無能な俺がこんな主人公みたいなことあるわけがない。
一章 9 『食後の不吉』
「ふぅ・・食った、食った!いやーほんとローゼの言う通りここの料理は最高だな!サンキューな!」
食事を終え、膨れたお腹を右手でさすりながらタクミはローゼに礼を言った。
「そう?気に入ってもらえたなら連れて来たかいがあったわ!」
ローゼも満足そうに答えた。
「それで、タクミはこれからはどーするつもりなの?」
「うーん・・・そうだな。最終目標は元の世界に帰るっていうのがあるんだが、そのためにはどうすればいいのか見当もつかないんだよな。フェルの奴は魔法を使いこなすことが出来れば帰れるかもみたいなこと言ってたんだけどよ」
「ふーん。おそらくそのフェルって精霊が言っているのは転移系の魔法を極めればあるいはってことなのだろうけど、ただでさえこの世界の中での転移魔法もかなりの上級クラスじゃないと使えないのに・・・ましては世界を飛び越えて異世界への転移なんてそれはもう神に近いレベルになるんじゃないのかしら」
「神に近いって・・・なら、どうしたらいいんだよ?」
ローゼの話を聞き、頭を抱えるタクミ。
「まずは転移する方法を探すよりは、タクミの中にある力をつかって精霊術をきちんと使えるようにするのが大事なんじゃないかしら?せっかく力を秘めてるのにそれをほっとくなんてもったいないわよ!」
そんな様子を見て人差し指を立てローゼが提案した。
「まぁ確かに。それも大事だとは思うんだけどよ。どうやったら魔法を使えるかも全然わかんねーんだよな」
「でしょうね。魔法を覚えるには同じ魔法を使う人に習うのが一番の近道よ。残念ながら私が使うのは紋章術だから教えてあげることはできないのだけど・・・」
「マジかぁ・・・ローゼに教えてもらえたら一番良かったんだけど」
タクミが肩を落としため息をついた。
「まぁまぁタクミ!落ち込むのは早いわよ。私にも精霊術を使う知り合いはいるのよ。その人にタクミに魔法を教えてくれるように私から頼んでみるから。そんなに落ち込まないで!」
タクミを励ますようにローゼが声をかけた。
食事までご馳走になり、さらには元の世界に戻れるように協力までしてくれるなんてこの子は女神か何かなのか?
タクミは心からそう思った。
「いやホントすまねぇ。何から何まで世話になっちまって・・・」
テーブルに両手をつき深々と頭を下げるタクミ。
それを見てローゼが慌てて止める。
「ちょっと!そんなやめてよ!そんな大したことじゃないんだから。だから頭を上げて頂戴。ねっ?それにホントついでみたいなものなのだから。さっきも言ったと思うけどこの町には荷物を渡すために来たって言ったでしょ?あれを渡す人こそさっき話に出た精霊術使いの人なんだから。だからそんなにタクミが気にする必要ないのよ!」
そういってローゼはえへへと笑って見せた。
「ありがとう。ついででもホント助かるよ」
タクミは頭をあげローゼに改めてお礼を言った。
「いいから、いいから!そうと決まれば行きましょうか。マルクを待たせるのも悪いし、出ましょうか。それじゃ私お金を払ってくるからタクミは外で先に待っててくれる?」
ローゼはそう言い残し会計のカウンターへと歩いて行った。
一足先に店の外へ出たタクミ。
・・・ん?
ふと、なんだか視線のようなものを感じた。
それはさっき感じた好奇の視線ではなくなんだか舐めまわされているかのような嫌な感覚だった。
視線の正体を探ろうと周りをキョロキョロするタクミ。だが周りにはそれらしき者はいなかった。普通の通行人しか見当たらず、原因をつかむことはできなかった。
「そんなにキョロキョロしてどうしたのよ?」
後ろから会計を済ませてきたローゼが話しかけてきた。
「あ・・・いやなんでもないよ。なんか物珍しい鳥みたいなのがいたから」
ローゼに余計な心配をさせまいと、さっき感じた視線のことは黙っておこうと思ったタクミ。
「なにそれ?まぁいいわ。それじゃマルクのとこへ戻りましょうか」
二人はシャンバルを後にした。
少し歩き馬車の止めてある所へ到着した。マルクは馬の毛並みを整えているところだった。
二人が帰ってくるのに気づき頭をさげ迎えてくれた。
「待たせちゃったわね。それじゃあ出発しましょうか!」
「了解しました」
二人はまた荷台へと乗り込み、マルクが馬車を走らせた。
5分もしないうちに馬車は目的の家へと到着した。
「ここよ。さっき話した精霊術使いがいるお屋敷よ」
ローゼは届け物と思われる黒い箱を手に抱え馬車から降りた。その後をタクミも追った。
外に出ると目の前には豪邸と呼ぶに相応しい白い建物が鉄のフェンスの向こうにあった。
「ほぇー、なんてデカい屋敷だよ。どんな金持ちが住んでんだよ?」
タクミは屋敷を見上げ呟いた。
「ここに住んでいるのはウインズという人よ。うちの父とウインズさんが仲が良くて、私は今回父からお使いを頼まれたってわけ。良い人だから、きっとさっき話したお願いも聞いてもらえると思うわよ。それじゃ行きましょうか!悪いけどマルクはまた少し待っててね」
マルクに見送られ二人はウインズの屋敷へと入っていった。
屋敷の中に入るとメイドのような人に連れられ応接室のようなところに案内された。
部屋には高そうな壺やら絵画が飾ってあった。
見慣れぬ装飾品の数々に見とれていると横から肘でローゼに小突かれた。
「ちょっと、恥ずかしいからあんまりキョロキョロしないで」
「あ、悪い。つい・・・」
そんなやりとりをしていると部屋に一人の男が入ってきた。
食事を終え、膨れたお腹を右手でさすりながらタクミはローゼに礼を言った。
「そう?気に入ってもらえたなら連れて来たかいがあったわ!」
ローゼも満足そうに答えた。
「それで、タクミはこれからはどーするつもりなの?」
「うーん・・・そうだな。最終目標は元の世界に帰るっていうのがあるんだが、そのためにはどうすればいいのか見当もつかないんだよな。フェルの奴は魔法を使いこなすことが出来れば帰れるかもみたいなこと言ってたんだけどよ」
「ふーん。おそらくそのフェルって精霊が言っているのは転移系の魔法を極めればあるいはってことなのだろうけど、ただでさえこの世界の中での転移魔法もかなりの上級クラスじゃないと使えないのに・・・ましては世界を飛び越えて異世界への転移なんてそれはもう神に近いレベルになるんじゃないのかしら」
「神に近いって・・・なら、どうしたらいいんだよ?」
ローゼの話を聞き、頭を抱えるタクミ。
「まずは転移する方法を探すよりは、タクミの中にある力をつかって精霊術をきちんと使えるようにするのが大事なんじゃないかしら?せっかく力を秘めてるのにそれをほっとくなんてもったいないわよ!」
そんな様子を見て人差し指を立てローゼが提案した。
「まぁ確かに。それも大事だとは思うんだけどよ。どうやったら魔法を使えるかも全然わかんねーんだよな」
「でしょうね。魔法を覚えるには同じ魔法を使う人に習うのが一番の近道よ。残念ながら私が使うのは紋章術だから教えてあげることはできないのだけど・・・」
「マジかぁ・・・ローゼに教えてもらえたら一番良かったんだけど」
タクミが肩を落としため息をついた。
「まぁまぁタクミ!落ち込むのは早いわよ。私にも精霊術を使う知り合いはいるのよ。その人にタクミに魔法を教えてくれるように私から頼んでみるから。そんなに落ち込まないで!」
タクミを励ますようにローゼが声をかけた。
食事までご馳走になり、さらには元の世界に戻れるように協力までしてくれるなんてこの子は女神か何かなのか?
タクミは心からそう思った。
「いやホントすまねぇ。何から何まで世話になっちまって・・・」
テーブルに両手をつき深々と頭を下げるタクミ。
それを見てローゼが慌てて止める。
「ちょっと!そんなやめてよ!そんな大したことじゃないんだから。だから頭を上げて頂戴。ねっ?それにホントついでみたいなものなのだから。さっきも言ったと思うけどこの町には荷物を渡すために来たって言ったでしょ?あれを渡す人こそさっき話に出た精霊術使いの人なんだから。だからそんなにタクミが気にする必要ないのよ!」
そういってローゼはえへへと笑って見せた。
「ありがとう。ついででもホント助かるよ」
タクミは頭をあげローゼに改めてお礼を言った。
「いいから、いいから!そうと決まれば行きましょうか。マルクを待たせるのも悪いし、出ましょうか。それじゃ私お金を払ってくるからタクミは外で先に待っててくれる?」
ローゼはそう言い残し会計のカウンターへと歩いて行った。
一足先に店の外へ出たタクミ。
・・・ん?
ふと、なんだか視線のようなものを感じた。
それはさっき感じた好奇の視線ではなくなんだか舐めまわされているかのような嫌な感覚だった。
視線の正体を探ろうと周りをキョロキョロするタクミ。だが周りにはそれらしき者はいなかった。普通の通行人しか見当たらず、原因をつかむことはできなかった。
「そんなにキョロキョロしてどうしたのよ?」
後ろから会計を済ませてきたローゼが話しかけてきた。
「あ・・・いやなんでもないよ。なんか物珍しい鳥みたいなのがいたから」
ローゼに余計な心配をさせまいと、さっき感じた視線のことは黙っておこうと思ったタクミ。
「なにそれ?まぁいいわ。それじゃマルクのとこへ戻りましょうか」
二人はシャンバルを後にした。
少し歩き馬車の止めてある所へ到着した。マルクは馬の毛並みを整えているところだった。
二人が帰ってくるのに気づき頭をさげ迎えてくれた。
「待たせちゃったわね。それじゃあ出発しましょうか!」
「了解しました」
二人はまた荷台へと乗り込み、マルクが馬車を走らせた。
5分もしないうちに馬車は目的の家へと到着した。
「ここよ。さっき話した精霊術使いがいるお屋敷よ」
ローゼは届け物と思われる黒い箱を手に抱え馬車から降りた。その後をタクミも追った。
外に出ると目の前には豪邸と呼ぶに相応しい白い建物が鉄のフェンスの向こうにあった。
「ほぇー、なんてデカい屋敷だよ。どんな金持ちが住んでんだよ?」
タクミは屋敷を見上げ呟いた。
「ここに住んでいるのはウインズという人よ。うちの父とウインズさんが仲が良くて、私は今回父からお使いを頼まれたってわけ。良い人だから、きっとさっき話したお願いも聞いてもらえると思うわよ。それじゃ行きましょうか!悪いけどマルクはまた少し待っててね」
マルクに見送られ二人はウインズの屋敷へと入っていった。
屋敷の中に入るとメイドのような人に連れられ応接室のようなところに案内された。
部屋には高そうな壺やら絵画が飾ってあった。
見慣れぬ装飾品の数々に見とれていると横から肘でローゼに小突かれた。
「ちょっと、恥ずかしいからあんまりキョロキョロしないで」
「あ、悪い。つい・・・」
そんなやりとりをしていると部屋に一人の男が入ってきた。
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