初恋の子を殺させた、この異世界の国を俺は憎む!
4話、逃走
校舎から10分は走っただろうか?
もう、距離にして2,3kmは走った気がするが……。
赤茶けた大地をひたすら太陽が沈んでいる方だから西?へ走った。
何故、西なのか、最初東へ行こうとしたら大勢の足跡が東へ続いていたから。
そっちに行ってしまうと敵が戻ってくるかもしれない――。
もしくは応援部隊が合流するかもしれない。そう考えて、西へ走った。
ただここは地球では無いので、ここの太陽が東から昇り西に沈むかは定かではない。
しばらく歩くと木や林が点在してきた。奥の方には森が広がっている――。
やっぱり人を隠すなら森だよね?
そんな森に入って早々、出ました……異世界の常識、ゴブリンさんです。
グギャグギャ何言っているのか、まったく分りません。
さっさと始末致しましょう。
何処で拾ったのか剣を持って、グギャグギャ騒ぎながら斬りつけてきた――。
秋人は召還前に文化部で、
運動は体育でしかした事の無い所謂もやしっ子だ。
――しかし秋人は、この世界に来て数時間で大量のオークを殺してきた。
その為、一気にレベルがあがりゴブリンの攻撃を赤子の手を捻る様なもの。
態々、ボロボロになった槍を使わなくても無手で十分だった。
剣が振り下ろされた瞬間――。
横に避けながら間合いを詰め醜悪な顔を握った拳で殴りつけた。
『ガゴーン』という鈍い音と共にゴブリンが絶命した。
あれ?俺こんなに強かったっけ?
もしかしたら異世界補正されて強くなっているのか?
そう思いながら2体目のゴブリンの腹をサッカーボールの様に蹴り上げた。
このゴブリンも今の1蹴りで絶命する――。
俺は少し楽しくなって集まってくるゴブリン相手に対し一人で蹂躙した。
その数35体!
あっという間に倒した俺は自分の力が異世界で強くなっている事を確信した。
小説やアニメで見た事はあったけど……。
まさか自分がチートの能力に目覚めるとはね。
思ってもみなかったよ。
ゴブリンを倒し終わった秋人は、森の中をしばらく歩く――。
すると、先程のゴブリンに狩られたのか?
目の前に大きな狐の様な獣の死骸が転がっていた。
こちらの世界の狐は大きいんだな……と思っていると――。
死骸に隠れるように小さな、秋人の両手で収まる程度の大きさの子狐がいた。
地球の感覚で言えば、エキノコックス感染症が怖くて触れないが、
この世界も同じなのだろうか?
岬ちゃんを、この手にかけた秋人がそんな病気で死んでも別に構わない――。
そう自暴自棄になって居た為、手を差し出した。
良く見てみると某県のキツネ村にいるプラチナキツネの様な白にグレーが入った色をして目の色が光の加減で青っぽく見えた。
この異世界に来て岬ちゃんを失った秋人が始めて癒された瞬間だった。が、
予想に反して子狐に指を噛まれた。
「っつ!」
噛まれたと思った次にはぺろぺろ舐めだした。
「怯えていたんだね!もう怖くないよ!」
大人気アニメの様な台詞を言って見たが、それに答えてはくれなかった。
ただ、親狐に両手を合わせて弔って、その場を立ち去ろうと歩き出したら後ろを付いてきた。
秋人が、何も食べるものとか持ってないよ?
そう言っても言葉が通じる訳でもなく……。
ただ、秋人に負け無い様に必死に付いてきた。
途中からは俺が肩の上に乗せて歩くようになっていたが……。
どの位、歩いただろう?
もう太陽も沈み、周囲は真っ暗。食べるものもなく――。
明かりは僅かな月あかりのみ。
さすがに疲れ切った体を休めたい。
そう思い、木の根に寄りかかり目を閉じた。
今、モンスターが出たら?そんな事を考えなくもないが――。
やはり岬ちゃんを手にかけたのが相当辛かったのだろう。
――どうでもいい。そんな気持でゆっくり瞼を閉じた。
秋人が目を覚ましたのは別に朝日が眩しかったからではない。
まだ回りは真っ暗だった。
子狐が必死に秋人の指を噛んで何者かの接近を知らせてくれたのだ。
俺は目が慣れるまでじっと気配を殺していた。
『ガサッ』と音がして見てみれば、俺達より遥かに大きな熊であった――。
俺は立て掛けてあった槍を握り締めると熊に向かって目一杯突き刺した……。
『ドスッ』と音がして槍が熊の頭に突き刺さり一撃で倒したが、
槍が刺さったまま抜けない。
秋人は倒れた熊の頭に足を置き、てこの原理で一気に引き抜いた。
「これここに放置して寝たら絶対まずいよな?別の場所に移動するか」
秋人が独り言を言ったのはただ単に寂しさからか――。
普通の16歳が半日で人生ががらりと変われば、心細くもなると言うもの。
まして夢に見る程、好きだった子が死んだのだ。
しかも自分の手で……。
岬が死んだ時点で秋人の心の中にはぽっかり大きな穴が開いていた。
この今倒した熊の様に……。
子狐は俺が歩くと同じく付いてきた。
夜間で前があまり見えない中での歩行だ。
今度は昼間と違って楽々秋人に付いて来た。
「お前はいいな。夜でもちゃんと前が見えているんだろ?」
また返事も無いのに子狐に話しかける。しかし今度は返事があった。
「クウゥーン」
心細かった秋人は返事を返してくれた事が嬉しかった。
秋人は子狐を抱きかかえそっと抱きしめた。
秋人が嗚咽を漏らし、涙を流していると秋人の涙をぺろぺろ舐めとってくれた。
「お前も俺と同じ一人なのか?」
「クウゥーン」
先程と同じように、若干アクセントをかえてまた返事をしてくれた。
「じゃこれからは一緒に行動するか!俺も一人で心細かったしね」
「クウゥーン!」
言った意味がわかる!とでも言うように、今度は元気に返事を返された――。
子狐を抱きしめ頭を撫でながらしばらく歩くと、前方が開けた場所に出た。
そこには泉があり、小動物が羽を休めていた。
「危険な動物も居無さそうだしここで休もう」
「クウゥーン」
秋人が話し掛け、子狐が応答する。
その何気ない行為を秋人は楽しんでいた。
泉の傍に腰を下ろすと今までの疲れがどっと押し寄せたのか――。
秋人の意識は直ぐに途切れた。
私、望月岬は恐らく人生で一番のピンチに陥っています。
何故って、木の檻を壊したのは良かった。
が、すぐさま私を檻に閉じ込めた犯人と思しき男達が駆け寄ってきたから。
本当にどうしよう?
「おい!これは何だと聞いてんだろ!答えろ!」
そう言われても、私……口が利けませんが?
私が黙ったままなのにイラついた男達が外から鍵を開け――。
――私の腕を掴み引きずり出した。
ただでさえ、身長156cmで小柄なのだ。軽がると引きずられ頬を打たれた。
痛い!ただでさえ、ニキビもあれば雀斑だってあるけどこれでも手入れは欠かさなかったんだから!秋くんに可愛く思われたくて……。
男が再度手を振り上げたので、防ごうと手を握って応戦した。
すると、手を振り下ろした男の手首に当っただけなのに――。
『グキッ』鈍い音がして、男の手首は折れふらふら揺れていた。
「い、いてぇぇぇぇ--!」
「お、おい?」
周りの男二人も何が起きたのか分らずに混乱していた。
その隙に私は一目散で駆け出し逃げた。
「おい!捕まえろ!」
後ろからは当然男が走って追いかけ――。
もう一人は手首の折れた男を御者台に乗せ馬車を回して引き返して追ってきた。
さすがに馬車には追いつかれる。
そう思った私は、道から逸れて馬車の入り込めない林に入った。
走ってきた男も林に入ってきたが……。
私の身長よりも高い林もあり、私の姿を隠してくれた。
このまま男から離れれば逃げられる。
そう思った私の目の前に、本日2度目のピンチが……。
『ガルゥゥゥ!』と唸り声をあげ私の目の前に現れたのは――。
体長2mはあろうかという巨大な狼でした……。
私、秋君に再会する前に死んじゃうかも――。
もう、距離にして2,3kmは走った気がするが……。
赤茶けた大地をひたすら太陽が沈んでいる方だから西?へ走った。
何故、西なのか、最初東へ行こうとしたら大勢の足跡が東へ続いていたから。
そっちに行ってしまうと敵が戻ってくるかもしれない――。
もしくは応援部隊が合流するかもしれない。そう考えて、西へ走った。
ただここは地球では無いので、ここの太陽が東から昇り西に沈むかは定かではない。
しばらく歩くと木や林が点在してきた。奥の方には森が広がっている――。
やっぱり人を隠すなら森だよね?
そんな森に入って早々、出ました……異世界の常識、ゴブリンさんです。
グギャグギャ何言っているのか、まったく分りません。
さっさと始末致しましょう。
何処で拾ったのか剣を持って、グギャグギャ騒ぎながら斬りつけてきた――。
秋人は召還前に文化部で、
運動は体育でしかした事の無い所謂もやしっ子だ。
――しかし秋人は、この世界に来て数時間で大量のオークを殺してきた。
その為、一気にレベルがあがりゴブリンの攻撃を赤子の手を捻る様なもの。
態々、ボロボロになった槍を使わなくても無手で十分だった。
剣が振り下ろされた瞬間――。
横に避けながら間合いを詰め醜悪な顔を握った拳で殴りつけた。
『ガゴーン』という鈍い音と共にゴブリンが絶命した。
あれ?俺こんなに強かったっけ?
もしかしたら異世界補正されて強くなっているのか?
そう思いながら2体目のゴブリンの腹をサッカーボールの様に蹴り上げた。
このゴブリンも今の1蹴りで絶命する――。
俺は少し楽しくなって集まってくるゴブリン相手に対し一人で蹂躙した。
その数35体!
あっという間に倒した俺は自分の力が異世界で強くなっている事を確信した。
小説やアニメで見た事はあったけど……。
まさか自分がチートの能力に目覚めるとはね。
思ってもみなかったよ。
ゴブリンを倒し終わった秋人は、森の中をしばらく歩く――。
すると、先程のゴブリンに狩られたのか?
目の前に大きな狐の様な獣の死骸が転がっていた。
こちらの世界の狐は大きいんだな……と思っていると――。
死骸に隠れるように小さな、秋人の両手で収まる程度の大きさの子狐がいた。
地球の感覚で言えば、エキノコックス感染症が怖くて触れないが、
この世界も同じなのだろうか?
岬ちゃんを、この手にかけた秋人がそんな病気で死んでも別に構わない――。
そう自暴自棄になって居た為、手を差し出した。
良く見てみると某県のキツネ村にいるプラチナキツネの様な白にグレーが入った色をして目の色が光の加減で青っぽく見えた。
この異世界に来て岬ちゃんを失った秋人が始めて癒された瞬間だった。が、
予想に反して子狐に指を噛まれた。
「っつ!」
噛まれたと思った次にはぺろぺろ舐めだした。
「怯えていたんだね!もう怖くないよ!」
大人気アニメの様な台詞を言って見たが、それに答えてはくれなかった。
ただ、親狐に両手を合わせて弔って、その場を立ち去ろうと歩き出したら後ろを付いてきた。
秋人が、何も食べるものとか持ってないよ?
そう言っても言葉が通じる訳でもなく……。
ただ、秋人に負け無い様に必死に付いてきた。
途中からは俺が肩の上に乗せて歩くようになっていたが……。
どの位、歩いただろう?
もう太陽も沈み、周囲は真っ暗。食べるものもなく――。
明かりは僅かな月あかりのみ。
さすがに疲れ切った体を休めたい。
そう思い、木の根に寄りかかり目を閉じた。
今、モンスターが出たら?そんな事を考えなくもないが――。
やはり岬ちゃんを手にかけたのが相当辛かったのだろう。
――どうでもいい。そんな気持でゆっくり瞼を閉じた。
秋人が目を覚ましたのは別に朝日が眩しかったからではない。
まだ回りは真っ暗だった。
子狐が必死に秋人の指を噛んで何者かの接近を知らせてくれたのだ。
俺は目が慣れるまでじっと気配を殺していた。
『ガサッ』と音がして見てみれば、俺達より遥かに大きな熊であった――。
俺は立て掛けてあった槍を握り締めると熊に向かって目一杯突き刺した……。
『ドスッ』と音がして槍が熊の頭に突き刺さり一撃で倒したが、
槍が刺さったまま抜けない。
秋人は倒れた熊の頭に足を置き、てこの原理で一気に引き抜いた。
「これここに放置して寝たら絶対まずいよな?別の場所に移動するか」
秋人が独り言を言ったのはただ単に寂しさからか――。
普通の16歳が半日で人生ががらりと変われば、心細くもなると言うもの。
まして夢に見る程、好きだった子が死んだのだ。
しかも自分の手で……。
岬が死んだ時点で秋人の心の中にはぽっかり大きな穴が開いていた。
この今倒した熊の様に……。
子狐は俺が歩くと同じく付いてきた。
夜間で前があまり見えない中での歩行だ。
今度は昼間と違って楽々秋人に付いて来た。
「お前はいいな。夜でもちゃんと前が見えているんだろ?」
また返事も無いのに子狐に話しかける。しかし今度は返事があった。
「クウゥーン」
心細かった秋人は返事を返してくれた事が嬉しかった。
秋人は子狐を抱きかかえそっと抱きしめた。
秋人が嗚咽を漏らし、涙を流していると秋人の涙をぺろぺろ舐めとってくれた。
「お前も俺と同じ一人なのか?」
「クウゥーン」
先程と同じように、若干アクセントをかえてまた返事をしてくれた。
「じゃこれからは一緒に行動するか!俺も一人で心細かったしね」
「クウゥーン!」
言った意味がわかる!とでも言うように、今度は元気に返事を返された――。
子狐を抱きしめ頭を撫でながらしばらく歩くと、前方が開けた場所に出た。
そこには泉があり、小動物が羽を休めていた。
「危険な動物も居無さそうだしここで休もう」
「クウゥーン」
秋人が話し掛け、子狐が応答する。
その何気ない行為を秋人は楽しんでいた。
泉の傍に腰を下ろすと今までの疲れがどっと押し寄せたのか――。
秋人の意識は直ぐに途切れた。
私、望月岬は恐らく人生で一番のピンチに陥っています。
何故って、木の檻を壊したのは良かった。
が、すぐさま私を檻に閉じ込めた犯人と思しき男達が駆け寄ってきたから。
本当にどうしよう?
「おい!これは何だと聞いてんだろ!答えろ!」
そう言われても、私……口が利けませんが?
私が黙ったままなのにイラついた男達が外から鍵を開け――。
――私の腕を掴み引きずり出した。
ただでさえ、身長156cmで小柄なのだ。軽がると引きずられ頬を打たれた。
痛い!ただでさえ、ニキビもあれば雀斑だってあるけどこれでも手入れは欠かさなかったんだから!秋くんに可愛く思われたくて……。
男が再度手を振り上げたので、防ごうと手を握って応戦した。
すると、手を振り下ろした男の手首に当っただけなのに――。
『グキッ』鈍い音がして、男の手首は折れふらふら揺れていた。
「い、いてぇぇぇぇ--!」
「お、おい?」
周りの男二人も何が起きたのか分らずに混乱していた。
その隙に私は一目散で駆け出し逃げた。
「おい!捕まえろ!」
後ろからは当然男が走って追いかけ――。
もう一人は手首の折れた男を御者台に乗せ馬車を回して引き返して追ってきた。
さすがに馬車には追いつかれる。
そう思った私は、道から逸れて馬車の入り込めない林に入った。
走ってきた男も林に入ってきたが……。
私の身長よりも高い林もあり、私の姿を隠してくれた。
このまま男から離れれば逃げられる。
そう思った私の目の前に、本日2度目のピンチが……。
『ガルゥゥゥ!』と唸り声をあげ私の目の前に現れたのは――。
体長2mはあろうかという巨大な狼でした……。
私、秋君に再会する前に死んじゃうかも――。
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