作者ネタ切れにより「俺、幼なじみ(男の娘)と同棲します」は思いついた日常を季節関係なく書きます

煮干

4月7日(2)

「お兄ちゃん……硬い……」


美樹の繊細な指が体を這うと、大樹の顔が歪む。


「当たり前だろ……夜に鍛えてるんだからよ……」

 
大樹が大きく息を吐くと、美樹は目を見開いた。


「す、すごい……!  ビクビクってなる……」


「もっとこの辺はすごいぞ……」 


興奮している美樹の腕を引っ張り、大樹をある場所に持っていく。


「んッ!  す、すごい……!」


美樹は無心で腕を動かす。大樹の頬はだんだんと紅潮して、呼吸は熱をおびる。


「ッ!  くすぐったいだろ……」


大樹はあまりの快美感に身の危険を感じる。美樹の手を払いのけると、美樹は体制を崩して倒れた。


「キャッ!」


「ご、ごめん!」


大樹は起き上がり、美樹の元に駆け寄る。美樹は体を起こすと、異変に気づいた。


「なにこれ……ネチョネチョするんだけど……」


くっつけた指を離すと、指の間に糸のようなものが生じた。それは白く、どこかドロっとしている。


「わかんねぇよ。お前のやつじゃないの?」


「そんなわけないじゃん!  こんなのないもん!」


美樹は頬を膨らますとそっぽを向く。大樹はため息をひとつつくと、ティッシュを差し出した。


「まずはふけよ。なんか臭ってくるし……」


「そう?  いい匂いなんだけどなぁ……」


美樹は指を鼻に近づけて匂いを嗅ぐ。


「ほら」


自分で嗅ぐと、大樹の鼻にも近づけた。


「嫌だよ」


大樹は顔をそらして嗅ぐことを拒む。すると美樹は、ニヤリとして指を口に近づける。


「美味しそう……」


恍惚とした表情で舌なめずりをする。大樹はすぐさま手を伸ばして、美樹の行動を止めた。


「何してんだよ」


「いい匂いだから美味しいかなって」


「んなわけないだろ。全く……」


大樹はティッシュを一枚とると、美樹の指を強引にふく。


「もうちょっとレディーに優しくしなよ。もしかしたらモテるかもよ……?」


「ありません」


大樹は美樹の指をぐいっと曲げる。美樹は苦悶の表情をうかべて、足を蹴りあげた。


「バカ兄!」


「ったァ!」


つま先が大樹の股間にクリーンヒットする。大樹は股をおさえてのたうち回ると、しばらくして動かなくなった。


「ご、ごめん!」


美樹がすぐさま謝ると、大樹は親指をたてた。


「な……なんのこれしき……」


大樹は壁を使って立ち上がる。足はプルプルと震えて、相当なダメージがあったことを物語る。


「本当に?」


「ちょっ!  やめろって!」



防衛本能が働き、美樹の手を払いのける。


「なんで?」


「兄のプライバシーは尊重しろ!」


痛みなど忘れて怒鳴る大樹。美樹は首を傾げてもう一回握ろうとする。今度は優しくソフトに握る。


「やめろって……」


今度は悩ましい声が口からもれる。美樹は面白がって、強弱をつけて握ってきた。


「本当に……やめろ……って……」


色味を孕んだ吐息だけが部屋に反響する。その時、桃色に染まった部屋にひとつの音が響いた。


「何してるの……?」


「明希!?」


「明希さん!?」


ドアの向こうには、不敵な笑みをこぼす明希がいた。大樹は手を横に振って必死に弁解する。


「こ、こいつが股間を蹴ってきて、それでちょっとさ……」


「違うでしょ?  妹とヤろうとしてた。でしょ?」


明希は右手で丸を作り、その中に左手の薬指を抜き差しする。その姿が珍しかったのか、大樹は吹き出してしまう。


「見損なったよ……絶交しよう大樹」


「違うんだ!  お前がそんなことするなんて……」


思い出して大樹はまた吹き出した。明希はうつむいて部屋を出ていく。大樹はすぐさま起き上がると、明希を追う。


「待てよ!」


部屋のドアを押し開くと、廊下をとぼとぼ歩く明希がいた。


「明希!」


大樹は明希の肩を掴むと強引に振り向かせる。


「触らないでよ!  変態!  性欲の権化!  ケダモノ!」


「待て!  俺の目を見てくれ……」


大樹は明希の両肩を掴むと、じっと明希の目を見る。明希は視線をそらして見ようともしない。


「頼むから見てくれ!」
 
そう言うと、明希は視線を合わせる。潤んだ瞳が大樹の心を一層しめつけた。


「本当に違うんだ……」


「なら証明してよ……」


「え……」


「一番愛してるって証明してよ……。美樹ちゃんなんかよりも僕が大切って証明してよ!」


鬼気迫る表情に大樹は生唾をのむ。大きく息を吐いて、そっと唇を重ねた。


「これでいい……?」


大樹は頬を紅に染め、視線をそらす。明希は数秒固まると、ゆっくりと口を開いた。 


「まだ……」


「いいのか?  俺はやめてって言われてもやめないぞ?」


「言わないよそんなこと……。ずっと大樹を感じてたい……。息も心音も脈拍も全部感じたい……」


「そうか……なら、酔いしれるまで感じさせてやるよ……」


「大樹……」


二人の唇が重なる。肩を掴んでいた手は、明希の手を握っていた。


「大樹の匂い……」


明希は唇を離すと、スっーと大樹の首筋をなめる。


「淫乱め」


大樹は明希を壁に押さえつけて、無理やり唇を奪う。艶かしい音を響かせ、ひとしきり行為におよぶと、明希はすっかりとろけた表情をする。


「もう……やめよう……?」


「言っただろ?  俺はやめないって」


三度目の濃厚なキス。明希の舌に絡みつかせ、口内を舐め回す。明希はあまりの快美感に足腰の力が抜ける。座ろうとしたその時、大樹の膝が股に滑り込む。運悪く、明希のふくらんだズボンに直撃した。


「んんッ〜〜!!」


刺激が心地よかったのか、明希は腰を弓のように仰け反らせる。ふくらんだズボンは大樹の膝に擦れて、更なる快楽へといざなう。


「んあっ!  んん……!」


喘ぎ声がもれるも、その口は大樹の唇によって塞がれる。二人の行為はとどまることを知らず、ただただ加速するばかりだった……。






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