子猫ちゃんの異世界珍道中

石の森は近所です

第33話、取調べact.1

冒険者ギルドを過ぎ、しばらく歩くと警備隊庁舎が見えてきます。


あれ、ここは正門隣の、守衛さん達がいる場所じゃないですか。


「ここが警備隊の庁舎だ」


そう言うと、先導していた警備兵のおじさんは中に入っていきます。


「何がどうなっているのか、わからねぇ~が、お譲ちゃん達も中に入ってくれ」


そう、強面のギルドマスターと呼ばれたおじさんが言って、僕達を先に扉の中へ誘います。このおじさん、冒険者ギルドでは偉い人だったみたいです。
いつもは、やさしくて面白いおじさんですが、今だけは厳しい視線で僕達へと声を掛けます。


「わかりましたにゃ」


「みゃぁ~」


中に入ると、正面に受付のカウンター、その横に通路がありそちらに、警備兵のおじさんは歩いていきます。僕達もそれに続きました。


警備兵のおじさんが、通路にいくつか並んでいる一つの扉の前で、ドアを開きました。


「ここで調書を取るから、中に入って待っていてくれ」


「分りましたにゃ」


ミカちゃん、僕、ギルドマスターの順番に中に入ります。中には、奥が3人掛けの椅子と長テーブル。手前は、1人掛けの椅子が2脚、用意されていました。
ギルドマスターが『奥の椅子に座ってくれ』そう言うので、ミカちゃんは奥の椅子に座ります。僕は、ミカちゃんの膝の上にいます。少し待つと、警備兵の制服を着たお姉さんが、テーブルに飲み物を置いていきました。ギルドマスターがそれを飲みだしたので、ミカちゃんも真似て飲みだします。


しばらく待つと。


「よぉ、何だか大変な事件が起きちまったんだって」


そう言って、中に入ってきたのは――この街に来た時に、門で応対してくれた優しいおじさんでした。


「おや、何でお譲ちゃんと、猫ちゃんがここに居るんだ?」


「そんな事は、俺にもわからねぇ~よ。お宅の兵が連行していたから、俺も着いて来ただけだからな。がははは」


優しい門番のおじさんと、ギルドマスターが笑いながらそんな会話を始めました。すると、ここまで案内してくれた警備兵が中に入って来て。取調べが始まりました。


「えっと、まずは何であの場に居合わせたのかな?」


「私達は、買い物をしていて近道だからあの細い道に入ったにゃ。すると前後からあの男達に囲まれたにゃ」


「ふむ、あの男達とは面識があったのかい?」


「今日、初めて会ったにゃ」


「それで、お譲ちゃん達はどうしたんだい?」


「怖くなったので、壁の上にジャンプして逃げたにゃ」


「あっ、それであんな壁の上に居たのか……」


最初に、ミカちゃんに話を聞いていたのが、やさしい門番さんで、途中で口を挟んだのが、警備兵のおじさんです。


「それで、壁の上に逃げてどうしたんだい?」


「私が大通りに逃げようと走り出したら、大通りの方から、もう1人やってきて、私に何か投げつけたにゃ」


『現場にこれが落ちていました』そう言って警備兵のおじさんが、テーブルの上に粉が付着した布を置きました。


「これは――マタタビだね。お譲ちゃんはこれが何だか知っているかい?」


「聞いた事はあるけど、初めて見たにゃ」


「これを投げつけられてお譲ちゃんはどうしたんだい?」


「手で叩き落そうと掃ったにゃ。でも叩いた時に何かが舞って、それから記憶がないにゃ」


「そりゃ、そうだろうね。これは、猫科にだけ効果がある麻薬の様なものだ。これを使われたという事は、誘拐目的だったとも思えるが……。死んだ3人の男達とは何か話はしたかい?」


ミカちゃんはここで黙ってしまいます。


ミカちゃんが黙った事で、おじさん達の表情も、深刻なものへと変わって来ました。



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