第1話、Woo tober異世界へ行く

　――ここは大阪城


「やぁ～Ｗoo動画を見てくれているリスナーの皆、今日、俺は大阪城にきているんだぜ。今の季節は秋だから大阪秋の陣って訳だ、今日はここから動画を配信するぜ～じゃ行ってみようか、ふぅぅぅぅ～～Ｗoo tobe イエス！イエス！イエス！」


　リスナー３００万人はいるWoo Tobeの配信者である。長田武朗２３歳。ニートな彼は、去年勤めていた会社のパソコンでネットゲームしている事がバレ首になったのであったが、それでめげる事も無く、どうせネットをするなら金も欲しいと流行の動画配信を始めたばかりである。だが、威勢はいいものの、毎回同じネタばかりでリスナーは常に１桁。当然、そんなリスナーで広告収入など入る筈も無く。悪循環で、常に同じ服、伸びきったボサボサの天然パーマの髪が不潔感を漂わせ――動画を初見のリスナーも直ぐに去っていく。まさに売れない自己満足の配信者であった。


「ふうぅぅぅぅー。今日は大阪城の池に飛び込んでみようと思います。ふぅぅぅぅ～～Ｗoo tobe イエス！イエス！」


　だが、配信用のノートパソコンを池の辺に置き、服を脱ぎだした所で警備員が来て、管理事務所まで連行される事になる。警察が呼ばれ、署に連行、軽い事情聴取の後厳重注意で釈放された。




「いやぁ～大変な目にあっちまったぜ！でもまだまだ、い・け・る・ぜ！なんたって、俺は、ふぅぅぅぅ～～Ｗoo toberだからさ！ イエス！イエス！イエス！」


　そうして、再度、大阪城へやってきて、生垣から侵入しようとすると――。
足が、地面に付かない。


　彼の体は、穴の中へとまっしぐら。落ちていった。


　そして気づけば、何処かの林の中。


「あれ、何だってこんな所に――」


　ノートパソコンが壊れていないか気になり見るが、電源は入ったままだ。いつも予備充電用にソーラーバック型充電器を持ち歩いている為、電源に不自由はした事が無い。良く見れば動画配信はまだ続いていた――。




　≪なんだよ、素に戻ってんじゃねーぞ。ただでさえ糞つまんねぇんだからよ≫≪大阪城じゃねぇーじゃん。何処だよその田舎は≫




　リスナーからのレスが流れる。
　武朗こと。タケちゃんはリスナーの期待に答えるべく配信を続けた。


「ふぅぅぅぅ～～Ｗoo tobe イエス！イエス！イエス！どうやら俺は異世界に来ちゃったみたいだぜ！リスナーの皆、これからガンガン配信するんで、よ・ろ・し・く・な・ふぅぅぅぅ～～Ｗoo tobe イエス！イエス！イエス！」