戦力より戦略。

haruhi8128

嘘をつくのはほどほどに

「報告いたします!」
「どうしたのです。騒がしいですよ」
「それが……」
「はい、どうもー! その報告多分俺たちのことだから手間が省けたよ、良かったね!」

その日、エルフの町が騒然とする事態が起こった。
なんと人間がわずか数人で町に侵入したのだ。
それも正面から。
彼らは警備していた者たちを一瞬で無力化し、長の館へと屋根をぶち破って侵入した。
俺たちのことだが。

「お、当たり」
「リブレさん……!」

レインはエルフの長の館にいるだろうに姿を見なかったのはなぜか。
それは俺たちが3階に行っていなかったから。
単純明快。
そして3階に行くにあたって最短ルートは何か。
屋根をぶち破れば降りるだけだ。

「衛兵!」
「は!」
「あぶね」

レインが魔法で操られているという前提の下で俺たちは動いているので、目標は小太刀をレインに当てること。
しかし、最重要人物に侵入者が近づくことなどそう簡単に許されはしない。
長の一声で衛兵が俺たちとレイン、長の間に立ち塞がる。

「キラ、エルメ、ケイン。頼む」
「了解!」

3人が飛び出していき、すぐに乱戦になる。
流石に一瞬で無力化とはいかないが、負けるはずがない。


「あなた方は自分たちがやっていることの重大さがわかっているのですか?」
「重々承知だよ。心配するなって、確認さえ取れれば退散するから。例えば、エルフは生贄をもって幻想級ファンタズマルの危機を脱しようとしているとかな?」
「……!」
「……おいおい、マジか。ほんとに信じたくない想像程当たるもんだよな」

俺がこの話題を出して長に視えたのは{焦り}。
事実でなければおよそ浮かびようのない感情。

「お前らほんと大概にしろよ?」

ちなみにではあるが、俺はキレると静かになるタイプだと自分では思っている。
相手をどうしてやろうかと真剣に考え始めるからだ。


「父上、何が起こっているのですか!?」

俺がキレて少し静かになっている間にドアを開けて誰かが入ってきた。
そうだな、レインより少し大きいくらい、14歳の男の子って感じだ。
もしそうなら俺と2歳くらいしか変わらないわけなんだけど。
長の息子か……?

「おぉ、どうやら計画がどこかから漏れておったらしい」
「それは私のレインを奪いに来たというわけですか!」

あ?

「おい、それはどういう意味だ?」

すぐにそいつの前に移動した俺は胸倉を掴みながらそいつを問い詰める。

「は! お前か、私からレインを奪いに来た不届き者は! いいか、俺はレインと既に一夜を共にしている! お前たちの立ち入る隙などないのだ! わかったら早々に立ち去れ!」
「お前さ……。嘘を言う相手と内容は選べよ?」

手を放し、その安心で無防備になった顎を掌底ではたく。
崩れ落ちるエルフの長の息子。
落としたいなら脳を揺らすのが一番だからな。

どうやら自分が優位だと知らしめたくて咄嗟にあんな嘘をついたらしいが、思春期にもほどがあるだろ。
マウントの取り方がくそだ。
嘘でも許さん。

「みんな、裏はとれた。あとはレインの解放だ」
「おう!」

さて、やってやりますか。

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