サヨナラ世界
Tr12・佐山ユウキの場合
リビングから聞こえる怒声に僕は耳を塞いだ。
布団を頭から被り、カタツムリのようになって暴音をカットする。
どれだけ遮断しても頭の中に聞こえる音は、まるで脳内から発生してるかのように反響する。
僕の頭は割れそうなくらいに痛みを訴える。
物心ついた時には毎日こうだった。
どうして喧嘩しているの?とか思うことはなく、ただただそれを受け入れるしかない。
親とはこういうものなのだ、と僕はその考えを無理矢理に理解する。
それから程なくして両親は離婚した。僕は母さんに引き取られることになった。
これで、もう両親が醜く言い争う姿を見なくて済む。僕はホッとした。
そして数ヶ月は平穏な日々が続いた。母さんは僕に優しくしてくれた。
ある日、僕は母さんの大事にしていたコップを割ってしまった。
僕は怒られるのが怖くてとっさに言い訳をしてしまった。
その瞬間の母さんの顔。
忘れもしない、父さんと罵倒し合っていたときのあの顔。
そして響く母さんの罵倒。父さんに向けていたの同じ声。
僕は耳を塞いで布団にくるまりたかった。母さんはそれを許してはくれなかった。
その日から僕は母さんから優しい言葉をかけられることはなくなって、代わりに毎日のように怒鳴られるようになった。
何をしても、何もしなくても、浴びせられる暴言、罵声。
そしてまた頭の中で反響し出す声。痛みを訴える頭。
小さい僕でも気がつく。僕は母さんに嫌われてしまったのだと。
僕は母さんの顔色を伺いながら、前みたいに仲良く暮らせるようになるよう考えて生きていく。
僕は悪い子だから母さんに嫌われてしまった。
だから、いい子でいればきっと母さんはまた僕を好きになってくれる。
そう信じていた。
僕は母さんの誕生日に自分でケーキを作った。不恰好だけれどきっと食べられる。
母さんに喜んで欲しい、また仲良くなりたい、と僕の一生懸命な気持ちを込めて。
それを見た母さんはまたあの顔になった。
そして、耳を塞ぐことを許されない僕は、聞きたくなかった言葉を聞いてしまった。
"お前は父さんと同じ"
僕は母さんの嫌いな人と同じ。
僕は母さんとまた仲良くなることはできないと分かった。
僕は生まれた時から母さんに嫌われていたんだ。
僕に優しくしていたのだって、きっと苦痛で仕方なかったんだろう。
僕の心は、床にブチまけられた僕のケーキのようにグチャグチャになってしまった。
それからの日々はただ平穏に過ごすことだけを考えて生きるだけだった。
毎日のように浴びせられる言葉にももう何も感じない。頭の中で声が反響して頭痛がするだけ。
そして少しだけ大人になった僕は、母さんの誕生日にとっておきのプレゼントを用意した。
僕は母さんに向かって「死にたい」と口に出した。
これできっと、僕のことを嫌いな母さんでも喜んでくれるだろう。
ーーーねぇ、母さん。嫌いになるならなんで僕を生んだの?
僕の疑問は頭の中で反響する声と頭痛に溶けて消えた。
サヨナラ世界:生まれながらの中絶児
布団を頭から被り、カタツムリのようになって暴音をカットする。
どれだけ遮断しても頭の中に聞こえる音は、まるで脳内から発生してるかのように反響する。
僕の頭は割れそうなくらいに痛みを訴える。
物心ついた時には毎日こうだった。
どうして喧嘩しているの?とか思うことはなく、ただただそれを受け入れるしかない。
親とはこういうものなのだ、と僕はその考えを無理矢理に理解する。
それから程なくして両親は離婚した。僕は母さんに引き取られることになった。
これで、もう両親が醜く言い争う姿を見なくて済む。僕はホッとした。
そして数ヶ月は平穏な日々が続いた。母さんは僕に優しくしてくれた。
ある日、僕は母さんの大事にしていたコップを割ってしまった。
僕は怒られるのが怖くてとっさに言い訳をしてしまった。
その瞬間の母さんの顔。
忘れもしない、父さんと罵倒し合っていたときのあの顔。
そして響く母さんの罵倒。父さんに向けていたの同じ声。
僕は耳を塞いで布団にくるまりたかった。母さんはそれを許してはくれなかった。
その日から僕は母さんから優しい言葉をかけられることはなくなって、代わりに毎日のように怒鳴られるようになった。
何をしても、何もしなくても、浴びせられる暴言、罵声。
そしてまた頭の中で反響し出す声。痛みを訴える頭。
小さい僕でも気がつく。僕は母さんに嫌われてしまったのだと。
僕は母さんの顔色を伺いながら、前みたいに仲良く暮らせるようになるよう考えて生きていく。
僕は悪い子だから母さんに嫌われてしまった。
だから、いい子でいればきっと母さんはまた僕を好きになってくれる。
そう信じていた。
僕は母さんの誕生日に自分でケーキを作った。不恰好だけれどきっと食べられる。
母さんに喜んで欲しい、また仲良くなりたい、と僕の一生懸命な気持ちを込めて。
それを見た母さんはまたあの顔になった。
そして、耳を塞ぐことを許されない僕は、聞きたくなかった言葉を聞いてしまった。
"お前は父さんと同じ"
僕は母さんの嫌いな人と同じ。
僕は母さんとまた仲良くなることはできないと分かった。
僕は生まれた時から母さんに嫌われていたんだ。
僕に優しくしていたのだって、きっと苦痛で仕方なかったんだろう。
僕の心は、床にブチまけられた僕のケーキのようにグチャグチャになってしまった。
それからの日々はただ平穏に過ごすことだけを考えて生きるだけだった。
毎日のように浴びせられる言葉にももう何も感じない。頭の中で声が反響して頭痛がするだけ。
そして少しだけ大人になった僕は、母さんの誕生日にとっておきのプレゼントを用意した。
僕は母さんに向かって「死にたい」と口に出した。
これできっと、僕のことを嫌いな母さんでも喜んでくれるだろう。
ーーーねぇ、母さん。嫌いになるならなんで僕を生んだの?
僕の疑問は頭の中で反響する声と頭痛に溶けて消えた。
サヨナラ世界:生まれながらの中絶児
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