戦力より戦略。

haruhi8128

無理をすれば体にくる

断言しよう。
ここが極楽だ。

家に帰った俺はレインとプリンセから労われ、ついでにオーシリアからも褒められた。
まだ回復しきっていなかった俺はレインにうつぶせに膝枕され、プリンセとオーシリアに背中やら足やらをふみふみされて癒されていた。

レインの太もものふにふに感。
プリンセとオーシリアの心地よい重さ。
全身の疲れが取れていくようだ。
実際多少取れているんだろう。
最高だ……。

「……重くない?」
「全然だー……」
「……リブレさん、今見せられない顔してません?」
「そんなわけないだろー……」

実際はしてるかもしれんが。

「まぁ、今日は頑張りましたからね。大目に見るとしましょうか」
「そうだよね? 俺頑張ったもんね?」
「はいはい、偉い偉い」

レインが俺の頭を撫でる。
おおっ。
なんかあれだ、ゾクゾクっときたぞ。
なんか寒い感じもするし……。

……。

「プリンセ」
「……?」
「俺を布団まで運んでくれ。いつもみんなで使ってるやつじゃないのがいい」
「どうしたんですか?」

「俺、これ風邪引いてるわ」


そこからは俺は働かない頭を絞り、風邪の対処法を思い出す。

ネギのやつってどうだったっけ……?
あれは迷信だよな……。
あ、それは首に巻くやつで、食べるのはいいんだっけか……。
ダメだ、考えられない。

やっぱとりあえず寝とけばいいってとこはあるか……。
確か、汗をかいたらこまめに着替えるってのがあったよな。
もう面倒だから寝ちまおう。
体が疲れて風邪を引くとか、もう年かもしれんな。

「大丈夫ですか? 何かできることあります?」
「……お肉、食べる?」
「大丈夫だ。寝とけば治るだろ。着替えだけ用意してもらえると助かる。あと、プリンセ。肉はきつい」

消化に悪すぎる。

「あと、それだけしたらここにいないほうがいい」
「看病しますよ!」
「いや、うつすかもしれない。俺はいいが、2人にうつると可哀想だ」

子供の方がきついって言うしな。
あれ、逆か。

「……わかった」
「プリンセちゃん、でも……」
「……こういうことは、リブレさんの方が詳しい。……みんな病気になるより、いい」
「それはそうですが……」

プリンセに押されて、レインも出ていく。

「何かあったら呼んでくださいねー!」
「あぁー………」


キィ……バタン。

部屋が暗闇に包まれる。
なんだかんだこうやって布団で1人で寝るのは久しぶりだな。
1年前は当たり前だったことが、今は少し寂しく感じる。
時の流れは早いものだ。
実際、俺はこの世界の1年を4か月ほどで過ごしているわけだから、そう感じるのも当然か。

あれ?
俺凄い人生損してないか?

……やめやめ。
身体が弱ってると思考もマイナスになるからダメだ。
寝よう。


「うぅ……」

重い……。
目を開け、お腹の上を見ると、オーシリアが大の字になって寝ていた。
なにしてんだ、こいつ。
ふと横を見ると、ベッドにもたれてレインも寝ている。
プリンセは床に丸くなっている。
結局、全員いるじゃないかよ。
オーシリアは杖なんだから風邪とか無縁だろうけど。

しかし、心配してくれていたのだろう。
先ほどよりは明瞭な頭で考える。
これで風邪引かれたら完璧に俺のせいだな。

汗をかいていたので上のオーシリアを横に転がしておいてもらっていた服を手に取り、もぞもぞ着替える。

「あっ……!」

声がしたので、振り返ると、レインが目を覚ましていた。
手で顔を覆っているが、指の隙間からしっかりこっちを見ている。

……それほんとにやるやついるんだな。





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