パラディン・フリード この狂った世界は終わることなく回り続ける
いつ死ぬか分からない恐怖
僕らの学校を、フリードが襲った事件から数時間経った。
死亡者は幸いにもゼロ人。
これには、教師たちはふらふらと、地面に倒れるほどだった。
さらに、このようにフリードが現れる事件はここだけではなく、全世界のあらゆるところで起こっていた。
政府はこれを[フリードの第一侵攻]と名付けた。
今は、学校の体育館に集まり、生徒の家族が生きているか、生徒を預かれるかを調べていた。
僕の家族はお父さんが守っているそうだし、あまり心配していなかった。最も心配しているのはーー、
 ーー家族が亡くなってしまった生徒、ユズとシンだ。
他にも家族が亡くなった生徒はたくさんいるのだが、仲が良かったのが、その二人だけだった。
ユズは泣いていて、クロナに抱かれていた。かなりのショックなのだろう。お母さんが亡くなったと知らされてからずっと泣いている。
一度、ユズの家に遊びに行ったことがあった。お母さんはとても優しく、ユズは自慢のお母さん、と言っていた。
シンは壁にもたれ、どこかを見つめていた。シンの家族は、お父さんは生きているそうだが、誰にも見られていないらしい。研究チームだったので、全国に出現したフリードを駆除しているのだろう。
僕の家族は誰一人見つからなかった。
個人的にはそちらの方が、反って安心したのだが。
僕は人を避け、ゆっくりシンに歩み寄った。
「大丈夫?シン」
僕がそう訊くと、シンは表情を変えず、「大丈夫だよ」と言った。
「不思議とな。なんでだろう?今はそれどころじゃない、って感じがするんだよ。止まっちゃだめだ、って思うんだ。前に進まないと、何も始まらない。だろ?カゲト」
シンはこちらに顔を向け、雲一つない瞳で、僕に問いかけてきた。
「うん。そうだね」
僕は情けなく、返事しか返せなかった。
シンの心を救うことができなかった。もしかしたら、シンもウェポンを持って、パラディンになったら救われるのだろうか?そう思うことしかできなかった。
酷い人間だと自分でも思う。
命を救ってくれたのに、何も救えやしない。
そこで気付いたのだが、
「訓練をしていたのは、フリードに対抗できるパラディンを増やすため・・・?」
「だろうな」
我知らず、思考していたことをそのまま口走り、シンに答えを言われた。
「薄々気が付いてたんだけどな。まさか、こんなに早いとはな・・・準備の仕様がない」
シンは俯き、拳を握り締めた。
やはり、大丈夫ではなさそうだ。
「これからどうするんだろ、僕たち・・・」
「さあな、何もしないってのは流石にないだろうけどな。学校が壊れたから、新しい施設を建てないと何もできないから時間は必要だと思うけどな」
「もしくは、巨大な建物を造って、そこに大量の人を入れるとか?」
「お!それ良いな!だったら、その施設をパラディンの育成施設として使えば、まさに一石二鳥じゃないか」
シンとこれからのことで話し合い、少しは気が楽になった。
政府がどう行動するか。そして、どう判断するか。
何はともあれ、前に進まないと、何も始まらない。
僕らはフリードに対抗する武器を手に入れなければならない。
そのためにも、恐怖の中で必死にもがいてやる。
パラディンとしての役目を果たすために。
「「まさか、本当にこうなるとは・・・」」
僕らは眼前に壁のように聳え立つ、超巨大な建造物に睨まれているような感覚に襲われていた。
今はその建物[戦闘学園]の門の前に立っている。
この何十キロメートルもありそうな戦闘学園は、全国で八つ造られ、それぞれで腕の立つパラディンを育成し、フリードを倒せる団体になることが、建築目的らしい。
戦闘学園はその地区ごとに入団者を募った。
参加条件は[体が自由に動かせて、パラディンとなり、フリードを討伐する、という覚悟がある者]ということだ。
入団すれば、一日三食、風呂に部屋付きだ。
代わりにパラディンとなり、フリードの討伐に当たれ、とのこと。
僕はウェポンを持っているので、迷わず入団希望書を提出したが、他の人は迷いに迷っていた。
不安定な身の安全を選ぶか、確実に生活できるが、命の危険があるのを選ぶか。
いつ死ぬか分からない恐怖から逃げるか、戦うか、シンはそう言っていた。
そして、シンは戦うことを選んだ。
僕の通っていた学校は、ほぼ全員が入団を希望した。
中には、寝床を確保するために入団する人もいた。フリードに家を壊され、居場所がなくなってしまったので、仕方なくということだろう。
今日はその入団式らしい。
僕的には、こんな呑気なことをやってないで、早くパラディンを育成した方が良いのでは?と思うが、それは自分の中で封印している。
全員が一斉に集合するので、会場はとても広く、コンサートホールみたいだ。見た目も、軍の作戦会議室のような、異様な空気が漂っている。
「うひゃ~。ここにいる全員、パラディン希望者か?千人は軽く超してるだろ」
「だね。うっ・・・少し気持ち悪くなってきた・・・」
「おい!?カゲト!入団当日にキラキラぶちまけるとかやめてくれよ!?」
「うん・・・たぶん大丈夫・・・」
シンと隣の席に座り、緊張感のない会話をぺちゃくちゃ喋っていると、マイクに電源が入り、両端の壁に付いてあるスピーカーから「マイクテスト、マイクテスト」と、少し高い女性の声が聞こえてきた。
「そろそろか・・・」
僕がそうぼやくと、それが開会の合図のように入団式が始まった。
「パラディンとなる皆さん。この戦闘学園にお集まりいただき、ありがとうございます。早速、この学園のルールなどを説明させて貰います。まず、目的ですが、皆さんは、あのモンスター、[フリード]と呼ばれているモンスターを討伐する[パラディン]となり、[ウェポン]という武器を使い、世界に平和を取り戻すのがこの学園の目的です。次にルールですが、始めは老若男女関係なく班で行動してもらいます。一班六人編成で、場合によれば七人班もあります。続いて、規則ですが、基本自由です。例外として、法に触れる行為、たばこは禁止します。そして、ウェポンは訓練、防衛の時のみ使用可能です。むやみにウェポンを使い、他人を傷付るのを防ぐためです。では、以上で入団式を終了します。パラディンになる皆さんはウェポンの配給があるので、グラウンドへ移動してください」
手短に入団式が終わり、ぞろぞろと会場から人が出ていく。皆、グラウンドへ移動するのだろう。
僕はどうすればよいのだろう?ウェポンはもう持ってるし、二つウェポンを持つことは可能なのか?色々分からないことが多い。どうするのが得策だろう。やはり、ここは正直に訊こう。
人の流れから抜け、さっき話していた女性のところまで駆け足で行く。
数人の大人の人がちょうど放送器具を片付け終わって、帰るところだった。
(やば!)
「すいません!」
「はい?」
僕がかなり急いできたので、黒髪の女の人は若干驚いていた。驚かしてすいません。悪気はありませんので、話を聞いてください。
「えっと、僕、既にウェポンを持っているんですけど、どうすればいいですか?」
そう尋ねると、その女性は他の先生っぽい人たちと顔を見合わせた。
そして、その中でも、背丈が僕より十センチ程高い、左の前髪が首まで伸びた男の人が、前に出てきた。
「そうか。なら、もう一つ貰って来い。同じウェポンは持てねぇけど、見たところ、お前さんのそのウェポンは、大量生産されたウェポンじゃねぇな」
男の人は僕の背中に掛けてある、黒色のリオナの剣を見て、にやりと笑って、そういって僕の肩を持ち、半回転させて、背中を押した。
「俺の名前はジグだ。戦闘担当だ。期待してるぜ。黒髪の少年」
「僕はカゲトっていいます。よろしくお願いします。ジグさん」
「おう。早く行けよ?急がねぇと貰えんぞ?」
「わ、分かりました!」
少しジグさんとお話しし、僕は走ってグラウンドへ向かった。
(優しい人だったな。ジグさん)
「ま、間に合った・・・」
「何してたんだよ・・・」
 千人以上の人が一斉に集まり、ウェポンをもらっていた。
職員の人が、パラディン希望者を数え終わる直前にグラウンドに着いた。数秒遅れていたら、本当にもらえなかったかもしれない。
僕が膝に手を置き、荒い呼吸を整えていると、ウェポンが配給された。
「これから、ウェポンとの契約について説明します」
スーツを着た真面目そうな人がマイクを持って、契約について話していた。
(これは聞かなくていいか)
そう判断し、リオナと話すことにした。
契約したウェポンとは頭の中で話すことが可能で、いちいち口に出さなくてもいいらしい。前みたいに、周りにいる人に変な目で見られなくても済む。
「リオナ?」
「何?カゲト?」
「ウェポンって二つ持つと、両手で武器を扱わないといけないのか?」
「うん。そうだね。けど、組み合わせを間違えなければ、強いと思うよ」
「なるほど・・・つまり、どちらとも剣を選択すれば、二刀流が可能ということか・・・」
「カゲトの二刀流か・・・かっこよさそう!」
「ありがと。けど、難しそうだな」
「そこは、仕方ないよ~」
「まあね・・・」
リオナと話していると、周りの人たちが契約を始めていたので、僕も急いで契約を始める。
と言っても、前にあるウェポン(球体の物)に触れるだけだが。
リオナの時と同じように、またもや、体に力が流れ込んできた。
しかし、今回はリオナと契約したときよりも少なかった。
「初めまして、ご主人様。私はルナと申します」
今回のウェポンは、大人っぽいしっかり者のお姉さん、という感じの子だ。
リオナとは真逆の印象を受けた。
「よろしく、ルナ。早速悪いんだけど、僕のこと[カゲト]って呼んでくれない?それと、敬語はちょっと恥ずかしいからなしで」
「分かりました」
「じゃあ、武器を決めていいか?」
「どうぞ」
凄く一方的に話を進めてるな。なんか悪いような。男ならそんな細かいことは気にしない。
ちなみに、リオナのような、初めからメインウェポン(主の武器)になっているウェポンは、[レアウェポン]というらしい。
レアウェポンはそのメインウェポンの性能が、普通のウェポンと比べて、比にならないほど良い。
実際に、夜、体育館を抜け出し、一人で稽古に勤しんでいた時、銃より剣の方が使いやすく、強かった。
普通のウェポンもブレスレットの色が変わってくると、レアウェポン以上に強くなるらしいが、僕の場合、二つ同時に使うので、追い越すことはないだろう。
そして、僕が選んだ武器は、
「刀と量産型のナイフで」
「なぜに?」
「ええ!?」
僕が武器を選び、リオナが疑問に思って僕に訊いて来たら、ルナが盛大に驚いた。他のウェポンがいることにルナは驚いたのだろう。
(なんだこれ?)
そう感じてしまったが、とりあえず、リオナの質問に答える。
「刀は単純に、剣での受け流しがとても難しかったから。なんせまっすぐだからさ。それと、二刀流もしてみたかったっていうのもある。ナイフは主に投擲武器として使う。超近距離でも使いたかったから、ダガーもいいなって思ったけど、やっぱり、投げれる方がいい」
完璧にメリットだらけの武器の選択、そして、完璧な選択理由。
素晴らしいぞ、自分。
自分で自分を褒めていると、
「さすが!カゲト!」
「さすが!ご主人様!」
と、二人にも褒められた。
「あ、ありがとう・・・」
恥ずかしくなって小声でお礼を言うと、スーツの男が勇者のように言った。
「さあ!あなたたちはたった今から[パラディン]です!フリードを討伐し、世界が平和になることを望んでいます!」
かっこいいところきっちり言うな~、狙ってたな~
なんて、下らない事を考えていたら、何かやらかしそうなので、ルナをメインウェポンの刀にして、腰に帯刀する。
「じゃあ、頑張りますか!」
横から、シンのやる気満々な声が聞こえ、僕はそちらを向いた。
メインウェポンは、剣にしたらしい。もう一つの武器も、後で教えてもらおう。
「おう!」
シンに返事をし、僕たちとフリードの戦いが一歩近づいた。
死亡者は幸いにもゼロ人。
これには、教師たちはふらふらと、地面に倒れるほどだった。
さらに、このようにフリードが現れる事件はここだけではなく、全世界のあらゆるところで起こっていた。
政府はこれを[フリードの第一侵攻]と名付けた。
今は、学校の体育館に集まり、生徒の家族が生きているか、生徒を預かれるかを調べていた。
僕の家族はお父さんが守っているそうだし、あまり心配していなかった。最も心配しているのはーー、
 ーー家族が亡くなってしまった生徒、ユズとシンだ。
他にも家族が亡くなった生徒はたくさんいるのだが、仲が良かったのが、その二人だけだった。
ユズは泣いていて、クロナに抱かれていた。かなりのショックなのだろう。お母さんが亡くなったと知らされてからずっと泣いている。
一度、ユズの家に遊びに行ったことがあった。お母さんはとても優しく、ユズは自慢のお母さん、と言っていた。
シンは壁にもたれ、どこかを見つめていた。シンの家族は、お父さんは生きているそうだが、誰にも見られていないらしい。研究チームだったので、全国に出現したフリードを駆除しているのだろう。
僕の家族は誰一人見つからなかった。
個人的にはそちらの方が、反って安心したのだが。
僕は人を避け、ゆっくりシンに歩み寄った。
「大丈夫?シン」
僕がそう訊くと、シンは表情を変えず、「大丈夫だよ」と言った。
「不思議とな。なんでだろう?今はそれどころじゃない、って感じがするんだよ。止まっちゃだめだ、って思うんだ。前に進まないと、何も始まらない。だろ?カゲト」
シンはこちらに顔を向け、雲一つない瞳で、僕に問いかけてきた。
「うん。そうだね」
僕は情けなく、返事しか返せなかった。
シンの心を救うことができなかった。もしかしたら、シンもウェポンを持って、パラディンになったら救われるのだろうか?そう思うことしかできなかった。
酷い人間だと自分でも思う。
命を救ってくれたのに、何も救えやしない。
そこで気付いたのだが、
「訓練をしていたのは、フリードに対抗できるパラディンを増やすため・・・?」
「だろうな」
我知らず、思考していたことをそのまま口走り、シンに答えを言われた。
「薄々気が付いてたんだけどな。まさか、こんなに早いとはな・・・準備の仕様がない」
シンは俯き、拳を握り締めた。
やはり、大丈夫ではなさそうだ。
「これからどうするんだろ、僕たち・・・」
「さあな、何もしないってのは流石にないだろうけどな。学校が壊れたから、新しい施設を建てないと何もできないから時間は必要だと思うけどな」
「もしくは、巨大な建物を造って、そこに大量の人を入れるとか?」
「お!それ良いな!だったら、その施設をパラディンの育成施設として使えば、まさに一石二鳥じゃないか」
シンとこれからのことで話し合い、少しは気が楽になった。
政府がどう行動するか。そして、どう判断するか。
何はともあれ、前に進まないと、何も始まらない。
僕らはフリードに対抗する武器を手に入れなければならない。
そのためにも、恐怖の中で必死にもがいてやる。
パラディンとしての役目を果たすために。
「「まさか、本当にこうなるとは・・・」」
僕らは眼前に壁のように聳え立つ、超巨大な建造物に睨まれているような感覚に襲われていた。
今はその建物[戦闘学園]の門の前に立っている。
この何十キロメートルもありそうな戦闘学園は、全国で八つ造られ、それぞれで腕の立つパラディンを育成し、フリードを倒せる団体になることが、建築目的らしい。
戦闘学園はその地区ごとに入団者を募った。
参加条件は[体が自由に動かせて、パラディンとなり、フリードを討伐する、という覚悟がある者]ということだ。
入団すれば、一日三食、風呂に部屋付きだ。
代わりにパラディンとなり、フリードの討伐に当たれ、とのこと。
僕はウェポンを持っているので、迷わず入団希望書を提出したが、他の人は迷いに迷っていた。
不安定な身の安全を選ぶか、確実に生活できるが、命の危険があるのを選ぶか。
いつ死ぬか分からない恐怖から逃げるか、戦うか、シンはそう言っていた。
そして、シンは戦うことを選んだ。
僕の通っていた学校は、ほぼ全員が入団を希望した。
中には、寝床を確保するために入団する人もいた。フリードに家を壊され、居場所がなくなってしまったので、仕方なくということだろう。
今日はその入団式らしい。
僕的には、こんな呑気なことをやってないで、早くパラディンを育成した方が良いのでは?と思うが、それは自分の中で封印している。
全員が一斉に集合するので、会場はとても広く、コンサートホールみたいだ。見た目も、軍の作戦会議室のような、異様な空気が漂っている。
「うひゃ~。ここにいる全員、パラディン希望者か?千人は軽く超してるだろ」
「だね。うっ・・・少し気持ち悪くなってきた・・・」
「おい!?カゲト!入団当日にキラキラぶちまけるとかやめてくれよ!?」
「うん・・・たぶん大丈夫・・・」
シンと隣の席に座り、緊張感のない会話をぺちゃくちゃ喋っていると、マイクに電源が入り、両端の壁に付いてあるスピーカーから「マイクテスト、マイクテスト」と、少し高い女性の声が聞こえてきた。
「そろそろか・・・」
僕がそうぼやくと、それが開会の合図のように入団式が始まった。
「パラディンとなる皆さん。この戦闘学園にお集まりいただき、ありがとうございます。早速、この学園のルールなどを説明させて貰います。まず、目的ですが、皆さんは、あのモンスター、[フリード]と呼ばれているモンスターを討伐する[パラディン]となり、[ウェポン]という武器を使い、世界に平和を取り戻すのがこの学園の目的です。次にルールですが、始めは老若男女関係なく班で行動してもらいます。一班六人編成で、場合によれば七人班もあります。続いて、規則ですが、基本自由です。例外として、法に触れる行為、たばこは禁止します。そして、ウェポンは訓練、防衛の時のみ使用可能です。むやみにウェポンを使い、他人を傷付るのを防ぐためです。では、以上で入団式を終了します。パラディンになる皆さんはウェポンの配給があるので、グラウンドへ移動してください」
手短に入団式が終わり、ぞろぞろと会場から人が出ていく。皆、グラウンドへ移動するのだろう。
僕はどうすればよいのだろう?ウェポンはもう持ってるし、二つウェポンを持つことは可能なのか?色々分からないことが多い。どうするのが得策だろう。やはり、ここは正直に訊こう。
人の流れから抜け、さっき話していた女性のところまで駆け足で行く。
数人の大人の人がちょうど放送器具を片付け終わって、帰るところだった。
(やば!)
「すいません!」
「はい?」
僕がかなり急いできたので、黒髪の女の人は若干驚いていた。驚かしてすいません。悪気はありませんので、話を聞いてください。
「えっと、僕、既にウェポンを持っているんですけど、どうすればいいですか?」
そう尋ねると、その女性は他の先生っぽい人たちと顔を見合わせた。
そして、その中でも、背丈が僕より十センチ程高い、左の前髪が首まで伸びた男の人が、前に出てきた。
「そうか。なら、もう一つ貰って来い。同じウェポンは持てねぇけど、見たところ、お前さんのそのウェポンは、大量生産されたウェポンじゃねぇな」
男の人は僕の背中に掛けてある、黒色のリオナの剣を見て、にやりと笑って、そういって僕の肩を持ち、半回転させて、背中を押した。
「俺の名前はジグだ。戦闘担当だ。期待してるぜ。黒髪の少年」
「僕はカゲトっていいます。よろしくお願いします。ジグさん」
「おう。早く行けよ?急がねぇと貰えんぞ?」
「わ、分かりました!」
少しジグさんとお話しし、僕は走ってグラウンドへ向かった。
(優しい人だったな。ジグさん)
「ま、間に合った・・・」
「何してたんだよ・・・」
 千人以上の人が一斉に集まり、ウェポンをもらっていた。
職員の人が、パラディン希望者を数え終わる直前にグラウンドに着いた。数秒遅れていたら、本当にもらえなかったかもしれない。
僕が膝に手を置き、荒い呼吸を整えていると、ウェポンが配給された。
「これから、ウェポンとの契約について説明します」
スーツを着た真面目そうな人がマイクを持って、契約について話していた。
(これは聞かなくていいか)
そう判断し、リオナと話すことにした。
契約したウェポンとは頭の中で話すことが可能で、いちいち口に出さなくてもいいらしい。前みたいに、周りにいる人に変な目で見られなくても済む。
「リオナ?」
「何?カゲト?」
「ウェポンって二つ持つと、両手で武器を扱わないといけないのか?」
「うん。そうだね。けど、組み合わせを間違えなければ、強いと思うよ」
「なるほど・・・つまり、どちらとも剣を選択すれば、二刀流が可能ということか・・・」
「カゲトの二刀流か・・・かっこよさそう!」
「ありがと。けど、難しそうだな」
「そこは、仕方ないよ~」
「まあね・・・」
リオナと話していると、周りの人たちが契約を始めていたので、僕も急いで契約を始める。
と言っても、前にあるウェポン(球体の物)に触れるだけだが。
リオナの時と同じように、またもや、体に力が流れ込んできた。
しかし、今回はリオナと契約したときよりも少なかった。
「初めまして、ご主人様。私はルナと申します」
今回のウェポンは、大人っぽいしっかり者のお姉さん、という感じの子だ。
リオナとは真逆の印象を受けた。
「よろしく、ルナ。早速悪いんだけど、僕のこと[カゲト]って呼んでくれない?それと、敬語はちょっと恥ずかしいからなしで」
「分かりました」
「じゃあ、武器を決めていいか?」
「どうぞ」
凄く一方的に話を進めてるな。なんか悪いような。男ならそんな細かいことは気にしない。
ちなみに、リオナのような、初めからメインウェポン(主の武器)になっているウェポンは、[レアウェポン]というらしい。
レアウェポンはそのメインウェポンの性能が、普通のウェポンと比べて、比にならないほど良い。
実際に、夜、体育館を抜け出し、一人で稽古に勤しんでいた時、銃より剣の方が使いやすく、強かった。
普通のウェポンもブレスレットの色が変わってくると、レアウェポン以上に強くなるらしいが、僕の場合、二つ同時に使うので、追い越すことはないだろう。
そして、僕が選んだ武器は、
「刀と量産型のナイフで」
「なぜに?」
「ええ!?」
僕が武器を選び、リオナが疑問に思って僕に訊いて来たら、ルナが盛大に驚いた。他のウェポンがいることにルナは驚いたのだろう。
(なんだこれ?)
そう感じてしまったが、とりあえず、リオナの質問に答える。
「刀は単純に、剣での受け流しがとても難しかったから。なんせまっすぐだからさ。それと、二刀流もしてみたかったっていうのもある。ナイフは主に投擲武器として使う。超近距離でも使いたかったから、ダガーもいいなって思ったけど、やっぱり、投げれる方がいい」
完璧にメリットだらけの武器の選択、そして、完璧な選択理由。
素晴らしいぞ、自分。
自分で自分を褒めていると、
「さすが!カゲト!」
「さすが!ご主人様!」
と、二人にも褒められた。
「あ、ありがとう・・・」
恥ずかしくなって小声でお礼を言うと、スーツの男が勇者のように言った。
「さあ!あなたたちはたった今から[パラディン]です!フリードを討伐し、世界が平和になることを望んでいます!」
かっこいいところきっちり言うな~、狙ってたな~
なんて、下らない事を考えていたら、何かやらかしそうなので、ルナをメインウェポンの刀にして、腰に帯刀する。
「じゃあ、頑張りますか!」
横から、シンのやる気満々な声が聞こえ、僕はそちらを向いた。
メインウェポンは、剣にしたらしい。もう一つの武器も、後で教えてもらおう。
「おう!」
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