異世界王政〜Four piece stories〜

桜井ギル

謁見の前に

その頃のレオンとローレンツ



ローレンツ「はぁはぁ……な、何とか間に合った」


レオン「お前は不真面目だから、遅れて行って何事もなく振る舞うタイプかと思ったよ」


ローレンツ「なっ…俺はそんなことしないっつーの…でも」



ローレンツはとある人物のことを思い浮かべていた。







アリスティル『…もう、ローレンツは本当に約束の時間守らないよね』


ローレンツ『そんなの知らねーし。つか、お前が俺の方に来ればいいじゃねぇか』


アリスティル『はあ?何それ。本当に反省してる?』


ローレンツ『してねーよ!』


アリスティル『…っ!……ふふ、はっきり言うのね』


ローレンツ『あ!…こ、これはその……』


アリスティル『…………とても、そっくりだ』


ローレンツ『…あ?なんだよ。なんか文句あるならはっきり言えよ』


アリスティル『……べっつにぃー』










あの頃のことを思い出した。あの日はあいつがヴァンパイア界に通い始めて少し経ったくらいだった。


その日はあいつに……俺の母親の墓参りに付き添ってもらう予定だった。


だが、俺は約束の時間を守らなかった。それは…母親のことを思い出すとどうしても………







ローレンツの母『いい?ローレンツ。…レオンに負けてはダメよ。あいつの母親は側室。でも私は正室よ。…みんな、王の寵愛があいつに向いてるんだっていうけどあいつの子供までに負けてはダメ。あなたこそが新の後継者よ。』


ローレンツ『………………はい、分かりました……母上』








忌まわしい記憶が巡る。思い出すのも嫌なのに思い出してしまう自分が情けない。



レオン「………ンツ、ローレンツ?どうした?」


ローレンツ「…………!!」


レオン「お前、最近らしくないよ。気分が優れないのならローレンツだけでも先に帰ったらどう?」


ローレンツ「…………いや」


ローレンツ「俺は、俺の意思でここに来てるんだ。兄貴に譲るつもりはねーよ」


レオン「……!」
 

レオン「そうか」



先程思い出していた人物をそっと記憶の隅っこに置き、今はただこれから会うことになる人物のことだけを考えていた。


それにこの恐怖からいつか解放されるかもしれないとらしくもなくある人物に思い馳せていた。

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