異世界王政〜Four piece stories〜

桜井ギル

フランチェスカの過去(1)

スピア「ルクレシア家…聞いた事があります。」


スピア「なんでも宝石商で名をあげたこの国唯一の名家だとか」


スピア「あっちなみに私の家も名家ですよ!爵位だってありますからね!」



……別に聞いてない。


フランチェスカさんは気にせず話を進める。



フランチェスカ「私はねどうしても医者になりたかったの。お母様が生前医者をやっててね、私もなりたいなぁって思うようになったのは時間はかからなかった」


フランチェスカ「お母様も賛成してたんだ。一緒にいつか個人経営の病院を出そうねってよく話してたよ」



フランチェスカはどこか遠くを見つめかつての日々を懐かしんでいるようだった。しかし次の瞬間顔が強ばる。



フランチェスカ「でもね…お母様が死んでから何もかも変わってしまった。ずっと見守ってくれていたお父様が急に医者はダメだって反対するようになったの」


フランチェスカ「お前は家のために良家に嫁げるように修行しなさいって…。2人のお兄様もお父様と同じ考え。」


フランチェスカ「私はだんだんあの家にいることが苦しくなって遂には家出までしちゃった」


フランチェスカ「近場だと家の使用人達に見つかりかねないから思い切って別地の赤の領地にまで渡ったの」


フランチェスカ「でも赤の領地のみんなは最初私のことを白の領地から逃げてきた難民だって指を指して笑いものにしてた」


フランチェスカ「雪の降る中、白の領地出身だってだけで家も借りられず路地をさまよってた。私が凍えて死にそうになった時に姫ちゃんが現れたの」






アリスティル『…貴女、こんな所で何しているの?ここにいたら凍死してしまうわ。早く家に帰った方がいいわよ』


フランチェスカ『帰る家なんてもうない。私はあの場所から逃げてきたの。捨てたの。もう二度と戻ることは無い』


アリスティル『…………』


フランチェスカ『私は白の領地からの流れ者。嘲笑うなら笑えばいいわ。私はこの街の笑い者だもの』


アリスティル『………………』


フランチェスカ『…何よ?黙りこくって。何も言えないわけ?』


アリスティル『…………悲しくないの?』


フランチェスカ『…………!』


アリスティル『本当は貴女は怖いんでしょう?見知らぬ地で誰も頼ることが出来ずただ雪の中で死ぬのを待っているだけ』


アリスティル『でも助けて欲しいとも思ってる。』


フランチェスカ『貴女に何が分かるっていうの?!私がどんな気持ちで……!』


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