は、魔王?そんなのうちのブラコン妹の方が100倍危ないんだが

プチパン

14話 はい、小さな村の出身ですので

「 ハクヤとクレア⋯⋯ヤガミ? なかなか珍しい名前だね」
「それよりどうして名前が同じなんですか? 」


 ユリアが首をかしげ、レイラも何かに気づいた様に首を傾ける。
 どこかおかしな事でも話してしまったのだろうか、ハクヤは何かタブーを犯したのではないかと心拍が上がるのを感じた。
 なんせ、ハクヤはこの世界の事なんてほぼ無知なのだ、よほど4歳児の方が詳しいだろう。
 もしかしたら、元の世界とは違う意味合いの言葉があってもおかしくないのである。
 だが、どうにも二人は気分を害した訳ではなさそうだ。


「⋯⋯同じ名前?」


 バレない様に呼吸を正しつつ、あくまでも余裕有りげに問い返す。


「はい⋯⋯性が違って名が同じなんて事あるんですか?」


(あぁ苗字の事か、ここではアメリカみたいに先の方が下の名前になるのかな )


 どうやら、ハクヤの知らぬ所でタブーを犯してしまったわけではない様だった。


「あぁ、ごめん俺達の故郷では後に自分個人の名前が来るんだ。俺らの故郷は人口も少ない小さな田舎町だからさ、可笑しな伝統なんかが今も残ってたりするんだよ」


「あぁそうゆう事でしたか」


 納得といった風に頷くユリア。


「疑ったり⋯⋯とかしないのか?」


 あまりにも簡単に信じ込んでしまったユリアに思わずハクヤは聞き返してしまう。


「この大陸には数え切れないほどの集落や民族が住んでますし、それぞれで独自の文化があったりする所もありますから。それにハクヤ⋯⋯じゃなくてヤガミ君は悪い人じゃ無さそうですし」


 人差し指を頬に当てるようにして、考えるそぶりを見せた後、にっこりと微笑んでくる。
 その仕草の一つ一つはあざとさのかけらも感じられず、可愛らしいの一言に尽きなかった。
 そしてそれに反する様に、そんな純粋な瞳を真っ直ぐに見ることが出来ない自分を恨むわけである。


「そ、そうなのか⋯⋯? ありがと⋯⋯」
「それよりこんな所にいたらまたいつ襲われるか分からないから帰りながら話そうよ! 」


 そこでレイラが割って入ってきた。


「それもそうだな」


 ハクヤは頷くとクレアを背中に担ぎおんぶし、歩き出した。


「どう思う、ハクヤの事」
「よ、呼び捨て!?」
「しっ! 聞こえちゃうって!」
「いや、まぁいい人だと思うよ。優しそうで思いやりがありそうだし⋯⋯」
「確かに⋯⋯それに凄く強いしね」
「あれは凄かったね⋯⋯」


 背後を歩く二人はこそこそと言ってるつもりらしいが丸聞こえである。
 だが、ハクヤはそれよりある一つの事で頭の中が一杯になっていた。


 それは今現在のハクヤ、がクレアをおぶっている件についてである。
 寝ていて力の入らないクレアは必然的にハクヤの背中に体重を預け寄り添う形になるのだ。
 背中には実の妹の年相応に程よく育った胸がぎゅうっと押し当てられているのだ。
 しかも歩くたびに若干揺れるものだから、妙に意識してしまって仕方がない。
 確かに普段からハクヤが「胸を触らせてくれ」とでも言おうものなら、言いたくは無いのだがクレアは喜んで触らせてくれるだろう。
 いや言わずとも触らせようとしてくる始末である。
 だが多くの男性は見せられるパンツよりふとした瞬間に見えるパンツのようにふとした時に当たる胸の方が価値を感じる物なのだ。


「ハクヤさん」
「ハクヤ!」


「っ!? あ、あぁすまない!」


 突然後ろから声をかけられ、身体がビクッと反応し、振り返る。


「何してるのかな、ハクヤ?」


 ギクッ⋯⋯⋯⋯
 ハクヤは口の中が急速に乾いていくのを感じた。


「と、特に何もしてないから気にしないでくれ」


 ユリアとレイラの顔が少し赤くなってるのは気のせいだろうか。


「⋯⋯そうですか。 まぁ、とりあえず早く帰りましょう 」


 二人からジト目を向けられ、思わず目をそらす。




「とりあえず、近くのベギールっていう街でいいんだよね? 」


 そして、レイラが笑顔を戻し聞いてきた。


「あ、あぁそこでいいよ」


(この程よい柔らかさと温かさ、やばい⋯⋯てか、今はそんなこと考えてる場合か! 前には超絶美少女が二人もいるんだぞ妹に発情とか洒落にならないから!? )


 そんな欲丸出しのくだらない思考に頭をフル回転させつつ、二人の後を追いかけた。



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