ワルフラーン ~廃れし神話
憩いの場
幾年ぶりの船を動かした。操作方法は身体が覚えている。船はゆっくりと動き、リスド大陸に向け、ゆっくりとだが、しかし、確実に前進し始めた。
この船は時間圧縮の妖術が込められた、所謂、改造船だ。其の為、その気になれば、本来は三日掛かる所を、数時間足らずでたどり着く事が可能―――なのだが、二年も使ってなかった故に、そもそもこれが起動するかどうかは怪しいモノだった。
予想通りと言えばそうなのだが、やはり妖術そのものが消え去っていた。だが、何という事は無い。船には『首椿姫』の予備が在る。概念操作で失っていた時間を消し去ってしまう事で、昨日は見事に復活した。半ば反則の手段だが、リスドに一刻も早く戻りたい故に反則がどうこうは言っていられない。ツェートと出会っていたあの時も、たしか五時間ぐらいで済んだはずだ。今回もその位で済むだろう。
「『首椿姫』でアルドさんの失った強さって、戻らないんですか?」
「この魔術は魔力に反応して発動する。魔力は持っていても私は接点を持ち合わせていない故に、私にだけはどんな操作も致す事は出来ないよ」
不便ではあるが、この体質の御蔭でエヌメラの天敵となり得ているのだ。文句は言えないだろう。こんな体質でなければ勝つことも出来なかっただろうし。
ワドフが嬉しそうな表情を浮かべながら、こちらに何かを持ってきた。紅茶……のようだが、明らかに一線を画した香ばしさがある。何と表したらいいモノか……使っている素材自体は確かに上質だが、その素材の性能を最大限生かしたような。そんな感じだ。
口に運び、喉へ流す。
……何…………だと……?
「これ、まさかお前が?」
「ハイ! アルドさんに喜んでもらえるかなと思って、独学で修業してましたッ。美味しい、ですか?」
「美味しいも何も、最高だ。こんな美味なお茶は初めてだよ」
アルドが笑顔を浮かべてそう言うと、ワドフは酷く驚いた表情で、こちらを凝視した。紅茶が机に零れているが、最早そんな些事はどうでも良いとでもばかりだった。
「どうした?」
「いえ……あの……いいです……」
一体何が気になったのかはさっぱりわからない。美味しいと笑顔で言っただけなのに、それがそんなにも……
笑顔……?
そう言えば、二年前までの自分は感情が表に出る事は殆ど無かったか。まさかあの二年の内に自分の性格が変化したとは考えにくいが、おそらく魔王と言う立場をすっかり忘れて呑気に過ごしていたせいだろう。立場が無い故に自由で、それ故に感情が豊かになる。魔王を忘れていた事は未だに赦せないが、それでも、得たモノは在ったようだ。
しかしそんな事で驚くワドフでは無い筈だ。では一体何に驚いたのだろうか……
「そう言えば、ワドフ。お前、どうやってそこまでの強さを?」
アルドは二年の間に大分衰えたが、それでも戦を経験したモノとしての観察眼だけは衰えていなかった。その上で言わせてもらえば、明らかにその実力の上がり方は異常そのものであり、神様とでも契約したかのような強さである。既にフィージェントに迫っている程と言えば分かりやすいだろうか。二年前のナイツの誰よりも強いと言えば、もっと分かりやすいだろうか。
「そこまでの強さ……ああ。アルドさんが帰ってくる日まで、この大陸の南部を周ったりして、適当に魔物を狩っていただけですよ。一冒険者としてね」
すっかり忘れていたが、ワドフは元々冒険者だ。
「今のランクはどのくらいだ」
「ん……戦神ですよ」
最上級じゃねえかと突っ込む事は控えよう。何か色々馬鹿馬鹿しい。五十年修行して未だに戦神になれない者だっていると言うのに。
「でも、大した事ありませんよ。冒険者のランク何て大雑把に三つ、戦士、戦王、戦神って表してるだけですし。私以上の冒険者何てまだまだたくさん居ますよ」
二年前の記憶で申し訳ないが、戦王は世界で百人弱。戦神は三人だ。今まで戦った者を当てはめるとすれば、アス何とか、デュークは戦王、フィージェント、フィネア、クリヌスは戦神だ。偶然にも三人いるが、この三人では無い。この三人に匹敵する強さを持ってる人物が世界に後三人居ると考えてくれればいい。
———が、その誰しもが壮年を迎えているらしく、若者はワドフ只一人だろう。若さで強さを決めるつもりはないが、それでも大分イレギュラーな存在だ。
「次元が違うって事を認識しろ。その謙虚さは時に下位の者をいらつかせるぞ」
「……すみません」
悪気が無いというのも考え物だ。
「まあ、ともかく。今のお前を相手取るには私では力不足だ。申し訳ないが、暫くは練習に付き合えん」
「―――やっぱり、失った年数分、練習でもしない限りは私に負けてしまうんですか?」
普通の者ならば、そうだろう。違くとも、或いはそれ以上の年数を要するか。何であれ、生ぬるい鍛錬をしてきたモノならば、例外に漏れず、その通りだろう。
自分で言うのも何だが、アルドは他の人より何百倍、何千倍と努力してきたつもりだ。そこまでしてようやく最強に至れた。逆に言えば、そこまでしてようやく人を超える程度という事だ。
そしてその努力は、アルドにあるモノを与えた。
「練習せずともな。私は仮にも剣一本で最強へ至った人物。お前に勝てぬのは、飽くまで力での押し合いであるからで、経験のせめぎ合いではない。やりようは在るさ。それこそ、何でもありと仮定すれば、お前にだって勝機はある」
「つまり、私はまだアルドさんに追い付けていないと?」
「いや―――昔の私はともかく、今の私を優に超えているのは事実だ。それを私が経験でどうにか補っているだけであって、純粋な力であればお前には絶対に負ける」
二年も修行している暇は、アルドには無い。ならばと今持ちうる実力を最大限に生かすのが、自分なりの戦い方だ。
「だがまあ今のままではお前に勝てるかもしれないだけであって、お前の師で在れる程強くはない。一か月で直して見せようじゃないか。私だってお前にはまだ負けたくないしな」
紅茶も三杯目が飲み終わり、既に三十分。五時間なんて直ぐに経つだろう。
それにしても、ワドフは二年もの間に恐ろしい程の成長を遂げた。紅茶を淹れる技術、強さ、体つき。体つきが一番変化が小さいのが驚きだが、元が元である為、むしろ普通だろう。パッと分かる点を挙げれば、筋肉は以前よりも付いていて、胸は間違いなく1、2サイズ程アップしている。全体評価を言わせれば、以前よりも体がしなやかになっている。
だから何が起きたと言うのだ。彼女に。
「……そうだな、ワドフ」
「え、何がですか?」
ワドフは自分の背後で四杯目を注いでいる所だ。
「お前を船に待機させ続けた事、私は本当に申し訳なく思っている。故に……だ。私の部屋に改めて招待しよう」
背後で動きが止まった気がしたが、気のせいと考え込んでおくとしよう。少し気恥ずかしそうにしながら、アルドは言葉を紡ぎなおす。
「まあ、なんだ。お前に寂しい想いをさせたって事は、本当に申し訳なく思っている。それ故の処置だから、その……別にそういう気は―――無いが、何かされたらそういう気が出てくる可能性もある事については理解してくれj
今まで第三者をナイツに見せるような事は無いが、思い直してみれば、第三勢力と悟られなければいいのだ。手は在る。フェリーテ以外には悟られないだろう。
「アルドさんの部屋って、ベッドは一つですよね?」
「ん? ああ。一つだよ。だから狭苦しくて申し訳ないとは思うが、お前には私の隣で寝てもらえると助かる」
部屋に誰かを招き入れるなど久しぶりだが、ワドフを地面で寝かせる訳には行くまい。そういう意味での配慮だ。自由に寝返りをうてないのは不便だろうが、我慢してほしい。
紅茶を注ぎ終わったワドフが、こちらにカップを寄越してきた。
「分かりました」
二年間見てきたモノが男と少女だけだった故か、人がどんなことを考えているかが見抜けなくなってしまった。彼女は今、何を想っているのだろう。
「何考えている?」
「いえ、寝間着はどうしようかなって♪」
妙に心を躍らせているが、自分と寝られる事がそんなに嬉しいのだろうか。彼女の想いは知っているが、だからと言って、想い人と寝るだけで楽しいなんて、ある訳が無い。
……いやいや。どうも好意を寄せられる事が分かると、こういう細かい事を妙に気にしてしまう。人間だった頃はまるで好意を寄せられなかった、或いは気づいていなかったのだろうか。だからかもしれない。ナイツもワドフも侍女も、妙に気にしてしまうのは。今は無理だが、いつかは応えてあげたいと思っている―――なんて言っていると、その『いつか』が一生来ないような気がするので、リスドにおいて、もし、ナイツが再び自分に仕えてくれて、そして、アジェンタ大陸を堕とす事が出来たならば、誰か数人の想いには応えてもいいかと思う。まあ流石に二大陸も落とせば、誰かが変化に気づく可能性はある為、注意は今以上に必要だ。人間を何人か残して、交易の方に充てるべきか。以前とは違って皆殺しをするつもりも無いし、やはりそれが最善だろう。二大陸を落せたとしても、それ以降は確実にばれるだろうし、ならばどうするか―――
先は長い。暫く思考を打ち切るとしよう。
時計を見ると―――二時間。まだ三時間程か。以外に長いものだ。特に話すネタも無いし、どうすればいいのか。
「アルドさん」
「む?」
ワドフがこちらに目線を合わせるように屈んだ。座っている自分と目線を合わせるにしては随分と……ああ、身長も少し伸びた訳か。
「まだ時間もありますし、二年ぶりに再会した事もありますし……また、遊びませんか?」
「遊び。ああ、そう言えば、そんな事もしたな」
そんな、とは言うが、忘れていた訳では無い。彼女の今の体の、触れてはいけない部分をどう躱すかが問題なだけだ。
だが、他に時間を潰すアテはない。待っていても良いが、せっかくあちらが提案してきた故に無下にするわけにもいかない。乗るとしよう。
「別に構わないがな。以前と結果は変わらぬと思うぞ」
「そこまで言ってられるのも今の内ですよ。今度は私が勝ちますから」
この船は時間圧縮の妖術が込められた、所謂、改造船だ。其の為、その気になれば、本来は三日掛かる所を、数時間足らずでたどり着く事が可能―――なのだが、二年も使ってなかった故に、そもそもこれが起動するかどうかは怪しいモノだった。
予想通りと言えばそうなのだが、やはり妖術そのものが消え去っていた。だが、何という事は無い。船には『首椿姫』の予備が在る。概念操作で失っていた時間を消し去ってしまう事で、昨日は見事に復活した。半ば反則の手段だが、リスドに一刻も早く戻りたい故に反則がどうこうは言っていられない。ツェートと出会っていたあの時も、たしか五時間ぐらいで済んだはずだ。今回もその位で済むだろう。
「『首椿姫』でアルドさんの失った強さって、戻らないんですか?」
「この魔術は魔力に反応して発動する。魔力は持っていても私は接点を持ち合わせていない故に、私にだけはどんな操作も致す事は出来ないよ」
不便ではあるが、この体質の御蔭でエヌメラの天敵となり得ているのだ。文句は言えないだろう。こんな体質でなければ勝つことも出来なかっただろうし。
ワドフが嬉しそうな表情を浮かべながら、こちらに何かを持ってきた。紅茶……のようだが、明らかに一線を画した香ばしさがある。何と表したらいいモノか……使っている素材自体は確かに上質だが、その素材の性能を最大限生かしたような。そんな感じだ。
口に運び、喉へ流す。
……何…………だと……?
「これ、まさかお前が?」
「ハイ! アルドさんに喜んでもらえるかなと思って、独学で修業してましたッ。美味しい、ですか?」
「美味しいも何も、最高だ。こんな美味なお茶は初めてだよ」
アルドが笑顔を浮かべてそう言うと、ワドフは酷く驚いた表情で、こちらを凝視した。紅茶が机に零れているが、最早そんな些事はどうでも良いとでもばかりだった。
「どうした?」
「いえ……あの……いいです……」
一体何が気になったのかはさっぱりわからない。美味しいと笑顔で言っただけなのに、それがそんなにも……
笑顔……?
そう言えば、二年前までの自分は感情が表に出る事は殆ど無かったか。まさかあの二年の内に自分の性格が変化したとは考えにくいが、おそらく魔王と言う立場をすっかり忘れて呑気に過ごしていたせいだろう。立場が無い故に自由で、それ故に感情が豊かになる。魔王を忘れていた事は未だに赦せないが、それでも、得たモノは在ったようだ。
しかしそんな事で驚くワドフでは無い筈だ。では一体何に驚いたのだろうか……
「そう言えば、ワドフ。お前、どうやってそこまでの強さを?」
アルドは二年の間に大分衰えたが、それでも戦を経験したモノとしての観察眼だけは衰えていなかった。その上で言わせてもらえば、明らかにその実力の上がり方は異常そのものであり、神様とでも契約したかのような強さである。既にフィージェントに迫っている程と言えば分かりやすいだろうか。二年前のナイツの誰よりも強いと言えば、もっと分かりやすいだろうか。
「そこまでの強さ……ああ。アルドさんが帰ってくる日まで、この大陸の南部を周ったりして、適当に魔物を狩っていただけですよ。一冒険者としてね」
すっかり忘れていたが、ワドフは元々冒険者だ。
「今のランクはどのくらいだ」
「ん……戦神ですよ」
最上級じゃねえかと突っ込む事は控えよう。何か色々馬鹿馬鹿しい。五十年修行して未だに戦神になれない者だっていると言うのに。
「でも、大した事ありませんよ。冒険者のランク何て大雑把に三つ、戦士、戦王、戦神って表してるだけですし。私以上の冒険者何てまだまだたくさん居ますよ」
二年前の記憶で申し訳ないが、戦王は世界で百人弱。戦神は三人だ。今まで戦った者を当てはめるとすれば、アス何とか、デュークは戦王、フィージェント、フィネア、クリヌスは戦神だ。偶然にも三人いるが、この三人では無い。この三人に匹敵する強さを持ってる人物が世界に後三人居ると考えてくれればいい。
———が、その誰しもが壮年を迎えているらしく、若者はワドフ只一人だろう。若さで強さを決めるつもりはないが、それでも大分イレギュラーな存在だ。
「次元が違うって事を認識しろ。その謙虚さは時に下位の者をいらつかせるぞ」
「……すみません」
悪気が無いというのも考え物だ。
「まあ、ともかく。今のお前を相手取るには私では力不足だ。申し訳ないが、暫くは練習に付き合えん」
「―――やっぱり、失った年数分、練習でもしない限りは私に負けてしまうんですか?」
普通の者ならば、そうだろう。違くとも、或いはそれ以上の年数を要するか。何であれ、生ぬるい鍛錬をしてきたモノならば、例外に漏れず、その通りだろう。
自分で言うのも何だが、アルドは他の人より何百倍、何千倍と努力してきたつもりだ。そこまでしてようやく最強に至れた。逆に言えば、そこまでしてようやく人を超える程度という事だ。
そしてその努力は、アルドにあるモノを与えた。
「練習せずともな。私は仮にも剣一本で最強へ至った人物。お前に勝てぬのは、飽くまで力での押し合いであるからで、経験のせめぎ合いではない。やりようは在るさ。それこそ、何でもありと仮定すれば、お前にだって勝機はある」
「つまり、私はまだアルドさんに追い付けていないと?」
「いや―――昔の私はともかく、今の私を優に超えているのは事実だ。それを私が経験でどうにか補っているだけであって、純粋な力であればお前には絶対に負ける」
二年も修行している暇は、アルドには無い。ならばと今持ちうる実力を最大限に生かすのが、自分なりの戦い方だ。
「だがまあ今のままではお前に勝てるかもしれないだけであって、お前の師で在れる程強くはない。一か月で直して見せようじゃないか。私だってお前にはまだ負けたくないしな」
紅茶も三杯目が飲み終わり、既に三十分。五時間なんて直ぐに経つだろう。
それにしても、ワドフは二年もの間に恐ろしい程の成長を遂げた。紅茶を淹れる技術、強さ、体つき。体つきが一番変化が小さいのが驚きだが、元が元である為、むしろ普通だろう。パッと分かる点を挙げれば、筋肉は以前よりも付いていて、胸は間違いなく1、2サイズ程アップしている。全体評価を言わせれば、以前よりも体がしなやかになっている。
だから何が起きたと言うのだ。彼女に。
「……そうだな、ワドフ」
「え、何がですか?」
ワドフは自分の背後で四杯目を注いでいる所だ。
「お前を船に待機させ続けた事、私は本当に申し訳なく思っている。故に……だ。私の部屋に改めて招待しよう」
背後で動きが止まった気がしたが、気のせいと考え込んでおくとしよう。少し気恥ずかしそうにしながら、アルドは言葉を紡ぎなおす。
「まあ、なんだ。お前に寂しい想いをさせたって事は、本当に申し訳なく思っている。それ故の処置だから、その……別にそういう気は―――無いが、何かされたらそういう気が出てくる可能性もある事については理解してくれj
今まで第三者をナイツに見せるような事は無いが、思い直してみれば、第三勢力と悟られなければいいのだ。手は在る。フェリーテ以外には悟られないだろう。
「アルドさんの部屋って、ベッドは一つですよね?」
「ん? ああ。一つだよ。だから狭苦しくて申し訳ないとは思うが、お前には私の隣で寝てもらえると助かる」
部屋に誰かを招き入れるなど久しぶりだが、ワドフを地面で寝かせる訳には行くまい。そういう意味での配慮だ。自由に寝返りをうてないのは不便だろうが、我慢してほしい。
紅茶を注ぎ終わったワドフが、こちらにカップを寄越してきた。
「分かりました」
二年間見てきたモノが男と少女だけだった故か、人がどんなことを考えているかが見抜けなくなってしまった。彼女は今、何を想っているのだろう。
「何考えている?」
「いえ、寝間着はどうしようかなって♪」
妙に心を躍らせているが、自分と寝られる事がそんなに嬉しいのだろうか。彼女の想いは知っているが、だからと言って、想い人と寝るだけで楽しいなんて、ある訳が無い。
……いやいや。どうも好意を寄せられる事が分かると、こういう細かい事を妙に気にしてしまう。人間だった頃はまるで好意を寄せられなかった、或いは気づいていなかったのだろうか。だからかもしれない。ナイツもワドフも侍女も、妙に気にしてしまうのは。今は無理だが、いつかは応えてあげたいと思っている―――なんて言っていると、その『いつか』が一生来ないような気がするので、リスドにおいて、もし、ナイツが再び自分に仕えてくれて、そして、アジェンタ大陸を堕とす事が出来たならば、誰か数人の想いには応えてもいいかと思う。まあ流石に二大陸も落とせば、誰かが変化に気づく可能性はある為、注意は今以上に必要だ。人間を何人か残して、交易の方に充てるべきか。以前とは違って皆殺しをするつもりも無いし、やはりそれが最善だろう。二大陸を落せたとしても、それ以降は確実にばれるだろうし、ならばどうするか―――
先は長い。暫く思考を打ち切るとしよう。
時計を見ると―――二時間。まだ三時間程か。以外に長いものだ。特に話すネタも無いし、どうすればいいのか。
「アルドさん」
「む?」
ワドフがこちらに目線を合わせるように屈んだ。座っている自分と目線を合わせるにしては随分と……ああ、身長も少し伸びた訳か。
「まだ時間もありますし、二年ぶりに再会した事もありますし……また、遊びませんか?」
「遊び。ああ、そう言えば、そんな事もしたな」
そんな、とは言うが、忘れていた訳では無い。彼女の今の体の、触れてはいけない部分をどう躱すかが問題なだけだ。
だが、他に時間を潰すアテはない。待っていても良いが、せっかくあちらが提案してきた故に無下にするわけにもいかない。乗るとしよう。
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