戦力より戦略。

haruhi8128

妹という生物

「まぁ、元気出せ」

 シクシクシクシク……。

「うーん」

 とりあえずオーシリアはちょいちょいやりながら覗き込むのやめようか。
 無邪気ならまだいいのだが、悪い笑みを浮かべてるのが質が悪い。

「とりあえずはお前の処遇だが……」

 シクシクシ……。

「家で働いてもらうことにする。ちゃんと給与も出してやるから」

 シクシク……。

「トロワ」
「はい。宿舎はどういたしましょう」
「孤児院に一緒にいればいいだろ」

 もはや孤児みたいなもんだし。
 流石に言えないが。

「衣食住完備。悪くない条件だろ。命の対価として差し出された割にはな」

 シクシクシクシク……!

 あ、折角泣き止みかけてたのに追い打ちかけちゃった。

「主、鬼かの?」
「いや、お前にだけは言われたくない」


「リアーネ。お前に任せる。年も近そうだしな」
「それを言うならあんたもじゃない」
「俺はいいんだよ」

 見た目同じ感じでもどうせ二世代くらい歳離れてんだから。

「同僚になるんだから仲良くしてやってくれ。帰るぞ」
「「「はい」」」

 上役らしく俺たちは現場を後にするのだった。


「で、3日後でこれ?」
「はい! 命を助けていただきありがとうございました!」

 すっごい元気。
 辛気臭くても困るけど。
 どういう心境なのそれ。

「リアーネ」
「知らないわよ。まぁ、本人がいいって言うんだからいいんじゃない?」

 任せるってのはそこまで含めた話だろうが!

「……とりあえず、うちで今日から働いてもらうわけだが」
「はい、社長!」
「見た目もいいし、販売班にいってもらおうかと思う」
「はい、社長!」
「仕事内容はアンから聞いてくれ」
「はい、斜塔!」
「今、斜塔って言った?」

 絶対今のは確信犯だった。
 噛んだ時の絶妙な発音が無かったからな。
 こんな事をしていられるうちは大丈夫だろう。

「で、あいつらの拠点は?」
「ドゥから連絡がありました。既に把握済みです」

 万が一、あいつらが反旗を翻してきたときにはしっかりと制裁を加えるための準備も怠ってはいない。
 貨幣という制度をこの世界にちゃんと持ち込んだのは俺だからな。
 その気になれば流通の様子を知るくらいのことは何でもない。


「はい、お疲れー。明日もよろしくー」
「「「「お疲れさまでした!」」」」

 本日も終業し、みんなを家に帰らせていたその時。

「お兄!」
「……ん?」
「だから! おーにーい!」
「いや、聞こえてないとかいうことじゃなくてだな」

「なぁ、オーシリア」
「俺に妹とかいたっけ?」
「わしの記憶じゃと、おらんのう」

 しかし、今の俺の左腕には俺を「お兄」と呼び、懐いている女の子が一人。
 頭バグっちまうよこんなの。

「『妹属性』……! その手があったか……!?」

 右腕には何やらぶつぶつと言っているリアーネ。
 お前はお前でどうした。

「社長を新しいお兄だと思う事にしました! ダメでしょうか……?」

 くそっ!
 上目遣いが可愛い!
 何だこの生物!

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