猫神様のおかげで俺と妹は、結婚できました!

プチパン

八話 元引きこもりの俺の部屋に妹がいます。

「それっぽい事すら載ってねぇな⋯⋯まぁ、当たり前か」


 八時頃、早めに夕食と風呂を済ませた俺は自室で冷奈の不思議な現象について調べていた。
 結局、一時間調べて何の収穫も無かったのだが。


「はぁ、どうしたものかな」


 俺が背伸びをし、あくびを一つついた所でドアをノックする音が響いた。


「⋯⋯⋯⋯」


 冷奈、か?
 部屋を訪ねるなんていつぶりだよ⋯⋯うーんと⋯⋯二年前に一度冷奈の友達がふざけて開けた時の後に謝りに来た時、以来かな。
 まぁ、謝るって言っても「邪魔しました」の一言を嫌そうに吐き捨ててすぐに閉められたんだけどな。


「どうした?」


 ドアを開くと、予想通り冷奈がそこに立っていた。
 風呂上がりだからだろうか、濡れた黒髪は絹の様に滑らかで妖艶な雰囲気を醸し出している。
 その顔もどこか火照っていて思わず目を下にそらしてしまう。
 ぶっちゃけ言ってエロい、妹とか関係なしにエロい。
 妹にこんな感情を持つのはキモいって?
 絶対にあり得ないって?
 まぁ、普通ならそうだろうな、でも俺らは長年疎遠関係だったからもはや他人のような感覚なんだよ。
仕方ないだろ?
 悲しい事いちいち説明させないでくれ。
 来ている服は少し大きめのロングTシャツでこれまた風呂上がりからか少し下着が透けて──。
 うん、やっぱり──。


「何をジロジロと見ているんですか?」


 あからさまに動揺してしまう俺にため息をこぼしてくる。


「流石変態、まさか男性の次は妹ですか」


「いや、それは絶対に無いから! 流石に、な? それと男性趣味は無いって言ってるだろ」


 流石にこれ以上嫌われるわけにはいかないからな、ここははっきりと否定するべきであって、まぁいくら他人の様な感覚とは言っても、妹に恋をするなんてあり得ないから。


「⋯⋯はぁ、まぁいいです! ずっと入り口で立ち話する訳にも行きませんし、とりあえず部屋に入れてください!」


 なんで急にそんな不機嫌に!?
 あ、あぁそれはもちろん⋯⋯ん?
 今冷奈が俺の部屋に入るって⋯⋯。


「ちょ、ちょっといいか? お前が俺の部屋に入るのか?」


 部屋に戻ろうとした所で踵を返し問うてみる。


「はい、勿論ですけど。だめでしたか? もしかして輝夜、何か人に見せられない物でも⋯⋯」


 そう言った冷奈の周りが黒く歪んで見えだし、俺は即座に首を振って否定を表す。


 いや、まぁ曲がりなりにも高校生ですし? 無いと言ったら嘘になるけどさ、ここで「そうだ」なんて言えない訳で⋯⋯。


「いや、今までこんな事無かったし、嫌⋯⋯? じゃ無いのかな、と思ってな」
「⋯⋯別に嫌⋯⋯じゃ、ないですよ」


「そ、そうか、なら全然入って良いんだけどさ」


 冷奈らしからぬ発言に動揺しつつも、そう言って妹を自分の部屋に招いた。
 実際特別変なものを隠してるわけでもないし、部屋はそれなりに整理してるつもり。
 高校生男子としてそのアレな本やらは普通絶対に見つからない所に隠してある、パソコンだってパスワードが無いと開かない。
 うん、完璧だ。


「それで、どうしたんだ?」


 俺がパソコンの置いている机に付属している椅子に座り、そう問う。
 さっきも言ったが本当に冷奈が部屋に来る事なんて今まで無かったのだ。


 それがいきなり訪ねて来て「入ってもいいか?」なんておかしいってもんだろ?
 まぁ、恐らく⋯⋯。
 そんな事を考えていると、冷奈は部屋をいくらか見渡す。
 兄の部屋を点検なんてまぁ、恐ろしい子!
 そして俺のベットに腰を下ろした。


 あれ? もう一つ椅子を用意してたんだけど⋯⋯まぁいいか。


「意外と綺麗にしてますよね。もっと卑猥なものが乱雑してあるかと思ってたんですが」


「無いからな!?」


「⋯⋯まぁいいです。 いや、この尻尾の事で少し話しとこうかと⋯⋯」


 まぁ、確かに俺も話す予定だったし、訪ねて来てくれたって事は少しは頼ってくれてると捉えてもいいよな?


「あ、あぁ、なんか夢の事で新しく思い出した事とか無いのか?」
「はい⋯⋯肝心な所、私がやらないといけない事についてが全く思い出せません⋯⋯」


 申し訳なさそうに呟く冷奈を見て俺は不思議な感覚になる。
 前はよくこんな感じ、見ていた様な。


「いや、まぁ朝の事から、相当パニックになっていたと思うし仕方ないよ」
「屈辱です⋯⋯」


 そうぼそっと呟く冷奈は羞恥心からか、赤みがかっていた顔をさらに朱色に染めていた。
 相変わらずの嫌われっぷり⋯⋯はぁ。


「⋯⋯⋯⋯」


 俺が虚しさからか何も答えないでいると、冷奈はどう受け取ったのか、


「輝夜に弱点を握られるなんて⋯⋯悪用されて、私の身に何か危険が迫るかも──」
「いやいや、本当に俺の評価やばいな!? 完璧とさえ言われる妹の数少ない苦手な事で脅して、挙句には妹を悲しませる、そんな兄に見られてたのか!?」


 酷い! 流石に酷すぎる!
 俺はそんな事思ってないし、完璧美少女の妹の苦手なものが猫なんて可愛すぎて、チャームポイントにさえ思えてるって言うのに!


「はい、時と場合によっては、男にも妹にも手を出す様な人だと」


 ぐすっ⋯⋯もう心折れるぞ⋯⋯。


「はぁ⋯⋯はいはい、俺はどうせ変態のろくでなしですよ」


 俺はわざとらしく盛大にため息をつく。


「冗談ですよ」
「──っ!?」


 と少し微笑んで見せてきて、顔が熱くなるのを感じる。
 何その不意打ち! 冷奈さん、そんなキャラじゃないですよね!?


 そこで不意に何気ない所へ目線が移ってしまう。
 冷奈の座るベットの前、すぐ近くにある棚、その上に乗っている箱、そんな何でもないような物に何かを感じたんだ。
 そして、実際当たっていた。
 それは突然ずれたかと思うと落下し、俺は気付くと冷奈を抱き入れる感じにしてそれを回避させ、そのまま横倒しになっていた。
 その時に何か口元に柔らかい感覚がしないでもなかったがそんなの関係のない事だった。
 その直後、冷奈が居たであろう所に一辺30cmもあろう箱が落ちる。


 どうして、これが落ちてくるんだ?!
 それなりに重量あるし落ちてくるわけ無⋯⋯⋯⋯。
 そこで今の状況を思い出し、咄嗟に体に回していた手の力を抜き、解放する。
 途端、冷奈が崩れ落ちるようにしてへたり込んだ。
 俺またしてもやらかしてしまったかな、一日で二度も妹に抱きつくとか⋯⋯うん、やばいな。
 しかも、仲が良いわけでも無く、今朝まで話すことすら無かった奴、そして誰もが羨む絶世の美女で完璧な美少女。
 恐る恐る顔を上げると、冷奈は心ここに在らずと言った風で顔を林檎のごとく真っ赤に染めていた。
 目尻を落とし普段絶対にお目にかかる事が出来ないであろうほどに、ふやけた顔で放心している。


 口元を右手で隠して、何か「キキキ⋯⋯シュ⋯⋯」みたいな事をボソボソと呟いているんだけど、何言ってるのか分からない。


「ご、ごめん⋯⋯」


 本当にごめん。
 いや、仕方なかったんだ、別にお前の体が急に触りたくなったわけじゃ無いんだ⋯⋯そんな言い訳が通じるわけ無いよな。


「い、いえ⋯⋯何かおおお落ちてきてたのはっ⋯⋯分かりましたし! 守ってくれたのも──っ!?」


 冷奈が焦る様に早口でそうまくし立てるが、目が合うと顔を引きつらせて逸らす。
 そこまで抱きつかれるのが嫌だったのか⋯⋯でも、守る為だったんだよ。
 俺はたとえ嫌われてもお前を守るって誓ったんだ。
 こんな事でめげてる場合じゃないだろ。


「本当にごめん」


 少しでも許してもらえる様にもう一度深々と頭を下げる。
 冷奈は深く深呼吸、そして「はい。許します、てか助けて貰ったのは私ですので⋯⋯」と頷いた。

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