求夢の平凡な世界

チョーカー

リベンジ地蔵

 槙嶋成美は1学年下の後輩だ。

 そんな彼女は今、帰宅しようとする求夢の腕を引っ張っている。



 「先輩、今日は逃がしませんよ。部活に行きましょう」



 「断る!」と求夢は言う。そのまま腕にぶら下がる彼女を引きづりながら歩く。



 「今日もサボるつもりですか?」

 「サボるも何も、僕はオカルト研究部なんか入部したつもりはない!」 



 「またまた」と彼女はたちの悪いジョークでも聞いたかのような反応を起こす。



 「あのホラー作家 川島達也の息子、川島求夢がオカルトに無関心なわけないじゃないですか」

 「関心はあるとして、野球が好きな奴が全員、野球部に入るか? サッカーが好きな奴は、全員サッカー部か?」

 「先輩の言いたい事がわからないです。野球が好きなら、野球部。サッカーが好きならサッカー部でしょ」

 「わかんねぇじゃんかよぉ! 世の中にはスポーツ見る専ってのがいるんだよ! あと、親父は別にホラー作家じゃねぇ!」

 「先輩がオカルトを見る専だとしたらオカルト研究部こそ、ぴったりだと思うのですか? 基本、古書とか読み漁ったりするだけですよ」

 「それは読む専門だ。 大体、オカルト研究部なんて実在するのか? フィクションの世界か、イギリスでしか存在していないと思うぞ?」



 そんな話をしながら渡り廊下を進むと、ヒソヒソとこちらを見ながら話す同級生たちが何人もいた。



 「いい加減に放せよ。流石に悪目立ちしすぎだ」



 残念な事に成美のビジュアルは、かなり良い。

 今までの経験上、可愛い女の子といちゃついているように誤解されて酷い目にあった事もある。



 「悪目立ち……悪目立ちと言うと、こんな話がありますよ!」 



 「ちっ」と求夢は舌打ちを1つ。

 どうやら、成美のスイッチが入ったみたいだ。



 「実は、この学校にいじめはないんですよ」



 「ん?」と求夢は足を止めた。

 成美の断定口調が気になったのだ。



 「おいおい、随分と言い切ったものだな。 無視とか、ペンや消しゴムを隠すとか第三者じゃ判断のつかないイジメもあるんじゃないか?」

 「いえいえ、それもありません。この学校で過去を遡ってもイジメの実態はないのですよ」

 「……いや、それをどうやって調べたんだよ? 教師が全てのイジメを揉み消すような特別なノウハウが受け継がれているって話なら信じても良いけど?」

「さぁ、私も聞いた話なので、詳しい事はわかりませんが……」



 わからねぇのかよ。 いい加減は話だなぁ。

 そう思っていたが、成美の話はぶっ飛んだ方向に進む。



 「実は、この学校だけじゃなくて周辺の5校全て……数十年間イジメが存在していないのです」

 「なに? それは、この周辺でイジメがおこわなれない理由が何かあるって事か?」

 「さすが、先輩! 察しがいいですね――――



 先輩、リベンジ地蔵って知ってますか?」

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