竜神の加護を持つ少年

石の森は近所です

19.魔法取得

 オーガ戦を終え、オーガから魔石を取り馬車に戻ると――。
クロとフロストの2匹から欠伸で迎えられた……。
なんか解せん。


 「随分と時間が掛かったでは無いか!まさかあの様な雑魚に臆した訳ではあるまい?」
「今回は連携の訓練をしたかったから連携確認の意味もあったんだよ!」
「ほう!なら次は瞬殺してくるんだな」


 ガハハと笑われた。
連携確認は本当だが臆していたのも本当だ――。
だって今回はクロが抑えていた訳でも、フロストが氷漬けにしていた訳でもないのだから。
怖く無いって方が無理があるだろう?
あるよね?
まだ14歳なんだからさ……。


 周囲から、薪の代わりになる枝や枯葉を集め焚き火の火を点ける。
今晩も街で買った乾燥肉と乾燥させた野菜――。
腐り難い芋などを入れ煮込んで……。
肉の旨味が染みて来たら前もって用意してあった、
小麦粉に水を加え、熟成させて練り込み団子状にして――。
最後に平べったく伸ばした、はっとと呼ばれる俺が暮らした地域の郷土料理の材料を入れて少しの時間煮込む。
 うどんの麺では無く、薄いせんべいみたいな感じだ。
材料費自体は安上がりで、しかも――。
うどんと同じ小麦粉を練ったものだから腹にも溜まる。
はっと料理を皆で突っつきながら今日のイアンのインフェルノの話になる。


「まさか一撃で消し墨すら残ら無いとは……指示して何だけど驚いたよ」


私も意外でしたと謙遜しているが、瞳は自信に満ち溢れている。


「アルテッザも凄かったね、これまた一撃で下半身切断だもん」
「私もびっくりです、先日まで武器すら握った事無かったのに……オーガって確かランクBの魔獣だった筈ですから」


 あれでBランクなのか――。
この前のワイバーンが、Aランクって話だったから、倒せて当然と言われるとそうなのかって気にもなるな。


「ホロウとポチはどんな感じだったの?」


必死すぎて見て無かったからな……肩の上のクロにバシリと翼で叩かれた。


 「私達はとにかく二人でほぼ同時に攻撃したのですが、オーガからの反撃も無いまま、あっけなく倒しちゃいました」
「本当に、手ごたえが無さ過ぎだっただに!」


そんなフラグ立て無くていいからねっ!ポチさん。


 そんな話から――。
やっぱりイアンの放ったインフェルノの印象が強かったからだろう。
皆で魔法の練習を始めてしまった――。
もう夜も遅いんだけどね。


 御車台に乗るのは俺だけで、女性陣は豪華なソファーだもん。
しかも眠くなったらいくらでも寝られるし。
なんだろ……ちょっとモヤモヤする。
このパーティー?のリーダーって――。
俺だと思っていたのは、俺だけだったらしい。
また女々しい事を考えておるとかクロは思っているんだろうな――。


そう思って視線をクロに向けたらニヤリとされた。


そろそろウトウトしかかった時だ……。


「出来た!私、出来たの!本当よ、みて!」


 と歓喜のあまり、はしゃいでいるアルテッザが見えた。
どうやら何か魔法を覚えたらしい。ちょっと見に行くか――。


「じゃいくよ!」


元気な掛け声の後に――。


「えいっ!」


 なんとも可愛らしい詠唱をしたと思ったら……。
燃えていた焚き火から立ち上がる煙が、
ぐるぐる渦を巻いて上空に昇っていった。


「どう?すごいでしょう!」


 あ――。今のが、魔法だったのか。
みんな凄い!と褒め称えていてアルテッザも自信満々だ。
なんとも地味な……。
そう思っていたら、思いもよらない方から賞賛の発言が飛び出した。


「まだ拙いながらも風魔法をあの様に使うとは、将来が楽しみだ!」


 ほうほう、風魔法だったのか。
ただ煙が昇っていった様にしか見えなかったが――。


「あの風魔法を極めれば、一撃で街を吹き飛ばすハリケーンを起すことも可能だろうの」


そのクロの発言で自信満々だったアルテッザが凍りついた。


「要は使い方次第と言う事だ!」


 ですよねぇと苦笑いで答えるアルテッザ。
何でも使い方次第だって、核を保有するのも戦艦を建造するのもね!
成功例が増えた事で俄然やる気になったのは獣人娘2人組み
私も魔法おぼえるだに!と張り切りだした。
もう夜中なんだけど――。眠く無いのかな?


 朝方近くに『ドン』というけたたましい轟音にたたき起こされた。
発生原因は。獣人娘二人……。
ホロウが炎の魔法の練習をしていた所に――。
ポチが水の魔法の練習で氷を撃ち込んだ時に、それは起こった。
ホロウの炎魔法が成功し、岩場が加熱。そこに氷が注がれた結果……。
水蒸気爆発を起したみたいだ……。


 魔法が成功した事よりも、あまりの威力に二人共腰を抜かしていた。
当然だ。科学の発達している地球では、似たような事故で原発が吹き飛んで世間を騒がせた。
しょげてしまっている二人には軽く注意だけして寝るように伝える。
明日起きてからその岩を見に行って。


 せっかく覚えたのだから褒めてあげよう。



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