ログボしか取ってないクソゲーに転移したので無双しようと思います

名無し@無名

数字は嘘をつかない

 
 さてどうする、魔法少女ガチャ。

 恐らく排出される武器や防具の個々の能力は高いと見える。しかし、それを装着した場合、見た目がダイレクトに反映されてしまうのだ。
 例えばこの『魔法少女のスカート』。これはいわゆるフリフリのパニエとも呼ばれるものだ。男から見たらモサモサして、中がどんなものか想像もつかないが、最高レアリティである以上、当たれば装備するしかない。

『津田さん津田さん、案ずるよりやすしきよしって言いますよ?引いちゃいましょうよ?』
「なんだよそれ漫才師かなんかかよ。今僕は葛藤しているんだ、そう、己のプライドの遵守の為に」
『津田さんのしょうもないプライドなんてどうでもいいじゃないですかー。死んだら終わるかも知れないんですよ?味噌ッカスみたいなプライドなんて捨てましょう』

 本当に他人事だなこの妖精は。ユーザーを導く筈のナビゲーターの癖に、こいつは単に俺を煽って楽しんでいるだけだ。

「……つか、お前の名前ってなんだよ。ナビの妖精には名前ねぇのか?」
『私ですか?私はエメラルドフェアリーの「よしこ」って言います。そうですね、自己紹介がまだでしたね』
「……よしこ?」
『はい、社長が昔ふられた女性の名前だそうですよ。人格もその人に寄せてプログラムされているそうです』
「うわぁ……」

 社長の未練タラタラな感じと、こんな女がリアルに居たのだという事実に、ここまでの展開を含めて僕は既に食傷気味だ。

 もう何か、どうでも良くなりつつあるが、勢いでガチャは引いてしまおうと思った。このテンションなら、魔法少女でもなんでも着てしまえそうな気がする。
スマホを開き、魔法少女フェスが開催されているガチャのページをタップした。

「もう、どうにでもなれやチクショーー!!」

 目の前に巨大なガチャが具現化する。魔法少女フェスという事で、その外観はファンシーなものへと変貌していた。下品なピンクと白に彩られた外装、恐らく社長の想像しうる魔法少女がこんなものなんだろう。
 そんな想像も絶え絶えに、俺は極彩色に彩られたレバーに手を伸ばした。


『これは!?すんごいのが来るかも!?』

 レバーを倒すと同時に、猫撫で声の声が響く。恐らく、この後排出されるアイテムのレア度示唆なのだろう。

『あ、この声は社長の奥さんの声ですよ!今年で52歳になられます』
「それでこの声かよ……想像できねぇ」
『ベッドの中ではこの声がデフォらしいーーーー』
「だぁーーーー!!ヤメろヤメろ!!ほら、中身出てくるぞ!?」

 次々と排出されるアイテムが入った球達。
 振り分け的は、白が4個、赤が1個、金が1個。

 そして、虹がーーーー5個だ!!

 高レアが大量に当たった幸福感と、その中身が魔法少女絡みである事の恐怖に複雑な心境となる。
 しかし、俺はもう迷わない。ザコレアリティのアイテムには目もくれず、虹色の球に手を伸ばした。

 テレレレレレーレーレー、テレレーレー!!

 《魔法少女のパンツ(腰)/UR》
 《魔法少女のリボン(頭)/UR》
 《ドス(武器)/UR》
 《刺青・観音像(腕)/UR》
 《刺青・錦鯉(胴体)/UR》

「……は!?」
『ありゃ?バグですかね、前の限定フェスのが混じってます。ああ、メンテナンス挟まなかった所為でしょう。ウチの運営、技術力がない割に変な所アクティブなので』
「いや、これ明らかに返金案件だろ。俺の石返せよ!」
『いいじゃないですか!だって最高レアが5個ですよ!?こんなラッキー二度と無いです!津田さんの一生でこれっきりですよ!?』
「嫌だよ!こんなクソゲーに俺の人生最大ラックが使われるってのか!?ふざけんなコンチクショー!!」

 荒々しく響く声、しかし、手に入れたアイテムの能力を見てしまい黙り込んでしまう。

 ーー強い。

 なんだよ刺青の防御力がこんだけ高いって。素肌晒してんのになんでこんな硬いの?未強化状態で、前の鎧のフル強化したのより三倍はあるんだけど?

「…………」

 僕はいそいそと、手に入れたアイテムをスマホ上で強化していく。そして、装備画面でスタンガン以外の装備を入れ替えたのだ。
 つくづく思う、僕はこんなにもリアリストだったのかと。言葉を並べても、目の前の数字の暴力には屈してしまっているのだ。
 こうして、スタンガンとドスを携えた、魔法少女のカボチャパンツとリボンを装着した、刺青だらけのコーデが完成したのであった。

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