パラディン・フリード  この狂った世界は終わることなく回り続ける

ノベルバユーザー46822

十四班

 入団した全員がパラディンとなり、各々のウェポンを手にした。
 やはり、メインウェポンは剣が多かった。剣以外の武器もいたのだが、ほんの数十人だ。ほぼ全員が剣をメインウェポンにしていた。
 今はそのままグラウンドで、ウェポンの試運転だ。それぞれが好きなように素振りのように攻撃を繰り出している。
 一方向に攻撃をしているので、隣に当たりはしない。それと、グラウンドが広すぎる。陸上グラウンド四個分はありそうだ。
 まあ、元の戦闘学園がおかしいほど広いから、このグラウンドの広さも納得はできる。そのため、ぶつかるという事故はなさそうだ。
「カゲトは刀とナイフか。おもしろい組み合わせだな」
「そういうシンこそ、剣と刀って・・・なんか時代遅れの戦闘民族みたいじゃないか」
 僕が刀を振り回しながらそう言うと、シンは顔を赤面させながら、「うるせぇ!これは俺のスタイルだ!」と、怒って剣をこちらに向けてきた。
「危ないだろ!シン!まあ、死なないけど」
 僕が反射的に口に出したのだが、訂正した。
「だな。これはさすがに言葉を失う、っていうのが当てはまる」
 シンも真顔になって、剣の真ん中に埋め込まれてある、水晶玉のような、半透明の水色の球体を見ながら言った。
 この[死なない]というのは、文字通り、攻撃を受けても死なないということだ。
 お父さんの研究チームが開発した物の中で、政府が一番驚いたのが、ウェポンを装備しているパラディンは、一定時間ウェポンの武器効果を消滅させ、パラディンの身を守るという装置、ウェポンの中心にある、[コア]と呼ばれる、人間でいう心臓に当たる部分の開発だ。
 コアは、AIがパラディンの生命が危険だと判断した場合、ウェポンの内部のコアが瞬間的に膨張し、パラディンの周囲にバリアを張る仕組みになっている。そうした場合、コアは一時的に破壊され、時間をかけて修復される。武器が使えないのは、コアが修復が終わっていないかららしい。
 さすが、僕のお父さんだ。攻撃だけではなく、防御も強化されている。
「ナイフも結構狙い通りに飛んでいくな。あとは、手首を早く振れば速度は上がるかな」
「さすが!私の自慢のパラディンです!」
 リオナがとても満足そうに言い、ルナが「私がナイフなんですけどね」と、冷静に言って、リオナが「そんな細かいことはどうでもいいだろ!」と怒った。
 仲が良いのか悪いのか・・・可愛いんだけどね?
「組み合わせは良い感じかな?全体的に数値は上がってると思うけど・・・やっぱり少し難しいな。練習あるのみ、か」
 使ってみた感覚、剣と刀、銃と刀、銃とナイフの組み合わせが良かった。
 特に、銃と刀の組み合わせは抜群の強さだった。
 ほぼ全距離対応の万能構成だ。近ければ刀で凌ぎ、遠ければ銃で撃つ戦い方だ。
 剣と刀は近距離戦。銃とナイフは奇襲、中遠距離という感じだ。
 戦場に応じて組み合わせを変えると、案外、最強な気もする。
 あと、このような組み合わせの武器は[馴れ]だ。
 ひたすらに使い、体で覚えるしかない。
 まだ、初めてにしては器用に使えた方だと思う。そう思いたい。
「では!今から班を割り当てるので!貰ったカードに書いてある番号が班の数字です!そのカードを部屋のドアノブ部分にかざしてください!鍵が開いて、部屋に入れるようになります!そのあとは、班で相談しお好きに時間を使ってもらっても構いません!」
 一通り武器を使うと、スーツの人が、武器を使って興奮しているパラディンたちにマイクで呼びかけた。
「セキュリティーも完璧かよ・・・」
「しかも、誰かに見せないと、班はばれない。疑いたくなるほど素晴らしいね」
 シンと僕が呆れていると、そのカードが手渡しされた。
(これって、老若男女関係なしだったよな。うわ~年上の人は嫌だな~)
 そんなことを思いながらカードを見ると、真ん中には、この学園のエンブレムのような、フリードの顔に、ぐさりと剣が縦に一本刺さっている紋章があった。肝心の数字は左下に小さく丸で囲まれていた。
 裏面には電子回路と、素人が見ても訳が分からないコードが書いてあった。
 数字はーー十四。
(なんとまた微妙な・・・)
「十四?微妙だね」
「十四ですか?微妙ですね」
「二人揃って突っ込まないで!へこむから!」
 僕っぽいといえば僕っぽいけど・・・もっと分かりやすい一とか、十とか、そんな数字が良かった。
 十四とか微妙な数字は、戦闘学園の端くれみたいだ。
 僕がため息を吐き、げんなりしていると、シンが、
「お前とは、縁があるな」
 と言ってきたので、僕は胸を躍らせた。
「もしかして?」
「そのもしかしてだ。十四」
 シンは笑ってカードの表を見せてきた。
 良かったぁ~知ってる人がいてよかったぁ~と、心の底から安心していると、パラディンは他の班員が早く知りたいのか、早くは住みたいのか、ぞろぞろと学園の本館へ入っていった。
「十四って、また微妙だな」
「そうだね・・・」
 シンもやはりそう感じていたらしい。
 さっきへこんでいたので、苦笑でその話を終わらせ、他のことを考える。
 僕とシン以外の班員のことだ。
 確か、五人編成、もしくは六人編成だったはず。
 その、あと三、四人が気になる。
 シンは誰とも仲良く話せると思うので、班の仲間意識がなくなることはないだろう。
 とりあえず、関わりにくい人だけは嫌だ。
 まあ、そんなことを一生懸命考えていると、いつの間にか、ドアの上の壁に[14]と、数字で書かれている部屋の前まで来ていた。
(お願いしますお願いしますお願いします)
 心の中で三回神に祈り、カードをドアノブ部分にかざすと、ピピッ、と音がして、扉が右に開いた。
 部屋は案外広く、人二人が剣を振り回せるほどの高さと広さだ。
 そして、肝心の班員はーー
「え・・・?」
「うそ・・・?」
「ん?」
「あ~・・・」
 部屋の真ん中にある、六人前ほどの料理を並べられる巨大な机の周りに置いてある椅子に、さっきまで緊張してちょこんと座っていた班員の二人は、クロナとユズだった。
 クロナ、ユズ、シン、僕の順に思ったことをそのまま口にした結果、謎すぎる硬直時間が生まれた。
 他にも、男女一人ずつが椅子に座っていたが、二人とも、なぜこの人たちは止まっているのだろう?と、思っているだろう。
 この事態は良いのか悪いのか・・・
「どうしたの?カゲト?」
 リオナが不思議そうに尋ねてくるが、とても返す気になれない。
 どうしよう、この空気はまずいよな。シン!何か言ってくれ!
 そう目で伝えようと、左を向くと、シンは目を瞑って、微笑したまま固まっていた。
 あれ?シンさん?助けてくれないんですか?もしかして、まじで無理って感じですか?
 流石のシンも、このような事態の対応は不可能らしい。
 僕がやるしかないのか?この、あまり人とまともに話せない僕がいかなければならないのか!?
「えっと・・・時間はけっこうあるので、とりあえず名前とか、紹介した方が良いんじゃないですか・・・?」
「そ、そうだ!色々話さにゃいと!」
 僕がガチガチに緊張して言った貴重な流れを、シンは逃がさなかった。少しかんでたけど。
 だが、ここまで来れば、シンの思うがままだ。
「じゃあ、まずは自己紹介ということで!僕の名前はシンです。では次!」
 シンが僕に手で合図してきたので、手短に。
「カゲトって言います。よろしくお願いします」
「クロナです。よろしくお願いします」
「ユズです。この三人と同級生です」
 シン、僕、クロナ、ユズの順に、手際よく四人の紹介を終わらせた。
 ユズが、僕達四人は知り合いです、と伝えてくれたので、他の二人は納得したようだ。
「私はシェリ―っていうの。よろしく」
 シェリー、という人はスタイルがとてもよく、女優さんでもできたんじゃない?と思うほど、綺麗な水色の長い髪を持っていた。
 顔も美形で、優しそうだ。何より、シンが若干魅かれているのが証拠だ。
「俺はボルという!パラディンとしての役目をしっかり果たすつもりだ!よろしくお願いします!みなさん!」
 クロナの向かい側に、手を膝に置いて座っている、つむじあたりが黒で、耳元までの短い髪が赤色のボルという男性は、いかにも真面目、という感じだ。
「これから、みんなで仲良く、協力して、十四班を有名にしましょう!」
 シンの掛け声に、僕とボルさんだけが返事した。

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