戦力より戦略。

haruhi8128

就寝時間は消灯です

「よし、皆、良く楽しんだじゃろう。今晩に向けてゆっくり休んでくれ」

酔いと気絶から復活した王様が気丈にも皆に指示を出す。
よく気絶から立ち直ってすぐにいけるな。
このくらいの気概がないと王様なんかやってられないのかもな。
気合いだな。

「俺たちも寝るか」
「すごーく日が気になりますけどね」
「それはしょうがないな」

壁に仕切られている家とは違って布1枚で仕切られているテントはどうしても日の光が差し込みがちだからな。
昼に寝るにはどうにもおさまりが悪い。
俺も寝る時は基本的に明かりとか全部消す派だからな。
俺もきついが。
どうせ寝ようと思えば寝れる。

「なにか暗くする方法はないんですか」
「そんなこと言われてもなぁ……。むしろ闇魔法でどうにかならないのか?」
「その代わり周りがずっと浸食されますよ?」
「却下だ」

リスク高すぎ。

「……もう1枚テントを被せるのは?」
「暑くないか?」
「……レインちゃんが頑張れば、大丈夫」

グッと握りこぶしを作りながらレインを見るプリンセ。

「出来ますけどねぇ……」
「じゃあ、それで」
「決断早すぎません?」
「快適な睡眠のためにはしょうがないんだ。わかってくれ」

直前の睡眠くらい最大限快い状態で寝たいだろ。

「わかりましたよ。そんな稀に見る必死な眼しないでください……」

勝った。
眼力の勝利だ。

「じゃあ、テントをもう1枚かけてくるわ」

上から被せるくらいなら俺にもできるので1人で外に出ると、プリンセのお父さんとエルフの少年が2人で待ち構えていた。
おいおい。

「おい」
「なんでしょうか?」
「今は決戦前最後の睡眠時間ですよね」
「そうだな。お2人も寝たほうがいいのでは?」
「その程度で調子が崩れるような俺ではない」
「僕はどうせ後方です」

微塵も引く気がない。

「この昼が最後かもしれないからとか言って娘に手を出したら殺す」
「そんなの関係なしにとりあえず殺します」
「いや2人目の方はただの殺害予告だよな!?」

よくそんな真正面から言えるな!

「そんな予定はありませんから! 俺らもう寝るんでお引き取り下さい!」

必死にテントの2枚目をかけながら早口で言い、テントの中に逃げる。
流石にここまでは入ってこないだろう。

「……お父さんの声が聞こえた?」
「あ、あぁ。さっきまでいらしてたけどな。激励だけして帰っていったぞ」

うん、あれは激励だったのだ。
そうに違いない。
そうだとしておこう。

「さ、寝ようか」
「はい」
「……うん」
「うむ」

今の今までモリモリ食べてたオーシリアも寝るモードに入る。

「よっしゃ」

寝袋のようなものを広げ、そこに横たわる。
スッと横にレインが寝て、プリンセは俺のお腹の辺りを枕にする形で横たわる。
この姿勢も最初の方はお腹が圧迫されて寝付きづらかったのだが、もう慣れて安眠だ。
オーシリアもいつも通り足元。
やっぱりこれが落ち着くな。

「おやすみ」
「おやすみなさい」
「……おやすみー」

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