命の物語

ふみゅうひぅ

回想「冥王」

?「本当によろしいのですか?」

?「前代未聞ですぞ………王族の者が下級死神に配属されるなんて……」


?「………仕方なかろう、むしろ王族にあのような能無しがいる方が恥さらしだ」


月「…………」

ゼロ「月………」

月「……僕、皆嫌いだ……お父様もお母様も、皆、皆……いなくなってしまえばいいんだ………」

ゼロ「…………そうだな」

月「お兄ちゃんに何がわかるの!?僕の能力まで奪って産まれてきて………お兄ちゃんも大っ嫌いだ!」


ゼロ「………そうだよな」



月「…………ごめんなさい」

ゼロ「………いいんだ、謝るな」


私は過去にない才能を持った神童と言われた

…反対に弟の月は存在すらも恥と呼ばれた

私が次の冥王になるのは決まっていたようなものだった……


ゼロ「……月、忘れるな………、皆がお前を能無しと呼ぼうが恥さらしと呼ぼうが……、お兄ちゃんはな、お前のこと、誇りに思っているぞ…」

そう言い、月を抱きしめて頭を撫でる

月「………うん」


その返事は余りにも弱々しく涙を含んだ声だった。
思い返せばあの時の月は「抱かれ慣れて」
いなかった。年上の者に抱かれてあそこまでぎこちない子供がいるだろうか。
それは月が「愛されぬ者」と言うのを物語っていた。
その事に私は憎しみ、悲しみ、哀れみ…名状し難き感情を抱いた。




?「おめでとう。君が選ばれたんだ。」

?「誇りに思え」


?「にしてもあいつは何なんだ?」

?「おまけにもなりませんなぁ」

?「顔はいい、いっそ男娼にでもしてみては?あははは!」

ゼロ「っ!」

?「ぐはっ!」

?「な、なにを……!」


ゼロ「………あれでも王族の血を引いています、無礼な発言は許しません」

?「そ、そうだぞ!言い過ぎだ!」

?「も、申し訳ございません……」




本当は王族がどうのこうのなんてどうでもよかった

ただ、なりに努力はしている

…そう、産まれながら神ごとき能力を持つこの私とは違って……

誰よりも、何よりも……努力していた

それを貶すのは許さない……



しかし………


月「………儀式、お疲れ様でした。お兄様」

ゼロ「………」

月「……僕は…あんたを超えて見せる」

月「いつか、必ず」



?「やれやれ、困ったものですな。とても王族とは思えません」

ゼロ「…鏖………その誇りを奪ったのは…貴様らだ。」

鏖「とんでもない」


当時、鏖は上級死神のトップとして、私の右腕として、働いていた

しかし


ゼロ「………貴様……」

鏖「……王族………か………バカバカしい」

鏖「何が才能だ、何が冥王だ。結局臆することなく禁忌に触れられた者が頂点に立つんだよおおおお!」


「ジェノサイド」……


冥界に伝説として残る禁断の大悪魔

あれは伝説ではなく、実在した


冥王になるというのは冥界の王になるだけではない

見守り続けるのだ、やつを

そして、暴れ出すようなことがあれば…

止めるのだ、命にかえても




鏖は、やつと契約を交わした


自分に冥王すらも超越した力を。その代わり、全ての生命を供物にすると……



そうだ……

やつの目的は……






転生そのものを無くすことなのだ……!





回想「冥王」
END

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品