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初恋の子を殺させた、この異世界の国を俺は憎む!

石の森は近所です

10話、蠢く陰謀

 ゴブリンとオークを倒した秋人とシルバーは魔石の回収を済ませ、
オーク肉の串焼きを食べていた。


「すげーな。まさかオークの肉がこんなに美味しいとは……」
「クウゥーン!」


別に普通の肉なのだが、腹が空いていれば何でも美味しいのである。


「シルバーも少しは強くなったのか?」
「クウゥーン!」


 強くなれたよ!と言いたげだが……まったくそうは思えない。
だが確実に昨日のシルバーよりは強くなっているのだった。
 これで風呂でもあれば文句無しなのだが……。
秋人のイメージでは思いつかなかった為に、風呂は無い。
穴を掘って水魔法で水を溜め込み、ファイアで熱すれば出来上がりだが。
心に余裕が無かった為に思い至らなかった。


 腹も膨れると一気に眠気が押し寄せてくる。
丸一日、歩き続けたのだ。
それも当然だろう。
 枯葉を敷き詰めベッド代わりにした俺はそのまま横になった。
季節は日本と同じなら、後1月で夏の筈だが――。
深夜のこの地は異常に寒く感じた。
寒いのは秋人の心だと――。
きっとそれもあるのだろうが……。
荒れた荒野は熱の放出も早い。
寒さに震え深夜目を覚ますと、目の前に真っ赤に染まったシルバーが居た。


「おい、シルバー。どうした!」
「クウゥーン?」


シルバーも俺が起きた事に気づいたが中々近寄ってこない。


「ライト」


 明かりの魔法で頭上に明かりを発生させシルバーを見てみると……。
シルバーが怪我をした訳では無く。
シルバーの周りに転がっている蛇が血の発生源だと気づいた。


「深夜に蛇が近寄って来ていたのか?」
「クウゥーン!」


 良く蛇を見てみると、蛇の色は鮮やかな黄色だった。
地球の知識では色鮮やかな蛇の方が致死率の高い毒を持っている事が多い。
この異世界でも同じなら?
解毒魔法を習得していない秋人では対処が出来無かっただろう。


「シルバーが守ってくれたのか?」
「クウゥーン!」


 どう?見た?強いでしょ!
そんな風に自信満々だったが、綺麗な毛並みは返り血で散々であった。


「有難うな!でも大分汚れちゃったな」
「クウゥーン」


「待っていろ、今洗ってやるから!」
「クウゥーン!」


 秋人は水魔法を出し、シルバーに付着した血を綺麗に落とした。
洗っている最中に、もしかして!
風呂の作り方に思い至ったらしい。
穴を掘るには……。
ケイブでいいのか?
試しに地面に穴が開くイメージをしながら魔法名を呟く。


「ケイブ」


………………ケイブじゃ無かった様だ。
普通に捻らないで考えれば良かったものを……。


「まさか、ホールでいいとか?」
「クウゥーン?」


「ホール」
『ゴボッ』と音がして直径1m位の穴が開いた。


「おおぉー成功したよ!シルバーこれで風呂に入れるぞ」
「クウゥーン!」


 風呂が何か分って無い様だが秋人が喜んでいたので、シルバーも喜んだ。
その穴の中にウオーターで水を溜め。
次にファイアで温めた。
そして10分後には温かな風呂が出来上がった。
秋人もシルバーと一緒に入る。
お湯は適温なのだが、入浴している最中にどんどんお湯が減っていき……。
上がる頃にはお湯は地面に吸収され消えていた。


「使えねぇ!」
「クウゥーン」


 いくらお湯を溜めても浴槽の材質は土なのだ。
それを解決しない限り何回やっても同じだろう。


「今回は初めてだったんだから仕方無いか」
「クウゥーン!」


 そうだね!とシルバーも同意してくれているし。
体も温まっている。
今の内に――二度寝しよう。




 太陽が昇り始め、瞼に熱を感じだした頃に周囲が騒がしい事に気づいた。
馬に跨った騎士らしき人達が森と荒野の境を北から南へと駆け回って行ったのだ。
生憎、岩の陰に隠れるように寝ていた為に発見されなかったが……。
残虐姫の命を受けた捜索隊に相違なかった。
秋人がそれを知るのはもうしばらく後になるのだが。


「朝からご苦労さん」
「クウゥーン」


遠ざかっていく騎士の後姿を眺めながら暢気にそんな事を言っていた。


 他人事か!
当事者なのに!


 朝飯は昨日狩ったオークの肉である。
さすがに2度目になると美味しさも半減。
味気無い肉にうんざりしながら食べた。
シルバーを肩に乗せた状態で森へと入っていく。
ちなみにいつ食糧が尽きてもいい様に……。
オークの肉を穴に入れ氷魔法で冷凍保存した。


これで森の中で食糧を探せなくても当分は持つだろう。


 森へ侵入してしばらくすると狼の群れに遭遇した。
狼はこちらをジッと見つめて居たが、そのまま何もせずに立ち去った。
ただ特に、気になったのは――。
狼の群れを見てもシルバーが敵意も好意も向けなかった事だ。
てっきり、シルバーを迎えに来たのか?
それとも、狩りに来たのか……。と思ったのだが。
拍子抜けした。


 そのまま森の奥深くに侵入すると、シルバーが唸り出した。
秋人もここ数日で慣れたもので、アイスアローを肩の上に準備した。
すると……奥から出てきたのは100体近いゴブリンの集団。
集団の最奥には昨日、逃げていった一回り大きなゴブリンが2体。
どうやら、こいつらを率いているのがあの2体なのは確実だった。
これだけ数が多いと『グギャグギャ』騒ぐ声も煩い。


「耳障りなんだよ!」
「クウゥーン!」
 発動待機中のアイスアローを後方の2体目掛けて撃ちだし、
続けて、ブリザードを広範囲に吹き付ける。
冷気を避けたゴブリンが横から襲い来るが、
持っていた槍で下から掬い上げるように斬りつけた。
今の秋人は教室でオークを殺した時よりもさらに強い。
突き上げられた槍の穂先がゴブリンの股から腹へ抜けると……。
『ザッ』という音と共に腹の内容物、
 腸が飛び出した。
その後ろから来たゴブリンに結果的に振りあがった穂先を今度は下へ。
振り下ろす――。
その穂先はゴブリンの頭にヒットし、
頭蓋骨を粉砕、周囲に脳みそをばら撒いた。


最初に凍らせた真ん中のゴブリンの集団はシルバーが襲い掛かっている。
左に狙いをつけ再びブリザードを発動させる。


 秋人達に襲い掛かろうとしていたゴブリンで立っている者はもう居ない。
秋人が凍らせ、生きていたゴブリンはシルバーが始末した。


「良くやったな!ご苦労様」
「クウゥーン!」


 余裕が無くて最後方の大きなゴブリンがどうなったのか?
確認していなかったが。
この後、魔石と取る作業に入った時に氷槍で貫かれて死んでいるのを、
シルバーと共に見つけた。


「こいつら大きい割に最初の攻撃で即死していたんだな」
「クウゥーン!」


シルバーは当然だよ!私達に敵は居ない!とでも言いたげだ。


それから大分時間をかけ、魔石を全て回収した秋人達はその場を退去した。


昨日、野宿した場所に戻ったのは、


暗くなってからだった。














 岬は……。
連れて来られた王城の寝室で頭を抱えていた。
それもそうだろう。
ここへ連れて来られた時にフォルスター王子から、


 『声を出せない女性に不埒な行いをする輩が居ないとも限らない。君の安全の為に、女性しか入れない場所を用意したよ』


そういって連れて来られたのがこの――後宮なのである。


 いくら異世界音痴の岬でも……。
後宮の意味くらいは知っている。
よく。王家に嫁いだ姫が篭る場所だ。
日本で言えば……王奥に近い。
あの王子……声が出ない私をこんな所に閉じ込めて。
どうするつもりよ!
声に出せないが――岬は憤っていた。


 「おい、バーン。あの子をどうするつもりだ!」
「マサト、怖い顔で睨むなよ……」
「別に安全の為に、保護しただけなんだからさ」
「それならいいが……もし戦争に巻き込むと言うなら――」


何処からとも無く剣を取り出したマサトはバーンの首に剣先をつける。


「分っているよ。だからそんな物騒な物は仕舞っておくれ」


マサトも別に本気で害を成すつもりは無い。
大人しく剣を消した。




 それにしても言葉も話せない、文字も分らないでは意思疎通が出来ないな。
こっちの文字を覚えてもらうしか無いか?
岬と何とかして会話をしようと考えるバーンだった。


 マサトに頼んで日本語で筆談すれば問題は無いのだが、
それは都合が悪いらしい……。


 フォルスター王子から身の安全を約束されたのはいいけど……。
これじゃ、身動きも取れないじゃない!
しかも。学校を召還したのはこの国じゃないって言うし。
いつまでもこんな所に居られないのに……。
















 「アヴューレ王女、隠れていた1名の名前が判明しました」
「名前などはどうでもいい、隷属出来ないなら殺せ」
「畏まりました……」




 オドリーは王女の機嫌を取るのに必死だった。
自分のミスで国が危機に瀕するのだ――当然だろう。
あの男が国外に逃げたら……。
自分の首も姫に飛ばされる。
ある程度、外見はドルワージュの村のガーナッシュから報告を受けた。
だが、どの様な者なのか。
勇者達に話を聞いてみるか。



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