子猫ちゃんの異世界珍道中
第93話、団子虫との戦闘その1
フローゼ姫の剣を修復した晩から丸一日経った、翌日の夜。
早ければ今晩にも団子虫による襲撃が行われる筈ですが、前回の時間になっても平穏なままです。
「もう眠いにゃ。今晩はきっと来ないにゃ」
流石に徹夜して待つ訳にはいきません。
僕達は武装を解除してベッドに潜り込み、就寝する事にしました。
事態が動いたのは皆が寝静まり、大分時間が経ってからです。
宿泊している部屋のドアが、外側から強く殴りつけられる音にたたき起こされます。
睡眠時間にして3時間寝たかどうか位でしょうか?
寝惚け眼でミカちゃんがドアを開けると、そこにはギルドで食事を運んできてくれた少女が立っていました。
「シャラドワ様から言伝を預かってきました。ビックウッドローズは正門で現在エルフと戦闘中との事です」
一瞬、何を言われたのか理解出来ませんでした。
正門に団子虫が現れたのは分りますが、何故エルフと戦闘中なのでしょう?
会話を聞いていたフローゼ姫が少女を労い、支度を始めます。
ミカちゃんも、エリッサちゃんもそれに倣います。
宿の外にはギルマスが用意してくれた馬車が待機していました。
馬車に乗り込み正門までの移動中に、少女の会話を思い返しますが、何度口に出しても分りません。
「何でエルフがいるんでしょう?」
エリッサちゃんも不思議そうな面持ちを浮かべて首を傾げています。
「妾にも詳細は分らぬが――行ってみれば全て分るだろう」
確かにフローゼ姫の言うとおりですね。
馬車は大通りに出て、真っ直ぐ正門に向かいます。
流石にまだ闇が支配している時間帯で、馬車の先に取り付けられている松明の明かりで、漸く道が見える程度です。
街の中央まではまだ襲来の知らせが行き渡っていないのか、明かりを付けている家屋はありません。
ただ僕達が向かっている正門付近の方角は、煌々と明かりが焚かれています。
遠めに見える正門はまだ破られていない様に思います。
しばらくして正門に到着すると――。
門の外では魔法を放ち、戦闘を行っている音だけが聞こえています。
一体何が起きているのでしょう。
僕達が街壁の上に上ると、壁の外では10人程のエルフが団子虫に襲われています。
その中の1人が壁の上に立つ僕達を認めると――。
「迷い猫殿、助けて、こんなの無理、無理だから~!」
誰かと思ったら僕達を大樹に誘ったキャデナさんじゃないですか。
それにしてもあった時と比べて、キャラ変わっていないですか?
前は、恩知らずだなぁ、なんて偉そうだったのに……。
僕は意思の疎通を使います。
「何でこんな所にいるんです?」
「えっ、猫が喋った!」
まさか僕が喋れるとは思わなかった様で、驚いていますがそんな場合ですかね?
何とか氷の壁を使い防いでいたエルフ達ですが、団子虫の突撃を受けその壁にひびが入りました。
「ひゃぁ~死ぬ、死ぬから~!」
話は後回しですね。
僕は皆に結界魔法を掛け、自らの体を銀色に変えてエルフ達のいる地面へ飛び降りました。
既に皆も魔法の発動体勢に入っていますが、エルフがはった氷の壁に遮られて団子虫が見えないでいます。
この氷の壁、本当に邪魔ですね。
僕が着地するとキャデナさんが寄ってきます。
「砂漠の民は――ぎゃぁ~!」
何か言葉を話そうとしましたが、丁度ひびの入った壁が壊された所でした。
「無駄話をしている場合じゃありませんよ!」
僕はキャデナさんに注意し、団子虫へと魔法を放ちます。
放ったのは重力圧縮です。
黒い煙が団子虫を包み込もうとしますが、それを嫌がった団子虫が地中へと逃げます。
煙は地面の中までは浸透せずに、霧散して消滅しました。
何と無く予想はしていましたが、やっぱり一筋縄ではいきませんね。
地面が大きく揺れ動き、丁度僕達が立っている足元が大きく弾け飛びます。
「子猫ちゃん!」
壁の上で魔力を掌に纏わせていたミカちゃんの叫ぶ声が聞こえますが、僕がこんな遅い攻撃で倒される訳ありません。
弾けた刹那、僕は横っ飛びに避けました。
エルフの人達も普段から木々の上を移動している為に、ジャンプ力は高かった様で、皆バラバラに避けます。
僕達がさっきまで居た地面には、団子虫が大口を開けた状態で這い出してきました。
「今だ! いくぞ!」
フローゼ姫がストームドライバーを放ち、エリッサちゃんは氷の鏃を放ちます。
僕達が近くに居る為に、範囲攻撃は避けたようです。
フローゼ姫が放った空気の大砲は団子虫の頭に当りますが、効果は無く呆気なく霧散します。
エリッサちゃんが放った氷の鏃も団子虫の歯に当り、鏃の方が砕けます。
初期に覚えた魔法では、効果がありませんね。
そこへミカちゃんの氷結が襲い掛かりますが、一瞬顔面を氷が覆いましたが、団子虫が口を大きく開け閉めしただけで砕け散りました。
団子虫の動きは変わらず、一番近くにいた若い男のエルフへと襲い掛かり、その口内に飲み込まれ餌にされてしまいました。
不味いですね、このエルフさん達が邪魔です。
僕も爪を使い首と胴体の辺りを切りつけますが、ガキーン、と甲高い音がするだけで傷すら付けられていません。
キャデナさんが前に川の中から放った水の大砲を放ちますが、そんなもの効く訳がないでしょう。
団子虫の体を綺麗に洗浄してあげただけです。
「エルフの人達が邪魔で範囲攻撃が打てないにゃ!」
ミカちゃんの言う通りです。
弱い癖に逃げるのが恥だとでも思っているんでしょうか?
街壁を覆っている木の高さは20mはあります。
流石にこの高さを、ジャンプだけで飛び越える事は出来ないようです。
「団子虫に注意を引きつけない様にバラバラに逃げて!」
僕がエルフさん達に指示を出します。
でも、エルフが動くだけで団子虫の視線がそれを追っているのが分ります。
「注意を引きつけない様にって言われても……これじゃ無理だから!」
キャデナさんが弱音を吐きますが、その瞬間にも他のエルフさんが奴に喰われていきます。
「何やっているにゃ! 早くするにゃ!」
ミカちゃんもお冠です。
ミカちゃんの声が効いたのか? 1人のエルフさんが喰われている間に生き残っている7人が一気に分散する様に逃げ出します。
この場に残っているのは僕だけです。
僕は銀色の体を解除し、魔法を発動させます。
発動と共にその場から神速で横に逃げます。
すると――漆黒の闇に包まれている砂漠に眩く光り輝く大量の光りの雨が降り注ぎます『ゴゴゴグワァーンドバゴゴーン』静寂の中に轟音が鳴り響き、その雨は団子虫に当り、バチバチ、と火花を散らしています。
でもまだです。
体から煙が出ていません。硬い外殻に稲妻が当たっているだけで、中まで届いていません。
団子虫はその雨を嫌い、巨体を左右に振り避けようとしています。
周囲の砂が舞いあがると、砂の中にある砂鉄に当り爆発した様に周囲を照らします。
団子虫の癖に、砂鉄で稲妻を回避しました。
その異様を離れた所でジッと僕は見つめ、壁の上から皆も冷や汗を掻きながらその光景に驚いていました。
早ければ今晩にも団子虫による襲撃が行われる筈ですが、前回の時間になっても平穏なままです。
「もう眠いにゃ。今晩はきっと来ないにゃ」
流石に徹夜して待つ訳にはいきません。
僕達は武装を解除してベッドに潜り込み、就寝する事にしました。
事態が動いたのは皆が寝静まり、大分時間が経ってからです。
宿泊している部屋のドアが、外側から強く殴りつけられる音にたたき起こされます。
睡眠時間にして3時間寝たかどうか位でしょうか?
寝惚け眼でミカちゃんがドアを開けると、そこにはギルドで食事を運んできてくれた少女が立っていました。
「シャラドワ様から言伝を預かってきました。ビックウッドローズは正門で現在エルフと戦闘中との事です」
一瞬、何を言われたのか理解出来ませんでした。
正門に団子虫が現れたのは分りますが、何故エルフと戦闘中なのでしょう?
会話を聞いていたフローゼ姫が少女を労い、支度を始めます。
ミカちゃんも、エリッサちゃんもそれに倣います。
宿の外にはギルマスが用意してくれた馬車が待機していました。
馬車に乗り込み正門までの移動中に、少女の会話を思い返しますが、何度口に出しても分りません。
「何でエルフがいるんでしょう?」
エリッサちゃんも不思議そうな面持ちを浮かべて首を傾げています。
「妾にも詳細は分らぬが――行ってみれば全て分るだろう」
確かにフローゼ姫の言うとおりですね。
馬車は大通りに出て、真っ直ぐ正門に向かいます。
流石にまだ闇が支配している時間帯で、馬車の先に取り付けられている松明の明かりで、漸く道が見える程度です。
街の中央まではまだ襲来の知らせが行き渡っていないのか、明かりを付けている家屋はありません。
ただ僕達が向かっている正門付近の方角は、煌々と明かりが焚かれています。
遠めに見える正門はまだ破られていない様に思います。
しばらくして正門に到着すると――。
門の外では魔法を放ち、戦闘を行っている音だけが聞こえています。
一体何が起きているのでしょう。
僕達が街壁の上に上ると、壁の外では10人程のエルフが団子虫に襲われています。
その中の1人が壁の上に立つ僕達を認めると――。
「迷い猫殿、助けて、こんなの無理、無理だから~!」
誰かと思ったら僕達を大樹に誘ったキャデナさんじゃないですか。
それにしてもあった時と比べて、キャラ変わっていないですか?
前は、恩知らずだなぁ、なんて偉そうだったのに……。
僕は意思の疎通を使います。
「何でこんな所にいるんです?」
「えっ、猫が喋った!」
まさか僕が喋れるとは思わなかった様で、驚いていますがそんな場合ですかね?
何とか氷の壁を使い防いでいたエルフ達ですが、団子虫の突撃を受けその壁にひびが入りました。
「ひゃぁ~死ぬ、死ぬから~!」
話は後回しですね。
僕は皆に結界魔法を掛け、自らの体を銀色に変えてエルフ達のいる地面へ飛び降りました。
既に皆も魔法の発動体勢に入っていますが、エルフがはった氷の壁に遮られて団子虫が見えないでいます。
この氷の壁、本当に邪魔ですね。
僕が着地するとキャデナさんが寄ってきます。
「砂漠の民は――ぎゃぁ~!」
何か言葉を話そうとしましたが、丁度ひびの入った壁が壊された所でした。
「無駄話をしている場合じゃありませんよ!」
僕はキャデナさんに注意し、団子虫へと魔法を放ちます。
放ったのは重力圧縮です。
黒い煙が団子虫を包み込もうとしますが、それを嫌がった団子虫が地中へと逃げます。
煙は地面の中までは浸透せずに、霧散して消滅しました。
何と無く予想はしていましたが、やっぱり一筋縄ではいきませんね。
地面が大きく揺れ動き、丁度僕達が立っている足元が大きく弾け飛びます。
「子猫ちゃん!」
壁の上で魔力を掌に纏わせていたミカちゃんの叫ぶ声が聞こえますが、僕がこんな遅い攻撃で倒される訳ありません。
弾けた刹那、僕は横っ飛びに避けました。
エルフの人達も普段から木々の上を移動している為に、ジャンプ力は高かった様で、皆バラバラに避けます。
僕達がさっきまで居た地面には、団子虫が大口を開けた状態で這い出してきました。
「今だ! いくぞ!」
フローゼ姫がストームドライバーを放ち、エリッサちゃんは氷の鏃を放ちます。
僕達が近くに居る為に、範囲攻撃は避けたようです。
フローゼ姫が放った空気の大砲は団子虫の頭に当りますが、効果は無く呆気なく霧散します。
エリッサちゃんが放った氷の鏃も団子虫の歯に当り、鏃の方が砕けます。
初期に覚えた魔法では、効果がありませんね。
そこへミカちゃんの氷結が襲い掛かりますが、一瞬顔面を氷が覆いましたが、団子虫が口を大きく開け閉めしただけで砕け散りました。
団子虫の動きは変わらず、一番近くにいた若い男のエルフへと襲い掛かり、その口内に飲み込まれ餌にされてしまいました。
不味いですね、このエルフさん達が邪魔です。
僕も爪を使い首と胴体の辺りを切りつけますが、ガキーン、と甲高い音がするだけで傷すら付けられていません。
キャデナさんが前に川の中から放った水の大砲を放ちますが、そんなもの効く訳がないでしょう。
団子虫の体を綺麗に洗浄してあげただけです。
「エルフの人達が邪魔で範囲攻撃が打てないにゃ!」
ミカちゃんの言う通りです。
弱い癖に逃げるのが恥だとでも思っているんでしょうか?
街壁を覆っている木の高さは20mはあります。
流石にこの高さを、ジャンプだけで飛び越える事は出来ないようです。
「団子虫に注意を引きつけない様にバラバラに逃げて!」
僕がエルフさん達に指示を出します。
でも、エルフが動くだけで団子虫の視線がそれを追っているのが分ります。
「注意を引きつけない様にって言われても……これじゃ無理だから!」
キャデナさんが弱音を吐きますが、その瞬間にも他のエルフさんが奴に喰われていきます。
「何やっているにゃ! 早くするにゃ!」
ミカちゃんもお冠です。
ミカちゃんの声が効いたのか? 1人のエルフさんが喰われている間に生き残っている7人が一気に分散する様に逃げ出します。
この場に残っているのは僕だけです。
僕は銀色の体を解除し、魔法を発動させます。
発動と共にその場から神速で横に逃げます。
すると――漆黒の闇に包まれている砂漠に眩く光り輝く大量の光りの雨が降り注ぎます『ゴゴゴグワァーンドバゴゴーン』静寂の中に轟音が鳴り響き、その雨は団子虫に当り、バチバチ、と火花を散らしています。
でもまだです。
体から煙が出ていません。硬い外殻に稲妻が当たっているだけで、中まで届いていません。
団子虫はその雨を嫌い、巨体を左右に振り避けようとしています。
周囲の砂が舞いあがると、砂の中にある砂鉄に当り爆発した様に周囲を照らします。
団子虫の癖に、砂鉄で稲妻を回避しました。
その異様を離れた所でジッと僕は見つめ、壁の上から皆も冷や汗を掻きながらその光景に驚いていました。
コメント