子猫ちゃんの異世界珍道中
第40話、エリッサちゃんの家庭教師
「ウォルター、先程の轟音の正体はわかったのか?」
ブラウンの髪を短く切りそろえ髪油で上げている、温厚そうな青年とも見える30前半のサースドレイン子爵が執事頭に尋ねた。
「はい。何でも、お嬢様がミカ殿に魔法の手本をお願いしたらしく、酒樽を的にして発動させた音で御座いました」
「ほう、魔法の手本とな。いかなる魔法だったのだ?」
「見学していた御付のメイドの話では、空から光の雨が降り注ぎ、次の瞬間には目が眩む程の光と轟音で、後で的を確認致しましたら、酒樽がバラバラに砕け、焼けていた様で御座います」
「それは。数年前に無くなられた、この国、最高の魔導師で賢者でもあらせられたエルドーラ様が御使いになっていたサンダーでは無いのか?」
「さぁ、私もメイドも魔法には詳しくないもので……分りかねますが」
「そうか。そうであったな。それにしてもまだ幼い子供がそれ程の魔法を使いこなすとは――驚くばかりであるな」
「はい。それが獣人の幼子であると言うのが不思議な話ではありますが」
「確かにな。今までの常識では、獣人は魔力が低く、戦闘に使える魔法は持ち得ないとされていたからな。だが、何処にでも才のある者は現れるものだ。別に不思議ではあるまい」
「そうで御座いますね」
「それにしても、エルドーラ様の再来か……王家がこの数年で貴族派に蔑ろにされる様になったのは、彼のお方が死去された事が原因であった。その再来を王家が取り込めば――貴族派も好き勝手には出来まい。しかも、ミカ殿は、貴族派のオードレイク伯爵には酷い目にあっている。貴族派を黙らせるには、最善かもしれぬな」
「ですが、そうしますと――お嬢様が悲しまれるのでは?」
「そうであったな。私にとっては王家も大事だが、一番はエリッサだ!」
貴族家の当主らしい思惑を思いついたサースドレイン子爵であったが、溺愛している娘の事を第一に考えたようである。
「エリッサは魔法を見て何か言っておったか?」
「メイドの話では、お嬢様にミカ殿が魔法を教えようとされていたと聞きました」
「ほう。体に無理の無い範囲でなら是非、教えて欲しいものだな。エリッサの今後の為にも」
「そうで御座いますね。メイドにもその様に伝えましょう」
魔法を覚える方法を知らない子爵は、ミカにエリッサの魔法の教師を依頼する事になるのであった。
「それにしても、本当にミカさんの魔法は凄いのですね。私もあんな魔法が使えるようになるのでしょうか」
「多分、大丈夫にゃ。子猫ちゃんに教えて貰った方法なら出来る筈にゃ」
「そこが問題ですわね」
そう言って、エリッサは後ろを振り向くと、メイドがこちらを監視する様に見ていて、視線がかち合った。はぁ、と吐息を吐くエリッサ。それをミカは少し目を細めながら見つめるのであった。
しばらくすると、白髪の温厚そうな執事、フェルブスターさんがやってきた。
「ミカ殿も、猫殿もエリッサお嬢様と仲良くされている様で私奴も安堵いたしました。旦那様からの伝言なので御座いますが、良ければミカ殿にお嬢様の魔法の家庭教師になってもらってはどうかと、おっしゃられまして。お嬢様、如何で御座いましょう」
エリッサちゃんは、一瞬、眉を上げ、驚いていましたが、直ぐに笑顔になり、
「お父様のお許しが出ましたわ」
そう言って、朗らかに笑ったのでした。
ブラウンの髪を短く切りそろえ髪油で上げている、温厚そうな青年とも見える30前半のサースドレイン子爵が執事頭に尋ねた。
「はい。何でも、お嬢様がミカ殿に魔法の手本をお願いしたらしく、酒樽を的にして発動させた音で御座いました」
「ほう、魔法の手本とな。いかなる魔法だったのだ?」
「見学していた御付のメイドの話では、空から光の雨が降り注ぎ、次の瞬間には目が眩む程の光と轟音で、後で的を確認致しましたら、酒樽がバラバラに砕け、焼けていた様で御座います」
「それは。数年前に無くなられた、この国、最高の魔導師で賢者でもあらせられたエルドーラ様が御使いになっていたサンダーでは無いのか?」
「さぁ、私もメイドも魔法には詳しくないもので……分りかねますが」
「そうか。そうであったな。それにしてもまだ幼い子供がそれ程の魔法を使いこなすとは――驚くばかりであるな」
「はい。それが獣人の幼子であると言うのが不思議な話ではありますが」
「確かにな。今までの常識では、獣人は魔力が低く、戦闘に使える魔法は持ち得ないとされていたからな。だが、何処にでも才のある者は現れるものだ。別に不思議ではあるまい」
「そうで御座いますね」
「それにしても、エルドーラ様の再来か……王家がこの数年で貴族派に蔑ろにされる様になったのは、彼のお方が死去された事が原因であった。その再来を王家が取り込めば――貴族派も好き勝手には出来まい。しかも、ミカ殿は、貴族派のオードレイク伯爵には酷い目にあっている。貴族派を黙らせるには、最善かもしれぬな」
「ですが、そうしますと――お嬢様が悲しまれるのでは?」
「そうであったな。私にとっては王家も大事だが、一番はエリッサだ!」
貴族家の当主らしい思惑を思いついたサースドレイン子爵であったが、溺愛している娘の事を第一に考えたようである。
「エリッサは魔法を見て何か言っておったか?」
「メイドの話では、お嬢様にミカ殿が魔法を教えようとされていたと聞きました」
「ほう。体に無理の無い範囲でなら是非、教えて欲しいものだな。エリッサの今後の為にも」
「そうで御座いますね。メイドにもその様に伝えましょう」
魔法を覚える方法を知らない子爵は、ミカにエリッサの魔法の教師を依頼する事になるのであった。
「それにしても、本当にミカさんの魔法は凄いのですね。私もあんな魔法が使えるようになるのでしょうか」
「多分、大丈夫にゃ。子猫ちゃんに教えて貰った方法なら出来る筈にゃ」
「そこが問題ですわね」
そう言って、エリッサは後ろを振り向くと、メイドがこちらを監視する様に見ていて、視線がかち合った。はぁ、と吐息を吐くエリッサ。それをミカは少し目を細めながら見つめるのであった。
しばらくすると、白髪の温厚そうな執事、フェルブスターさんがやってきた。
「ミカ殿も、猫殿もエリッサお嬢様と仲良くされている様で私奴も安堵いたしました。旦那様からの伝言なので御座いますが、良ければミカ殿にお嬢様の魔法の家庭教師になってもらってはどうかと、おっしゃられまして。お嬢様、如何で御座いましょう」
エリッサちゃんは、一瞬、眉を上げ、驚いていましたが、直ぐに笑顔になり、
「お父様のお許しが出ましたわ」
そう言って、朗らかに笑ったのでした。
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