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初恋の子を殺させた、この異世界の国を俺は憎む!

石の森は近所です

2話、それぞれの歩み

  秋人は岬の体を抱きしめたまま嗚咽を漏らしていた。
だが今のこの状況がそれを許してはくれない。
次々に襲い掛かってくるオークを前に、無防備な体勢でしゃがみ込んでいては格好の的になるだけだ――。
秋人は岬の体を抱き起こし、教室の隅にそっと降ろした。


「すぐ戻ってくるから」


  もう秋人の声は彼女に届かないがそれでも何か声をかけたかった。
彼女ともっと話したかった秋人の心残りがそうせざるを得なかった――。
正面から襲い掛かってくるオークに対峙する前に、再度振り向き岬を見る。
岬がそこに居るのを確認し再度オークに向き直る。




「あ゛ーっ!あ゛ーっ!」


  まるで秋人の心の悲鳴の様な声をあげながら必死に槍を突く。
飛び散る血の色は緑、さっきの岬の血は赤かった。
じゃこれは何?さっきは岬がオークに見えた。
何故?秋人は訳が分らず混乱した。


  なんで岬の血が緑じゃなかったんだ!と――。
緑なら岬じゃない可能性もあったのに。
秋人は必死に、襲い掛かってくるオークの胸目掛け槍を突いている内に妙な事に気が付いた――。


 赤い血を流し床に倒れているのは全員が秋人と同じ制服を着ている生徒で、襲い掛かってきたオークを殺してもその姿は変わってない。
まさか、学校の生徒全員が醜悪な顔のオークに見えているだけで死ぬ瞬間に姿が元に戻っている?


 それに気づいた秋人はまず、メスのオークを襲っている、
オスのオークを後ろから槍で突き刺した。
オスのオークが流した血は緑、秋人の予想は的中した事になる。


 なんだよ!こいつら!
校舎が光って少しして教室の中にいたオークは全員生徒で、
後から乱入したオークが本物!?
その事に気づいた秋人の行動は早かった。
メスのオークを犯そうと襲っているオスのオークを片っ端から槍で殺す!
当然、血の色は緑だ。
助けられたメスのオークは、ただただしゃがみ込んで震えていた。


 メスを襲っているオークを後ろから槍で突きまくり――。
その殆どを倒しきった秋人は次に岬の倒れている場所まで戻り……。
自分に対して襲い掛かってくるオークだけを槍で突いた。
オス同士で戦っている者は判別出来なかった為にそれしか手が無かった。


教室の床は緑と赤の血が混ざり合い――。


まるでペンキをばら撒いた様になっていた。
教室の中にはもう暴れているオークは存在しない――。


教室の中で立っているオークは秋人ただ一人。


残りはしゃがみ込んで震えているメスのオークだけになっていた。


ひと段落付いたと判断して――。
秋人は岬の方を振り向くと、岬の体が足元から砂になって消えていった。


 えっ?目の前で起きた事が信じられず目を凝らし床を見つめるがそこにあるのは砂の山だけだ。
まさか?死んだら砂になるのか?
秋人は他の既に事切れている生徒を見る――。
他の生徒は砂になったりはしていない。
秋人はますます分らなくなってしばし呆然と立ち尽くしていた。
その後何を思ったか――。
――その場から逃げ出した。








 私が意識を取り戻すとそこは、真っ白な世界だった。
私は何が起きているのか訳も分らないまま辺りを見回す――。
先程まで真っ白だった目の前に椅子に座った男の子が座っていた……。
男の子の隣には、ロングヘアーで髪が白く、
瞳の色はブルーの綺麗な女性が立っている――。
私の視線が男の子の視線と合うと男の子から声をかけられた――。




「せっかく君の望みを叶えて一緒のクラスになるように調整したのに、まさかこんな結果になるなんて――」
「あなたは誰なんですか?」


「僕かい?僕は君達の住んでいた所の神だよ。それにしても災難だったね、せっかく大晦日に真剣に御参りしてくれたから願いを叶えてあげたのに。まさか召還された上に片思いの相手に殺されちゃうなんてね」


えっ?神様?岬もまさか死んだら神様の許にくるなんて、
キリスト教では無かったので知らなかった――。


「僕は、君達人間が勝手に作った神とは違うよ?だいたいだれだい?その人。僕は見た事が無いんだけど」


元の世界の人間が聞いたら驚いて腰を抜かす様な事を――。
まるで他人事の様に言われた。


「だから、人間が勝手に作った偶像には会った事が無いんだよ」


まったく……と言いながら小さな頬っぺたを膨らませる子供の神?様……。
もしかして私の考えている事がわかるの?


「当然じゃないか!だって神様だよ?」


私が考えている事にドンぴしゃな、答えを返してくれるので聞いて見たらそんな事を言われた。


「信じてくれた様なんで話を戻すね!今回の事はそもそも別の世界からの干渉だったんで、僕にも予測出来なかったんだ。まさか召還さるとはね――」


あそこって別の世界だったんですか?


「どう見ても別の世界でしょう?いきなり学校の周りが荒野になっているなんて普通は無いから!」


ですよね……。


「それでね、せっかく僕がお膳立てしたのにこんな最後になってしまって申し訳ないなって。と言う訳で、君にチャンスを与えようと思います」
「1.日本に一人で帰る。2.彼氏と一緒にいる 3.このまま死ぬ。 さぁ!3択から選んでね!ただし、一度選んだらもう後戻りは出来ないよ」


うーん、家族とは会いたいけど、秋人君ともう会えなくなるのは嫌だな。


「愛に生きるっていうのは美しいね!じゃ2でいいの?」


 ――はい!このままじゃ秋人君が責任感じちゃうと思う。
 私もこのままじゃ嫌だから。お願いします。


「君も知っている通り、あの世界は危険がいっぱいだよ?本当にいいの?」


 あー、でも一度決めた事だから。


「決意は固いようだね!君と彼の赤い糸はまだ辛うじて繋がっているから大丈夫だとは思うけど……」


 赤い糸が秋人君と繋がっているんですか!
私は神様のお墨付きをもらって有頂天になっていて……。
この後の話を良く聞いてなかった事に後で後悔する事になった――。


「これから君を戻すけど、ここと向こうとでは時間軸が違うんで恐らく1ヶ月から半年近く後の彼に再会する事になると思うよ――。それと一応前の容姿のまま帰すけど、髪の色とか瞳の色が稀に変わる事があるから」


あの、小説とかでは召還されると特別な力があったりするみたいなんですけど……。


「こちらで調べた限りでは君達、召還者は向こうの人間の10倍のステータスが元々備わっているみたいだけど、君の場合それでも死んじゃったからね――。特別に守りの呪文を教えるよ」


有難う御座います!


「まずは自身を強化して攻撃を受けても死なない魔法ね」


はい!死なない魔法?


「ハイガード!って唱えて見て」


『ハイガード!』
うわっ!私の体光っていますよ?


「それがハイガードの効果ね。それがあると攻撃されても光っている間は攻撃が無効化されるからまず死ぬ事は無いと思うよ――。
次に、大切な人が怪我した時の回復魔法ね!」


秋人君が怪我した時の回復魔法!


「ハイヒール!」


『ハイヒール!』
 ――――――何も起きなかった。


「かける対象が居ないのに発動する訳ないじゃん!」


 あっ、そうなんだ。良かった。
秋人君の前でやっていたら恥ずかしくて穴にでも篭りたくなっちゃう。
こんな赤面しちゃった姿、格好悪くて見せられないよ……。


「じゃ最後に、彼が死んだ時に復活させる蘇生魔法!」


そ、そんな凄い魔法いいんですか?


「うーん、僕も悩んだんだけどね……。
 向こうの世界では色々な魔法があるみたいなんで知ってた方がいいかな?」


わかりました。


「じゃいくよ。リサクテーション!」


あれ?これ英語のまんまじゃ?


「そうだよ。君なかなか優秀だったんだね!」


いえ、それ程でも。


「じゃ、今度はしっかり思いを成就させてね!ばいばーい」


私の意識はここで途切れた。




「神様、大変です!彼女の髪と目の色が変わって……」
「それは許容範囲内じゃないか!何が大変なんだい?」
「――申し訳ありません。彼女の声を元に戻すのを忘れていました」
「それじゃ?彼女は?」
「はい。口が利けません」
「……魔法は思考すれば発動するからいいけど、じゃ彼とは」
「二度と話せません」
「なんてこったい、君。罰としてあの子の監視をしばらく頼むよ」
「しばらくってどの位でしょう?」
「死ぬまでに決っているでしょ!それとも1万年下働きの方がいいかい?」
「畏まりました!彼女が死ぬまで見守ります!」
「君は何を聞いていたんだい?監視だよ?彼女が死んでからでは遅いんだからね!」
「はい……わかりました」




こうして岬は天使のミスにより口の利けない体になって異世界に戻ったのであった。



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