子猫ちゃんの異世界珍道中
第118話、反撃
サポートに回るといっても、皆の身に危険が降り掛かる状態になったら僕は手加減抜きで反撃しますよ。
僕がミカちゃんに告げると、
「それはお願いするにゃ。手を抜いて怪我をしたら本末転倒にゃ」
流石に自分達の身を犠牲にしてまでは、我慢しなくてもいいと言われミカちゃんの策を受け入れました。
でもサポートって何をすればいいんでしょうか……。
「子猫ちゃんは皆に結界魔法を掛けてくれるだけでいいにゃ」
結界魔法は今も皆に掛かっています。
この結界魔法は回避した回数によって持続時間が短縮されるのは分っていますが、その被害にも左右されるので正確にどの位まで持つのかは分りません。
通常の狩りでなら30分位は掛かった状態ですが、サースドレインの街付近での事です。被ダメが殆ど無い状態なので、攻撃に晒された場合はもっと短くなります。先程の投石で直撃コース3回分程度ならまだ維持されていました。でも馬車から離れた時に上掛けしたので、持続時間は分らないのです。
攻撃を開始する時に、再度結界を上掛けする事に決まります。
「まず大国軍の数がどれ程いるのか、現時点では分らんのだろう?」
僕達が拾ったのは音だけです。
視認出来た訳では無いので、正確な敵の数は分りません。
フローゼ姫が眉を顰めながら、不安を口にします。
女性陣が作戦会議を行っている間、僕はこっそり敵の偵察に赴きます。
この霧の中で足元を気にしている人は多くは無いでしょう。
敵の数と、陣形を調査し皆の元に戻ってきます。
「敵の数は多かったかにゃ?」
僕が戻ると、何も告げずに敵陣に行っていたのに、何をしてきたのか当然分っているとでも言う様に質問されます。
何も言わなくても理解し合えると言うのは、嬉しいものですね。
僕は少し照れながら、大よその数を教えます。
「数は2000人。この先二つ目の丘に隠れるように居たけど、偉そうな人の周囲に300人。そこから左右に500人ずつ。前後にも500人ずつかな?」
「子猫ちゃんそれじゃ数が合わないにゃ。それじゃ2300人にゃ!」
あれ?
間違えましたか……。
そんな僕の計算間違いも、笑って誤魔化してくれます。
「本隊を取り囲んでいるとなると、最初の予定通りか……」
「私はどの集団に魔法を掛ければいいのでしょうか?」
「エリッサちゃんは左右を頼むにゃ。子狐さんはエリッサちゃんと一緒に頼むにゃ」
「アーン!」
どうやら僕が居なかった間に、ある程度の作戦は済んでいた様ですね。
「子猫ちゃんは、敵の中に魔法使いや強い人が居たらそれの対処をお願いするにゃ」
サポート中心でも突発的に問題が起きた時には、殺さない範囲で暴れていいとお墨付きをもらいます。
ミカちゃんは何をするんでしょう?
「私は自在に敵の中を駆け回るにゃ」
いつもの僕の役回りみたいですね。ミカちゃんのお手並みを拝見しましょう。
それじゃ~行くにゃ! というミカちゃんの掛声と共に、僕達は少しずつ前に進みます。霧が薄れそうになればミカちゃんが追加で霧を発生させ、僕も皆に結界魔法を上掛けします。
僕とミカちゃんは30m程先に敵の先陣が控えている事を察知します。
ミカちゃんが頷くと、他の2人も了解した。分りましたわ。とばかりに首肯しています。
始まりますね。
ミカちゃんが前方に掌を翳すと、敵が密集している部分の霧だけ薄まってきます。
「おぉ、漸く霧が晴れてきたぞ」
そんな声が聞こえてきます。
あそこが敵陣のど真ん中ですね。
ミカちゃんが手を上にあげそれを振り下ろすと――。
ミカちゃんの後方で、魔法を発動前の状態で待機していたフローゼ姫の掌が一瞬光り粒子が敵陣へ飛んでいくのが見えました。
その粒子は敵陣ど真ん中に到達すると、地面に吸収されていき次の瞬間には、ドボッ、と音がして巨大な穴が開きます。
敵の司令官と思しき人達は、何が起きたのか全く理解する事も出来ないまま穴の底に落ちていきます。
これ――砂漠で湖を作った時の魔法ですね!
敵の中心を守備するように囲んでいた兵達をも、その範囲に治め自然の檻が出来上がります。
突然、指揮官達の部隊が目の前から消え失せ、四方の部隊の指揮官にも動揺の色が見て取れます。そこに子狐さんが近づき魔法を放つと、バチバチ、と音を発し電気がスパークする光りを放ちます。
子狐さんの魔法で一瞬痙攣を起こしますが、僕のそれと違い殺傷能力はありません。兵は突然体を電気が伝い、膝を折りしゃがみ込みます。
それを見届けもせずに、子狐さんが次の標的に向け駆け出し。
子狐さんが去った事を確認したエリッサちゃんが、膝を折っている部隊へ掌を翳します。
地面に膝を付いている兵は直ぐに回復し、一体今のは――、と声を漏らしだしています。そこへエリッサちゃんの掌から発動された魔法が降り掛かると、その集団を囲うように、ザンザンザンザン、聞きなれない音と共に突然地面から石の檻が出現し高さ5m程の石の牢屋を構築しました。
でもこの魔法、それほど範囲は広くありませんね。
囲い込んだのは300人という所でしょう。
突如出現した石の檻に慌てながらも、敵の騎士達はそれを壊そうと剣を突き立てます。が、ギャン、と甲高い音がすると逆に剣の方が折れてしまいました。
なるほど……強度は問題が無さそうです。
でも檻を作れる魔法って、エリッサちゃんは一体何処に向かっているのでしょう。でも魔物が大量発生するスタンピードには有効な魔法です。
魔法の取得に何らかの法則性があるとしたら、これってどういう事なんでしょうね?
僕がそんな事を考えている間にも、子狐さんは次の集団へと魔法を行使しています。エリッサちゃんも子狐さんの動きに合わせて檻の魔法を発動させていきます。
「ここまでは予定通りだな。後はミカ殿の番だ」
「任せるにゃ~!」
2人と1匹の活躍を見届けていたミカちゃんが声を上げ、魔法を発動させると僕達の目の前からその愛らしい姿が消え失せました。
これ僕の出番とか無さそうなんじゃ……。
僕がミカちゃんに告げると、
「それはお願いするにゃ。手を抜いて怪我をしたら本末転倒にゃ」
流石に自分達の身を犠牲にしてまでは、我慢しなくてもいいと言われミカちゃんの策を受け入れました。
でもサポートって何をすればいいんでしょうか……。
「子猫ちゃんは皆に結界魔法を掛けてくれるだけでいいにゃ」
結界魔法は今も皆に掛かっています。
この結界魔法は回避した回数によって持続時間が短縮されるのは分っていますが、その被害にも左右されるので正確にどの位まで持つのかは分りません。
通常の狩りでなら30分位は掛かった状態ですが、サースドレインの街付近での事です。被ダメが殆ど無い状態なので、攻撃に晒された場合はもっと短くなります。先程の投石で直撃コース3回分程度ならまだ維持されていました。でも馬車から離れた時に上掛けしたので、持続時間は分らないのです。
攻撃を開始する時に、再度結界を上掛けする事に決まります。
「まず大国軍の数がどれ程いるのか、現時点では分らんのだろう?」
僕達が拾ったのは音だけです。
視認出来た訳では無いので、正確な敵の数は分りません。
フローゼ姫が眉を顰めながら、不安を口にします。
女性陣が作戦会議を行っている間、僕はこっそり敵の偵察に赴きます。
この霧の中で足元を気にしている人は多くは無いでしょう。
敵の数と、陣形を調査し皆の元に戻ってきます。
「敵の数は多かったかにゃ?」
僕が戻ると、何も告げずに敵陣に行っていたのに、何をしてきたのか当然分っているとでも言う様に質問されます。
何も言わなくても理解し合えると言うのは、嬉しいものですね。
僕は少し照れながら、大よその数を教えます。
「数は2000人。この先二つ目の丘に隠れるように居たけど、偉そうな人の周囲に300人。そこから左右に500人ずつ。前後にも500人ずつかな?」
「子猫ちゃんそれじゃ数が合わないにゃ。それじゃ2300人にゃ!」
あれ?
間違えましたか……。
そんな僕の計算間違いも、笑って誤魔化してくれます。
「本隊を取り囲んでいるとなると、最初の予定通りか……」
「私はどの集団に魔法を掛ければいいのでしょうか?」
「エリッサちゃんは左右を頼むにゃ。子狐さんはエリッサちゃんと一緒に頼むにゃ」
「アーン!」
どうやら僕が居なかった間に、ある程度の作戦は済んでいた様ですね。
「子猫ちゃんは、敵の中に魔法使いや強い人が居たらそれの対処をお願いするにゃ」
サポート中心でも突発的に問題が起きた時には、殺さない範囲で暴れていいとお墨付きをもらいます。
ミカちゃんは何をするんでしょう?
「私は自在に敵の中を駆け回るにゃ」
いつもの僕の役回りみたいですね。ミカちゃんのお手並みを拝見しましょう。
それじゃ~行くにゃ! というミカちゃんの掛声と共に、僕達は少しずつ前に進みます。霧が薄れそうになればミカちゃんが追加で霧を発生させ、僕も皆に結界魔法を上掛けします。
僕とミカちゃんは30m程先に敵の先陣が控えている事を察知します。
ミカちゃんが頷くと、他の2人も了解した。分りましたわ。とばかりに首肯しています。
始まりますね。
ミカちゃんが前方に掌を翳すと、敵が密集している部分の霧だけ薄まってきます。
「おぉ、漸く霧が晴れてきたぞ」
そんな声が聞こえてきます。
あそこが敵陣のど真ん中ですね。
ミカちゃんが手を上にあげそれを振り下ろすと――。
ミカちゃんの後方で、魔法を発動前の状態で待機していたフローゼ姫の掌が一瞬光り粒子が敵陣へ飛んでいくのが見えました。
その粒子は敵陣ど真ん中に到達すると、地面に吸収されていき次の瞬間には、ドボッ、と音がして巨大な穴が開きます。
敵の司令官と思しき人達は、何が起きたのか全く理解する事も出来ないまま穴の底に落ちていきます。
これ――砂漠で湖を作った時の魔法ですね!
敵の中心を守備するように囲んでいた兵達をも、その範囲に治め自然の檻が出来上がります。
突然、指揮官達の部隊が目の前から消え失せ、四方の部隊の指揮官にも動揺の色が見て取れます。そこに子狐さんが近づき魔法を放つと、バチバチ、と音を発し電気がスパークする光りを放ちます。
子狐さんの魔法で一瞬痙攣を起こしますが、僕のそれと違い殺傷能力はありません。兵は突然体を電気が伝い、膝を折りしゃがみ込みます。
それを見届けもせずに、子狐さんが次の標的に向け駆け出し。
子狐さんが去った事を確認したエリッサちゃんが、膝を折っている部隊へ掌を翳します。
地面に膝を付いている兵は直ぐに回復し、一体今のは――、と声を漏らしだしています。そこへエリッサちゃんの掌から発動された魔法が降り掛かると、その集団を囲うように、ザンザンザンザン、聞きなれない音と共に突然地面から石の檻が出現し高さ5m程の石の牢屋を構築しました。
でもこの魔法、それほど範囲は広くありませんね。
囲い込んだのは300人という所でしょう。
突如出現した石の檻に慌てながらも、敵の騎士達はそれを壊そうと剣を突き立てます。が、ギャン、と甲高い音がすると逆に剣の方が折れてしまいました。
なるほど……強度は問題が無さそうです。
でも檻を作れる魔法って、エリッサちゃんは一体何処に向かっているのでしょう。でも魔物が大量発生するスタンピードには有効な魔法です。
魔法の取得に何らかの法則性があるとしたら、これってどういう事なんでしょうね?
僕がそんな事を考えている間にも、子狐さんは次の集団へと魔法を行使しています。エリッサちゃんも子狐さんの動きに合わせて檻の魔法を発動させていきます。
「ここまでは予定通りだな。後はミカ殿の番だ」
「任せるにゃ~!」
2人と1匹の活躍を見届けていたミカちゃんが声を上げ、魔法を発動させると僕達の目の前からその愛らしい姿が消え失せました。
これ僕の出番とか無さそうなんじゃ……。
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