子猫ちゃんの異世界珍道中
第120話、戦闘の終結
まったく何処で石の補給をしているんだか。
往復と積み込みの時間を考えても、それ程離れた場所では無い様に思えます。
このままでは埒が明かないですから、今回を乗り切ったらこっそり後を付けてみようかな……。僕はその旨をミカちゃんに伝えます。
「それしか手は無いにゃ。そこは子猫ちゃんに任せるにゃ」
ミカちゃんのお許しも出ました。
後は上空を旋回している、ワイバーンの攻撃を回避するだけですね。
また投石を行ってくると考えて、皆に結界を上掛けし上空を見つめていると、流石に何度も同じ手は打ってこなかった様で、何か黒い液体がばら撒かれました。
風に乗り漂ってくる匂いには、心当たりがあります。
砂漠の国で掘られている燃える液体です。
それでも落下速度は変わりません。
余裕で範囲から避け、エリッサちゃんも牢屋を構築しますが……牢屋の屋根は細かい岩は通しませんでしたが、液体は素通りしたようで中のエリッサちゃんと子狐さんを守る結界に当ると中に飛び散ります。
――そこに、高度からワイバーンの吐き出した炎の玉が。
流石に高度から吐き出された為に、着弾しても爆発は起こりません。が、炎は地上に届き燃える油に引火しました。
ミカちゃん、フローゼ姫、僕は難なく範囲から逃げましたが、逃げた先でエリッサちゃんが閉じ篭った牢屋を見た瞬間、牢屋を包み込む様に激しく炎が燃え上がりました。
「エリッサちゃん!」
ミカちゃんが牢屋の中も燃えている事に気づき叫びます。
助けに行きたくても、距離が離れすぎています。
僕達が見ている先で、どんどん牢屋の中に煙が充満していくのがはっきりと分りました。
上空からは第一波の攻撃が成功したと判断したワイバーンに騎乗した騎士が、更なる攻撃を加えようとして旋回を始めます。
牢屋の中がどうなっているのか全く分りません。
僕は祈る気持で魔力を掌に集め、ミカちゃんとの約束を破り破滅魔法を上空へ向け放ちました。
ワイバーンが吐き出す炎の玉ではありません。
竜が吐き出すブレスに匹敵する威力の塊が、上空のワイバーンを包み込むと爆発するでもなく、燃える訳でもなく。最初から何も存在していなかったかのように、雨雲をも消し飛ばし、その軌跡だけ晴れ間が差し込んでいます。
僕は破滅魔法を放った後、直ぐに牢屋に駆け出しました。
僕の後を追う様に、ミカちゃん、フローゼ姫も付いて来ます。
いまだ炎が燻り続ける牢屋の周囲に飛び込みます。
体を銀色に変え、堅牢な牢屋に体当たりをしますがビクともしません。
牢屋の中は真っ白な煙が充満しています。
前回、娼館に使った重力圧縮を壁に使います。
それでも堅牢な牢屋は依然として面前に存在したままです。
僕は最後の手段と、牢屋の角を狙い消滅魔法を放ちます。
消滅魔法は、触れるもの全てを無に返す魔法です。
その効果は、エリッサちゃんが構築した堅牢な牢屋にも影響を及ぼし、角部位分は跡形も無く消し飛びます。
消し飛んだ部分から大量の熱を帯びた蒸気が漏れ出します。
え?
蒸気?
流石に2回立て続けに消滅魔法を放った僕は、全身が脱力感に襲われ足ががくがくと震えだししゃがみ込んでしまいます。
薄れゆく視界の中で、煙では無く、出てきたのが蒸気なのを不思議に思いながらも意識は闇に包まれました。
僕が意識を取り戻したのは、それから3時間後。
僕が瞳を開けると、僕を膝枕して心配そうに見つめている薄く青い瞳がそこにはありました。更に視線をめぐらせると周囲を睨んで銀髪を風になびかせた青い瞳と、心配そうに僕を見下ろす翡翠色の瞳がそこにはありました。
「エリッサちゃん、無事だったんですね」
僕が声を漏らすと――。
「子猫ちゃんを心配して膝枕したのにエリッサちゃんの名前を最初に呼んだにゃ!」
おどけながらミカちゃんがそう嘯きます。
「子猫ちゃんは牢屋を破壊した所で気を失ったのだ。そういう事もあろう」
「本当に心配を掛けてしまったようですわね」
元気そうな皆の顔をもう一度見回し、僕はミカちゃんに問いかけます。
「ミカちゃん、約束を破ってごめんなさい。でもどうして――」
「私も子猫ちゃんが牢屋を破壊した時に、エリッサちゃんの生存を危ぶんだにゃ。でも煙が晴れるとしゃがみ込んで全身ずぶ濡れのエリッサちゃんと子狐さんが居たにゃ」
「??」
燃える液体に火が点いたのにずぶ濡れ……そういえば気を失う前に感じたのは蒸気でした。油が燃えても蒸気は出ません。出るのは煙です。
僕が不思議そうに首を傾げると、
「それは私から説明いたしますわ」
エリッサちゃんの口から語られた真実は以外なものでした。
あの牢屋の中が炎で満たされた瞬間、咄嗟にエリッサちゃんはブリザードの魔法を中で行使したそうです。ただ炎の威力が強く、危険を感じた矢先――子狐さんが最近覚えたブリザードを重ね掛けしてくれたお陰で、何とか炎の鎮火に成功。中々牢屋から出てこなかったのは、あまりの寒さに足が動かなかったのと、若干残っていた炎の余熱が逆に心地よかったからだそうです。
僕が牢屋の角を消滅させ流入した冷気で、逆に寒くなったとか……。
なんなんでしょうね。
最後だけ何故か釈然としませんが……。
エリッサちゃんと、子狐さんが無事だったので良しとしましょうか。
その後のワイバーン隊の動向を尋ねると――。
流石にあの高度でも攻撃されるとは思っていなかった様で、生存していた10数体のワイバーンは北東方面に逃げていったとの事でした。
これで補給時に急襲してハンバーグ用の肉を得る事も、魔石を確保する計画もご破算になりましたね。
戦闘に参加していた大勢の捕虜を横目に、これから如何するのか尋ねます。
捕虜達は、僕が意識を失っている間にミカちゃんとフローゼ姫達の手によって一箇所に集められ、フローゼ姫の魔法で深い穴。自然の牢屋に入れられたようでした。
往復と積み込みの時間を考えても、それ程離れた場所では無い様に思えます。
このままでは埒が明かないですから、今回を乗り切ったらこっそり後を付けてみようかな……。僕はその旨をミカちゃんに伝えます。
「それしか手は無いにゃ。そこは子猫ちゃんに任せるにゃ」
ミカちゃんのお許しも出ました。
後は上空を旋回している、ワイバーンの攻撃を回避するだけですね。
また投石を行ってくると考えて、皆に結界を上掛けし上空を見つめていると、流石に何度も同じ手は打ってこなかった様で、何か黒い液体がばら撒かれました。
風に乗り漂ってくる匂いには、心当たりがあります。
砂漠の国で掘られている燃える液体です。
それでも落下速度は変わりません。
余裕で範囲から避け、エリッサちゃんも牢屋を構築しますが……牢屋の屋根は細かい岩は通しませんでしたが、液体は素通りしたようで中のエリッサちゃんと子狐さんを守る結界に当ると中に飛び散ります。
――そこに、高度からワイバーンの吐き出した炎の玉が。
流石に高度から吐き出された為に、着弾しても爆発は起こりません。が、炎は地上に届き燃える油に引火しました。
ミカちゃん、フローゼ姫、僕は難なく範囲から逃げましたが、逃げた先でエリッサちゃんが閉じ篭った牢屋を見た瞬間、牢屋を包み込む様に激しく炎が燃え上がりました。
「エリッサちゃん!」
ミカちゃんが牢屋の中も燃えている事に気づき叫びます。
助けに行きたくても、距離が離れすぎています。
僕達が見ている先で、どんどん牢屋の中に煙が充満していくのがはっきりと分りました。
上空からは第一波の攻撃が成功したと判断したワイバーンに騎乗した騎士が、更なる攻撃を加えようとして旋回を始めます。
牢屋の中がどうなっているのか全く分りません。
僕は祈る気持で魔力を掌に集め、ミカちゃんとの約束を破り破滅魔法を上空へ向け放ちました。
ワイバーンが吐き出す炎の玉ではありません。
竜が吐き出すブレスに匹敵する威力の塊が、上空のワイバーンを包み込むと爆発するでもなく、燃える訳でもなく。最初から何も存在していなかったかのように、雨雲をも消し飛ばし、その軌跡だけ晴れ間が差し込んでいます。
僕は破滅魔法を放った後、直ぐに牢屋に駆け出しました。
僕の後を追う様に、ミカちゃん、フローゼ姫も付いて来ます。
いまだ炎が燻り続ける牢屋の周囲に飛び込みます。
体を銀色に変え、堅牢な牢屋に体当たりをしますがビクともしません。
牢屋の中は真っ白な煙が充満しています。
前回、娼館に使った重力圧縮を壁に使います。
それでも堅牢な牢屋は依然として面前に存在したままです。
僕は最後の手段と、牢屋の角を狙い消滅魔法を放ちます。
消滅魔法は、触れるもの全てを無に返す魔法です。
その効果は、エリッサちゃんが構築した堅牢な牢屋にも影響を及ぼし、角部位分は跡形も無く消し飛びます。
消し飛んだ部分から大量の熱を帯びた蒸気が漏れ出します。
え?
蒸気?
流石に2回立て続けに消滅魔法を放った僕は、全身が脱力感に襲われ足ががくがくと震えだししゃがみ込んでしまいます。
薄れゆく視界の中で、煙では無く、出てきたのが蒸気なのを不思議に思いながらも意識は闇に包まれました。
僕が意識を取り戻したのは、それから3時間後。
僕が瞳を開けると、僕を膝枕して心配そうに見つめている薄く青い瞳がそこにはありました。更に視線をめぐらせると周囲を睨んで銀髪を風になびかせた青い瞳と、心配そうに僕を見下ろす翡翠色の瞳がそこにはありました。
「エリッサちゃん、無事だったんですね」
僕が声を漏らすと――。
「子猫ちゃんを心配して膝枕したのにエリッサちゃんの名前を最初に呼んだにゃ!」
おどけながらミカちゃんがそう嘯きます。
「子猫ちゃんは牢屋を破壊した所で気を失ったのだ。そういう事もあろう」
「本当に心配を掛けてしまったようですわね」
元気そうな皆の顔をもう一度見回し、僕はミカちゃんに問いかけます。
「ミカちゃん、約束を破ってごめんなさい。でもどうして――」
「私も子猫ちゃんが牢屋を破壊した時に、エリッサちゃんの生存を危ぶんだにゃ。でも煙が晴れるとしゃがみ込んで全身ずぶ濡れのエリッサちゃんと子狐さんが居たにゃ」
「??」
燃える液体に火が点いたのにずぶ濡れ……そういえば気を失う前に感じたのは蒸気でした。油が燃えても蒸気は出ません。出るのは煙です。
僕が不思議そうに首を傾げると、
「それは私から説明いたしますわ」
エリッサちゃんの口から語られた真実は以外なものでした。
あの牢屋の中が炎で満たされた瞬間、咄嗟にエリッサちゃんはブリザードの魔法を中で行使したそうです。ただ炎の威力が強く、危険を感じた矢先――子狐さんが最近覚えたブリザードを重ね掛けしてくれたお陰で、何とか炎の鎮火に成功。中々牢屋から出てこなかったのは、あまりの寒さに足が動かなかったのと、若干残っていた炎の余熱が逆に心地よかったからだそうです。
僕が牢屋の角を消滅させ流入した冷気で、逆に寒くなったとか……。
なんなんでしょうね。
最後だけ何故か釈然としませんが……。
エリッサちゃんと、子狐さんが無事だったので良しとしましょうか。
その後のワイバーン隊の動向を尋ねると――。
流石にあの高度でも攻撃されるとは思っていなかった様で、生存していた10数体のワイバーンは北東方面に逃げていったとの事でした。
これで補給時に急襲してハンバーグ用の肉を得る事も、魔石を確保する計画もご破算になりましたね。
戦闘に参加していた大勢の捕虜を横目に、これから如何するのか尋ねます。
捕虜達は、僕が意識を失っている間にミカちゃんとフローゼ姫達の手によって一箇所に集められ、フローゼ姫の魔法で深い穴。自然の牢屋に入れられたようでした。
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