戦力より戦略。

haruhi8128

結局できる奴が強い

リアーネ以外も四則演算がそれなりに出来るようになるまで2週間かかった。
いくら算数しかしてないと言ってもこの成長速度は中々のものだろう。
年齢層はそりゃ高いが、やはり意欲が高い。
これが将来の自分たちの職に関わるという意識が強い。

この世界は文明レベル自体はあまり低くはないのだが、弱肉強食という風潮のせいか、数字とかで理論的に話を進めることが少ない。
もちろん、日常の買い物などは存在するが、買う側が特に計算をしているような様子もなく、店側に任せられているように見える。
店主の適当な勘定の可能性もあるが、しっかり価格が決まっているのなら計算ができる人材というのは大事だ。
店を任せられるからな。

勉強においても、弱肉強食というのは変わらない。
出来る者の方が重宝されるし、出来ないものには価値がない。
何にしろ、身に着けておくに越したことはないのだ。

「よし、じゃあ本題に入るか」

ここからが本番なわけだが、四則演算さえできればかなり楽である。
貸借対照表のどことどこを計算するかさえ覚えてしまえば本当にあとは計算するだけだからな。
何なら表にでもして計算する前に確認してもらう形でも構わない。
というか、そりゃ覚えていた方が効率が良いのだろうが、それほどまでに効率を追い求める必要はないだろう。


「うーん……」

流石のリアーネも俺が用意していたモデルとにらめっこしている。
ここからは俺が特に教えることもないし、ひたすら時間をかけて頑張ってもらうしかないな。


「店の方はどうだ?」
「いつもいらっしゃる方々はいますが、その固定客の方々以外はあまり現れませんね」

少しマンネリ気味かな。
結局、外食なんてそんな頻繁にするものではないのだ。
するにしても、ラーメンばかり食べていられないだろう。
文化的に外食産業が発展しているわけではない。
これはライバルが少ないことを意味するが、そもそも外食に人々が出てこないということも示している。
話題性から少し売れただけなのだ。
特に損失が出るほどではないが、少し難しくなってきたな。

「他の店も出来て外食産業自体が活気づけばいいんだけど……」
「そういった動きは見られません」

行き詰まることはわかっていたので、俺たちの動きに目を付けて外食産業に手を出す奴がいないかなと思っていたのだが、そううまくもいかなかった。
俺に人脈、金があれば他の店も作ってマッチポンプ式にすることも出来たのだが、そんなことは出来ない。

「あ、あと、気になるお客様がいまして」
「お、なんだ?」
「遠くからこちらを伺ってはいるのですが、買いにくる様子はありません。ほぼ毎回一緒の方がいますね」
「どっかの刺客の可能性は?」
「そこについてはトロワが」
「はい。少々尾行してみましたところ、途中でまかれました」

「なるほど」
「私もそれなりに訓練は受けていますので……」
「それを撒くとなると堅気ではない可能性が高いな」
「そうなります」

メイドたちに関しては心配していない。
いざとなれば逃げるくらいは出来るだろう。
だが、今は従業員がいるからな。
また人質とかなったらシャレにならんし。
どう対策しようか。

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