動画配信者異世界で・ふうぅぅぅぅ~

石の森は近所です

第2話、ゴブリン配信

 武朗が動画配信を続けていると、目の前の林から緑色の人間がやってきた。


「ふぅぅぅぅ~~Woo tobe イエス!イエス!イエス!見てくれたかい。これがゴブリンだぜ。これで異世界だって信じてくれるだろう」


 武朗がいつもの調子で声を上げていると、そのゴブリンは木の棒を持って襲い掛かってきた。


「ふぅぅぅぅ~~Woo tobe イエス!イエス!イエス!ゴブリンに襲われているぜぇ~」


 何とか配信を続けながら、逃げ出すがゴブリンも特に足が遅い訳では無く、背中から殴りつけられた。背中に当ったが、思っていたよりも痛くなかった。バックを背負って居た事もあるが……。


 ≪いま、ガゴッとか言ったぞ。いったそう~≫≪何でやり返さないんだ、異世界ならチートはつきものだろ≫≪タケちゃんやれ!やるんだ!≫


 リスナーは好き勝手言っているが、周囲に武器に成る物は落ちていない。


 だが、この武朗――これでも高校卒業まで柔道部であった。


「ふぅぅぅぅ~~Woo tobe イエス!イエス!イエス!ノーパソが壊される前に何とかするぜぇ~俺の勇姿をちゃんと、み・て・ろ・よ!」


 ゴブリンが振り下ろす木の棒からの一撃は、それ程痛くは無かった。武朗はノーパソを地面に置き、バックパックも下ろし、カメラの角度を調節すると、ゴブリンに向かって行った。


 ≪おぉぉーー行くのか、行っちゃうのか!≫≪特撮乙≫≪そんな子供位のゴブリンなら楽勝だろう≫


 リスナーは気楽なものであるが、武朗は必死に棒からの攻撃をかわし、懐に入り込むとゴブリンの首に腕を絡ませ――締め付けた。地味な寝技であった。


 ≪なんだよそれ!地味すぎんぞ!≫≪緑の血でも見せてみろよ。ど~せ特撮だから無理なんだろ≫≪あれ……緑の子、口から泡吹いてるぞ≫


 武朗が必死に巻きつけた腕は、ゴブリンの頸動脈を締め付け――泡を噴き。息絶えた。


 ≪マジ!?これ死んでるのか≫≪俺、看護師だけどあれ間違いなく死んでるよ≫≪やるじゃん!タケちゃん。でも地味で糞つまんねぇ~のは変わらねぇ~ぞ!≫


「ふぅぅぅぅ~~Woo tobe イエス!イエス!イエス!どうだい!高校時代に鍛えたこの筋肉美でゴブリンを殺したぜ!皆、ちゃんと見てくれたかなふぅぅぅぅ~~Woo tobe イエス!イエス!イエス!」


 異世界初のバトルは――ゴブリンであった。


 その後、武朗はゴブリンに殴られたバックが気になり見たが、どこも壊れて居ない事に安堵したのであった。



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