初恋の子を殺させた、この異世界の国を俺は憎む!

石の森は近所です

27話、その後……。

ここはエルドラン王国とエステランド王国の国境。


2名のメイドと2名の護衛の騎士を連れた若い少女が小さな馬車に揺られていた。


王城を脱出する際に物凄い音が鳴り響いたのだけれど……あれは勇者の魔法だったのかしら?もしそうなら、すでに私の国は滅びたと言う事になるわね。
やはり最後は勇者の異能の力によって終結するのね。
自らのお腹を擦りながら、薄く微笑む。
あんな男でも勇者だったのだから、私のこの子が後世にきっと私の願いを叶えてくれるはずだわ。それまで何としても生き延びてその子を育て上げなければ……。
オークの苗床に女子生徒を、勇者の苗床に自らを捧げた王女は、絶望の最中に有りながらも笑っていたのであった。












アオイの元へ一度戻った秋人達一行は、エルドラン王国とアルドバーン王国の領土をヤマト皇国に併合する案を出される事になる。
旧アルドバーン王国の王都の場所には正人が代官となる事が決った。
また、エルドラン王都は壊滅しており、何も残っていない為に新しく街を
築く事になる。
街は京風の碁盤の目の様な通りで構成され、城は環の案で鶴ヶ城に似た物を築く事に決った。
正人と秋人は侯爵位を賜り、秋人は二人の妻を正妻とした。勿論、正妻の1人は岬である。そして環は側室扱いでもいいと言っていたのだが、アオイが、側室の子は正室の子と完全に別扱いされるのがこの世の常であるとして、秋人に異論が無ければ……という条件で、二人を正室として迎えさせたのである。
アオイの幼い頃に受けたトラウマから側室という立場を排除したかったのかも知れないが……。
一方で秋人達の先輩の山田健一はというと、利き腕も環の魔法で切断され。アオイのハイヒールで回復はしたが、切られた腕は元には戻らない。
アオイは山田の使い道を種馬とする事とし、自らの御家来衆でもある、ミカゲの伴侶にしたのである。これにより、ヤマト皇国は過去に例を見ない程の戦力を保有する大国へとのし上った。
一方、侯爵となった正人であるが、週1で白鷺城へ赴いてアオイの寝屋の相手をしている様だが、まだ結婚はしていない。
アオイ曰く――子供が出来て、その子をダンジョンで鍛えたら正人と入れ替わりで代官に任命する予定らしく、子供が出来るまでは結婚はしないらしい。普通逆だろ!と秋人達が思ったらしいが……国を守る王女としては子種が先なのだとか……。
アヴューレといい、アオイといい――考えている事は似ているようである。






フェスリシア王国のリーン王女は、何をトチ狂ったのか?その後、田辺繭との婚約を発表。半分国王から絶縁状態となり、ヤマト皇国の国境近くの街の領主となり、繭との凹凹生活を楽しんでいる様だ。


レミエルはというと……1万年の地上での奉仕活動を秋人と岬の願いを成就させた功績により、免除され天界へ帰っていった。
今は何をしているのか全く分らないが……おそらく凸凸動画を見て楽しんでいるに違いない。






それから5年後……。




アオイは二人目の子供を妊娠しており、長男は既に今年5歳。
丁度、アオイが覚醒した歳になっていた。
アオイの子の父は当然、正人でアオイと正人の子らしく黒髪で、瞳の色は正人に似た黒だった。5歳にして勇者の能力が覚醒するかは、ダンジョンでの結果次第であるが、恐らく勇者の遺伝子が多く入っている為に覚醒すると思われている。


岬と環もそれぞれ3人目の子供を妊娠しており、岬は最初に長女を出産、次も長女、そして次こそ男をと、例の神様にお祈りを捧げていたのであった。
環の子は男、男、である事から環は次は女の子がいいわと言っていたそうだが、別に願掛けをしている訳では無い。
鶴ヶ城に似た城もほぼ完成しており、街から見える城の光景はこの周辺の観光スポットになっていた。


一方、アヴューレはというと……何とか逃げ切ったものの、その後に盗賊に襲われ、護衛騎士は討ち死に。付き添いのメイド2名と共に盗賊の慰み者となった。当然、妊娠していたアヴューレは出産する事無く死産となり。
その後、盗賊たちがアヴューレをどうしたのかは一切の消息が掴めなくなった。






更に5年後……。


アオイの父が神殿から出て、孫と遊んでいる時に倒れそのまま他界した事で、ヤマト皇国の初代女王にアオイが君臨する事になり、その王配に正人が正式に付いていた。
最初は正人はただの種馬と目されていた部分もあったのだが、アオイはスポーツマンである正人を実は気に入っていたようだ。
長男の王子は今年10歳となり、旧アルドバーンの領主として小さいながらも辣腕を振るっていた。
2番目の子は女児で、母親譲りの強気な性格でたまに1人でふらっと兄の下へ行っては魔法対戦などと称して、荒地を増やし帰ってくるらしい。
もっともこの荒地になった土地は元々、魔獣が多く生息していた場所である事から、兄妹で遊び半分で討伐していただけであったが……。ヤマトの王子と王女の名は一躍有名になったのであった。


秋人はと言うと、元々優秀じゃ無かったのに国を任され、最近では仕事を放り出して娘達や息子達と一緒にシルバーと出会った森へ魔獣退治に行っているようであった。シルバーはと言えば……エルドラン王国が滅亡した後で、秋人と一緒にワニ退治に行きそこでレベルが上がったと思ったら、人化したのである。しかも女児に……。
本人はこれで秋人と話せると喜んでいたのだが、数年経過しても女児のままで、今では秋人の子供の方がシルバーの兄、姉の様に思われているのである。シルバー本人が気にしていないので問題は無いが……一度、僕も子供が欲しいとせがまれた事があったが――それは、岬と環に止められた様である。
流石に幼女と秋人が絡むのは他の子供の教育上よろしくないと思った様だ。








更に10年が経っていた……。


アオイ王女37歳。まだまだ現役であった。正人との間には結局子供が4人生まれ、長男、長女、次男、次女とまさに理想の出産であった。
長男も既に20歳で岬が産んだ女の子と結婚して旧アルドバーンで仲良くやっている様であり、岬の娘が現在2人目を妊娠していた。最初の出産で男の子が産まれたので、万一、アオイが他界してもその子が旧アルドバーンを治め、長男がヤマトを継ぐ事になっている。
まさに親子3代まで安泰である。
他の子供達も皆、すくすくと育ち、長女は来年、環の子と結婚する事が決っている。アオイは勇者の血を他国に流さないように出来るだけ自然を装って身内での結婚を推奨したのである。


秋人達も、もう36歳である。秋人もいい加減に大人になり、国政は長男に譲り夫婦3人で隠居していたのであるが……ここで問題が発覚した。
今まで、幼児の姿だったシルバーがレベルアップして妙齢の女性に変化したのだ。妻二人は既に36歳。若い子に触手が伸びた事を誰が責められようか?シルバーの念願だった妊娠が発覚し……その1年後にシルバーが5つ子を出産した。それは見事な狼獣人の男の子3人、女の子2人であった。
これにより、秋人の子供は全部で11人となった。
岬と環は3人目以降は妊娠しないようにしていた為で、このシルバーの出産によって秋人の立場は急落、鶴ヶ城は岬殿、環殿、シルバー殿の御三家の集まりと言われるようになる。
勇者と魔獣が交わり獣人が生まれた事で、ヤマト皇国の勇者の血を持つものは実に20人を越えた。当然、ミカゲと山田にも子供が3人生まれていた為にヤマトの将来は安泰であった。




場末の色町では30後半の乱れた服装の女が、男を寝屋に誘いながら――
あたしは昔は王女だったのさ。そう言って男と一夜を共にする女が出没した――そんな噂を聞きつけ、アオイや環、岬、秋人が見に行った事があったが、そこに居たのは頭の狂った金の為に何でもするただの娼婦だった。
そこに居たのは間違いなくアヴューレだったのであるが、20年も前に少し見ただけの環も、周辺国会議で顔を合わせたアオイすらも見る影が無い有様の、娼婦に落ちぶれていた。




こうしてエルドラン王国から始まった勇者召還の歴史に幕が下りる。


ヤマト皇国が結局1人勝ちの状態になり、フェスリシア王国とエステランド王国だけが生き残ったのであった。




                                        完

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