デュエル・ワールド・オンライン
ホワイトパラディンズにようこそ!
ひと騒ぎあったのだが、結構いい感じに収まったので、ズルズルと引き摺ることなく二人ともログインできた。
DWOは街の中でログアウトした場合、キャラが消えるようになっている。これは一方的ななPK(プレイヤーがプレイヤーを倒す行為)を防ぐためだろう。そして、ログインしたときは必ず、大神殿よりも北にある<ダイナロスの宿>の部屋にログインされる。この部屋はお金が必要で、宿から出るときに十ヴェノム取られるので、お金がないプレイヤーはログアウトしてもキャラが消えないのだ。それはつまり死を意味している。他のゲームとは違い街中でもダメージ判定があるので、そういうことだ。
部屋のふわふわのベットから飛び起き、急いで宿を後にする。
その時にシーナに出会ったので、一緒に行くことにした。
「お兄ちゃん・・・やっぱかっこいいよ」
純粋な眩しいほどの笑顔に、シオンは照れて、シーナの頭を撫でてやった。嬉しそうにシーナは笑ったが、
「あ、お兄ちゃんじゃなくてシオン君だったね」
としっかり訂正をした。
「その通り。じゃあ行こうか」
木製の黒いドアを開けて外に出ると、太陽のような発光体が照り付け、心地よい風がシオンたちを迎えた。
この世界は日が出ている時間が二十四時間。日が沈む時間が二十四時間と現実世界とは違う。この設定は開始が夜だったので、開始早々、暗闇の中を冒険するのはまずいと思ったのだろうか。珍しくプレイヤーに優しい運営の一部だ。
かなりの時間待ってくれているので、足早に集合場所の大神殿の玄関に向かう。向かっているときに感じたのだが、プレイヤーの数が増えている。それも若い年代の人たちだ。春休みを使って目いっぱい遊んでいるのだろう。シオンたちもそうだが。
ダイナロスの宿は大神殿から近かったし、お決まりのパルクールで向かったため、二分以内に集合場所に着いた。
「おおー!相変わらず仲良いね~!」
一番先に大声で手を振って歓迎してくれた、白髪のショートに赤い瞳をした女の子がエレナだ。ちなみに同級生。
「羨らやましいわ~」
関西弁のような口調のおっとりした、腰まであるピンクのもさっとヘアーの女の子は<エミ>。現実は羽崎絵美香。こっちも変わらずおっとりしている。同じく同級生。
「何言ってんの・・・」
エミの隣で杖を持って、緑の縁の眼鏡を掛けて呆れている緑色の髪の人が<コグ>。現実は小熊明利。見た目は真面目で実際は面白いやつ。現実では眼鏡は掛けていない。同じく同級生。
「仕方ないって。エミはいつもこうだから」
壁に片足を立てて座っている、身長がかなり低い青髪のポニーテイルの子は<ツバキ>。現実は羽崎椿で、エミの妹で一つ年下。碧とは超絶仲がいいが、エミとはあまりしゃべらない。すげぇクール。しかも姉をあだ名で呼ぶ。
「それより早く遊ぼうぜ!うずうずする・・・!」
この戦闘厨の、黒髪の前髪に紫のラインが入った、逆立った髪型の見た目小学生の男の子が<ウォッカ>。現実は酒口伊久留。名前の由来は酒の名前らしい。おちゃらけものでちっちゃくて馬鹿にされることも多いが、根はめっちゃ優しい人。同級生。
「はいはい。落ち着きましょうね~おちびちゃん」
優しい笑顔が特徴の水色のツインテールの女性の方は<ナナミ>。現実は水谷七海。我らの学校の生徒会長で人気者。誰にでも優しく接して、笑顔を絶やさない人で、実はゲーマー。そんで美人で、碧とおちびちゃんで反応した椿ちゃんがお気に入りらしく、なでなでしている。
「全員揃ったな」
そして安定のポーズで壁にもたれていたカイト。グループの繋ぎ役ともいえる存在で、商人の血が流れているのか、聞き上手話し上手のほぼ完璧人間だ。
「ごめん。遅くなった」
シオンがみんなに謝ると、代表でエレナが出てきた。
「大丈夫。それより、参加してくれてありがとう。ギルド<ホワイトパラディンズ>を有名ギルドにしていこう!」
元気満々で拳を突き上げたのだが、他のみんなは「名前決まってるの?」とか、「いい名前やん~」とか、「とりあえず行こうぜ!」とか、個人個人で言いたいことを好き勝手に言っている。
まとまりがないというか、自由というか、流石中学生だな、と感じる集団だ。
「まあ、気負いすぎるなってことだ」
カイトが笑って肩を叩いてきた。シオンのことを気にかけてくれたのだろう。いいやつだ。
「それじゃあ行ってみよう~!」
エレナの声に、各自返事をして、ホワイトパラディンズは、ぞろぞろと大神殿に入っていった。
「うん!大人数で遊ぶのはやっぱり楽しいね~」
「まだ何にもしてないけど・・・」
ファーストワールドに来たばかりなのだが、エレナはいつも以上にニコニコしている。
このパーティーはコグがツッコミを担当してくれている。任せたぞ、コグ。
この時間帯になってパーティーを組むのは、決して珍しくはなかった。他にも待ち合わせをしている集団もあったので、一通りは自分で好きなように遊んで、朝になったら集まるのが定番なのだろう。
とりあえず、ホワイトパラディンズはクエストを進める。デュエル・ワールド・オンラインでギルドの名を広めたいというのがエレナの望んでいることだ。
カイトは「結構みんなうまいし、有名なプレイヤーもいるからいけると思うぞ」なんて言っていたが、本当にそうなのだ。
カイトの言っている有名なプレイヤーとは、シオン、カイト、シーナ、エレナ、ナナミのことだ。
この五人は他の大人気VRゲームで名を轟かせた実力のあるプレイヤーたちなのだ。他のエミ、コグ、ツバキ、ウォッカも認知度が低いだけであって、腕前は確かなもの。
ファーストワールドで狩りをしていても、普通に会話をしながらモンスターを倒している、という馬鹿げた
集団と化していた。
一度、オーガ三体とエンカウントしたが、やはり喋っていた。しかも冗談を笑っていた。
こうして、早くもデュエル・ワールド・オンラインに、<戦闘がうまい、お喋り集団>という形で広まっていった。
このパーティーの構成、戦い方は、前衛シオン、シーナ、エレナ、ウォッカの四人。エレナはクラスはナイトで、双剣を使っていた。ウォッカはちっこい割にハルバードと呼ばれる、槍の片側に斧をつけたようなでっかい武器を使っている。
中衛はカイトとツバキ。ツバキは刀を使っているが、防御が苦手らしいので前衛とスイッチ(瞬間的にポジションを交代すること)で攻撃に参加している。
後衛は他のエミ、コグ、ナナミの三人。エミがヒーラー(回復役)。コグが魔法使い。ナナミが司令塔とバフをつけるサポートになっている。
戦い方は前衛が支えて、後衛がサポート。とどめ、周囲の警戒を中衛とナナミで行うという、バランスは微妙だが、しっかりとしたパーティーになった。
そんな感じでモンスターを倒して、クエストを進めていると、いきなりワールドにアナウンスが響き渡った。
「緊急アナウンスです。ただいまからファーストワールドにおいて、ミッションを発令します」
急なミッションに周りにいるプレイヤーが騒ぎ始めるが、ホワイトパラディンズのメンバーはウォッカ一人を除いて、いつも通りの雰囲気でアナウンスを聞いている。
ミッションとは、クエストとは違い、プレイヤーが自分の意志で参加できるもので、お金や経験値、アイテムドロップがおいしいクエストの特化版のようなものだ。でも、メリットの方が多いので、ほとんどのプレイヤーは参加する。
騒いでいるウォッカは「うおぉぉぉ!!ミッションだ!!楽しみだ!!俺の出番だ!!」なんて一人でテンションが上がっていた。もうちょっと静かにできないものかな、ウォッカ、と呆れるメンバーだったが、それよりもミッションの内容に興味があるのか、誰もツッコまない。
そして、そのミッションの内容はーーー
「今回のミッションは、ジャイアントオーガ、キングオーガ、クイーンオーガの討伐です」
淡々と同じ調子で告げられた討伐ミッションだが、そのアナウンスが終わると同時に、ファーストワールドに三体、いや三頭の巨大なオーガが出てきたのには、流石にみんな顔を引きつらせていた。
「グオォォォォォ!!!」
「ガアァァァァァァァ!!」
「ホウアァァァァァァ!!」
地震を起こすほどの咆哮に、ホワイトパラディンズは武器を構えなおし、三頭のオーガに向かっていくのだった。
「やっぱさいっこうに面白いね!!」
エレナの無邪気な笑顔に、パーティーは笑顔を取り戻し、一番先に斬り込んだ。
DWOは街の中でログアウトした場合、キャラが消えるようになっている。これは一方的ななPK(プレイヤーがプレイヤーを倒す行為)を防ぐためだろう。そして、ログインしたときは必ず、大神殿よりも北にある<ダイナロスの宿>の部屋にログインされる。この部屋はお金が必要で、宿から出るときに十ヴェノム取られるので、お金がないプレイヤーはログアウトしてもキャラが消えないのだ。それはつまり死を意味している。他のゲームとは違い街中でもダメージ判定があるので、そういうことだ。
部屋のふわふわのベットから飛び起き、急いで宿を後にする。
その時にシーナに出会ったので、一緒に行くことにした。
「お兄ちゃん・・・やっぱかっこいいよ」
純粋な眩しいほどの笑顔に、シオンは照れて、シーナの頭を撫でてやった。嬉しそうにシーナは笑ったが、
「あ、お兄ちゃんじゃなくてシオン君だったね」
としっかり訂正をした。
「その通り。じゃあ行こうか」
木製の黒いドアを開けて外に出ると、太陽のような発光体が照り付け、心地よい風がシオンたちを迎えた。
この世界は日が出ている時間が二十四時間。日が沈む時間が二十四時間と現実世界とは違う。この設定は開始が夜だったので、開始早々、暗闇の中を冒険するのはまずいと思ったのだろうか。珍しくプレイヤーに優しい運営の一部だ。
かなりの時間待ってくれているので、足早に集合場所の大神殿の玄関に向かう。向かっているときに感じたのだが、プレイヤーの数が増えている。それも若い年代の人たちだ。春休みを使って目いっぱい遊んでいるのだろう。シオンたちもそうだが。
ダイナロスの宿は大神殿から近かったし、お決まりのパルクールで向かったため、二分以内に集合場所に着いた。
「おおー!相変わらず仲良いね~!」
一番先に大声で手を振って歓迎してくれた、白髪のショートに赤い瞳をした女の子がエレナだ。ちなみに同級生。
「羨らやましいわ~」
関西弁のような口調のおっとりした、腰まであるピンクのもさっとヘアーの女の子は<エミ>。現実は羽崎絵美香。こっちも変わらずおっとりしている。同じく同級生。
「何言ってんの・・・」
エミの隣で杖を持って、緑の縁の眼鏡を掛けて呆れている緑色の髪の人が<コグ>。現実は小熊明利。見た目は真面目で実際は面白いやつ。現実では眼鏡は掛けていない。同じく同級生。
「仕方ないって。エミはいつもこうだから」
壁に片足を立てて座っている、身長がかなり低い青髪のポニーテイルの子は<ツバキ>。現実は羽崎椿で、エミの妹で一つ年下。碧とは超絶仲がいいが、エミとはあまりしゃべらない。すげぇクール。しかも姉をあだ名で呼ぶ。
「それより早く遊ぼうぜ!うずうずする・・・!」
この戦闘厨の、黒髪の前髪に紫のラインが入った、逆立った髪型の見た目小学生の男の子が<ウォッカ>。現実は酒口伊久留。名前の由来は酒の名前らしい。おちゃらけものでちっちゃくて馬鹿にされることも多いが、根はめっちゃ優しい人。同級生。
「はいはい。落ち着きましょうね~おちびちゃん」
優しい笑顔が特徴の水色のツインテールの女性の方は<ナナミ>。現実は水谷七海。我らの学校の生徒会長で人気者。誰にでも優しく接して、笑顔を絶やさない人で、実はゲーマー。そんで美人で、碧とおちびちゃんで反応した椿ちゃんがお気に入りらしく、なでなでしている。
「全員揃ったな」
そして安定のポーズで壁にもたれていたカイト。グループの繋ぎ役ともいえる存在で、商人の血が流れているのか、聞き上手話し上手のほぼ完璧人間だ。
「ごめん。遅くなった」
シオンがみんなに謝ると、代表でエレナが出てきた。
「大丈夫。それより、参加してくれてありがとう。ギルド<ホワイトパラディンズ>を有名ギルドにしていこう!」
元気満々で拳を突き上げたのだが、他のみんなは「名前決まってるの?」とか、「いい名前やん~」とか、「とりあえず行こうぜ!」とか、個人個人で言いたいことを好き勝手に言っている。
まとまりがないというか、自由というか、流石中学生だな、と感じる集団だ。
「まあ、気負いすぎるなってことだ」
カイトが笑って肩を叩いてきた。シオンのことを気にかけてくれたのだろう。いいやつだ。
「それじゃあ行ってみよう~!」
エレナの声に、各自返事をして、ホワイトパラディンズは、ぞろぞろと大神殿に入っていった。
「うん!大人数で遊ぶのはやっぱり楽しいね~」
「まだ何にもしてないけど・・・」
ファーストワールドに来たばかりなのだが、エレナはいつも以上にニコニコしている。
このパーティーはコグがツッコミを担当してくれている。任せたぞ、コグ。
この時間帯になってパーティーを組むのは、決して珍しくはなかった。他にも待ち合わせをしている集団もあったので、一通りは自分で好きなように遊んで、朝になったら集まるのが定番なのだろう。
とりあえず、ホワイトパラディンズはクエストを進める。デュエル・ワールド・オンラインでギルドの名を広めたいというのがエレナの望んでいることだ。
カイトは「結構みんなうまいし、有名なプレイヤーもいるからいけると思うぞ」なんて言っていたが、本当にそうなのだ。
カイトの言っている有名なプレイヤーとは、シオン、カイト、シーナ、エレナ、ナナミのことだ。
この五人は他の大人気VRゲームで名を轟かせた実力のあるプレイヤーたちなのだ。他のエミ、コグ、ツバキ、ウォッカも認知度が低いだけであって、腕前は確かなもの。
ファーストワールドで狩りをしていても、普通に会話をしながらモンスターを倒している、という馬鹿げた
集団と化していた。
一度、オーガ三体とエンカウントしたが、やはり喋っていた。しかも冗談を笑っていた。
こうして、早くもデュエル・ワールド・オンラインに、<戦闘がうまい、お喋り集団>という形で広まっていった。
このパーティーの構成、戦い方は、前衛シオン、シーナ、エレナ、ウォッカの四人。エレナはクラスはナイトで、双剣を使っていた。ウォッカはちっこい割にハルバードと呼ばれる、槍の片側に斧をつけたようなでっかい武器を使っている。
中衛はカイトとツバキ。ツバキは刀を使っているが、防御が苦手らしいので前衛とスイッチ(瞬間的にポジションを交代すること)で攻撃に参加している。
後衛は他のエミ、コグ、ナナミの三人。エミがヒーラー(回復役)。コグが魔法使い。ナナミが司令塔とバフをつけるサポートになっている。
戦い方は前衛が支えて、後衛がサポート。とどめ、周囲の警戒を中衛とナナミで行うという、バランスは微妙だが、しっかりとしたパーティーになった。
そんな感じでモンスターを倒して、クエストを進めていると、いきなりワールドにアナウンスが響き渡った。
「緊急アナウンスです。ただいまからファーストワールドにおいて、ミッションを発令します」
急なミッションに周りにいるプレイヤーが騒ぎ始めるが、ホワイトパラディンズのメンバーはウォッカ一人を除いて、いつも通りの雰囲気でアナウンスを聞いている。
ミッションとは、クエストとは違い、プレイヤーが自分の意志で参加できるもので、お金や経験値、アイテムドロップがおいしいクエストの特化版のようなものだ。でも、メリットの方が多いので、ほとんどのプレイヤーは参加する。
騒いでいるウォッカは「うおぉぉぉ!!ミッションだ!!楽しみだ!!俺の出番だ!!」なんて一人でテンションが上がっていた。もうちょっと静かにできないものかな、ウォッカ、と呆れるメンバーだったが、それよりもミッションの内容に興味があるのか、誰もツッコまない。
そして、そのミッションの内容はーーー
「今回のミッションは、ジャイアントオーガ、キングオーガ、クイーンオーガの討伐です」
淡々と同じ調子で告げられた討伐ミッションだが、そのアナウンスが終わると同時に、ファーストワールドに三体、いや三頭の巨大なオーガが出てきたのには、流石にみんな顔を引きつらせていた。
「グオォォォォォ!!!」
「ガアァァァァァァァ!!」
「ホウアァァァァァァ!!」
地震を起こすほどの咆哮に、ホワイトパラディンズは武器を構えなおし、三頭のオーガに向かっていくのだった。
「やっぱさいっこうに面白いね!!」
エレナの無邪気な笑顔に、パーティーは笑顔を取り戻し、一番先に斬り込んだ。
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