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初恋の子を殺させた、この異世界の国を俺は憎む!

石の森は近所です

17話、アオイ・ヤマト

 この白鷺城は天守閣を含め、地上7階の巨大な要塞になっている。
1階あたりの高さが、日本のビルのそれよりも高い為に、
実際はビル換算で10階相当の高さであると言えるだろう。


アオイ王女の住まいは基本的に秋人達が招待され会った場所だが。
他にも、西の丸があったりして別の寝床もある。


 ヤマト皇国の現在の国王は、
ダイジロウ・ヤマトと言うらしい。
何故、らしいなのか?
この数年、食事時も寝る時も――。
この城の地下にある、
初代勇者が建造した神殿に篭りっきりで姿を見せないかららしい。


どうして篭ったのか?


 これにはアオイ王女の出生が大きく関わってくる。
アオイ王女は覚醒遺伝で生まれてきた事は有名な話だが、
アオイ王女の母君は、正当な国王の妃では無い。


 見目麗しい美女を、たまたま国王が外遊に出た際に認め。
ヤマト皇国へ連れ帰り、西の丸に押し込んだ。
当初は妃との仲があまり良くなく、
国王の女好きが始まったと……。
周りの者も、呆れ半分に眺めていたのだが――。
状況ががらりと変わったのは、西の丸様と呼ばれたその側室が、
女児を出産した事から始まった。


 ヤマト皇国は初代から数え、
3代目までは勇者の能力が色濃く残っていた事で、
周辺各国を武力で攻め落とし、
巨大な国家となっていたのだが……。
それ以降は代を重ねる毎に、その能力が目に見える程に弱体化した。
それ以降、逆に周辺各国が召還した勇者に好き勝手され。
領土も、初代勇者の召還前より縮小せざるを得なくなった。


 ヤマト皇国は周辺各国から過去の清算を迫られ、
貿易品に関してはヤマト側から出す時には無税で安く販売し。
逆に周辺国から買い取る時には膨大な関税がかけられる様になった。
さらに、ヤマト皇国が二度と勇者召還が行えない様に、
過去の資料を全て取り上げられ。
周辺各国に隷属する国へと貶められた。


 その状況ががらりと変わったのが、西の丸様のご出産であった。
生まれた当初は髪の色は黒でも、瞳が母親と同じ青だった為に、
誰も覚醒遺伝の可能性に気づかなかった。
だが……。
 アオイ王女が5歳の時にそれは起こった。
妃の子、当時の王子がアオイを激しく虐め、虐待したのだ。
汚らしい血の娘め!と……。
西の丸から城の庭園に出た途端にこれである。


 西の丸の母君はこれに気を病んで、翌年には他界。
国王以外に肉親の居ない、アオイ王女への虐めは苛烈を極めた。
だが、状況が変わったのはアオイが7歳の頃。


 いつもの様に、王子がアオイを虐めて居た時にそれは起きた。
アオイを木に縛りつけ、矢の的にしていた王子が放った矢が、
狙いを外し、アオイの眉間に当った。
これでアオイはこの世から消えたと、
周りで見ていた御家来衆は誰もが思った。
所が、当った筈の矢は眉間の手前でプリズム結晶に止められ、
そのまま、地面に落ちた。


次の瞬間、アオイから膨大な魔力の奔流が王子へと流れていき、
王子の姿は砂となって消滅した。


そしてアオイから語られた言葉は、御家来衆の心胆を寒からしめた。


「うちは能力を開花させた、よう好きな事はさせへん」


 それからの御家騒動は、益々苛烈を極める。
王子を唆し、西の丸様を貶めた妃にアオイは復讐を開始する。
その結果、妃も王子と同じ運命を辿った。
更に妃の味方をし、アオイを虐めた家来も親戚も全て――。
この世から消え失せた。


この国で残った王族は国王とアオイだけに成っていた。


 周辺各国がヤマト皇国の異常に気が付いたのは、その頃であった。
その頃になると、アオイの能力は益々磨きが掛かり、
兵を差し向けても、全て全滅させられる事になった。


 国王は、自分の至らなさから西の丸様を死なせ、
お家騒動にまで発展させた事を恥じ。
以降、城の地下深くの神殿へと篭る事になる。


 ヤマト皇国の実質的な支配者は、アオイ王女となったのであった。
アオイ王女がまず始めたのは、
他国の隷属からの脱却。


 税をかけずに輸出していた品に関税をかけ、
逆に、アオイに危機感を抱いて兵を差し向けたフェスリシア王国へ――。
莫大な賠償金と、ヤマトが輸入してきた品の関税を、
完全に撤廃させたのである。
立場がまるっきり逆になった瞬間だった。


 他のヤマトに攻め込まなかった周辺国は、
アオイに危機感を募らせながらも、
フェスリシア王国の二の足を踏む事を危惧し、
ヤマト皇国から輸入していた品に関税を認めたのである。


それ以降、周辺各国はヤマト皇国に頭が上がらなくなる。
たった一人の覚醒遺伝の勇者の存在で――。


今回、周辺各国が勇者召還を再度行い出したのも、
分ると言うものだった。


 ただ被害者の秋人達にしてみれば、
ふざけるな!
の一言であるのだが。


 朝、朝食をご馳走になり城の中を案内しながら、
アオイの側近でもある、ミカゲさんが説明してくれた。
彼女は金髪でセミショート。小顔でくっきり二重の、
アオイ王女と同じブルーの瞳で、外人の容姿なのだが、
背は150cm位だろうか?
背の低さの割には、
赤の着物が似合う女性であった。


「アオイ王女は苦労人なんだな」
「今は、よう気にしいやへんとおもおすますやけどね」


この国が京都風の話し方をするのは初代の頃かららしい。
これも、出生地の京都を懐かしんで広めたと説明してくれた。


秋人が育ったのは、地方でも訛りや方言の少ない土地柄だったが、
その初代の気持もわかる気がした。


 ミカゲさんの説明と案内もほぼ終わり――。
アオイ王女に呼ばれて、
天守閣へとやってきた3人は、
再度、昨日のアオイの部屋へと入室した。


「今日きてもろたんは、あんさん達ん能力を上げる為ん方法を、教えるためどす」
「魔獣を討伐すればレベルがあがるのでは?」
「そないなんやけど、簡単なんは、やくり強い魔獣を倒す事どす」
「強い魔獣って言われても……」


秋人が居た、あの森にはそれ程強い魔獣は居なかった。


「こん国には、魔素溜まりに、造られたダンジョンがおまっから、ほんで育成どしたらいいでっしゃろ」


 この国には、初代が残したダンジョンがあるらしい。
魔素溜まりを利用したもので、主に兵の訓練に使っているが……。
年々、成長を続け、今では地下何階までのダンジョンなのか?
それすら、把握出来ていないらしい。


 ここでレベリングするなら、アオイ王女も一緒に、
秋人と環のレベル上げに付き合うと提案してくれた。
秋人にしても、環にしても自分の能力が未だ使いこなせない。
喜んでアオイ王女の提案に乗ったのである。


「では、アオイ王女。よろしくお願いします!」




















 レミエルが狼2匹を砂に変えてから10分後、
漸く、正人と岬の繭が見えてきた。
砂煙を上げながら近づいてくるのだ、
正人はそれに当然気づく。


「な、なんだありゃ!」


 この世界に馬車はあっても車は無い。
後ろから猛スピードでこちらに向って来なければ、
あれ程の、砂煙は起きない。
正人は最初から敵対対象として、
敵意をむき出しにし――。
剣を鞘から出した状態で、待ち構えた。


『ゴォォォー』という音が聞こえてくる。
目の前まで来た!
と、思った瞬間には。
どうやって静止したのか?
目の前に……。
身長130cm位で、白い髪をお尻まで伸ばした、
肌の色が白い、二重で青い色の瞳が大きな……幼女が立っていた。


「はぁ?幼女……」
「おい、お前、随分失礼な奴だな」
「何を、幼女に幼女と言って何が悪い!」


次の瞬間……正人は地面にくっ付いた。
まるでヒキガエルの様に……。


「なっ、何が――」
「お前が失礼なのが悪いのだぞ」


幼女はそう言うと、岬が篭った繭を両手で掴んだ。


「お前も、お前だ。こんな殻に閉じ篭りやがって、お陰でこっちは1万年もこんな居たくも無い世界に落とされたんだぞ」


掴んでいた繭の殻は……幼女の言葉が終わるや否や――消し飛んだ。


中からは素っ裸の状態の、岬が体を丸めた状態で現れた。


「なっ――」


 これに驚いたのは正人である。
正人の倒れている所から岬のお尻が丸見えだったのだから。
『ブッ』さすが、童貞の正人……お約束である。
鼻血を噴出しながらも、目線は岬のお尻に釘付けであった。


「おい、早く起きないとあられも無い姿が、この男の目に焼きつくぞ」






 岬は夢を見ていた。
秋人と出合った時の夢を……。
必死に謝りながらも顔を赤らめて。
可愛いとは思った。
でもその後の、自分の気持に気づいた時ほど、
秋人を愛おしいと思った事は無かった。
私は汚れてしまったけど……。


 秋人君だけは――。
眠っているのに瞼から涙が零れ落ちるのがわかる。
自分の思いを。一つも打ち明ける事なく死んだ――。
神様にチャンスを貰って、地上に戻った。
でも……結果がこれでは。
わたしきっと死んだら浮かばれないな……。


 後悔しかない。
中学の3年間で話し掛けようと。
勇気を奮えば、いくらでも出来た。
その勇気が無かった為に――。
あぁ、秋人君の顔を見たいよ。
秋人君に会いたいよ……。
そう思って、泣いていると……肌を舐められたような不快な感じを受けた。
まさか、また眠っている間に犯そうと言うのか!
無意識に岬は魔法を発動した。
それも特大の破滅の魔法を……。



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