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初恋の子を殺させた、この異世界の国を俺は憎む!

石の森は近所です

24話、ヤマト国境防衛戦

秋人と環がリビングで待機しているとミカゲさんがやって来て、オーク達を乗せた馬車が間もなくカロンの町に到着すると教えられた。
秋人は行った事が無いのだが、環はここに来る前に立ち寄ったらしく、カロンからここの王都まで、半日の距離だと教えて貰っていた。


「いよいよ決戦かぁ」
「本当に大丈夫なのかしら?」
「アオイさんがああ言うんだから大丈夫なんじゃないの?」
「そ、そうよね?ここまで必死にレベルを上げてきたんですものね」
「何時でも出発出来る準備は出来てるし……後は気合を入れるだけだ!」
「うん!勝って皆を助けにいきましょう!」


そして、程なくアオイがやって来た。


「準備は出来とるようやね。ならいきましょか」
「おう!」
「はい!」
「クウゥーン!」


3人と1匹を乗せた馬車は、エルドラン王国とヤマト皇国の国境へと向かう。
馬車は他にも6人掛けの座席の物が5台連なっており、他にも騎馬武者の格好をした兵が周りを取り囲んでいた。


「お城を離れちゃって大丈夫だったんですか?」
「心配あらへん。父が神殿におるよって結界が働いとります」
「なるほど……国王様ってちゃんと仕事していたんですね」


なんとも失礼な男である。
元々、国王の篭っている神殿は城の防御とダンジョンの防御の両面を補っている為に、そこに国王がいるのは無駄ではないのである。


「それにしても、シルバーあれだけ一緒にレベル上げたのに大きく成らないな。なんでだ?レベルあげただけでは大きさは変わらないのか?」
「クウゥーン?」


そんな事、私に言われても分らないわよ!とでも答えている様だが、秋人達には伝わる事は無い。
「先輩達が出てきたら、今度こそ前回の借りを返さないとな」
「クウゥーン!」
「そんなコテンパンにやられたんだ?」
「アオイ王女が来なかったら確実に死んでいたからな……」
「それは……大変だったのね」
「クウゥーン」
「でも今回はそうは行かないだろうけどな」
「あれだけレベル上げはって負けたら、再教育どすなぁ~」
「そ、そうならない様に頑張るよ」
「そうね……」


これからの戦いよりも、アオイの再教育の方が嫌だったようだ……。
それも無理は無い。この2週間近く、ダンジョンにずっと篭らされたのだから――。


「もうそろそろ、国境の砦が見えてくる頃どすなぁ」
「意外と近いんだな」
「元々は領土で言えばエルドランの王都位まではうちの国があったらしいんやけど、初代勇者の子孫も4代目まで来ると、他国の召還した勇者にやられましてな……領土も今や、こんなに小さくなってもぉたんどす」
「成る程……それで他国の国境と王都がこんなに近かったのね!」


普通は他国の侵略を考えたら、こんな近くに王都は作らないからな……。
王城は移転出来ないし、仕方が無かったといった所なのだろう。


そんな他愛も無い話をしていると、前方の国境付近で砂煙が立ち上っているのに気が付いた。


「なんや、もう始まっているみたいどすなぁ。急ぎましょか!」


アオイの指示を受け、御者席に座っていたミカゲが周囲の鎧武者へ伝令する。
馬車の速度がぐんぐん速くなっていき、こちらも砂煙が立ち上りだした。
国境近くの高台に着くや否や、アオイが砦の前に固まっているオークへ向け魔法を放つ。
『ファイアーバースト』
火の固まりが飛んで行ったと思ったら――『グワーン』という破裂音と共にオーク達の周囲で破裂した。
まるで焼夷弾が放たれた後の様に、炎が周囲に飛び散り、固まっていたオークへと襲い掛かった。
燃え盛っているオークは体を地面に付けて火を消そうとしているが、まるで油でも掛かっているように皮を焼き、肉をも焼いていった。
苦しみ悶えるオークの後ろから他のオークが水魔法を使って消火し始めた。


「あいつら、本当に魔法使ってるぜ?」
「情報通りって事ね」


続いて秋人が『ファイアーランス』を放ち、隣の環も『ラーヴァフォール』を放った。


3連続で火魔法に見舞われたオークもこれには参ったようで、次々と焼け死んでいく。


続いて『ファイアーウォール』4回連続火魔法となる業火のカーテンを放つが、これは結界で防がれた。


「こいつら自分の意思で結界も使うのか?すげーな」


秋人、感心している場合ではないのだが……。


馬車は砦の脇にある兵宿舎へと横付けされ、そこから中へ入ると砦の上に出られる様になっていた。
3人で階段を駆け上がり、砦の壁の上から下を覗きこんだ。
すると、まるで狙ったかのように、オーク達からファイアーボールが放たれた。


『ハイガード』結界魔法を詠唱したのはアオイが先か、秋人が先か?
半径3mもの範囲の結界が秋人達を守り、結界に触れた途端にファイアーボールは消滅していた。


「さぁバンバンいきますえ」
『サウザンドアイス』『ストリーム』『ブリザード』
氷の魔法で凍てついたオークの体を、切り裂く様に竜巻が襲い掛かる。


オークの数が半分を切った頃に――。


「あーぁ、見ちゃ居られねぇな」


そういって馬車から出てきたのは……山田と鈴木であった。


「よぉー秋人に五十鈴じゃねーか!この裏切り者め――」
「私は裏切ってないわよ!あなた達がおかしいだけじゃない!」
「言ってくれるぜ!一年坊がぁ!」


お互いに魔法詠唱が始まりアオイが『グラビティ』を素早く唱えると……。


「もうその手にはのらねぇーぜ!」


そう言って、二人は引きはなれ、グラビティの範囲から外れた。様に見えたが、素早さの高い山田は避けられたが、鈴木はまだ範囲に居たようで、
体を地面に叩きつけられていた。


「ぐっ」


嗚咽を漏らすが、今のアオイは前回と違って容赦が無い。身動きが出来なくなっている鈴木目掛け『シャイニングカノン』が放たれた。
『ハイガード』山田がフォローの結界魔法を鈴木へとかけた。鈴木もヤバイと思ったのか?『ハイガード』を重複させかけた。
その2重の効果があったのか?アオイが放ったシャイニングカノンは鈴木の足下を焼いただけで止められた。


「前よりはつよーなっとるみたいやけど……避けているだけではあきまへんねぇ」


『シャイニングブラスター』さらに上位の光魔法を放った。
どば~ん!と言う激しい音と共に鈴木に襲い掛かった魔法は、山田と鈴木の結界魔法をいとも容易く破壊し、鈴木の肉体へと到達した。
光が収まった時には、鈴木の下半身が消失していた。


「鈴木ぃ~糞、よくも鈴木をおぉぉー」


山田が怒りに充ちた瞳をアオイに向けているが、秋人が砦から降りて接近して来ている事に気づいていなかった様だ。
急にわき腹に衝撃を食らったと思った山田が、視線を右側へ向けると――。
そこには、槍を持って自分のわき腹に突き刺している秋人の姿があった。


「先輩、お返しです!」
「この1年がぁぁぁぁー調子のってんじゃねぇーぞ!」


山田はすかさず抜剣し、槍を切ろうとしたが――秋人が山田から距離を取ると槍は消え去っていた。空を切る山田の剣。空振りしたお陰で横腹に付加がかかり、傷口からは大量の血液が噴出しだした。


「もう降参して下さい。そうすれは命は助けます」
「わかっ……」


恐らく分ったと言いたかったのだろうが……それは途中で止められて、
山田が苦しみだした。


「隷属の腕輪の効果か!」


秋人が叫ぶが……山田の目には光が失われていた。
まるで夢遊病者の様に――ふらふらしながら剣を振るってくる。
これにもはや、山田に自分の意思は残っておらず気だけで戦っているようであった。


「あの腕輪さえ何とか出来れば……」
「秋人君がやらないなら私が――『アイスブレード』」


環が放った氷の剣は容赦無く山田の腕を切り落とす。隷属の腕輪も一緒に地に落ちた。


「ぐあぁぁぁぁぁー痛い、痛いよ~」


山田の意識が戻った途端、痛みを思い出したかのように……苦しみだす。


『ハイヒール』アオイが掌を山田に向け回復すると、切り落とされた腕はそのままだったが、血の流失は止まった様であった。
秋人は鈴木を見たが――鈴木は既に息を引き取っていた。
これは戦争だ、自分が甘い顔をすれば次は自分が死ぬ。復讐する前には死ねない。
そう思い……槍を掲げオークへと突進していった。


その光景を離れていた所から観察していたオドリーは――
最早、勝ち目が消えた事に愕然としながらも、進軍してきた道を馬に跨って引き返していった。



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