子猫ちゃんの異世界珍道中
第199話、ドーナッツ型の堀
エリッサちゃんの新魔法を効率よく使う為に皆で話し合います。
「檻の外にワイバーンで飛んでもらって妾が穴を掘るのはどうだろうか?」
洗脳によって真っ直ぐ進むだけの兵ならそれもありですね。
他の意見も聞いてみましょうか。
「私の魔法ではこの場で使えそうなものは聖なる癒し位にゃ」
「私はスリープミストだけで精一杯ですわ」
「アーン」
僕の消滅魔法で溝を掘る事は出来ますが、加減の出来ない僕の魔法よりもフローゼ姫に穴を掘って貰った方がより効果的ですね。
「フローゼ姫の案を採用してみましょうか?」
「それが妥当だな」
「それならワイバーンの誘導は僕達が引き受けよう」
フローゼ姫が作戦のかなめになると聞いた王子が、僕達が乗る馬車を運ぶワイバーンの誘導役を買って出ますが、王子はフローゼ姫にいい所を見せたいだけでしょ!
実際、王子単独ではワイバーンに乗れないんですから。
「では善は急げだ。トベルスキー王子、先導役頼むぞ」
フローゼ姫に言葉を掛けてもらい満足気な表情で王子が頷きます。
なんか釈然としませんけどガンバラ王国のワイバーンですから仕方ありませんね。
岩山の間を通る道を石の檻で閉ざされた皇国軍の兵達は進軍をする事も出来ずにその場でたたらを踏んでいます。檻よりこちら側で意識を失っている兵達は、ガンバラ王国側の兵士達が1人ずつ洗脳を解いて回っています。
洗脳を解かれた皇国の兵も、正気に戻ると僕達に加勢し手伝いだしました。
自分の意思で兵士になって戦争に参加していたのなら意識を取り戻した後も抵抗されたのでしょうけれど、洗脳されていただけです。
正気に戻るとそれまでの記憶から逆に感謝されてしまいます。
味方がどんどん増えていけばエリッサちゃんがスリープミストで眠らせた後の対応も、人海戦術でなんとかなりそうですね。
僕達を乗せた馬車は石の檻の上空を飛び、たたらを踏んでいる兵達がいる真上に到着します。
「ではここを始点に円を描くように掘り進めるぞ」
フローゼ姫が掌を翳すと大勢詰めかけていた兵達の足元が急に崩れ出し、深さ3m程度の穴が出来上がりました。僕が同じ魔法を使えたら加減知らずに底の見えない穴が出来そうですが流石ですね。湖を作った時よりも明らかに浅く調整された穴ならある程度の数作っても直ぐに魔力切れを起こさなくて済みそうです。
「これと同じ物で輪を作るぞ。エリッサ譲は落ちた兵の数を見ながら魔法を頼む」
「わかりましたわ。多すぎず少なすぎずですわね」
馬車はフローゼ姫が窓から腕を伸ばし、移動先を指定するとそれに従い動き出します。
次々に出現する堀を認め、ガンバラ王国の兵が呆気に取られていますがガンバラ王国で王子の軍勢を閉じ込めた堀の話はその軍と重鎮、国王だけの秘密にされていたようですね。
これだけの魔法を使える魔法師はこの世界でも稀ですから。
脅威となり得る者の話を漏らさないのも理解は出来ますけどね。
それも無駄になりました。
万の兵が、フローゼ姫が次々に作り出す堀を見ています。
この人数に箝口令を敷くのは不可能にちかいですから。
フローゼ姫の掘った穴は最初の場所から大きく輪を描くように掘られていき、時間が経つにつれドーナッツの様な形になっていきます。
これに水を入れれば流れるプールを作る事も出来そうですね。
そんな設備はこの世界には存在していませんが……。
2時間後にはドーナッツ型の堀が完成し、そこに落ちた皇国の兵達が右往左往しています。
「そろそろ頃合いですわね」
「ああ。だがその前に後続が侵入してこないように次の掘りを作らないとな」
フローゼ姫がドーナッツ型の隣に新しい穴を掘っていくと、後続の兵はそちらに流れ込み始めます。
最初に作った堀と後続を完全に切り離した所で――。
「では行きますわよ」
エリッサちゃんが掌を翳すとピンク色の粒子は穴の中に吸い込まれていきます。
その霧はドーナッツに着色するかの様に、輪に沿って広がっていきます。
上空から見ていると圧巻ですね。
最初に作った堀にうまく霧が流れこみ綺麗なピンク色の輪が完成しました。
「トベルスキー王子、地上の兵達を霧が収まった後に――」
「さっきと同じ要領で意識を回復させればいいんだね?」
「ああ、霧から目覚めただけでは洗脳は解けないからな。2人一組でたたき起こしたら気絶させ洗脳を解いてやってくれ。2度手間の上に加減が難しいが――死ななければミカ殿の魔法で回復出来るからな」
「――にゃ」
ミカちゃんが何か言いたそうにしていますが、王子は頷くとガンバラ王国の兵の元へ降りていきます。
「さぁ、妾達は次の掘を作ろうか」
推定200万人の洗脳を解くのにこの調子だとだいぶ掛かりそうですが、いい手が見つからない以上は仕方ありませんね。
結局、一日で掘れた穴はドーナッツ3つ分。
全ての兵の洗脳を解くのは難航します。
それでも1日で3つも作れた来は驚愕に値しますけどね。
後、3つ作った所でそれらをローテーションで使いまわす算段になっています。
そうなればフローゼ姫の出番はありません。
フローゼ姫が穴を掘っている間、ずっと僕達の馬車と平行して飛んでいた王子の顔もこれで見なくて済みそうですね。
「檻の外にワイバーンで飛んでもらって妾が穴を掘るのはどうだろうか?」
洗脳によって真っ直ぐ進むだけの兵ならそれもありですね。
他の意見も聞いてみましょうか。
「私の魔法ではこの場で使えそうなものは聖なる癒し位にゃ」
「私はスリープミストだけで精一杯ですわ」
「アーン」
僕の消滅魔法で溝を掘る事は出来ますが、加減の出来ない僕の魔法よりもフローゼ姫に穴を掘って貰った方がより効果的ですね。
「フローゼ姫の案を採用してみましょうか?」
「それが妥当だな」
「それならワイバーンの誘導は僕達が引き受けよう」
フローゼ姫が作戦のかなめになると聞いた王子が、僕達が乗る馬車を運ぶワイバーンの誘導役を買って出ますが、王子はフローゼ姫にいい所を見せたいだけでしょ!
実際、王子単独ではワイバーンに乗れないんですから。
「では善は急げだ。トベルスキー王子、先導役頼むぞ」
フローゼ姫に言葉を掛けてもらい満足気な表情で王子が頷きます。
なんか釈然としませんけどガンバラ王国のワイバーンですから仕方ありませんね。
岩山の間を通る道を石の檻で閉ざされた皇国軍の兵達は進軍をする事も出来ずにその場でたたらを踏んでいます。檻よりこちら側で意識を失っている兵達は、ガンバラ王国側の兵士達が1人ずつ洗脳を解いて回っています。
洗脳を解かれた皇国の兵も、正気に戻ると僕達に加勢し手伝いだしました。
自分の意思で兵士になって戦争に参加していたのなら意識を取り戻した後も抵抗されたのでしょうけれど、洗脳されていただけです。
正気に戻るとそれまでの記憶から逆に感謝されてしまいます。
味方がどんどん増えていけばエリッサちゃんがスリープミストで眠らせた後の対応も、人海戦術でなんとかなりそうですね。
僕達を乗せた馬車は石の檻の上空を飛び、たたらを踏んでいる兵達がいる真上に到着します。
「ではここを始点に円を描くように掘り進めるぞ」
フローゼ姫が掌を翳すと大勢詰めかけていた兵達の足元が急に崩れ出し、深さ3m程度の穴が出来上がりました。僕が同じ魔法を使えたら加減知らずに底の見えない穴が出来そうですが流石ですね。湖を作った時よりも明らかに浅く調整された穴ならある程度の数作っても直ぐに魔力切れを起こさなくて済みそうです。
「これと同じ物で輪を作るぞ。エリッサ譲は落ちた兵の数を見ながら魔法を頼む」
「わかりましたわ。多すぎず少なすぎずですわね」
馬車はフローゼ姫が窓から腕を伸ばし、移動先を指定するとそれに従い動き出します。
次々に出現する堀を認め、ガンバラ王国の兵が呆気に取られていますがガンバラ王国で王子の軍勢を閉じ込めた堀の話はその軍と重鎮、国王だけの秘密にされていたようですね。
これだけの魔法を使える魔法師はこの世界でも稀ですから。
脅威となり得る者の話を漏らさないのも理解は出来ますけどね。
それも無駄になりました。
万の兵が、フローゼ姫が次々に作り出す堀を見ています。
この人数に箝口令を敷くのは不可能にちかいですから。
フローゼ姫の掘った穴は最初の場所から大きく輪を描くように掘られていき、時間が経つにつれドーナッツの様な形になっていきます。
これに水を入れれば流れるプールを作る事も出来そうですね。
そんな設備はこの世界には存在していませんが……。
2時間後にはドーナッツ型の堀が完成し、そこに落ちた皇国の兵達が右往左往しています。
「そろそろ頃合いですわね」
「ああ。だがその前に後続が侵入してこないように次の掘りを作らないとな」
フローゼ姫がドーナッツ型の隣に新しい穴を掘っていくと、後続の兵はそちらに流れ込み始めます。
最初に作った堀と後続を完全に切り離した所で――。
「では行きますわよ」
エリッサちゃんが掌を翳すとピンク色の粒子は穴の中に吸い込まれていきます。
その霧はドーナッツに着色するかの様に、輪に沿って広がっていきます。
上空から見ていると圧巻ですね。
最初に作った堀にうまく霧が流れこみ綺麗なピンク色の輪が完成しました。
「トベルスキー王子、地上の兵達を霧が収まった後に――」
「さっきと同じ要領で意識を回復させればいいんだね?」
「ああ、霧から目覚めただけでは洗脳は解けないからな。2人一組でたたき起こしたら気絶させ洗脳を解いてやってくれ。2度手間の上に加減が難しいが――死ななければミカ殿の魔法で回復出来るからな」
「――にゃ」
ミカちゃんが何か言いたそうにしていますが、王子は頷くとガンバラ王国の兵の元へ降りていきます。
「さぁ、妾達は次の掘を作ろうか」
推定200万人の洗脳を解くのにこの調子だとだいぶ掛かりそうですが、いい手が見つからない以上は仕方ありませんね。
結局、一日で掘れた穴はドーナッツ3つ分。
全ての兵の洗脳を解くのは難航します。
それでも1日で3つも作れた来は驚愕に値しますけどね。
後、3つ作った所でそれらをローテーションで使いまわす算段になっています。
そうなればフローゼ姫の出番はありません。
フローゼ姫が穴を掘っている間、ずっと僕達の馬車と平行して飛んでいた王子の顔もこれで見なくて済みそうですね。
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