戦力より戦略。

haruhi8128

礼節は大切にね

「なあ主よ」
「なんだ?」

席に着いたところで俺の背中と椅子の背もたれの間に陣取ったオーシリアが口を開く。

「わしと王様のキャラが被っておるぞ!?」
「あぁ、思ってはいたけど心配するな。大丈夫だ。お前には美少女っていう属性がついてる。あのおっさんよりは格段に上だから」
「それもそうじゃな」
「……わしの扱いがひどくないかの?」
「そんなことはないさ」

ただ、普通に考えておじいさんしゃべりの幼女の方がポイント高いだろ。


「あなた! 陛下に向かってなんて態度をとっているのよ!」

よくわからんやりとりを続けていた俺たちに俺の真正面に座っているマル・エイグが突っかかってきた。
そうか、いつもこんな感じなのはタンドルとチンドル、そしてエイグは知らないのか。
それでもタンドルとチンドルはレインのおかげながらも俺の実力を身をもって知ってるし、マレイユさんとのやりとりを知っているから何も言ってこないが、エイグはそのことも知らないからな。
怒るのも当然だろう。

「えっと、俺はいつもこんな感じなんだが……」
「なら普段から見直すべきです」

確かに。

「……俺が二つ名ダブル持ちなのは?」
「もちろん、知っていますよ。しかし、それとこれとは……」
「じゃあ、俺がこの国に属していないのは?」
「え?」

やっぱりか。さっきからエイグの俺への怒りは{恩義}、{忠義}によるものが大きかった。
俺が一国民として礼儀を欠いていると思ったらしい。


「俺は別にここの国民だから従っているわけじゃない。いわば、国家から依頼されているにすぎないんだ。つまり、王様と俺はある意味対等だ」

少なくとも、建前上な。

「それで、俺たちはこんな感じの対応でいいと話がついている」

もちろん、他の国の王であればぞんざいに扱っていいというわけではない。むしろ丁重に扱うべきだろう。
現にカイルさんには適当なことしてないし。
しかし、俺とエルランド王に限れば、その関係は成り立っているのだ。


「し、しかし……」
「言いたいことはわかる。だけど、ここでは一旦飲み込んでくれ。今はそんなことを話しているような場合じゃないだろ?」

全く意味のないことをさっきまで話してた俺が言うのもなんだけど。キャラ被りの話とかしてたからな。

「そうじゃな」

王様も援護してくれる。

「わしも思うところがないわけではないが、少なくとも今はそこを咎めるような時間はない。もし不満があるならすべてが終わった後に決闘でも申し込んではどうじゃ?」

おいぃ!? 援護じゃなかった!?

「そうですね。そうすることにいたします」

そんなあっさり!? 俺なめられすぎじゃね……?
さっき俺が二つ名持ちだってのは知ってるって言ってたし、それを目指してるんだからその有用性も理解してるんだろうけど。
それを差し引いても下に見られてるのか……。
なにが悪いんだろうな?


「えっとじゃな、では話を進めるとするかの」

そうだった、その為の円卓だもんな。

「何の話だ?」
「そうじゃな。さしあたってまずはお主らの潜入のことじゃろう」

「戦力より戦略。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く