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桜のある箱庭の狐さん

7x²曲線の人

小話:八尾の狐様

ツイッターのうちの子、【名称なし】さんの昔をちょっとだけ辿る小話です。簡易的なキャラクターの紹介は後ほど。



 静寂の館内。響くは下駄の音。廊下に散らばっているのは館を住処としていた怪物の残骸。あるいは怪物に喰い殺されたであろう人間の手足。
 彼女はその九尾を揺らしながら廊下を進む。そして、ふと、一つの扉に目をやり、徐ろに押し開ける。螺旋の階段を降りながら、九尾の狐の少女は言葉を紡ぐ。

九尾の狐の少女「人間とは、難しい生き物です。協力という手段をすぐに使いません。」

 螺旋の階段の先に、また扉が一つあり、それを押し開ける。緋色に照らされた石畳を、また軽い音を立てながら進む。

九尾の狐の少女「人間とは、難しい生き物です。異なるものを簡単には受け入れません。」

 やがて、下駄の音は止み、九尾の狐の少女の目は壊れた牢の中の少女に向けられた。

九尾の狐の少女「人間とは、難しい生き物です。自分の命がかかると―――」

 絶望と諦念に満ちたその表情。下半身はまるまる抉られたかのように消失しており、見れば見るほど痛ましい。

九尾の狐の少女「…殆どは、赤の他人の身を差し出すのです。」

 牢の少女は死んでいる。九尾の狐の少女はそれを知っている。もっとも、関係はなかった。

九尾の狐の少女「貴方に質問がお一つ。」

 彼女は死体に語りかける。

九尾の狐の少女「いえ、選択肢2つ、が正しいですね。」
九尾の狐の少女「一つは、復讐の為にここに戻ること。止めはいたしませんし、復讐を果たすため最大限のお手伝いはして差し上げられます。」
九尾の狐の少女「もう一つは、全てを忘れて私のもとに来ること。なんの得もありません。強いて言うなら、私が得をします。」
九尾の狐の少女「あなたはどちらを選びますか?」
少女「……」

 物言わぬ死体の口は動く。その答えは―――




【名称なし】「…っていう昔話がありましてね」

 足を止め、名前のない彼女はそう言って話を途中で止めた。

歩音 鳩アユネ キュウ「途中で止めるなんて意味ありげを通り越してそれ私じゃないかって感じですね」
【名称なし】「…」
歩音 鳩「否定しないんですか?」
【名称なし】「神様が嘘をついたらちょっと面倒ですから、ええ」
歩音 鳩「そうですか」
【名称なし】「…あらっ、意外な反応」

 彼女は少しつんのめった格好になる。昔話を聞かされてなお淡白な反応は彼女の予想の範囲外であった。鳩はその様子に苦笑しながら、

歩音 鳩「今は生きてますから」
と言う。
【名称なし】「そういう話聞かされたら昔の人に恨み言の一つや二つありそうですけどねえ」
歩音 鳩「人間って、難しい生き物ですから。裏切りの記憶から縁が遠くなりすぎれば自然に恨み言が湧かなくなるんですよ」

 鳩の尻尾はふわりと、笑みに合わせて揺れ動く。名もなき八尾の狐の少女はこういうのもいるんだなあ、と静かに思うのだった。




・【名称なし】/九尾の狐の少女
作者ツイッターにおいてもキャラの安定している名前のないうちの子。陰陽師くらいしか設定なかったけどとあるハッシュタグに釣られてこの設定が生えるに至る。昔は九尾、今は八尾。

歩音 鳩アユネ キュウ/少女
実は発想だけはツイッター利用以前の時代からあった。正確に言えばとある診断発祥。館に仲間と来た際、仲間にはめられて館の地下に鎖に繋がれて怪物に喰われたりした、ただの女の子だった。で、今はそんな記憶も持ってないただの狐っ娘に。

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