子猫ちゃんの異世界珍道中

石の森は近所です

第22話、新たな危機と幸せな時間

――ここはオードレイク伯爵家――


「おい!村の後始末にやった残党のゲルヘイザーが見つかったと言うのは本当か!


「はい先程。私奴が確認いたしました」


「それで、何故あの男は逃げ出したのだ?まさか、わしらが村の後始末をさせた後で処分するのに勘付いた訳ではあるまい?」


「はい、それが――今ひとつ要領を得ない事を言っておりまして」


「それは何だ?」


「はい。それが、猫獣人の少女と猫に脅されたと申しておりまして……」


「何を血迷った事を――少女と猫にそんな力が有る訳が無かろう!」


「それが……証言と同じ場所に深く抉られた傷が御座いまして」


「大方、逃げる時に狼にでもやられたのではないのか?」


「その可能性も否定は出来ませんが、村長の娘だけまだ見つかっておりませんので……しかもその娘が猫獣人だと言う噂が御座います」


「ふむ……ゲルヘイザーの証言に合致すると言う訳か?」


「左様で御座います。また生き残った盗賊達からの証言で猫獣人の少女も攫ったが、途中で猫に襲撃されてほぼ盗賊達は壊滅したと……」


「数十人の盗賊を退治出来る猫が存在していて、村の生き残りの少女と行動を共にしていると言うのだな?」


「はい。左様でございます」


「はっはっは――愉快では無いか。その猫の話が本当なら隷属の首輪を嵌め敵対勢力の元へ送り込めば……」


「今の王族も、旦那様の思いのままに操る事が出来る事でしょう」


「ふん。今の王族は後ろ盾が弱者ばかりだからな」


「まさに――」


「諜報を放ち、その娘と猫を捕獲させよ」


「畏まりました。直ちに――それでゲルヘイザーは如何致しましょう?」


「ふん。魚の餌でもスライムの餌にでもすればいい。元々処分する予定だったしな――」


「御意」




    ∞      ∞      ∞      ∞








ミカちゃんは危険が迫っているとは知らず。


久しぶりの温かいベッドでぐっすり眠っていました。


ミカちゃんの首には、まだ入門の際に付けられたタグが付いています。


大金も入ったので、明日には外される事でしょう。


僕はミカちゃんの顔が良く見えるように、枕の横で丸まっています。


隣で、誰かが眠っていてくれるのは何故か安心出来ます。


お婆さんの家では外で眠っていたので、僕にとってはミカちゃんが初めてです。


僕が覚えている限りでは、橋の下にいた時からずっと1人寝でした。


だから尚更、今の時間がとても幸せに感じます。


胸の奥がポカポカします。


ずっとこのまま。


ミカちゃんとの生活が続けばいいなぁ~と思いながら僕も浅い眠りにつきます。


ミカちゃんは違う様ですが、僕は寝ていても誰かが近づけば分ります。


きっと野生の本能と言うものなのでしょう。


ミカちゃんに危害を加える悪い人が来ないように。


僕の幸せな時間を続ける為に。


僕は絶対に熟睡はしません。


それにしてもさっきは驚きました。


この部屋に入って少ししたら宿屋のおばさんが、大きな木の桶を持ってきてくれて、ミカちゃんと2人で汚れを洗い流しました。


洗ってもらった甲斐があって――。


きちんと湯浴みして貰った……今の毛並みは前と変わらず綺麗で艶々です。


ミカちゃんの白く先だけ茶色い耳の毛も艶々です。


おそろいですね。


さて、明日も楽しい事があるといいです。



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