だというのに、まるで最終決戦間近のような不幸ぶりだ。
神は信仰の対象であり、敬愛すべき対象だが、どうやら魔王に御加護は無いらしい……いや、当然か。英雄と言う名の殺し屋が平和の象徴である神様に愛される訳が無い。
「……まあ、今更だな」
アルドは立ち上がって外に出る。ユーヴァンが戻ってきてはいないか。よもや向かっている途中に竜殺しに出会っていないか。可能性は無くは無いが、限りなく低い。
だが、仮にそうだった場合、ユーヴァンの生存は絶望的だ。ナイツを超えうる人間など少数と、一度アルドは言った。だが、その少数はあまりにも強大であり、ナイツで勝てる者と言えばそれこそ全盛期のフェリーテと切り札を全開放したチロチンくらいだ。
ナイツは殆どのモノよりも強いし、おそらくは世界でも上位の強さを持つが上には上が居る。人間と相対する以上、自らの上を行く人間と戦うのは自明の理。自分が居る以上安心と言ってやりたいが、フィージェントと戦ってああなった手前、安心とは言い難い。何より今の自分に不死性は無い。 英雄アルドの頃に逆戻りだ。ああ、あの頃は常に命がけだった―――
「ん?」
上空で何かが煌いた。紅焔のように儚く、何よりも明るいそれは力無く落下してくる。まもなくそれがユーヴァンだと分かると、己が手に焔が盛ろうとも気にはしない。彼を受け止めた。片腕は壊れているので使えない。
「おい、ユーヴァン、大丈夫か、しっかりしろ」
「あーらら、アルド様ですか……へへ……ちょっと、無理……しました」
気を失うのを確認するや、アルドは城内へと駆け込む。
生きている以上竜殺しには出会わなかったようだが、これは……どうやら団長から一撃貰ったようだ。あんな一撃をまともに喰らって生きていられる輩などエヌメラ位だろうし……今回は運が良かったと言うべきだろう。
それにしても恐ろしいまでの威力だ。まさかナイツを一撃で瀕死にするとは。考えるまでも無く緊急事態だ。自分の片腕の治療も兼ねて、ユーヴァンの治療もしなければ。
「ユーヴァンッ、ねえってば、おきてよ!」
目を覚ましたナイツの一人、ヴァジュラが、瀕死の彼に対して必死に呼びかけていた。ユーヴァンは力無く倒れているままで、反応は無い。
オールワークが使用した再生術は一年に一回しか使えない『鳳』の切り札故、使う事は出来ない。それを裏付けるように、オールワークは外傷こそないが壁に凭れて眠っている。精神の消耗が相当なモノだという事だ。
「ユーヴァンの容態は極悪の一言。これをどう致そうか」
「ここまで酷いのは……やられた私が言うのも何だが、惨い」
「ユーヴァンがこんなボロボロになるなんて……信じられないわね」
彼女の言う通り、ナイツをここまでボロボロにされたのは初めて(エヌメラの件は除く)だ。オールワークの治療が無ければフェリーテやディナントを除いて殆ど重傷ないしは瀕死だった訳だし、その殆どはクリヌスにやられた。
切り札は使ってなかったという事を抜きにしても、それでもナイツ五人を倒したのだ。自分との戦いぶりを見るに、負った傷は軽傷。それも行動に特に支障のない範囲だ。
自分が記憶を失い怠惰を貪った二年、クリヌスに何があったのだろうか。間違いなく、五年前よりも確実に強くなっている。自分の脚元にまで迫ってきている。
クリヌス・トナティウ。この戦いにおける最大の敵はやはり彼か。最初から分かり切った事だからそれ程絶望するわけではないが、それにしても……フィージェントをあっちに行かせた以上、残りの弟子はなるべくこちらに引き込みたいところだ。
思い返すようで悪いが、自分の弟子はその誰しもが広い意味での異端者だ。フィージェントは体質が。クリヌスは才能が。彼女は―――酷い。彼は―――強すぎる。
ユーヴァンがこれだ。いい加減切り札の開帳も認めざるを得ないかもしれない。
「フェリーテ、ユーヴァンの傷は治りそうか?」
フェリーテは心配そうな瞳で、ユーヴァンの全身を見ていく。
バッサリと大きく切り開かれてたその体。極太の斬撃によるもので、一刀両断されてもおかしくない程の傷だが、ユーヴァンはどうしてか、両断だけは免れている。身体でも捻って斬撃の軸でもずらしたのかもしれない。
「……ふむ。直ぐに処置すれば問題ないが、オールワークはあの様。そして妾も大分消耗している。他のモノが回復を使えればいいんじゃがのう、如何せんこの傷は―――人には治せぬ。言っている事は分かるかの、主様」
―――ああ、分かっているとも。傷が治り次第侵攻を開始するなんて甘ったれた考えは、良くないって事だろう。
直後、アルドの影が三次元的に盛り上がった。影は徐々にアルドの形を成していき、やがてアルドと同化。数秒後、暗黒は薄れゆき、形すら残さず消え去った。
一日経過しなければ変われぬこの状態。魔力と接続しているため全ての魔術が行使可能だが、戦闘面は素人。あまりなりたくなかったが―――彼の為だ。
『影人』でもいいのだが、一応はかつて使った名前、ウルグナという事で通そうか。
「ヴァジュラ、離れていてくれ」
ウルグナはユーヴァンの胸に手をあてがい、それを口にする。
『救滅』
人に直せぬというのならば、神に直してもらうまで。これは『悪闢』と同様の神造魔術、回復魔術に置いて最上に位置する魔術。
この魔術は死にすら反抗する禁術であり、本来神より下等である生物が使用できる道理はない。しかしアルドの根源に匹敵する魔力量と、影人による性質反転だけが、唯一の例外を生み出している。
この魔術に欠点があるとすれば、それは自分自身には使用できないと言う点と、アルドの魔力を以てしても使えるのは一日に三回だけ、という事。オールワークの再生術は『鳳』という魔人の特性を生かした『救滅』の劣化だと思ってくれればいいが、それでもあの消費。ウルグナがどうなるかは、想像に難くない。
ウルグナの掌から極光。あまりに眩しすぎる故に、誰もそこを視認する事は叶わない。フェリーテでさえ鉄扇で顔を隠し、視界を塞いでいる。
神造魔術は神秘の法。使用者であるウルグナ以外は、誰一人として視認する事は出来なかった。
光が収束。ウルグナは疲れたとばかりに尻餅を着き、一息。ユーヴァンの傷は完全に消えていた―――間違っても、癒えたわけではない。
「お見事じゃ、主様」
フェリーテが色っぽく微笑み、アルドの隣に座る。久々―――いや、もう感じたくも無いくらい味わった、現在進行形で味わい続けている疲労だ。これ以上これが溜まるのは死にたくなるほど辛いし、体を動かすのもだるくなるが―――悪い気分じゃない。ナイツを救えたのだ。なら、何を背負ってもそれは軽い。
「んん……俺様は……なんでここに」
「ッ……ユーヴァン!」
彼が目を覚ますや否や、ヴァジュラが飛び込み気味に彼を抱きしめた。勢い余って二人は転がり、起きたばかりで、まるで状況を把握していない彼が目を回したのはさておいて。
「ユーヴァンッ!」
「え、あッ、ハイィッ!」
怒られるとでも思っているのか、その表情は固い。
「……よく生きて帰った。ユーヴァン」
最愛の部下が生きていて、どうして怒らなければいけないのか。それはまた別の話であり、今は生きていた事を喜ぶべきだ。
「……!」
「お前達もだぞ、ファーカ、ルセルドラグ」
二人の体がびくついた。先程からどうも沈黙していると思ったら……負い目を感じているらしい。結局自分達の力でルセルドラグを取り戻せなかったというのと、無様に捕まってしまった、という所か。
似たような思いは、ウルグナも何度も味わってきた。だから彼/彼女が黙ってしまう気持ちが分かってしまう。
「別に負い目を感じる必要は無い、今までが上手く行きすぎてただけだ―――それにな、自分を弱いと思えるなら、それはまだ強くなれる証だ。これから強くなっていけばいいさ。私はいつまでも見守っているからさ」
強いと思い込んで最強で在り続ける自分が、もう出来ない事。それは成長。ナイツはまだ成長できる。自分とは違って、まだ無限の可能性を持っている。
二人はその励ましが効いたのか、こう言った。
「有難うございます……ッ」
「寛大な処置に感謝致します」
次なんて無いと言う人もいるだろう。その通りだ。命の取り合いに次何てない。取るか取られるか。それだけだが……飽くまでそれはタイマンでの話。次が無いなら作ればいい。其の為にアルドが居るのだから。
効果範囲は本来一人だが、アルドの首椿姫によって無理やり効果範囲を広げた。こういう使い方は物体を破損させる可能性が高く、あまり使いたくない方法だが、あの状況を打開するためにはああする他は無かった。
妹に泣きつかれてしまっては、アルドと言えど動けない。だから仕方ないのだ。
直に目覚めるナイツを見遣ると、ある事に気づいた。
「ユーヴァンはどこだ?」
そう言えば後から来ると言っていたような……しかし、今の今までまるで姿が見えない。アジェンタの兵士相手にそこまで遅れをとるような人物でないのはアルドも良く分かっている。そしてどんなに急いでも全盛期近い力にまで迫ったフェリーテより早く着く訳が無い事も知っている。
だがもうこっちまで来てしまった。理想を言えば家に閉じこもった時に助けに来てほしかったが、そこまで都合は良くならない。
そもそも都合が良いように働くならば、奪還など一年で成し遂げられる。もう二年―――ナイツ結成期間を加えれば五年が経ったが、未だ奪還した大陸は一大陸。クリヌスには誰が流したのかナイツの存在まで知られているし、それを取り戻すために乗り込んだら団長にまで存在を気づかれる始末だ。
もう一度言おう。未だ奪還した大陸は一つ。だというのに、まるで最終決戦間近のような不幸ぶりだ。
神は信仰の対象であり、敬愛すべき対象だが、どうやら魔王に御加護は無いらしい……いや、当然か。英雄と言う名の殺し屋が平和の象徴である神様に愛される訳が無い。
「……まあ、今更だな」
アルドは立ち上がって外に出る。ユーヴァンが戻ってきてはいないか。よもや向かっている途中に竜殺しに出会っていないか。可能性は無くは無いが、限りなく低い。
だが、仮にそうだった場合、ユーヴァンの生存は絶望的だ。ナイツを超えうる人間など少数と、一度アルドは言った。だが、その少数はあまりにも強大であり、ナイツで勝てる者と言えばそれこそ全盛期のフェリーテと切り札を全開放したチロチンくらいだ。
ナイツは殆どのモノよりも強いし、おそらくは世界でも上位の強さを持つが上には上が居る。人間と相対する以上、自らの上を行く人間と戦うのは自明の理。自分が居る以上安心と言ってやりたいが、フィージェントと戦ってああなった手前、安心とは言い難い。何より今の自分に不死性は無い。 英雄アルドの頃に逆戻りだ。ああ、あの頃は常に命がけだった―――
「ん?」
上空で何かが煌いた。紅焔のように儚く、何よりも明るいそれは力無く落下してくる。まもなくそれがユーヴァンだと分かると、己が手に焔が盛ろうとも気にはしない。彼を受け止めた。片腕は壊れているので使えない。
「おい、ユーヴァン、大丈夫か、しっかりしろ」
「あーらら、アルド様ですか……へへ……ちょっと、無理……しました」
気を失うのを確認するや、アルドは城内へと駆け込む。
生きている以上竜殺しには出会わなかったようだが、これは……どうやら団長から一撃貰ったようだ。あんな一撃をまともに喰らって生きていられる輩などエヌメラ位だろうし……今回は運が良かったと言うべきだろう。
それにしても恐ろしいまでの威力だ。まさかナイツを一撃で瀕死にするとは。考えるまでも無く緊急事態だ。自分の片腕の治療も兼ねて、ユーヴァンの治療もしなければ。
「ユーヴァンッ、ねえってば、おきてよ!」
目を覚ましたナイツの一人、ヴァジュラが、瀕死の彼に対して必死に呼びかけていた。ユーヴァンは力無く倒れているままで、反応は無い。
オールワークが使用した再生術は一年に一回しか使えない『鳳』の切り札故、使う事は出来ない。それを裏付けるように、オールワークは外傷こそないが壁に凭れて眠っている。精神の消耗が相当なモノだという事だ。
「ユーヴァンの容態は極悪の一言。これをどう致そうか」
「ここまで酷いのは……やられた私が言うのも何だが、惨い」
「ユーヴァンがこんなボロボロになるなんて……信じられないわね」
彼女の言う通り、ナイツをここまでボロボロにされたのは初めて(エヌメラの件は除く)だ。オールワークの治療が無ければフェリーテやディナントを除いて殆ど重傷ないしは瀕死だった訳だし、その殆どはクリヌスにやられた。
切り札は使ってなかったという事を抜きにしても、それでもナイツ五人を倒したのだ。自分との戦いぶりを見るに、負った傷は軽傷。それも行動に特に支障のない範囲だ。
自分が記憶を失い怠惰を貪った二年、クリヌスに何があったのだろうか。間違いなく、五年前よりも確実に強くなっている。自分の脚元にまで迫ってきている。
クリヌス・トナティウ。この戦いにおける最大の敵はやはり彼か。最初から分かり切った事だからそれ程絶望するわけではないが、それにしても……フィージェントをあっちに行かせた以上、残りの弟子はなるべくこちらに引き込みたいところだ。
思い返すようで悪いが、自分の弟子はその誰しもが広い意味での異端者だ。フィージェントは体質が。クリヌスは才能が。彼女は―――酷い。彼は―――強すぎる。
ユーヴァンがこれだ。いい加減切り札の開帳も認めざるを得ないかもしれない。
「フェリーテ、ユーヴァンの傷は治りそうか?」
フェリーテは心配そうな瞳で、ユーヴァンの全身を見ていく。
バッサリと大きく切り開かれてたその体。極太の斬撃によるもので、一刀両断されてもおかしくない程の傷だが、ユーヴァンはどうしてか、両断だけは免れている。身体でも捻って斬撃の軸でもずらしたのかもしれない。
「……ふむ。直ぐに処置すれば問題ないが、オールワークはあの様。そして妾も大分消耗している。他のモノが回復を使えればいいんじゃがのう、如何せんこの傷は―――人には治せぬ。言っている事は分かるかの、主様」
―――ああ、分かっているとも。傷が治り次第侵攻を開始するなんて甘ったれた考えは、良くないって事だろう。
直後、アルドの影が三次元的に盛り上がった。影は徐々にアルドの形を成していき、やがてアルドと同化。数秒後、暗黒は薄れゆき、形すら残さず消え去った。
一日経過しなければ変われぬこの状態。魔力と接続しているため全ての魔術が行使可能だが、戦闘面は素人。あまりなりたくなかったが―――彼の為だ。
『影人』でもいいのだが、一応はかつて使った名前、ウルグナという事で通そうか。
「ヴァジュラ、離れていてくれ」
ウルグナはユーヴァンの胸に手をあてがい、それを口にする。
『救滅』
人に直せぬというのならば、神に直してもらうまで。これは『悪闢』と同様の神造魔術、回復魔術に置いて最上に位置する魔術。
この魔術は死にすら反抗する禁術であり、本来神より下等である生物が使用できる道理はない。しかしアルドの根源に匹敵する魔力量と、影人による性質反転だけが、唯一の例外を生み出している。
この魔術に欠点があるとすれば、それは自分自身には使用できないと言う点と、アルドの魔力を以てしても使えるのは一日に三回だけ、という事。オールワークの再生術は『鳳』という魔人の特性を生かした『救滅』の劣化だと思ってくれればいいが、それでもあの消費。ウルグナがどうなるかは、想像に難くない。
ウルグナの掌から極光。あまりに眩しすぎる故に、誰もそこを視認する事は叶わない。フェリーテでさえ鉄扇で顔を隠し、視界を塞いでいる。
神造魔術は神秘の法。使用者であるウルグナ以外は、誰一人として視認する事は出来なかった。
光が収束。ウルグナは疲れたとばかりに尻餅を着き、一息。ユーヴァンの傷は完全に消えていた―――間違っても、癒えたわけではない。
「お見事じゃ、主様」
フェリーテが色っぽく微笑み、アルドの隣に座る。久々―――いや、もう感じたくも無いくらい味わった、現在進行形で味わい続けている疲労だ。これ以上これが溜まるのは死にたくなるほど辛いし、体を動かすのもだるくなるが―――悪い気分じゃない。ナイツを救えたのだ。なら、何を背負ってもそれは軽い。
「んん……俺様は……なんでここに」
「ッ……ユーヴァン!」
彼が目を覚ますや否や、ヴァジュラが飛び込み気味に彼を抱きしめた。勢い余って二人は転がり、起きたばかりで、まるで状況を把握していない彼が目を回したのはさておいて。
「ユーヴァンッ!」
「え、あッ、ハイィッ!」
怒られるとでも思っているのか、その表情は固い。
「……よく生きて帰った。ユーヴァン」
最愛の部下が生きていて、どうして怒らなければいけないのか。それはまた別の話であり、今は生きていた事を喜ぶべきだ。
「……!」
「お前達もだぞ、ファーカ、ルセルドラグ」
二人の体がびくついた。先程からどうも沈黙していると思ったら……負い目を感じているらしい。結局自分達の力でルセルドラグを取り戻せなかったというのと、無様に捕まってしまった、という所か。
似たような思いは、ウルグナも何度も味わってきた。だから彼/彼女が黙ってしまう気持ちが分かってしまう。
「別に負い目を感じる必要は無い、今までが上手く行きすぎてただけだ―――それにな、自分を弱いと思えるなら、それはまだ強くなれる証だ。これから強くなっていけばいいさ。私はいつまでも見守っているからさ」
強いと思い込んで最強で在り続ける自分が、もう出来ない事。それは成長。ナイツはまだ成長できる。自分とは違って、まだ無限の可能性を持っている。
二人はその励ましが効いたのか、こう言った。
「有難うございます……ッ」
「寛大な処置に感謝致します」
次なんて無いと言う人もいるだろう。その通りだ。命の取り合いに次何てない。取るか取られるか。それだけだが……飽くまでそれはタイマンでの話。次が無いなら作ればいい。其の為にアルドが居るのだから。
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