子猫ちゃんの異世界珍道中

石の森は近所です

第31話、子猫ちゃんが怒った。

前から1人、後ろから2人の男達が合流し、壁の上で寝転がっている、ミカちゃんを捕まえようと、壁に登り始めました。


ミカちゃんは、どうしちゃったんでしょう……。


僕は、ミカちゃんを守る為に、壁に登った男と、ミカちゃんの間に入ります。


壁を登ってきたのは、ミカちゃんに何かを投げつけた男です。


「なんだ、この猫は?」


「おい、その猫に気をつけろ!盗賊を退治した猫だぞ!」


「へぇ~そんな面白い猫が本当に居たのか。ん、だが何故この猫にはマタタビが効かないんだ?」


どうやら、ミカちゃんがおかしくなったのは、そのマタタビが、原因だった様です。


さっき買ったばかりのピンクの服は、汚れ、また所々ほつれ、破れています。


あんなに、楽しそうに――。


可愛い服を着れて嬉しいって……喜んでいたのに。


これじゃ、ミカちゃんが可哀想です。


もう許しませんよ。


僕は、ジャンプして、男の足元まで間合いを詰めます。


男が、僕を、蹴り飛ばそうと片足を引いた瞬間――爪で軸足の足首を切りつけました。


「う゛ぁ~、痛てぇ~」


男は、バランスを崩し、壁から真っ逆さまに落ちていきます。


「馬鹿か、だから言ったじゃねぇか!」


足首を、切断された男は、地面に這い蹲り、


足を押さえて泣き喚いています。


ミカちゃんに、酷い事をするからですよ!


きっと元に戻った時の、ミカちゃんの悲しみはそんなものじゃないです!


残り2人です。


さっき、ミカちゃんと会話していた男が、腰の鞘から、剣を抜きました。


やるんですか?


それを抜いたら、後には引けないんですよ!


お婆さんが良く見ていた、テレビとか言う、箱の中の人も言っていましたよ!


僕も、腰を落として、攻撃体勢に入ります。


もう1人の男は、警戒してか、僕達の様子を窺っています。


「ふぅ――」


男は、肺に溜め込んだ空気を、吐き出しました。


すると対峙していた男が、剣を鞘に納め、そのままの状態で腰から鞘ごと剣を外します。


「やべぇ~思わず本気で切っちまう所だったぜ。生け捕れと命令されていたんだった」


生け捕ってどうするつもりなんでしょう?


僕達を、伯爵の所に連れて行ったら、暴れるとは思わないんでしょうか?


「よぉ、どうせ人間の言葉なんてわかんねぇ~だろうけどよ、諦めな。これでも俺は強ぇ~ぜ!」


そう言って、鞘が付いたままの剣を上段に構えました。


馬鹿だったようです。


僕は、賢くて可愛い子猫ちゃんですよ?


まったく、何を言っているんでしょうね。


あの鬼さんと比べたら、おじさんは、どう見ても強そうには見えません。


その切れない剣で、どう戦うと言うのでしょう。


僕も、侮られたものです。


閃きました。ミカちゃんは、街中で戦うなと言いましたが、最初に手を出したのは男達の方です。


さっきは、部屋の中で怒られましたが、ここは外です。


僕は、威勢のいい男に手を翳します。


「おっ、今度は何をやってくれるんだ、俺が受けてやるよ!」


本当に……馬鹿は死なないと治らないとは、よく言ったものですね。


翳した手に黒い光が宿り、次の瞬間には男を包み込みました。


「――へっ」


間抜けな声を漏らした瞬間、グシャ、と音が鳴り――。


地面には、形の分らない肉の塊だけが残されていました。


様子を見ていた男は――。


「ひっ、うわぁ~」


その場から、逃げ出そうと背中を向けました。


それは悪手ですよ。


僕は、逃げ出した男へと爪を飛ばします。


くるくる回転しながら、男へと襲い掛かった爪は、男の腰に当り……。


体を真っ二つに切断しました。


足首を切断されて、這い蹲っていた男も、這いずりながら逃げようとします。


ミカちゃんを虐めた張本人を、僕が見逃すとでも?


僕は、また手を翳し、先程使った魔法を発動させました。


その男も先程の男、同様――。


グシャ、という鈍い音の後、肉の塊に変っていました。


僕は、壁の上で背中を擦り続けているミカちゃんの側に移動し、ミカちゃんが治るのをジッと待ち続けました。



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