戦力より戦略。

haruhi8128

言ってみたら後悔することもある

皆がそれぞれ10発当て終えて帰ったあと、一応様子を見て回る。
その様子は明日からに備えてすぐに寝る者、自分の趣味に興じる者、酒盛りを始める者と様々だった。
前2つは主に女性で、酒盛りは男が中心である。

今気づいたのだが、冒険者でも男女比率は同じくらいだ。
厳密に言えば男の方が多そうだが、それでも体を張る職業なだけに俺としてはちょっと意外感を覚える。
もちろん、男女差別というわけではないのだが、身体構造上男の方が肉体労働はしやすくできているので、どうしても偏りがちなのだ。
その点で言えば、ここではそう言った偏見なく門戸が開かれているということなので素晴らしいことである。


「おう、姉ちゃん! ちょっと酌してもらえねぇか!」

男どもの酒盛り現場に行った時のことだった。
どうもかなり出来上がっている1人の冒険者がレインに声をかけたのだ。
まぁ、その程度なら良かった。
そいつが悪かったのはレインの腰に手を伸ばしたことだ。

そいつの手がレインに触れる前に俺は間に体を滑り込ませる。

「あ、なんだ……? っが!?」

先手必勝の右ストレートを顔面にお見舞いする。

「そういったサービスはここでは行っておりませんのでお引き取り願いますよ」

元々目つきが悪いと定評のある目で見降ろしながら言う。

「て、てめぇ! あんたにはなんの関係もないだろうが!」

そう言って殴りかかってくるそいつをステッド・ファストで囲み、レインに視線をやると、{憤慨}しており、頷く。

オーシリアにステッド・ファストの制御を代わってもらい、動けるようになった俺はそいつと向かい合う。
もちろん、腕力では敵わないので3重のチェーン・バインドで縛ったうえでだが。

「お前、馬鹿か。関係ないならこうまでして関わらないだろ」

1拍おいて俺はその言葉を口に出す。

「俺の女に手を出すな」




……言った後、少し冷静になる。
いや、このセリフいたい!
言ってみたかったセリフけっこう上位に入ってたけど、言ってみたらもう言いたくないセリフランキングに食い込んだぞ!
他になんて言ったらいいのかわからなかったからしょうがないけど!
レインの嬉しそうな顔による言ってよかった感で差し引きゼロとしよう!

「あの……」

ちょうどその場に居合わせた女の冒険者が口を開く。

「人間と、エルフで、その……、お付き合いなさってるんですか?」
「そうだよ?」

少なくとも質問に{悪意}がなかったので普通に反応する。

「それは……凄いですね」
「いや、逆に考えろよ? こんな美人さんと付き合いたいと思わないほうがおかしいだろ!?」

レインを示しながら俺は大声で言う。
ちなみにレインは真っ赤だ。

「レインだけとは言わん! もちろん、レインは特別だが、エルフってのは基本的に美形だろ!? なんでこれが憧れを持たずにいられようか! レインは格別だけどな!」
「もう……勘弁してください……」

もはやレインは涙目だ。
と言っても嫌がっていないのはわかっているので良し。
どうしよう、俺の彼女超かわいい。

「憧れます!」
「おぉ?」

声をかけてきた女の人が高らかに宣言する。

「種族の違う2人が奮闘する恋愛談! なんとすばらしいことでしょう!」

あー、そういう趣味の方か。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品