子猫ちゃんの異世界珍道中
第95話、全ての根源は……。
ジェニファー王女とギルマス、僕達一行は湖の周囲に咲き誇る青々とした草花をほんわかした気持で眺めています。
「それにしても驚きましたわ。これまでは地下水しか水が無かったこの街に新たな水源が誕生したのですもの」
ルフランの大地が人の血肉を食らって一面花畑に変わった様に、ここも川からの水が染み込み生まれ変りましたね。
この緑化は湖だけでなく、溝に沿って川まで続いていくと思われます。
今までは砂漠を移動し、魔物に襲われながら移動していましたが、この湖に船を浮かべ溝に沿って川まで移動すれば魔物からの襲撃も無くなるでしょう。
川に魔物が居れば、厳しくなりますが……。
エルフの船で潜航した時の様子では、この川に魔物は居ない様に思われます。
後はエルフと仲直りが出来ればいいのですが……。
前にエルフの長から聞いた話とギルマスから聞いた話が噛み合わなかった事が気になります。
それに何故、ここにエルフがいるのかも。
「それでどうしてここにエルフの人達がいるにゃ?」
ミカちゃんがキャデナさんに尋ねます。
「当然君達の動向が、気になったからに決っているじゃないか」
僕達がエルフから依頼されたのは、砂漠の民の情報収集です。
やましい事が無ければ、僕達の動向を気にする必要はありませんよね?
「エルフは何を隠しているにゃ?」
ギルマスの話が全て本当だとすれば、今回の件はエルフにも問題があります。
助けを求めたギルマスを追い返し、団子虫を好きにのさばらせたのです。
それで何人が亡くなったのかは聞いていませんが、エルフが助力すれば助かった命もあった筈です。
その後の砂漠の民が行った虐殺にも問題はありますが。
両者痛み分けに持っていければ最善なのですが、難しいでしょうかね?
ミカちゃんの詰問に対し、キャデナさんは黙ったままです。
ギルマスから僕達はガンバラ王国への行き方を既に聞いています。
砂漠を横断する為のラクダも、今回の討伐成功で入手した様なものです。
エリッサちゃんを人質に取り交渉を迫られと、最初からエルフには胡散臭い感じがしました。
「砂漠の民が木々を欲したのは、キャデナさん達も襲われたビックウッドローズから街を守る為だったにゃ。その原因を討伐した今、砂漠の民達がエルフに害を加えるとは考えられないにゃ」
ミカちゃんの詰問は続きます。
「エルフが本当の事を話さないなら、私達はエルフの土地を通らないでガンバラ王国に向かうだけにゃ!」
ミカちゃんからエルフを見捨てると言った発言を受けて、俯いた顔を上げます。そしてポツポツと語り始めました。
「そもそもエルフの中から、ダークエルフと酷似した娘が生まれたのが失敗だったんだ! たとえ病気が原因だとしても、忌み子がエルフから産まれた事に変わりは無い。忌み子は世界を混沌に陥れる魔王の手先になる運命。細々と人里から離れて暮らすならまだしも、砂漠の民と結託した。エルフが恐れているのは砂漠の民などでは無い。そのおぞましき忌み子だ!」
はぁ?
何を言ってくれちゃっているんでしょう?
ギルマスは良い人ですよ?
そんな迷信に囚われて、迫害しエルフから追放し、更には砂漠の民を思って救いを求めたギルマスを足蹴にしたのはエルフの方です。
魔力の少ないギルマスが魔王の手先?
笑っちゃいますね。
僕から見た感じでは、ギルマスは普通の一般人と同じです。
「そ、そんな迷信に惑わされた為に、私は両親から離され迫害を受け、アルフヘイム、スヴァルトアールヴヘイムを追い出されたのね。どうりで私がこの街の為に説得を試みても、冷たくあしらわれた訳よね」
全ては病で外見が変わってしまった事が原因――ギルマスはポツリと言葉を零すと今にも泣き出しそうな面持ちで俯きました。
やっぱりギルマスは悪い人ではありませんね。
自分を迎え入れて育ててくれた、この砂漠の民の為に必死なだけです。
「確かに話し合いで森林伐採の許可が下りない事を理由に、エルフを虐殺した事は頂けないが――そもそもの原因はエルフが自ら招いた事だろう? ここは砂漠の民と和平を結び、共に力を合わせて生存した方がお互いにとってもいいのではないか?」
フローゼ姫が仲裁する形で中に入ります。
砂漠の国には燃える油があります。
魔力を持つ者が少なくなっているエルフには、火の魔法を使って加工する事も困難と以前聞きました。砂漠の国から油を購入し、その見返りに舟を提供すればお互いに助かると思うのですが……。
このままでは僕達まで砂漠の民達に、いやギルマスに取り込まれると心配したのか? 戻って長と話をしてみる。そういい残し、生き残った当初の半数まで減ったエルフ達を連れて砂漠を歩いて行きました。
「すまない……ジェニファー。私がここにやって来たからエルフは非協力的だった様だ」
ギルマスは自分を責めている様ですが――。
「シャラドワお姉様のせいではありませんわ! 元々エルフの人々は人間が嫌いなのですから」
最初に僕達がキャデナに会った時にも、何で人間と一緒に居るんだ! と責め立てられましたね。
ギルマスに責任を押し付けているだけで、人間との共存を嫌っているだけじゃないですか!
そう考えると今後の展望が厳しいものになる予感もしますが、長との話し合い次第ですからね。
長く感じた暗闇に支配された世界は、東の方向から昇る朝日のお陰で赤く染まり、湖の水面は眩しいくらいに朝日が反射して輝きます。
早起きしてきた街の民は、湖が突然現れた事に驚き歓声をあげています。
湖が出来たお陰か、周辺の気温が下がった様に思える中、僕達はジェニファー王女に誘われて馬車に乗り込みます。
今後の話と、報酬の話がありますからね。
湖を一目見ようと大勢の街の人が門から出てくる中、僕達を乗せた馬車はお城に向かって走り出しました。
「それにしても驚きましたわ。これまでは地下水しか水が無かったこの街に新たな水源が誕生したのですもの」
ルフランの大地が人の血肉を食らって一面花畑に変わった様に、ここも川からの水が染み込み生まれ変りましたね。
この緑化は湖だけでなく、溝に沿って川まで続いていくと思われます。
今までは砂漠を移動し、魔物に襲われながら移動していましたが、この湖に船を浮かべ溝に沿って川まで移動すれば魔物からの襲撃も無くなるでしょう。
川に魔物が居れば、厳しくなりますが……。
エルフの船で潜航した時の様子では、この川に魔物は居ない様に思われます。
後はエルフと仲直りが出来ればいいのですが……。
前にエルフの長から聞いた話とギルマスから聞いた話が噛み合わなかった事が気になります。
それに何故、ここにエルフがいるのかも。
「それでどうしてここにエルフの人達がいるにゃ?」
ミカちゃんがキャデナさんに尋ねます。
「当然君達の動向が、気になったからに決っているじゃないか」
僕達がエルフから依頼されたのは、砂漠の民の情報収集です。
やましい事が無ければ、僕達の動向を気にする必要はありませんよね?
「エルフは何を隠しているにゃ?」
ギルマスの話が全て本当だとすれば、今回の件はエルフにも問題があります。
助けを求めたギルマスを追い返し、団子虫を好きにのさばらせたのです。
それで何人が亡くなったのかは聞いていませんが、エルフが助力すれば助かった命もあった筈です。
その後の砂漠の民が行った虐殺にも問題はありますが。
両者痛み分けに持っていければ最善なのですが、難しいでしょうかね?
ミカちゃんの詰問に対し、キャデナさんは黙ったままです。
ギルマスから僕達はガンバラ王国への行き方を既に聞いています。
砂漠を横断する為のラクダも、今回の討伐成功で入手した様なものです。
エリッサちゃんを人質に取り交渉を迫られと、最初からエルフには胡散臭い感じがしました。
「砂漠の民が木々を欲したのは、キャデナさん達も襲われたビックウッドローズから街を守る為だったにゃ。その原因を討伐した今、砂漠の民達がエルフに害を加えるとは考えられないにゃ」
ミカちゃんの詰問は続きます。
「エルフが本当の事を話さないなら、私達はエルフの土地を通らないでガンバラ王国に向かうだけにゃ!」
ミカちゃんからエルフを見捨てると言った発言を受けて、俯いた顔を上げます。そしてポツポツと語り始めました。
「そもそもエルフの中から、ダークエルフと酷似した娘が生まれたのが失敗だったんだ! たとえ病気が原因だとしても、忌み子がエルフから産まれた事に変わりは無い。忌み子は世界を混沌に陥れる魔王の手先になる運命。細々と人里から離れて暮らすならまだしも、砂漠の民と結託した。エルフが恐れているのは砂漠の民などでは無い。そのおぞましき忌み子だ!」
はぁ?
何を言ってくれちゃっているんでしょう?
ギルマスは良い人ですよ?
そんな迷信に囚われて、迫害しエルフから追放し、更には砂漠の民を思って救いを求めたギルマスを足蹴にしたのはエルフの方です。
魔力の少ないギルマスが魔王の手先?
笑っちゃいますね。
僕から見た感じでは、ギルマスは普通の一般人と同じです。
「そ、そんな迷信に惑わされた為に、私は両親から離され迫害を受け、アルフヘイム、スヴァルトアールヴヘイムを追い出されたのね。どうりで私がこの街の為に説得を試みても、冷たくあしらわれた訳よね」
全ては病で外見が変わってしまった事が原因――ギルマスはポツリと言葉を零すと今にも泣き出しそうな面持ちで俯きました。
やっぱりギルマスは悪い人ではありませんね。
自分を迎え入れて育ててくれた、この砂漠の民の為に必死なだけです。
「確かに話し合いで森林伐採の許可が下りない事を理由に、エルフを虐殺した事は頂けないが――そもそもの原因はエルフが自ら招いた事だろう? ここは砂漠の民と和平を結び、共に力を合わせて生存した方がお互いにとってもいいのではないか?」
フローゼ姫が仲裁する形で中に入ります。
砂漠の国には燃える油があります。
魔力を持つ者が少なくなっているエルフには、火の魔法を使って加工する事も困難と以前聞きました。砂漠の国から油を購入し、その見返りに舟を提供すればお互いに助かると思うのですが……。
このままでは僕達まで砂漠の民達に、いやギルマスに取り込まれると心配したのか? 戻って長と話をしてみる。そういい残し、生き残った当初の半数まで減ったエルフ達を連れて砂漠を歩いて行きました。
「すまない……ジェニファー。私がここにやって来たからエルフは非協力的だった様だ」
ギルマスは自分を責めている様ですが――。
「シャラドワお姉様のせいではありませんわ! 元々エルフの人々は人間が嫌いなのですから」
最初に僕達がキャデナに会った時にも、何で人間と一緒に居るんだ! と責め立てられましたね。
ギルマスに責任を押し付けているだけで、人間との共存を嫌っているだけじゃないですか!
そう考えると今後の展望が厳しいものになる予感もしますが、長との話し合い次第ですからね。
長く感じた暗闇に支配された世界は、東の方向から昇る朝日のお陰で赤く染まり、湖の水面は眩しいくらいに朝日が反射して輝きます。
早起きしてきた街の民は、湖が突然現れた事に驚き歓声をあげています。
湖が出来たお陰か、周辺の気温が下がった様に思える中、僕達はジェニファー王女に誘われて馬車に乗り込みます。
今後の話と、報酬の話がありますからね。
湖を一目見ようと大勢の街の人が門から出てくる中、僕達を乗せた馬車はお城に向かって走り出しました。
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