異世界に行ったら、女になったり男になったりで大混乱!? 〜普通じゃない美少女達とドタバタ異世界ライフ!〜

プチパン

四話

「で、今どこに向かってるの?」


 部屋から連れ出されたレイは先程の天使ことメイドの少女に連れられ、城内の廊下を歩いていた。


「あ、すみませんすみません、お伝えするのを忘れてしまっていました⋯⋯。今向かっているのは食堂です、そこでシェーラ様もお待ちになっているかと」


 前を歩いていた少女がぱたぱたと手を振り、焦りを見せながらもそう答えてくれた。
 本当に謝ってばかりで逆にこちらが申し訳なくなってしまうレベルである。
 もしかしてこの夢の中では立場による上下関係がはっきりしているのだろうか。
 そんな事を考えながら歩く事数分、ようやく立ち止まった少女がレイに振り向いた。


「この先にシェーラ様はいらっしゃられます。本当に凄い方です。まだよく分からない事も多数でしょうが、最低限の礼儀は必ずよろしくお願いします」


 そう呟いた少女には先程までのゆるい雰囲気は微塵も感じられず、レイも自然と気が締まり生唾を飲み込んだ。


「あぁ、了解した」


 それを聞いてこくりと頷くと少女のその身には大き過ぎる扉を両手を使ってゆっくりと開いた。


「わーお⋯⋯」


 目の前には巨大な空間が広がっていて、その真ん中には四十人ほどの大人が悠々と座れる程に長い机が置かれていて、その一番奥にはあの王女様、シェーラ王女が座っていた。


「気に入って貰えましたか?」
「は、はい! すごく綺麗だと思います」


 にっこりとした微笑みを向けられ、思わずそう返してしまう。
 そして後悔の念に駆られる、がレイはあくまで平然を装った。


(おい、なんちゅう答え方してんだよ! これは夢なんだぜ? 主人公の俺がこんなドギマギしてちゃ世話ないだろうが! よしここから切り替えろ俺、日々の予習を思い出すんだ。ファイオー)


「そうですか、それは良かったです。そちらに立っているのもなんですし、こちらに座って一緒に食事を取りませんか?」


(よし! まずは印象付けが大事だ、こういう時は爽やかにさらりと)
「はい、大変嬉しいお言葉ありがとうございます。お言葉に甘えさせていただきます」


 と、妙にキメ顔をしてそう言ったのだが⋯⋯。


(て、違〜〜〜〜う!! 全っ然イケボになってないし! そうだよ俺は女だよ、ちきしょう!)


 独りでに息を荒げていた所に、シェーラ王女が首を傾げふふっと笑い手招きをしてきて、レイはこうべを垂らしはぁと溜息をつきながら、一番近くにあった席に座る。


ざっと王女までの距離30メートル程、無音が続くその場にはなんとも言えない空気が漂っていた。


「⋯⋯⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯あのぉ」


 沈黙に耐えかねそう声を掛けるレイ。


「⋯⋯⋯⋯遠くてぜーんぜん聞こえません!」
(いやいや、今明らかに語尾が強かったよね⋯⋯なんか心なしか頬を膨らませてるし、めちゃかわやん)
「いや、あの⋯⋯」
「だから、そんなに遠くに居ては聞こえませーん」


 次は明らかにぷりっとそっぽを向いて不機嫌を表してきて、それがまた可愛かった。


(これが俺のヒロイン⋯⋯位の高い王女様で綺麗と可愛らしいを掛け合わせ、スレンダーつつ出る所はきちんと出ているその胸、そしてそれにツンデレと来たか⋯⋯にへへへへ)


 思わず笑いをこぼしてしまうレイは今現在女の子、しかも超絶美少女な訳でその普段ならクソ気持ち悪いであろうそのニヤけずらも、ものすごく可愛いらしいのだ。


「てかまじでなんで女やねん⋯⋯」


 そう呟いたレイは席を立ちシェーラ王女の元へ歩き出す。
今この世界でどんな事が起きて、自分がどんな存在なのかも知らずに悠々と。

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