フェスとフェスの切れ目

　
　ーー2450個。

　これが俺に残された奇石の数だ。
　そして、現在開催されている『任侠フェス』。その開催期間が後少しで終わりを告げる。

「この後来るかは分からないが、新たな『フェス』に全てを賭ける！ もうトチ狂ったラインナップでは来ないだろう！ 」

　さぁ、あと10秒。
　ガチャのバナーが切り替わる。







　さぁ！ 




　さぁ！ ！ 








　時刻が16時を過ぎ、僕は画面の再度読み込んだ。すると、画面が切り替わり派手な演出が画面に展開される。

『新たな武器＆防具が新登場！ ！ 』

「おおッ！？ 」

『ええッ、私が魔法少女！？ 』
『ひょんな事から事件に巻き込まれ、魔法少女になっちゃった☆さぁ、みんなも私と一緒にマジカルな世界へおいでよ！ 』

『魔法少女フェス、開☆催！ ！ ※衣装は男女兼用です。安心して着用下さい』





「…………」

『おー、社長も割と、今のニーズに寄せてきましたねぇ。ね、津田さん』

「いや、魔法少女って。これはあれか、出てくるのは魔法少女絡みのモンなんだよな？ 」

『はい、どうやら今回から仕様を変更したそうで、『見た目防具』の概念を無くしたそうですね。つまり、『装備品＝外観』という訳ですよ。転移ならではですね』

　気がつくと、いつの間にか俺の姿も変化していた。まだ揃っていないちぐはぐな防具。現状の最大防御力を得る為にやむを得なかったが、見てくれは最悪だ。

「いや、どう見ても害悪だろ！？ せめて性能が良ければ装備したさ！ ！ だけどそのまま見た目にされちゃあ、こんなのって無いよ！？ どうしたらいいのホ●ラちゃん！？ 」

『津田さんもちゃんとアニメとか見るんですね、安心しました。じゃあ抵抗ないじゃないですか。だって他のユーザーさん、つまりオジサン世代の人でも、課金勢は遅かれ早かれ魔法少女になるんですから』

　サラっと恐ろしい事を言うな。
　あんなフリフリの服だぞ？ でかいピンクのリボンなんだぞ！？ スネ毛ボーボーの生足さらして、ピッチピチの魔法少女衣装で「魔法少女になっちゃった☆てへ」ってなるか？ ならねぇだろ！？ 

「僕にも……超えちゃいけないラインがあるんだ」

『バカヤロウ！ ！ 』

「！？ 」

　思い切り殴られた。なんだよコイツ、ちっさな妖精の癖に体重乗せてパンチするなよ。つか、浮いてて体重乗せれるってどんな原理だよ。地球上のありとあらゆる法則無視すんな。

『そんなつまらないプライドが……この世界でどれだけ役に立つんですか！ ！ 津田さん言いましたよね？ 「この世界は僕が救う！ ！ キリッ」って！ ！ 』

「！？ ……い、言ってないけど！？ 」

『体裁がそれほど大事ですか！？ フリフリのスケスケの服を着る事にそこまで抵抗がありますか！？ そんな生ぬるい事では、この世界じゃあ秒で死にますよ！？ 』

「え、あの服スケスケなの？ え、マジで？ どこら辺が！？ ねぇッ！ ！ 」

『さぁ、レッツガチャガチャーー！ ！ 』


　僕は、人として終わるかもしれない。