子猫ちゃんの異世界珍道中
第106話、子猫と子狐の尾行劇
僕が追いかけた馬車は、大通りを真っ直ぐに進んで行きます。
旦那様というのがここの城主であるなら、行先は正面に高く聳える侯爵の城でしょう。途中からばれない様に馬車の上に高く飛び上がると体を低くします。
これで間違ってもミカちゃんとはぐれる事はありませんね。
∞ ∞ ∞
一方でエリッサちゃん、フローゼ姫を乗せた馬車はというと――。
大きな街でも一際栄えた繁華街と思しき場所に向かっていました。
いくつかの通りを何度か曲がると、何処かの御屋敷とも間違えてしまいそうな立派な3階建の娼館の門を潜りました。
僕は子猫ちゃんに言われた通りに、エリッサちゃんとフローゼ姫を守る為、馬車の真下を隠れるように駆け、難なく目的地まで尾行する事に成功しました。
でもこれからどうすればいいんでしょうか?
ここなら魔法も使い放題ですから、今仕掛けても良さそうですが……。
馬車の下を走りながら何度か、アーン、と声を掛けましたが、エリッサちゃんからの応答はありませんでした。
僕の事を忘れちゃったんでしょうか?
馬車は門を過ぎると正面に建っている建物の、正面入り口に横付けされ停車すると、騎士に前後を挟まれた格好で2人が降りてきました。
2人の表情は無表情で、最早感情を窺い知る事も出来ません。
確かあの首輪を付けられてからでしたね。2人がおかしくなったのは。
僕が使える魔法は、氷の鏃、ファイア、鋼鉄の牙、感電だけです。
この距離で氷の鏃を放って、万一失敗したら――怖くなって金色の毛が身震いで逆立つ感じをうけます。
接近して牙で首輪を破壊するにしても、騎士が邪魔ですね。
あの騎士達、殺しちゃっていいんでしょうか?
それなら簡単な気がします。
僕は考えた挙句、全身に鎧を纏った騎士に対し感電の魔法を放ちました。
放った瞬間、娼館のドアが開き中から冒険者が3人。それも僕達を宿屋に案内してくれた良い人達が出てきました。
僕の感電を受けた先頭の騎士は全身痙攣させただけで、気絶しましたが後ろの騎士は何が起きたのか分らずに呆気に取られています。
「何をやっている、後ろの狐に気をつけろ!」
僕の姿を認めた冒険者が咄嗟に声をあげ叫びます。
あれ? この冒険者さんの足が義足に変わっていますね。昨日は普通に歩いていたのに今は、杖を付いています。
他の冒険者も、昨日は手があったのに今日は手が無いです。
自分の手足を木に変えるのが流行っているんでしょうか?
僕がそんな事を考えていると、後続の騎士が抜剣し振り返りました。
僕はもう一度、掌を翳し子猫ちゃんの様に掌に魔力を集めようとした所で、飛び掛ってきた騎士に邪魔されて横飛びに避けました。
危ないですね。あと少し遅かったら切られていましたよ!
「おい! 女達を早く中へ――」
足が義足の男が仲間の冒険者に告げると、手首から先が木の義手の男と肩にさらしを巻いている男がエリッサちゃんと、フローゼ姫に駆け寄り2人の手錠を掴むと屋敷の中へと入って行きました。
これじゃ子猫ちゃんとの約束が守れません。
僕の目の前には抜剣した騎士と、足が義足で杖を付いている冒険者が立ちはだかりました。
∞ ∞ ∞
ミカちゃんを乗せた馬車は予想したとおりに、この街で最大の建物であるお城を囲む池の手前のつり橋で一度停車しました。今の内に馬車の中に入ってしまいましょう。僕は爪を使って馬車の屋根に穴を開けます。
すると――。
急に馬車の風通しが良くなったからでしょうか?
ミカちゃんをオットマンにして、馬車に乗っていた執事服を着たお爺さんに気づかれてしまいました。
「――なんだと!」
それはこちらの台詞ですよ!
ミカちゃんを足置き台にするなんて――もう許せません!
僕はミカちゃんに乗せてある両足を太腿から爪で切断します。
「ぐぎゃげぇおぉぉぉー」
言葉にならない大きな叫び声をあげた所で、馬車はつり橋を渡り城の中へ入った所でした。
馬車から執事の叫び声を聞きつけた、つり橋の手前にいた門番の騎士達と城の中の騎士達が、馬車を取り囲む様にぞろぞろと集まってきました。
「何事だ!」
騎士の中でも一際屈強そうな頭1つ飛び出している大男が、馬車を取り囲んだ騎士達の背後から叫びます。騎士達は既に皆が抜剣し、馬車に向けて殺気を振り撒いています。
「そ、それが、つり橋を渡りきった所で急に中からベルクリス殿の叫び声が……」
馬車の窓にはカーテンが引かれて居る為に、中を覗く事は出来ません。
僕は今の内にミカちゃんに結界魔法を掛け、首輪と手錠を爪で切り裂きました。でもミカちゃんは元に戻るどころか糸が切れた人形の様に、床に崩れ落ちて倒れてしまいました。
僕は焦ってミカちゃんにヒーリングを掛けますが、意識は戻りません。
そうしている間に、馬車の外では騎士達が話す声だけが聞こえてきます。
ミカちゃんを踏んでいたお爺さんは顔から首まで真っ青にしながら震えて、虫の息しかしていません。
もうここまで来たら、やっちゃって良いですよね?
僕はミカちゃんを一度見つめ、眠っている状態なのを確認すると、天井に開けた穴から一気に馬車の上へと飛び上がりました。
旦那様というのがここの城主であるなら、行先は正面に高く聳える侯爵の城でしょう。途中からばれない様に馬車の上に高く飛び上がると体を低くします。
これで間違ってもミカちゃんとはぐれる事はありませんね。
∞ ∞ ∞
一方でエリッサちゃん、フローゼ姫を乗せた馬車はというと――。
大きな街でも一際栄えた繁華街と思しき場所に向かっていました。
いくつかの通りを何度か曲がると、何処かの御屋敷とも間違えてしまいそうな立派な3階建の娼館の門を潜りました。
僕は子猫ちゃんに言われた通りに、エリッサちゃんとフローゼ姫を守る為、馬車の真下を隠れるように駆け、難なく目的地まで尾行する事に成功しました。
でもこれからどうすればいいんでしょうか?
ここなら魔法も使い放題ですから、今仕掛けても良さそうですが……。
馬車の下を走りながら何度か、アーン、と声を掛けましたが、エリッサちゃんからの応答はありませんでした。
僕の事を忘れちゃったんでしょうか?
馬車は門を過ぎると正面に建っている建物の、正面入り口に横付けされ停車すると、騎士に前後を挟まれた格好で2人が降りてきました。
2人の表情は無表情で、最早感情を窺い知る事も出来ません。
確かあの首輪を付けられてからでしたね。2人がおかしくなったのは。
僕が使える魔法は、氷の鏃、ファイア、鋼鉄の牙、感電だけです。
この距離で氷の鏃を放って、万一失敗したら――怖くなって金色の毛が身震いで逆立つ感じをうけます。
接近して牙で首輪を破壊するにしても、騎士が邪魔ですね。
あの騎士達、殺しちゃっていいんでしょうか?
それなら簡単な気がします。
僕は考えた挙句、全身に鎧を纏った騎士に対し感電の魔法を放ちました。
放った瞬間、娼館のドアが開き中から冒険者が3人。それも僕達を宿屋に案内してくれた良い人達が出てきました。
僕の感電を受けた先頭の騎士は全身痙攣させただけで、気絶しましたが後ろの騎士は何が起きたのか分らずに呆気に取られています。
「何をやっている、後ろの狐に気をつけろ!」
僕の姿を認めた冒険者が咄嗟に声をあげ叫びます。
あれ? この冒険者さんの足が義足に変わっていますね。昨日は普通に歩いていたのに今は、杖を付いています。
他の冒険者も、昨日は手があったのに今日は手が無いです。
自分の手足を木に変えるのが流行っているんでしょうか?
僕がそんな事を考えていると、後続の騎士が抜剣し振り返りました。
僕はもう一度、掌を翳し子猫ちゃんの様に掌に魔力を集めようとした所で、飛び掛ってきた騎士に邪魔されて横飛びに避けました。
危ないですね。あと少し遅かったら切られていましたよ!
「おい! 女達を早く中へ――」
足が義足の男が仲間の冒険者に告げると、手首から先が木の義手の男と肩にさらしを巻いている男がエリッサちゃんと、フローゼ姫に駆け寄り2人の手錠を掴むと屋敷の中へと入って行きました。
これじゃ子猫ちゃんとの約束が守れません。
僕の目の前には抜剣した騎士と、足が義足で杖を付いている冒険者が立ちはだかりました。
∞ ∞ ∞
ミカちゃんを乗せた馬車は予想したとおりに、この街で最大の建物であるお城を囲む池の手前のつり橋で一度停車しました。今の内に馬車の中に入ってしまいましょう。僕は爪を使って馬車の屋根に穴を開けます。
すると――。
急に馬車の風通しが良くなったからでしょうか?
ミカちゃんをオットマンにして、馬車に乗っていた執事服を着たお爺さんに気づかれてしまいました。
「――なんだと!」
それはこちらの台詞ですよ!
ミカちゃんを足置き台にするなんて――もう許せません!
僕はミカちゃんに乗せてある両足を太腿から爪で切断します。
「ぐぎゃげぇおぉぉぉー」
言葉にならない大きな叫び声をあげた所で、馬車はつり橋を渡り城の中へ入った所でした。
馬車から執事の叫び声を聞きつけた、つり橋の手前にいた門番の騎士達と城の中の騎士達が、馬車を取り囲む様にぞろぞろと集まってきました。
「何事だ!」
騎士の中でも一際屈強そうな頭1つ飛び出している大男が、馬車を取り囲んだ騎士達の背後から叫びます。騎士達は既に皆が抜剣し、馬車に向けて殺気を振り撒いています。
「そ、それが、つり橋を渡りきった所で急に中からベルクリス殿の叫び声が……」
馬車の窓にはカーテンが引かれて居る為に、中を覗く事は出来ません。
僕は今の内にミカちゃんに結界魔法を掛け、首輪と手錠を爪で切り裂きました。でもミカちゃんは元に戻るどころか糸が切れた人形の様に、床に崩れ落ちて倒れてしまいました。
僕は焦ってミカちゃんにヒーリングを掛けますが、意識は戻りません。
そうしている間に、馬車の外では騎士達が話す声だけが聞こえてきます。
ミカちゃんを踏んでいたお爺さんは顔から首まで真っ青にしながら震えて、虫の息しかしていません。
もうここまで来たら、やっちゃって良いですよね?
僕はミカちゃんを一度見つめ、眠っている状態なのを確認すると、天井に開けた穴から一気に馬車の上へと飛び上がりました。
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